H・EROアカデミア   作:新グロモント

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13:雄英体育祭2

 爆豪勝己、轟焦凍――突出した能力を持つ二人は、体育祭第二試合・騎馬戦でも猛威を振るっていた。すでに一部のプロを上回るハイスペックぶりに、観客席ではヒーロー事務所のスカウトたちが騒然としている。

 

 その連中に負けず劣らず食らいついている緑谷出久もまた、傑物だった。腐っても、オールマイトの個性「ワン・フォー・オール」を継承しているだけのことはある。神代真一も、彼のことをそれなりに気に入っていた。

 

「あぁ見えて、実はこちら側に近い人間だとは……笑い種だな。爆豪君が正義側。緑谷君は、危ないバランスだ。何かの拍子にこちら側に落ちる。機を狙って誘うか……ワン・フォー・オールは、あれば便利だからね」

 

 プロ顔負けの騎馬戦は、第一試合の混乱とは違い、個性が正面から脚光を浴びる舞台となっていた。即席のチームで連携し、個性を十全に発揮して競い合う――実に青春臭い競技だ。

 

 この中の半数は、将来的にヒーロー業界を支える支柱となる。だが、制度の裏側を知る者からすれば、彼らの多くは“存在しないヴィラン組織”に潜入し、ヒーローのやられ役として生きる公務員になる。輝かしい未来をその身で感じられるのは、今だけという辛い現実を、誰も知らない。

 

 神代真一もA組の一員として、手を振り応援する。

 

 ふと、彼は思う――麗日お茶子を応援したら、どうなるだろうか。葉隠透も応援してあげたいが、なぜか“面白い展開になりそうな方”を応援したくなるのは男の性だろう。

 

「頑張れ、麗日さん。勝ったら、いいところに連れてってあげるよ」

 

「ちょっと、止めてよ神代君。いや、本当にマジで止めて。私の応援なんてしたら……」

 

 笑顔で手を振る神代とは対照的に、青ざめる麗日お茶子。それもそのはず、彼女たちの騎馬の相手には――葉隠透がいる。第二試合前に“お友達”に戻ったはずなのに、なぜ女同士の友情にヒビが入るようなことをするのか。

 

文句の一つでも言いたくなるのが、乙女心というものだ。

 

「へぇ、お茶子ちゃん。また、そういうことするんだ。ねぇ、なんでそういう意地悪するのかな?」

 

「違うって! 誤解だって! 神代君とは本当に何でもないから! いや、本当だよ!」

 

 実にエンターテインメントだ。

 

 全国生中継で、女同士の戦いが始まろうとしていた。プレゼント・マイクも、これをチャンスとばかりに煽り始める。

 

『イレイザーヘッド!! お前のクラス、どんな教育してんだ!? なんか、一回戦で敗退した神代が麗日を応援しただけで空気が凍りついてたぞ!おぃ、これ本当に放送して大丈夫なやつかぁぁぁ!?』

 

『まったく、合理性に欠けるな。どうせ神代の奴は、面白そうだからって麗日を応援したんだろう。だったら俺が合理的にさらに盛り上げてやる。葉隠、お前が麗日を倒したら、俺の権限で神代の隣の席にしてやる』

 

 対岸の火事を楽しむ神代真一は、学生生活を満喫していた。クラスメイトたちの死闘を、安全地帯から眺められる――そんな特等席は、長くはもたない。

 

 第二試合の結果、彼の横に座る“透明な女性”が、謎の圧をかけてくるからだ。

 

………

……

 

 峰田実は、第二試合で敗北した。

 

 だが、第三試合に向けて、ある計画を立てていた。それは――決勝戦を戦う生徒たちを元気づける“応援”をすること。

 

 ただの応援ではない。

 この日のために、峰田は必死にバイトして貯めた金で、チアガール衣装を女生徒分用意。口先だけでA組の女子たちを“全国放送のチアガール”に引き込んだ。欲望に実直であり、行動力もある。伊達に、雄英高校のヒーロー科にいるわけではなかった。

 

「チョロかったぜ。多少渋った女子もいたが、葉隠は“神代が見たい”って言ったら一発だった」

 

 確かに、むさ苦しい体育祭より華がある体育祭の方がいい。その様子に、A組男子だけでなく、会場の男子たちからも「よくやった」と尊敬のまなざしが送られる。その日以来、峰田実は女子たちからゴミのような目線で見られることになるが――彼の性癖には合っていたため、ノーダメージだった。

 

 ある意味、最強の男子である。

 

「ねぇねぇ、神代君。チアガール、似合うかな?」

 

「……これは、いけません。いけませんよ、葉隠さん」

 

 神代真一は、上着を脱いで葉隠透にかける。

 こんな“叡知な姿”を全国放送で見せては、日本中の男子の性癖が歪んでしまう。人を見る目があるからこそ、神代真一はこの“叡知な兵器”をTVから隠すという大事な役目を担っていた。

 

「じゃあ、後でこっそり、二人だけの時に見せてあげるね」

 

 耳元で囁く葉隠透。

 

 彼女の攻撃は、まだ“本気”ではない――それを神代真一が知るのは、数日後のことである。

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