H・EROアカデミア   作:新グロモント

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完全に作者の趣味な話ですので。


48:(閑話)大・爆・殺・神ダイナマイト レゼ篇 1

 雄英高校の文化祭後、インターンが再開された。今、世間の裏側ではヴィラン連合と異能解放軍が手を組み、着々と準備を進めていた。ヴィラン連合は自前で資金源を確保することに成功し、そこに潜入していたNo.2ヒーロー・ホークスから「数か月後に彼らが発起する」という情報が政府に届く。

 これを受け、公安が学生インターンを再開するように政府要請し、受理した。しかし、これには裏がある。学徒動員・・・これが真の目的だ。このヒーロー飽和時代に、学徒動員など許されるのだろうかとおもうが、政府も増え続ける債務負担に限界を感じ始めた。

 

 これは日本政府にとって“好機”だ。

 

 異能解放軍という存在は、政府もすでに認識していた。彼らは勤勉で、労働し、納税もする。理想を掲げながら、今を耐え忍ぶ――模範的な国民。しかし、そんな異能解放軍はヴィラン連合に屈した。11万人を超える彼らが、テロリストへと変貌した瞬間―ヒーローの在庫処分、未来のヒーロー選抜試験、ヒーロー飽和時代の抑制。

 

 一粒で三度おいしい“制度的ボーナスタイム”が到来した。

 

 ピンチをチャンスに変える世紀のビッグイベント。政府は静かに、大盤振る舞いを始めていた。その思惑を知る者は、ごく一部の関係者のみだった。

 

………

……

 

 エンデヴァー事務所でのインターン中、爆豪勝己は休日でも町をパトロールしていた。個性の向上、実戦感覚の維持――向上心の塊である彼に、休みは存在しない。

 

 だがその日、空は急に泣き出した。冷たい雨が、爆豪の肩を濡らす。

 

 爆破の個性は、雨と寒さに弱い。汗を爆発させる性質上、火力が落ちる。ヒーローコスチューム姿で飲食店に入れば、サボりと誤解されかねない。

 

 だから、偶然見つけた電話ボックスに避難した。

 

「クソが。さっさと晴れやがれ」

 

 その狭い空間に、もう一人の客人が現れる。

 

「ごめんね、私もちょっと雨宿りさせて」

 

「おぃ、ふざけんな。ここはせめーんだよ。他を当たれ」

 

 びしょ濡れの女性に、爆豪は毒舌を浴びせる。だが、彼はヒーロー。無理に追い出すような真似はしない。女性が濡れた前髪を上げると――誰もが振り返るほどの美貌が現れた。

 

「そうかっかしない。君はヒーローでしょ?あれ~見覚えあるな~。雄英の体育祭で見た! 馬鹿豪君だっけ?」

 

「ちげーわ、ボケが。爆豪だ。覚えとけ。どこの世に“馬鹿”って名字があるんだよ」

 

「爆豪君みたいな面白い人、初めて」

 

………

……

 

 爆豪は、小規模爆破で温風を作り、彼女の髪と服を乾かす。

 

「へぇ~、個性の使い方うまいね。偉い偉い」

 

「ヒーローの頭をなでんな。ヘアスタイル崩れるだろうが」

 

 距離を縮めてくる彼女に、爆豪は困惑していた。だが、不思議と不快感はない。

 

 雨が上がるまで、二人は他愛ない会話を続けた。それは“会話”というにはおこがましいほど。女性からの一方的な問いに、ぶっきらぼうに答える爆豪。

 

「雨、上がったね。服と髪、ありがとう爆豪君」

 

「いつまで“爆豪君”って呼びやがる!俺のヒーロー名は、大・爆……くそがぁぁぁ」

 

 爆豪は、ヒーロー名を最初に伝える相手を決めていた。だから、この場で彼女に伝えることができない。

 

「え!? ヒーロー名が“大爆くそがぁぁぁ”なの!?それはちょっと考え直した方がいいと思うよ」

 

「うるせぇ。爆豪でとりあえず許してやる」

 

 彼女は微笑む。

 

「爆豪君。私、この先の二道(ふたみち)ってカフェでバイトしてるの。来てくれたら、このお礼してあげる」

 

「てめーの名前は?俺だけ知らねーのはおかしいだろ」

 

「言ってなかったっけ?……あたしの名前、レゼ」

 

「レゼ? 苗字は?」

 

「それは、爆豪君がお店に来てくれたら教えてあげる。待ってるからね。絶対に来てね」

 

「誰が喫茶店なんか行くか!」

 

………

……

 

 だが、爆豪は喉の渇きを感じていた。頭では否定しても、体が動く。合理的に考えても、水分補給は必要だ。汗がなければ、爆破もできない。

 

 気づけば、路地裏の不良を掃除し、喫茶店『二道』で休憩していた。

 

「私より早く来てる。早いね~、さっき別れたばかりなのに」

 

「うるせぇ!俺は、お礼をもらいに来ただけだ!」

 

「ははは、君面白いね。マスター、コーヒー二つ」

 

「君ね、アルバイトなんだよ?」

 

「いいじゃないですか。ランチ時以外、客こないし」

 

 こうして、爆豪勝己とレゼの奇妙な関係は始まった。

 

 

 

 数日後。

 

 エンデヴァーとのパトロール中、爆豪は昼食を取らなくなった。任務が終わると「腹減った」とだけ言い残し、姿を消す。 その不可解な行動に、緑谷出久と轟焦凍が疑問を抱く。

 

「なぁ、緑谷。最近、爆豪の奴、付き合い悪くね?昼飯も食わねーし、物腰もちょっと柔

らかくなった気がすんだよ」

 

「え!? 僕への当たりはいつも通りだけど……でも、確かに行動パターンが変わってる。昼を抜くなんて、かっちゃんにはあり得ない。爆破は発汗がキモなのに……」

 

「たぶん、訓練じゃねーな。あれは、夏兄が彼女できた時の行動にそっくりだ。爆豪……彼女できたんじゃねーか」

 

「かっちゃんに彼女!? いや、ないと思うよ。だって、かっちゃんだよ」

 

 緑谷は爆豪のほくろの位置まですべてを知っている。OFAの秘密まで共有する仲。だからこそ、彼女ができるはずがないと信じていた。才能マンと言われる爆豪の欠点ともいえる女性関係――それが改善されるなど、神が許しても緑谷は許せなかった。

 

 緑谷は、麗日との関係がそれなりに進展しており、休日デートまでは実現している。その心の余裕が、爆豪への冷静さを保っていた。

 

「緑谷、お前って爆豪のことになると時々口が悪いな。じゃあ、確かめに行こうぜ。後をつけりゃ一発だろ」

 

「わかったよ。でも、僕はかっちゃんを信じてるから」

 

 その信頼は、喫茶店『二道』で裏切られる。爆豪が、綺麗な女性店員と肩を並べ、勉強を教えていた。女性からのボディタッチも多く、レゼは爆豪のプライベートスペースに自然に入り込んでいた。

 

 轟が激写し、A組のLINEに投稿。

 

「爆豪に彼女ができた。みんな、暖かく見守ってやろうぜ」

 

「僕は、信じないぞ。かっちゃんに近づく女なんて、絶対に何かあるに決まってる。分かった、某国のスーパーエージェントとかだよ。ハニートラップだよ。かっちゃんの個性は爆破。両親二人の良いとこ取りした個性。つまり、かっちゃんとの子供は、更に強くなる可能性があるんだよ。こんなの絶対おかしいよ」

 

 轟は、妄想のそこまで行くと病的だなと呆れる。だが、緑谷の男を見る目は正しかった。

 

 

 

一方その頃――

 

 日本最古にして最大手のヴィラン組織“黒の組織”。その組織に所属するロシアのスーパーエージェントが、日本沈没前に優秀な個性因子を確保する任務を実行予定。H・EROアカデミアに後処理が依頼され、神代真一が書類を確認していた。

 

 最近は、日本沈没説が出回り、“黒の組織”から離反者が増えているらしい。元々は、全員スパイしかいないという組織。祖国からの命令を忠実に実施するだけの存在。“黒の組織”の性質上、離反者を狩るのも同じスパイであり、結局彼らも逃亡するという悪循環が続いていた。

 

 だからこそ、外部委託されて一つの案件がH・EROアカデミアに回ってきた。

 

「コードネームはレゼ。個性は爆弾。……いい個性ですね。癒月静治癒官、この女性、どう思います?」

 

「また新しい女ですか? 節操がないと、そろそろ本当に死にますよ」

 

 女周りでは信用ゼロの神代。だが、情報は確かだった。

 

「裏ビティさんから、爆豪に彼女ができたって写真付きで情報が来ました。……運命って、皮肉ですね」

 

「爆破の個性の彼、爆弾の個性の彼女。産まれてくる子供は、凄まじい個性になりそうですね。ロシアは、未来のトップヒーローに切り替えましたか」

 

「そうみたいです。レゼが潜伏する場所から推測するに、本来であればエンデヴァー、もしくは彼の子供を狙っていたんでしょうね。しかし、エンデヴァーを超える才能を持つ荼毘の遺伝子がバーゲンセールのように大放出されました。一部が既にロシアの手にあると見て間違いありません。よって、新しい遺伝子に目を付けられたと、いった感じですかね。一人の男として聞きたい。爆豪勝己がハニートラップを回避できる可能性は?」

 

「ありませんよ。神代君は女を舐めすぎです。自分だけは大丈夫だと思っている人ほど、落とすのは簡単なんです。相手がこちらのステータスを見られるなら、尚更です。よーく、私のステータスを見ていてくださいね。女は、誰もが女優なんです」

 

 癒月静の好感度のパラメータは確かに上下している。それも、個人の意思で。つまり、食っていると思っていたが、食われていたのだと。好きも嫌いも、女にとっては気の持ちよう一つでいくらでも上下できる。これが、女という生物だ。

 

 実体験に基づいた静治癒官の言葉に、神代は一瞬、言葉を失った。彼女の瞳は冷静で、どこか諦めにも似た光を宿していた。それは、理屈ではなく“経験”から導き出された確信だった。

 

 神代は、机の上の書類に視線を落とす。レゼ――爆弾の個性を持つロシアの諜報員。その写真は、喫茶店で笑うレゼの隣に爆豪勝己が自然に収まっていた。距離感、表情、姿勢――どれも“演技”には見えなかった。

 

「……爆豪君が、落ちると?」

 

 神代の声は低く、感情を抑えていた。癒月静治癒官は、即答した。

 

「爆豪勝己がハニートラップを回避できる可能性?ゼロです。むしろ、彼は“落とされる側”として理想的です」

 

 神代は眉をひそめる。

 

「理由を聞こうか。彼は攻撃的で警戒心も強い。簡単に心を許すようなタイプではないはずだ」

 

「それは表面だけです。爆豪勝己は、自己肯定感が低い。常に“強くなければならない”という呪いに囚われている。だからこそ、無条件で肯定してくれる存在に弱い。レゼのような“柔らかくて、強い”女性は、彼にとって毒にも薬にもなります」

神代は、書類の写真を見つめる。

 

  レゼ――ロシアの諜報機関が誇るエージェント。個性爆弾の威力は、爆豪の爆破と同等か、それ以上。その精度と制御力は、戦闘兵器としても、遺伝子資源としても、極めて価値が高い。

 

 神代は、机に肘をつき、指を組んだ。

 

「女性関係は嵌れば沼だからね。身をもって実感しているよ」

 

 癒月静は、冷静に頷いた。

 

「流石は神代論理次官。で、真面目な話ですが――レゼは、爆豪の個性因子を“遺伝子レベル”で確保するために動くでしょう。恋愛感情は“手段”であり、目的は“子供”です」

 

 神代は、しばらく沈黙した後、答えた。

 

「一人の未来ある少年相手に、ロシアが諜報員まで持ち出してくるとか……やり過ぎだろう。まぁ、ヤるのはこれからだが」

 

 癒月は、表情を変えずに問い返す。

 

「神代論理次官は、どちらを選びますか?」

 

 神代は、視線を落としたまま、静かに言った。

 

「人間、幸せにできる範囲は、その両腕が届く範囲までだよ。私は、今の自分の幸せを守るためなら、他の幸せなど犠牲にできる。そうでなければ、ならないんだよ」

 

………

……

 

 その頃、喫茶店『二道』では――レゼが、爆豪の隣で笑っていた。

 

「ねぇ、爆豪君。将来の夢ってある?」

 

「……No.1ヒーローになることだ。それ以外、考えたことねぇ」

 

「そっか。じゃあ、私も応援するね。君なら、なれるよ。絶対に」

 

 爆豪は、少しだけ目をそらした。その言葉が、思った以上に胸に響いたからだ。

 

「レゼ、てめぇは何者なんだよ。なんで、そんなに俺のこと……」

 

「それは、秘密。でも、爆豪君が“爆豪君”でいてくれる限り、私はここにいるよ」

 

 その言葉に、爆豪は何も返せなかった。ただ、心の奥で何かが、静かにほどけていくのを感じていた。

 

 それは、爆豪勝己が“戦場”ではなく“日常”に触れた瞬間だった。そして、レゼが“任務”ではなく“感情”に触れた瞬間でもあった。




作者の力量では、この程度しか書けない。
レゼさんの魅力がどうしても出しつくせない。


******予告的なやつ******

夜のプールでの出来事。あのセリフは美女が言うから成り立つ事を裏ビティに証明する神代真一。

神「麗日さんが知らない事、私が全部教えてあげる」

裏「ヒェ…こわ」

 裏ビティは、全身から血の気が引いた。知らない事を全部教えられるその恐怖。確かに言う人物が変わるだけで同じセリフでもここまで変わるのかと。
************





PS:
チェーンソーマンの漫画・・・レゼさん登場するあたりが何処もうってねーー。
書店を四つ程、はしごしたけどなかったよ。
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