H・EROアカデミア   作:新グロモント

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45:文化祭1

 神代真一は、家族サービスも大切にしていた。女性たちとのステータスを維持するため、ご機嫌取りは当然。その上で、生活に不自由させない――それが彼の誓いだった。

 

 本当なら、雄英高校在籍中に文化祭へ招待したかった。だが、退学した身ではそれも叶わない。だからこそ、一般参加者として文化祭に乗り込む予定だった。本妻、側室、愛人たち、彼女――大所帯である。

 

 一般入場は可能とはいえ、最低限のセキュリティチェックはある。だが、それを回避する“親族優待チケット”が存在していた。この時期になると、闇サイトで雄英文化祭の優先入場券が出回る。そこそこ高値だが、学生には良い小遣い稼ぎなのだろう。

 

 神代は、裏ビティに頼めば無料で入手できたはずだ。だが、今回はサプライズ。今日の来場は内緒にしていた。 あの“打てば響く”性格は、神代家では好評だった。特に、顔芸は子供達にも人気だ。

 

 

 神代は、息子・神代ハス太を肩車する。

 

「さぁ、これからパパの元学校の文化祭に行こうね。人がたくさんいるから、はぐれないようにね。はぐれたら、1年A組の裏ビティを呼び出してもらうんだよ」

 

「うん!!」

 

 ハス太の頭上には、個性“召喚”によって呼び出された外宇宙の神――クトゥルフ様。2等身デフォルメの愛らしい姿だが、ハス太に何かあれば本来の姿で降臨する。第六世代の特異点として、その力は規格外だった。

 

「ねぇねぇ、神代君。雄英って、まだB組に物間君がいるみたいだけど、大丈夫かな?ハス太君や神代君に何かあったら、多分死んじゃうんじゃないかな」

 

「在学中ならともかく、今は一般人ですよ。家族で文化祭を楽しみに来る客にそんな物言いしたら、大問題になるよ。学校として、人として……いや、無いよね。流石に、クトゥルフ様は私でも止められないよ。まぁ、そこらへんは裏ビティさんに苦労してもらいましょう」

 

 その時、神代の袖をクイクイと引っ張る少女が一人。娘の壊理が、手を繋ぎたいと訴えていた。

 

「パパがいい」

 

「壊理は甘えん坊ですね。……あの、皆さん、そんな目で見ないでください。大丈夫ですって、安心してください」

 

 女性陣からの圧に、神代も敗北するしかなかった。年齢の若さを逆手に取り、地味に良いポジションを確保する壊理――策士だった。

 

 この大所帯を迎えることになる裏ビティは、なぜか朝から寒気を感じていた。女の勘が冴え渡っている。

 

 

―某EUヒーローが来日した時―

 

 ジェントル・クリミナル。ヴィランにして動画投稿者。彼の人生は、壮絶だった。

 

 ヒーロー志望だったが、学力不足と実力不足で留年。人助けのために個性を使った結果、ヒーロー活動妨害で退学。ヒーローの道は、断たれた。

 

 それから細々と動画投稿を続け、彼に惚れ込んだ助手――相場愛美と出会う。彼は劇的に進化した。

 

 相場愛美の個性は“愛”。対象を何倍にも強化する個性。その強化幅は非常に大きく、ただの中年男がOFAを使いこなす緑谷出久と拮抗できるほどだった。

 

 だが、その野望は――文化祭の少し前に潰えた。

 

「おやおやおや、どうしたのですか?先ほどからパワーが落ちてきましたよ。“愛”の個性ということで期待していたのですが、残念です」

 

「ジェントル!! 逃げましょう。あれは、普通じゃないわ!」

 

 黒装束に紫のラインの鉄仮面の男。

 

 ジェントルは、突如現れた男から相場愛美を守るため、命を賭けていた。だが、実力差は圧倒的。一方的に“遊ばれて”いた。

 

「ですが、それは素体となっている貴方の身体能力に依存すると見ます。貴方には興味はありませんが……相場愛美。その個性、ぜひ欲しい。“月に触れる(ファーカレス)”」

 

「ラブラバ!!」

 

 鉄仮面の男の手から、黒い網状の捕獲装置が広がる。それを察したジェントルは、弾性の反動と“愛”の力で相場愛美を連れて撤退を試みる。

 

 これは、相手にしてはいけない部類だ――本能が告げていた。オールマイトを相手にするヴィランの気持ちが、少しだけ理解できた。

 

「おやおやおや、逃げられるのですか。連れないですね~。どこに行かれるのですか?“明星へ登る(ギャングウェイ)”」

 

 周囲の壁から跳ね返った光が、ジェントルの腹部を貫く。致命傷は避けられていた。鉄仮面の男は、これでも“ヒーロー”であり、慈悲の心は持ち合わせていた。だが、欲しいものを見れば、欲が抑えられない――それが彼の性だった。

 

「ジェントル、ジェントルゥゥ!」

 

「相場愛美さん。どうか、これ以上争わせないでください。私は、ただ、あなたの個性が欲しいだけなんです。“愛”という素晴らしい個性。譲っていただけますか?」

 

 人間は、理解できないものに恐怖する。目の前の鉄仮面の男は、間違いなくそれに類する。相場愛美にとって、大切なものは何か。そんなの、決まっている。

 

「譲るわ。でも、ジェントルを助けて」

 

「えぇ、勿論です。さぁ、こちらへ。暖かい飲み物とお食事も用意しましょう。彼も、私の飛行機の中で治療を約束します。EUまで長旅ですが、必要な物はすべて用意します」

 

 こうして、また一人――野生のヴィランが姿を消す。

 

 自国のヴィランを引き抜くなと文句を言いたい。だが、誰も鉄仮面の男にクレームは言えなかった。ジェントルのその後は、紫ラインの入った鉄仮面を被り望みであったヒーローとしてEUで活動を続ける。その傍らには同じく鉄仮面を被ったラブラバの存在も確認された。

 

 この事件のおかげで、雄英高校文化祭が“平和的”に進められることになるとは――誰も知る由もない。

 




ちょっと、休憩><
しばし充電をお待ちください。


「(閑話)大・爆・殺・神ダイナマイト レゼ編」…前話のあとがきに書いてから、脳内でストーリーが・・・書き下ろせば、できてしまう段階まで来てしまった。

時間と体力の回復をお待ちください。
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