雄英高校の体育祭、第三試合――トーナメント戦。
観客席は熱気に包まれ、プロヒーローやスカウトたちが双眼鏡を構え、次代の逸材を見極めようと目を光らせていた。その熱狂の渦の中で、神代真一はただ一人、冷静に戦況を見つめていた。
最後まで残った生徒の多くはA組。
USJ襲撃という実戦経験が、彼らを一段上の存在に押し上げていた。その中に、ちゃっかりと麗日お茶子の姿もある。
だが、彼女の相手は優勝候補の一人――爆豪勝己。戦闘センス、身体能力、精神力。あらゆる面で爆豪に軍配が上がる。だが、個性の潜在性に限れば、麗日お茶子の「無重力」にも勝機はあると神代は考えていた。
「触れるだけで対象を“消す”ことができる。理論上は、そういう領域にまで至る可能性がある。……だが、彼女はまだそこに届かない」
神代真一は、もし彼女が自分に相談に来ていたら――と一瞬考えた。だが、結局彼女は緑谷出久を訪ねた。残当だ。上司としての自分より、想い人を頼るのは自然なこと。それに、葉隠透が常に神代真一の傍にいる状況で、彼女は踏み込んでくる勇気がなかった。
だからこそ、これから始まるのは一方的な虐殺ショー。神代は、部下が大怪我をしないかだけを心配していた。彼女には、この後「本当に良い場所」に連れて行く予定がある――もちろん、それは仕事だ。
隣に座る葉隠透が、無邪気に問いかける。
「お茶子ちゃん、勝てるかな? 神代君はどう思う?」
「爆豪君は、女相手にも手を抜かない。戦いにおける心構えが違う。もっとも、麗日さんの個性が成長すればチャンスはある。重力系の個性は、みんなが思っているより恐ろしいんだ」
神代真一の声は、淡々としていたが、その眼差しは鋭い。
かつて他国に麗日お茶子と同系統の個性持ちヒーローがいた。個性の持ち主は、最終的に国家転覆まで実現して周辺国家のトップヒーロー達に討伐されている。だからこそ、表向きな情報はすべて残っていないが口伝で伝えられていた。
無重力だけでは、脅威は少ない。だが、重力から解き放つという個性が覚醒して、慣性遮断にまで至った。これにより、対象に触れる事で地球の自転から解放するという恐ろしい能力に至っている。地球の自転の速度は、時速1670km程を利用して対象を地球に衝突させ木っ端微塵にする…個性:地球衝(ジオ・インパクト)にまで昇華させた。
麗日お茶子もその道に至るかもしれない。
………
……
…
試合は始まった。
爆豪の爆発が轟音を響かせ、観客席が揺れる。麗日は必死に掻い潜り、触れては無重力化し、場外を狙う。だが、観客の視線は次第に上空へと集まっていった。彼女が浮かせた大量のコンクリートブロック――質量兵器とも呼べる光景。
「やるね、麗日さん。あの質量なら、当たれば勝てる。……当たればね」
神代真一は小さく呟いた。
だが、爆豪勝己はその全てを粉砕する。暴力的な爆発が、空から降り注ぐ破片を一瞬で消し飛ばした。千載一遇の勝機は潰え、麗日はギブアップ。全力を出し切った敗北に、彼女の顔は清々しかったが、内心は悔しさで満ちていた。
「あれ? お茶子ちゃんの所に行かないの?」
「どうして?今の彼女を慰めるのは、彼氏の緑谷君の仕事でしょう?私が行ったところで邪魔になるだけです。……後、近くないですか?葉隠さん」
じりじりとパーソナルスペースを侵食してくるJK。その様子を見ている彼の同級生達は、興味こそあるが見て見ぬふりをする。最近の葉隠さんのガチ具合をみるに、下手にからかうと飛び火することは明白だ。
強個性の彼のクラスメイトは、同じような経験を嘗て中学生時代にしている。そして食われている。だから、その時代が神代真一には今来たんだなと思っていた。
………
……
…
その後の試合は、まさに大怪獣の激突。
緑谷出久の超パワーと、轟焦凍の氷炎がぶつかり合い、会場全体が揺れる。教師陣が咄嗟に割り込まなければ死人が出る規模。これを見せられたら、ヴィランも縮こまる。だが神代真一にとっては困る流れだった。
「管理されたヴィラン」を用意する手間が増えるからだ。
決勝戦は轟焦凍と爆豪勝己。だが、轟は緑谷戦で見せた力の半分も出さず、爆豪が優勝。盛り上がりに欠ける幕切れに、観客席からは落胆の声が漏れた。そして、納得のいかない爆豪勝己は、雄英体育祭史上初――拘束された状態でのメダル授与となった。
「轟との再戦をやらせろ!」と叫び続けるその姿は、ある意味で彼らしい結末だった。
葉隠さんのお部屋に呼ばれる話をAI添削依頼したらダメですと断られた!?
なんか、エッチなのはダメだとか酷くないですか。
全年齢専門の作者の作品がエッチのはずがない!!
健全を絵に描いたようなSSだとよく言われます(作者の中では)