ヒーロー業界を潰さぬよう、あの手この手で奔走する神代真一。今日もタルタロスに壊理を連れて行き、“個性パパ活おじさん”ことAFOに預けて訓練を任せていた。今は沖縄の無人島――バカンス兼訓練中。
そんな折、タルタロスでの業務中に黒霧への面会者が現れる。
「……あ、やべ。今日だった。黒霧は今、沖縄ーーー!!」
神代は慌ててAFOに連絡を試みるが、応答なし。壊理にも黒霧にも繋がらず、面会者が来ている旨のメッセージだけ残し、即座に帰還を促す。そもそも、あの面倒な拘束具を装着するだけでも一苦労なのだ。
だからこそ、神代は時間を稼がねばならなかった。5分……いや、10分。既にタルタロスのエレベーターで最下層に向かっているのは――イレイザーヘッド、プレゼントマイク、塚内直正。
何もなければ3分で到着してしまう。
彼らが誰もいない独房を見たらどう思うか。「食事中?」「日課の散歩?」――そんな言い訳が通るはずもない。
ピコン、と神代のスマホに黒霧からの連絡が入る。「今すぐ戻ります。何とか……8分、稼いでください」と。ちょうど戻ってきた黒霧は、バーテンダーのような服を脱ぎ始め、囚人服に着替える。
手足の拘束も施し、“それっぽく”見せるための準備に追われる。
「どうして面会を忘れてるんですか、神代さん」
「そっちこそ、自分への面会者でしょ。いい加減にしてくださいよ。囚人服まで脱ぐからこうなるんです。……背に腹は代えられません。イレイザーヘッドたちを足止めします」
神代は黒霧の独房を後にし、迫りくる面会者の方角へ向かう。タルタロス最下層という特異な空間。そこに“自主退学した元・生徒”がいれば、イレイザーヘッドの興味を引ける。
彼は、教師だったのだから。
久々の再会に失礼のないよう、神代はスーツ姿で身だしなみを整え、エレベーターホールへ向かう。幸い、黒霧の独房までは一本道だ。
………
……
…
イレイザーヘッドは、タルタロスへ向かう途中、黒霧に関する報告書に目を通していた。警察のDNA解析により、黒霧の正体は――白雲朧。かつての同級生。そして、既に故人。つまり、死体を再利用して製造された“脳無”と同じ。
一刻も早く、黒霧に問いただしたい。そんな思いで面会室へ向かう彼らの前に、別の足音が響く。
タルタロス最下層で人とすれ違うなど、滅多にない。彼らは警戒する。囚人が自由に歩いているなど、公にはされていない。面会者か関係者か――だが、ここに来る者は凶悪犯ばかり。
一体誰が、こんな場所に?
イレイザーヘッドは、前方から歩いてくる男――いや、少年を見て驚く。学生服ではなくスーツ姿。だが、間違いなく元・生徒、神代真一だった。
神代真一は彼らを意に介さず、通り過ぎようとする。
「ま、待て! 神代! なんでお前がこんな場所にいる!?」
「神代って、この間自主退学になったお前のクラスの生徒じゃねーか!」
この瞬間、神代は内心でガッツポーズ。声をかけられなければ、こちらから話しかけるつもりだった。これで、時間稼ぎができる。
「この少年は、二人の知り合いなのか? だが、なぜこんな場所に? 関係者以外、来られるような場所じゃないぞ」
「塚内さん。彼は神野区事件でヴィランを殺害し、雄英を自主退学した私の生徒です」
「あぁ、彼が例の……それは災難だったね。警察としても弁護には協力したが、ヴィラン殺害はどうしても重くてね」
「って、お前ら、それより先に聞くことがあるだろ。おい神代、なんで高校生のお前がタルタロスの最下層なんて場所にいるんだ。答えろよ」
神代真一は、少し疑問に思った。雄英生徒であれば、敬意を払うのも納得できる。だが、今は違う。
「それが人に物を聞く態度ですか?それに、私は雄英高校を自主退学
「……あぁ、そうだったな。失礼しました。まさか、タルタロスの最下層で人と出会うとは思わなかったので、つい声をかけてしまいました。貴方は、どうしてこんな場所に?」
合理性を欠いたことにイレイザーヘッドが謝罪する。神代も礼には礼で応じる。
「(義理の)娘が……(おじいちゃんのAFOに)会いたいと」
「おいおいおい、今、神代の奴“娘”って言ったぞ。ここはタルタロスの最深部だぞ!? どうなってんだイレイザーヘッド。神代の身辺調査じゃ、何も出てこなかったんじゃないのかよ」
神代は、この時、任務達成を確信していた。真実99%、嘘1%。相手が気になりそうな話題を混ぜることで、ペースを握る。
「プレゼントマイクさん、少し静かに。ここはタルタロスの最下層です。驚かれるのも無理はありません。私には、6歳になる娘がいます。とても可愛い娘ですが……色々あって、今はここに」
「6歳って!? 神代って高校1年だろ!? 15歳……6歳引いたら9歳の時の子供だとぉぉ!? 相澤、お前はどういう教育してんだよ!」
「落ち着け、山田。その時は神代の教師でもなんでもないだろ」
「で、雄英の教師のお二人と……そちらの男性は、どうしてこんな場所まで?私だけに話させて、答えないのは不公平ですよね?」
………
……
…
少しの沈黙が流れる。
確かに、元生徒の家庭事情を聞き出した。だが、その代わりに黒霧逮捕の情報を漏らしていいのか。しかも、面会に来ているなど回答に詰まるイレイザーヘッドとプレゼントマイクを見かねて、塚内が助け舟を出す。
「申し訳ないが、貴方が元生徒であっても機密事項のため、言えません」
塚内直正の冷静な一言。だが、神代真一は一歩も引かない。
「いいえ、人様の家庭事情を答えさせておいて、それで納得しろというのは筋が通りません。ここにいる娘の存在を知った以上、相応の情報をこちらにも開示すべきでは?合理的に考えて」
その言葉に、場が静まり返る。確かに、神代真一の言うことは理屈として正しい。一方的に聞き出しておいて、答えないのは不誠実だ。
イレイザーヘッドは、しばらく沈黙した後、ゆっくりと口を開いた。
「……塚内さん、彼の言うことは正しい。このタルタロスの最下層で、我々が先に話を引き出した。誠意を見せるのは、大人として当然だ。私が責任を取ります」
そして、静かに告げる。
「ヴィラン連合の黒霧を、ここに収監している。今日は、その尋問のために我々は来た」
神代真一は、軽く頷いた。
「あぁ、あのUSJでヴィランたちを連れてきた者ですね。そうですか、頑張ってください。私はそろそろ時間なので、お先に失礼します。……雄英高校の文化祭、楽しみにしていますよ。3歳の息子を連れて、遊びに行きますから」
その言葉に、プレゼントマイクが再び混乱する。
「3歳の息子!? 娘は6歳!? お前、何人子供いんだよ!?」
「山田、落ち着け。今はそれを追及する場じゃない」
神代は、エレベーターに乗り込み、静かに“閉”ボタンを押す。扉が閉まる直前、彼は微笑みながら言った。
「では、失礼します。……尋問、うまくいくといいですね」
扉が閉まり、静寂が戻る。イレイザーヘッドは、深く息を吐いた。
「……あいつ、相変わらず手強いな」
「っていうか、あいつの家庭事情、どうなってんだよ……」
「山田、今は黒霧だ。行こう」
………
……
…
面会室。
黒霧は、拘束具を装着し、囚人服で椅子に座っていた。その姿は、まるで最初からそこにいたかのように自然だった。
イレイザーヘッド、プレゼントマイク、塚内直正が入室する。
「……久しぶりだな、黒霧。いや、白雲朧」
黒霧は、ゆっくりと顔を上げる。その瞳には、感情がない。
チェンソーマン レゼ篇を見てきました。
レゼさん、可愛すぎるだろう。
あれは、あれで落ちない男はいないとマジで思いました。
ふと思いました。
仮に、爆豪勝己であってもレゼさんなら堕とせるんじゃないだろうか。
そして、裏社会に誘えそうな気もする。
や、やるか。
「(閑話)大・爆・殺・神ダイナマイト レゼ編」※作者味が追加された要素モリモリ編