H・EROアカデミア   作:新グロモント

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39:インターン7

 目標確保の報告は、神代真一の元にも届いていた。

 

 この瞬間、死穢八斎會という組織は“無価値”となる。彼らが研究していた資料や物資が敵対組織に流出することは、政府にとって極めて危険だった。よって、政府は決定する。

 

 オーバーホールを逮捕後、この地域を“彼らが仕掛けた爆弾”によって消毒する。個性抹消弾についても、政府は一定の関心を持っていた。

 

 だが、採算が合わない。

 

 個性ごと人間を抹消できるドミネーターの方が、遥かに効率的だ。

 

「ヴィラン連合が壊理ちゃんを確保。これより、我々もヒーロー支援に向かいます。それに乗じて、葉隠さんたちを回収し、全員撤退。あぁ、それとなるべくオーバーホールは殺さないように。個性的に簡単には死なないでしょうが、頭部と手への攻撃は禁止です」

 

「神代論理次官、それでは危険では?わざわざ、あのゴミを生かす必要はありません。発言の撤回を」

 

 部下が対応案の撤回を求める。確かに、通常であれば“殺す一択”だ。

 

 だが、今回はオーバーホールに煮え湯を飲まされ、内心激怒している(死柄木弔)がいる。全てを政府側が処理してしまえば、その怒りの矛先がどこに向かうか分からない。

 

「誤解しないで欲しいな。今は“殺さない”だけだよ。ヴィラン連合側でも既に動いている。オーバーホールが一番嫌がることをしたいらしいからね。だから、殺さない程度にやればいい。そして、ヒーロー側の顔を立ててあげる。救助対象の壊理ちゃんが“行方不明”になるんだ。そのくらいは華を持たせてあげないとね」

 

 その言葉に納得した隊員たちは、海自303式強化外骨格に乗り込み、光学迷彩を展開。オーバーホールの座標付近に静かに陣取る。相手は地下にいる。だが、大まかな位置さえ分かれば十分だった。

 

 強襲型ドミネーターを構え、地面下の標的をスキャン。犯罪係数は軽く300を超えており、デコンポーザーの使用条件は満たしていた。地面に大穴を開ける準備が整い、神代真一の発射指示を待つ。

 

 公安委員長に目標確保の報告を入れ、警察・ヒーロー側にも強制介入の通知を送る。あらぬ方向から攻撃が飛んでくるのを防ぐため、当然の手続きだった。神代の通信から1分で、強制介入の許可が下りる。

 

「許可が下りた。ヒーローと警察にも通知済み。盛大に大穴をぶち開けて、オーバーホールを地上にご招待しましょう。個性消失弾? 分解? そんな物は、科学で再現できますよ。デコンポーザー、発射」

 

………

……

 

地下迷宮と地上を繋ぐ大穴が開通する。

 

 その先では、緑谷出久、イレイザーヘッド、サー・ナイトアイ、サンイーター、ルミリオンがオーバーホールと激戦を繰り広げていた。耳のインカムから、地下潜入中の全員に緊急連絡が入る。

 

『公安より緊急連絡。日本政府は、死穢八斎會を国家敵対組織に認定。更に現場には直径200mを消し飛ばす爆弾が存在。これより特機戦力が介入するが、彼らは“味方”だ。誤射に注意せよ』

 

 緑谷がオーバーホールの攻撃を凌いだ瞬間、天井が崩れ、太陽の光が地下を照らす。そこから複数の降下してくる海自303式強化外骨格。20mmマシンガンの掃射が、オーバーホールに向けられる。

 

 彼の個性で地面に壁を構築しても、三方向からの飽和攻撃に防御は限界を迎える。僅かに手を緩めれば、弾丸一発で死に至る。ルミリオンの拳とは比べ物にならない。

 

「海自303式強化外骨格!? どうしてこんなところに……それより、負傷者がいます!ミリオ先輩、サーが負傷しています。彼らを安全な場所へ!」

 

『邪魔だ、どいてろ。我々の任務は国家敵対組織の排除。オーバーホールの鎮圧は、君らの安全より優先される』

 

 徹底した飽和攻撃。装填時間すら計算され、隙を与えない。地面を再構築で逃げようにも、一瞬の防御低下が命取り。それを一番理解しているのは、オーバーホール自身だった。

 

「くそが!くそが!クソがぁぁぁ!壊理さえいれば……壊理はどこにいったぁぁぁぁぁ!」

 

 並のヴィランなら蜂の巣にされて死んでいる。軍事兵器相手に粘れるだけで、彼は化け物だった。 だが、防戦に集中しすぎたことが仇となる。

 

………

……

 

 回収地点に潜んでいた葉隠透は、誰にも気づかれていなかった。彼女はドミネーターのグリップを握る。

 

『携帯型心理診断鎮圧執行システム。ドミネーター、起動しました。ユーザー認証:葉隠透。監査官。内閣府所属。使用許諾確認――適性ユーザーです』

 

 起動したドミネーターを、オーバーホールに向ける。

 

『犯罪係数:オーバー300。執行対象です。セーフティ解除。論理次官の権限により、執行モード:ノンリーサル・パラライザーに変更。 慎重に照準を定め、対象を排除してください』

 

 美しい人工音声は、20mmマシンガンの爆音に掻き消される。意識している攻撃には対処できる。だが、見えない角度からの想定外の一撃に対応できる者は、オールマイトくらいだ。

 

 パラライザーがオーバーホールの首に命中。彼が自分を分解治療するより早く、意識を刈り取った。

 

 

 薬莢と硝煙の匂いが充満する中、こんなにも簡単にオーバーホールが倒されるのかと、緑谷出久は驚いていた。

 

 オーバーホールは決して弱くない。それどころか、個性的には“かなり強い”。だが、一方的に鎮圧された。

 

「ちょっと強い個性持ちが一人で戦えるのには、限界がある」

 

 それが、緑谷出久がこの戦場で学んだ教訓だった。緑谷出久は、海自303式強化外骨格の搭乗員に懇願していた。

 

 その時、インカム経由で作戦を管理する警察部門から再度連絡が届く。

 

『全ヒーローは、5分以内に撤退。 死穢八斎會が仕掛けていた罠だ。 万が一の場合、施設ごと上層の住民も巻き込んで証拠隠滅するつもりだった。 確保した死穢八斎會の者たちは、全員タルタロス送りにする。 だから、ヒーローおよび警察は、確保した者たちを必ず生きて連れてこい』

 

「待ってください。まだ、壊理ちゃんがどこかにいるんです。探させてください!」

 

 だが、それはできない相談だった。あと5分で、個性抹消弾に関する全ての資料を含めて、施設ごと消し飛ばす。オーバーホールさえ確保できれば、神代真一の関係履歴により、不正を働いていたヒーローや政治家たちを芋づる式に特定できる。

 

 既にこの場に“用事”などなかった。今、一番重要なのは――第三者によって、この施設の情報が奪われないこと。

 

 緑谷出久は、まだ間に合うと信じていた。

 

 ワン・フォー・オールをフル活用すれば、壊理を見つけて戻る時間はある。だが――それを許さない者がいた。

 

 イレイザーヘッド。教師である彼は、冷静に判断した。

 

「撤退だ、デク」

 

 彼は個性“抹消”を発動し、緑谷のワン・フォー・オールを封じる。そして、捕縛布でしっかりと彼を拘束した。

 

「離してください、先生! まだ、中に……!」

 

 もがく緑谷出久。だが、時間は待ってくれない。

 

 その混乱の中、ヴィラン連合の出張組は、悠々とこの場から離脱していた。葉隠透の個性――透明化の拡大化により、彼らは“誰にも気づかれず”にヒーロー達と一緒にその場を離れていた。

 

 Mr.コンプレスの手には、壊理を封じたビー玉。ヒーロー達の知らない所で、しっかりと要救助者も救われている。

 

 これからの壊理の人生は、明るいものになる。薄暗い地下ではなく暖かい地上で家族に囲まれ、幸せな家庭を築く。優しい個性パパ活おじさん、優しい女たらしの男性と本妻、側室、愛人1号、愛人2号、彼女。更には自分より年下の子もおり、家族に困る事はなくなる。

 

 日の光が当たる場所で彼女はこれからの人生を"愛人3号"として送れる。

 




原作通り、サー・サナイトアイは、腹に大穴を開けて死にかけです。
更に、ルミリオンの透過の個性は抹消。
壊理ちゃんは、行方不明。

だが、確かに死穢八斎會を潰してその構成員達も確保。
これにより個性抹消弾が広がる事は無くなった。

一応、ヒーロー側も勝利宣言できるレベルの華は持たせてもらっています。
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