演習開始から数分。
神代真一と葉隠透は、模擬核装置の防衛位置に陣取り、周囲の構造物をスキャンしていた。葉隠透が搭乗する海自303式強化外骨格は、光学迷彩を展開。AI補正により輪郭補正・熱遮蔽・反射制御まで行えるため、実戦データを十分に反映しており、対個性戦においても万全の性能を発揮する準備が整っていた。
「葉隠透さん、貴方に貸した海自303式強化外骨格は、軍隊で正式採用されている代物です。トップヒーローの必殺技レベルでない限り、一撃で破壊されることはありません。安心してヴィラン役に徹してください」
「わ、わかったよ。でも、これ本物の銃だよね? 当たったら死んじゃうんじゃない!?」
実弾に不安を抱く葉隠透。だが、彼女は大きな勘違いをしていた。この銃弾のエネルギーより遥かに理不尽な出力を誇るのが、今回の相手――轟焦凍だ。
彼の凍結能力は、現時点でもビル一棟分を瞬時に氷で包み込むほど。その威力は、TNT換算で約300トン分の爆発エネルギーに匹敵する。広島原爆の1/53に相当する出力を、高校生が連続で発動可能なのだ。
「大丈夫ですよ、葉隠透さん。単純な火力でいえば、轟焦凍君の方が遥かに上です。それに、相手はヒーローです。銃で撃たれて死ぬようなヒーローなんていませんよ」
「そうなのかな~?なんか違う気もするんだけど」
神代真一は口には出さないが、内心では冷静に分析していた。相手が人型である以上、構造は人体と同じ。20mmマシンガンの威力なら、掠っただけで致命傷を与える。だからこそ、海上自衛隊でも本採用されている。個性が身体能力の延長である以上、知覚外からの攻撃や飽和火力による殲滅で制圧は可能だ。
その時、模擬核が置かれたビル全体が一瞬で凍結する。轟焦凍による全方位凍結――内部に潜入せず、ヴィランを無効化する効率的な手段だった。
『敵、接近。建物外壁より侵入の兆候あり。個性データベース照合中……対象:轟焦凍、確率97%。単独での敵対は危険と判断。応援要請を提案します』
AIの警告と同時に、葉隠透が搭乗する海自303式強化外骨格が20mmマシンガンを構え、壁越しに牽制射撃を開始。轟焦凍と八百万百が侵入を試みた瞬間、壁が爆裂し、衝撃波が二人を押し戻す。
「応援要請は却下。訓練であるため、現状戦力で対応。葉隠さん、私のヒーロースーツを貸したんだから、その分しっかり働いてください。轟焦君の行動パターンは分析済み。独断専行してくるから、殺す気で応戦してください。私は裏から回り込んで、八百万さんを確保します」
「りょ、了解!」
神代真一は、陸軍用の全身コートに身を包み、光学迷彩を起動。姿を消し、20mmマシンガンの掃射音に紛れてヒーロー側の背後へと回り込む。
轟焦凍は、凍結で敵を無効化したという思い込みから油断していた。さらに、海自303式強化外骨格の圧倒的な存在感により、彼らはその機体に神代真一が搭乗していると誤認する。
それこそが最大の誤算だった。
20mmマシンガンの掃射を、轟焦凍は重厚な氷壁を幾度となく生成して防ぎ続ける。核の部屋にこの兵器が鎮座していては、潜入は困難。防御に徹するしかないと、轟焦凍ですら判断した。
だが、武装はマシンガンだけではない。グレネード弾も搭載されている。
「ふざけんな!!学生がそんな武器使うんじゃねーーぞ!」
「轟さん!前面に氷を!私も防弾シートを生成します!」
火力で圧倒する海自303式強化外骨格。戦闘慣れしていない学生相手とはいえ、ヒーロー側の個性はこの世代でも最上級。この戦闘データを海自に提供すれば、さらなる強化が可能となる。
数発のグレネード弾。
銃身が焼き切れるまでの掃射。
それらを学生の身分で防ぎ切った轟焦凍にも、「学生がそんな個性振り回してんじゃねー」と言いたくなるほどだった。もはや八百万百と轟焦凍の注目は、完全に海自303式強化外骨格に向いていた。
そのマガジン換装のタイミング――神代真一が八百万百の背後を取り、光学迷彩を解除。喉元にナイフを突き立てる。
「動くな、轟焦凍!八百万百を確保した。動けば、人質の命はない」
神代真一は、勝利を確信した。
ヒーローが人質を取られた時点で、戦術的には敗北だ。だが、それは彼の思い込みに過ぎなかった。
轟焦凍は、無言で神代真一を見据える。その瞳に、迷いはなかった。
「……ならば、凍らせる」
次の瞬間、轟焦凍は全力で全方位凍結を発動。氷が床から、壁から、天井から一斉に伸び、八百万百と神代真一を包み込む。
『AI、緊急冷却モード。システム再起動まで20秒』
神代真一は、轟焦凍の合理的な判断を評価した。人質に取ったのは民間人ではない。
核兵器を確保しようとしているヒーローだ。そのヒーロー一人の命と核兵器のどちらが重たいかという問いになる。そんな状況なら、人質ごと凍らせてでも制圧する。それがヒーローの本質だ。
轟焦凍は、動ける者がいなくなったこの場を歩み、模擬核装置を無事確保。これにより、訓練は終了した。
「……人質ごと凍らせて救出するとは。合理性の鬼か、冷徹な英雄か」
オールマイトは、その様子を冷静に見守っていた。
状況設定からすれば、正しい回答。
だが、それを学生のうちから発揮できる者は多くはない。オールマイトは、轟焦凍の冷徹な判断力に驚きながらも、内心ではその“正しさ”を認めていた。ヒーローとは、時に情を捨ててでも命を救う者。
そして、制度の中でその判断を下せる者こそが、未来の柱となる。
対する神代真一は、凍結解除後にゆっくりと立ち上がった。
「葉隠透さん、無事ですか?」
「う、うん……ちょっと寒かったけど、外骨格が守ってくれた。ありがとう、神代君」
「それは良かった。凍結耐性の強化は、今後の改修において重要な課題ですかね」
葉隠透は、神代真一の手を取りヒーロースーツから降りた。透明人間であるはずの葉隠透が少し赤い顔をしている事を誰も気づく事はなかった。
USJの前に少し話を挟む予定です。
他の生徒の戦いは長くなので主に原作通り><
生徒数の都合上、誰かがいない予定ですがまだ決めていません。
すこし、神代の稼業の話を盛り込もうかなと。