H・EROアカデミア   作:新グロモント

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20:期末試験1

期末試験――教育機関である以上、当然試験は存在する。

 

 中間試験があったのだから、期末試験がない理由はない。だが、ヒーロー科の試験は、通常の学力テストだけに留まらない。

 

 それが“演習試験”。

 

 その内容は、その時次第。前年と同じこともあれば、全く新しい企画が用意されることもある。先輩に聞いても、対策も傾向もまるで役に立たない。ヒーローの現場では何が起こるかわからない。

 

どんな状況でもベストを尽くせるか――それを問う、試練だ。昼前、全員が演習場に集められた。

 当然、演習であるから全員がヒーローコスチュームを着用している。神代真一も、綺麗に磨き上げた海自303式強化外骨格を装着。機械音が響く。男ならわかるロマンが、そこにはあった。

 

「相変わらずスゲーよな、神代のヒーローコスチューム」

 

「褒めてもあげませんよ、上鳴君。君のスーツだってよく似合っていますよ。気づいていると思いますが、このスーツだと中身が私だと分からないので、人気商売では致命的です」

 

 ヒーローとは、人気商売でもある。顔も一切見えなければ、人気が出るかと言えば難しい。こんな武骨なパワードスーツより、葉隠透の方が100倍人気が出るだろう。

 

「うわぁ、葉隠さんのスーツ。とってもセクシーだわ。でも、ちょっと男子たちの視線が問題じゃないかしらケロ」

 

「そうかな? 八百万さんの方が凄いと思うけど」

 

「私は、個性の関係で仕方ないんです。作ったものを取り出す都合上、どうしてもこうなるんですって」

 

 葉隠透のコスチュームは、どこぞの(BETAが存在する)世界に登場する戦術機パイロットスーツのようなもの。一見するとペラペラに見えるが、脳無の筋肉繊維をしっかり使った構造は、想像を絶するパワーを秘めている。

 

 不思議なものだ。

 

 今まで“全裸”がコスチュームだったのに、着衣の方が数段エロく感じる。この謎の現象に、男子たちは目をそらす。当然、教師陣営にもその物議は及ぶ。

 

「ショータ。お前のとこの生徒どうなってんだよ。ダメだろ、あれは!ミッドナイトとか相手にならんレベルだぞ」

 

「うるせぇ、山田。今まで全裸だったんだ。服を着たんだから問題ないだろ。合理的どころか倫理的に考えて。じゃあ、お前は、葉隠にコスチュームを脱げって言えるのか?」

 

 JKの暴力を前に、神代真一のスーツへの言及はなされない。全て、彼の計算通りだ。

 そして、今回の期末試験の説明が始まる。二人一組で教師と戦う。ハンディキャップあり、勝利条件も明白。生徒にも勝ち筋を残した、学校らしい試験。

 

 だが、筆記と実技で赤点の場合には、林間学校への参加が危ぶまれる。

 

 演習の組み合わせが発表される。教師陣営の独断と偏見による組み合わせ。

神代真一と葉隠透――個性最弱ペア。この二人に期待されるのは、「如何に個性を頼らず乗り切れるか」という課題。

 

 そう、そういう課題だ。

 

「じゃあ、パワーローダー先生。お願いしますね」

 

「おい、待てや!! なんで生徒の方が海自303式強化外骨格で、こっちが自作のパワーローダーなんだよ!!イレイザーヘッド、せめてアレを脱がせろよ。あれはレギュレーション違反だろ!」

 

 教師が、生徒の持ち込んだ装備に不服を訴える。超格上相手なのだから、そこを装備で埋めようとするのは正しい判断。合理的だ。

 

「同じパワードスーツ使い同士じゃありませんか。しっかり、お願いしますね。神代、葉隠……俺はお前らの本気が見たい。相手は超格上の雄英高校教師にして、サポートアイテムを自作するほどの先生だ。出し惜しみするなよ」

 

「確かにその通りですね。同じパワードスーツを使う者同士、正々堂々やりましょう。先生たちの期待に応えられるように本気を出します。殺す気でいきますから、ご指導お願いします」

 

「うん、私も頑張る!! 見ててね、このスーツ、凄いんだから!」

 イレイザーヘッドには、思惑があった。

 一体、どこに底があるんだろうかと。もう何を持ち込んできても驚かない。だが、持ち込みルートから神代真一の“裏”にいる存在を探ろうとしていた。

 

 その結果、パワーローダー先生が多少被害を被っても構わない――そう合理的に判断した。

 

………

……

 

 演習試験においては、ペアとなる者たちの作戦会議の時間がある。

 

 神代真一は、自前のコンテナに戻り、嬉しそうにある物を取り出した。実験的に開発され、試験運用中の『強襲型ドミネーター in 葉隠透仕様』。彼女の皮下細胞を使うことで、葉隠透が“肉体の延長線上”となり透明化して使える。

 

 その凶器が、葉隠透の手に渡る。

 

 臨時ユーザー登録も完了し、万全の準備が整えられていた。油断などしない。教師が全力である以上、生徒もその全力に応える。

 

 対するパワーローダー先生側にも、恥も外聞もない。彼が所有する数々のサポートアイテムから、パワードスーツが試験会場に持ち込まれ始める。教師として、あのパワードスーツとどこまで戦えるのか――試してみたいと心を燃やしていた。

 

 だが、彼は気づいていない。

 

 真の恐怖は、海自303式強化外骨格ではない。目の前に立ちふさがる鉄の塊より、ヤバいのが紛れ込んでいる。

 

 葉隠透は、自分の二の腕より大きなドミネーターを大事そうに抱える。好きな人と“お揃い”であり、その人からの“プレゼント”。彼女の病み具合は、渡我被身子に勝るとも劣らない。

 

 逃げれば刺されるどころか、心中されること間違いないだろう。

 

 

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