魔女と○○   作:お餅な猫

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1-2 魔女とザン

【キルケの家-魔女(キルケ)視点】

 

「ある程度準備できたし……後は」

 

そういってソレの方を見やる

 

「君……名前を教えてくれない、ていうか、コロス以外喋れなさそうだよね……だからって、名前が無いと不便だしな〜……」

 

彼女は思い悩む。熟考の果て、行き着いた答えは──────

 

「わかった、呼び名を付けよう!喋れるようになるまでの、仮の名前ってことで」

 

「ね?」

 

もちろん、ソレは応答しない。というより、抑え込まれたのが理由か分からないが、目をぱちくりぱちくりと、瞬きばかりだ。

 

「……OKってことにするよ、話進まないし、()()()()()()()()()()()()()()()って訳じゃないからね。じゃあ……」

 

そういって彼女は目をクルクルさせて周囲を見る。目にとまったものは……木の札だった。

 

(木の札……木の札かあ……あ、そういえば、色んな世界の事を記してる書物に、木の札のことを別な漢字で表してるものがあったな……)

<!ピコ-ン>

 

「そうだ!思い付いた、君の事はザンと呼ぼう、言葉の歯切れも悪くないね、よし、これで行こう!」

 

「………………」

 

ソレ……これからは彼女によって名付けられたザンと表記される。

 

「名付けも終わったし、早速育てたいところだけど……」

(……育てるって、何すればいいんだろ?もう永らく親子なんか見てないし、私の幼少期を参考にするって言っても昔のことすぎて覚えてないしなぁ)

 

と、思い悩みながらザンを見つめるキルケを、ザンもまた見つめ返していた。なんともまあ、奇妙な光景だ。

 

(うーん……私の家にはたくさん本があるし、読むのが簡単な本を片っ端から出してみようかな)

「……てか、お腹空かないの?ザン君」

 

「…………」カタカタカタカタ

 

「あ、拘束かけたままだったね、ごめんごめん」

 

バインド・ウェルが解除され、ザンは身動きが取れるようになった。そして身動きが取れるようになったザンが今1番にした行動は──────

 

 

「……」<モシャモシャモシャ>

 

 

──読書のために用意されていた本を貪ること。

 

(……ヤギ????? )

「じゃないっ!?」

 

思考が宇宙の真理までぶっ飛んだキルケだったが、直ぐに意識を取り戻した彼女はザンを本から引き離そうとする

 

「辞め!食べるなぁ!」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

 

「言葉が効果音になって威嚇になってるっ!?」(もう1回痛い目を合わせた方が良さそうね……!)

 

パワァァァァァァァザウェェェェェェル!!!

 

<ビリリリィッボフッ!>

 


 

「はぁ……お気に入りの本じゃなくて良かった」

 

無惨な姿に早変わりした本を見つめながら言い放つ。

 

(さっきの様子から、これくらいのこと予想しておくべきだった……危機管理能力、落ちたなあ……)

「ねぇ、さっきは本にかぶりついていったけど、本は食べ物じゃないんだよ?」

 

少しぶっきらぼうに言い放つ。とはいえ、こうなるのは百も承知ではなかったのだろうか。

 

「……」

 

心做しかしょんぼりしているように見える。

 

「……(急に、凄く大人しくなった気がするね)」

<ピコ-ン>

(もしかして……2度も私に抑え込まれたから?格上の相手だって判断されたのかな)

「……とにかく、お腹空いてるなら何か用意する必要があるね」(ザン君を見つけた時の探索で、ある程度物資はあるし……多分、足りるよね)

 

キルケが色々考察してる時でも、逆に怖くなるほどザンは変わらず大人しくしていた。

 

「じゃあ、少し待ってて、ついでに私の分も作ってくるからさ」

 

そして文明の利器とも言える()()()()キッチンにキルケは移動し、フレア・ウェルで着火して調理を始める。数分経過すると、肉の香ばしい香りとバジルのような甘い香りが漂ってくるが、それでもザンは座して待ち続けた。余程2回も完封されたのが効いているらしい。

 

「……本当に大人しくなったね、ザン君」

 

これは後に分かるのだが、ザンはこの瞬間、両手に料理を乗せた皿を持つキルケを神の使いと幻視していたらしい。

 

「はい、綺麗に食べてね」

 

焼かれたイノシシの肉にバジルのような調味料を掛けただけの粗末な料理だ。何故彼女は料理に手をかけるタイプではないのである。一人暮らしだからなおのこと、だ。

 

<ガシッ>

予想通りというか、分かりきっていたというか……

 

(……そういえばザン君、口どこにも見当たらないけど何処で食べ──────)

 

 

<スゥ──>

 

 

手掴みでザンの口がありそうな位置に運ばれていくイノシシの肉が、闇に飲まれるように消えていく奇怪すぎる光景に、キルケは鳩が豆鉄砲を食らったような顔になりざる負えなかった。

 

「え?」

 

「……」

 

「え?????」

 

困惑のあまり、永い時を生きてきた魔女でさえ言葉が出ずにいる。色々な知識を蓄えてきた彼女だったが、そんな彼女でも間抜け面を晒すような未知があったようだ。

 

(咀嚼の音もないし、本当に今ので食事をしたってことだよね……!?)

「……」

 

全ての肉を食べ終えたザンは、次の指令を待つかのようにじっとしている。

 

「……!」(()()の量が……増えた!)

……

……

……

……

その時、時が止まった──────


【教えて!天の声先生!】

簡単に説明するよ!この世界における魔力っていうのは、()()を使うために必要不可欠なエネルギーのことを指すよ!言わば、RPGでいうMPだね。この世界には魔力を作るための魔素がそこら中に存在しているから、魔法を使っても時間経過で自然回復することが出来るんだよ!そして、体の中で作ったその魔力を貯めれる量には限界があるんだけど、それには同じ種族でもかなり個体差があるんだって!

これで魔力関係の話を終えるよ!お話を止めてごめんね、それじゃあ続きをどうぞ!


……

……

……

……

そして時は動き出す──────

 

(ザン君、ベットに寝かせて観察した時から思ってたけど、かなり特殊な構成で体ができてるんだよね。だいぶ永い時を生きてきたつもりだけど、体の9割以上が魔力で出来てる生き物っていうのは初めて見たよ。だからこそ興味が湧いたんだけどね)

 

「……?」

 

少し驚いた反応を見せたあと、じーっと観察してくる彼女に疑問符を浮かべるザン。

 

(食事をとることで魔力が回復する。なんて魔物も珍しい部類ではあるし)

「……あ」

 

ここでキルケは、ザンが疑問符を浮かべていることに初めて気づいたのである。

 

「……兎にも角にも、早く言葉を覚えさせた方が良さそうだよ。ね、ザン君」

 

「…………」




次回「ザンは天才児!?」


少し思いきって、途中で単語の説明を入れるという独自の要素を入れてました。必要最低限の知識なので説明を入れたんですが、実際、ああいうのは無い方がいいんですかね?知りたいところです。
では、今後ともよろしくお願いします。目指せ3000文字前後。
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