H・EROアカデミア   作:新グロモント

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51:(閑話)大・爆・殺・神ダイナマイト レゼ篇 4

 楽しい祭り会場を警備する地元ヒーローは存在する。エンデヴァー事務所のお膝元とはいえ、現場に出ているのはおこぼれ狙いの零細事務所の面々だ。そういった連中は、地元密着のイベント警護に駆り出される。

 

 爆発音を聞き、彼らは現場に駆けつけてしまう。

 対峙するのは、遥かに格上――地方の零細ヒーローと、国家が用意したスーパーエージェント。だが、そんなことは彼らには知る由もない。要救助者と思われる爆豪と緑谷を発見し、すぐに避難を促す。

 

「君たち!ここは僕たちに任せて、その子を連れて先に行きなさい。見たところ、インターン生だろう?」

 

「これだから日本のヒーローは嫌になるのよね。野良犬より数が多いヒーローって」

 

 人数比は三対一。ヒーロー側は勝てると踏んだ。

 

 今まで、それなりの場数を踏んできた彼ら。例えそれが政府が用意した“養殖ヴィラン”であっても、実績は実績。このご時世、本当の殺し合いや野生のヴィランと遭遇した経験を持つヒーローは減っている。

 

 本当の実力差を感じ取れない時点で、この場に立つ資格はなかった。

 

 だが、緑谷はヒーローたちを信じ、レゼが一瞬そちらに意識を向けた隙に戦線を離脱する。今やるべきことは、ここで戦うことではない。祭り会場には民間人が多く、負傷者である爆豪もいる。

 

 だからこそ、緑谷はエンデヴァー事務所への避難を決断する。この町で最もヒーローが多く、24時間稼働している拠点。そこに殴り込む勇気のあるヴィランなど存在しない――誰もがそう考えていた。日本No.1ヒーローと多数のサイドキックがいるのだから。

 

 緑谷は、背後から爆発音が響く中、振り返ることなく疾走する。

 

………

……

 

 緑谷は、エンデヴァー事務所の一階に駆け込むことに成功した。すでに、エンデヴァー直々に指導するインターン生として認知されており、彼らを知らない事務所員はいない。

 

 緑谷はすぐに大声で叫ぶ。

 

「ヴィランです!かっちゃんが怪我をしていますので、治療をお願いします!僕は、現場に残ってくれたヒーローの支援に――」

 

「黙ってろ、デク!くっそ……舌を焼いてようやく血が止まった……」

 

 爆豪は、舌を噛み切られた際に爆破で口内を無理やり止血していた。狂気を通り越した止血方法。何度も気を失いかけたが、それでも耐え抜いた。耐えなければ、今以上の不幸が待っていることが見えていたからだ。

 

 エンデヴァー事務所の面々が続々と集まってくる。サイドキックのバーニンも駆けつけ、緑谷と爆豪の状況を見て即座に招集をかける。この二人が逃げてきた。爆豪も負傷している。この二人がそうせざるを得なかった相手は、普通のヴィランではない。

 

 だが、そんな騒ぎの中――エンデヴァー事務所に近づく女性が一人。遠目からでもはっきりと分かる美しい女性。彼女は頬を少し赤らめ、妖艶な笑みを浮かべながら叫ぶ。

 

「助けてくださーーーい!ヴィランに、襲われてま~す!」

 

 ざわざわと騒ぎが広がる。“襲われている”にしては、雰囲気がまるで違う。それどころか、何か誘われているような錯覚すら覚えるほど。出会いの少ない男性ヒーローたちが、真っ先にレゼへと近づこうとする。

 

「ここは、俺に任せろ」

 

「いや、俺だ俺」

 

「お前ら、俺に譲れ。この間、晩飯奢ってやっただろ。先輩を立てるのが後輩だろうが」

 

「この間、合コンに誘ってやっただろ。だから、俺に譲れ」

 

 ――どこの国の男も美女には弱い。この機会にお近づきになろうという邪な連中が多かった。

 

ブチ

 

 爆豪が立ち上がる。すでにレゼが明確なヴィランであることは判明している。だが、それはそれで大きな問題を孕んでいた。ヴィランであると認定されれば、処遇は刑務所行き。罪状次第ではタルタロス送りも確定する。

 

「黙れ、てめぇら。これは痴話喧嘩だぁぁぁ!お前らが出る幕じゃねぇぇぇ!」

 

「おいおい、それは無理があるだろ。お前、口がひどいことになってんぞ」

 

 バーニンの指摘は正しい。

 

「馬鹿が。ちょっとレゼにキスして舌を噛まれただけだ。いいか、俺が襲ったヴィランだ。いいな!お前らは何も手を出すんじゃねぇぞ。彼氏彼女のちょっとした喧嘩だ。今から、どっちが上か教えてきてやる」

 

「か、かっちゃん……それは、無理が……」

 

 そう、無理がある。

 

 だが、“ヴィランみたいなヒーロー”である爆豪が言うのだから、それも一理あるかと誰もが思ってしまう。この時ばかりは、彼の人柄が救いとなった。確かに、ヴィランが爆豪を指しているならば、筋は通る。

 

「うるせぇぇぇぇ!無理でも通すんだよ!デク、お前は保険屋に連絡しとけ。痴話喧嘩の物損も保険適用かもしれねぇ。あと、祭りで覗きしてた件は……後で〆る」

 

 騒ぎが大きくなり、上層で構えていたエンデヴァーが降りてくる。そして、爆豪とレゼを確認する。

 

「爆豪。本当に痴話喧嘩でいいんだな?その場合、俺はお前がどうなろうと手出しはせん。だが、ヴィランならば俺が全力で戦う」

 

「はぁ?レゼのどこがヴィランなんだ。No.1ヒーローの眼は節穴か?痴話喧嘩に決まってんだろうが」

 

 エンデヴァーは、痴話喧嘩で納得する。かつて、自分の妻もあんな感じだったなと。

 

「いいだろう。男を見せろ爆豪。これで貴様も、一人前だ」

 

 背中をビシッと叩き、手形を残す。そして、エンデヴァーより直々にヒーローコスチュームを受け取る。

 

………

……

 

 レゼは、エンデヴァー事務所の前で立ち止まり、状況を冷静に分析していた。さすがにヒーローの数が多い。それに、日本No.1ヒーローの拠点でもある。分が悪い。エンデヴァーまで出てきたら、さすがに正面突破は無理がある。

 

 だが――「無理だからできませんでした」では通らない。国家が送り込んだスーパーエージェントに、そんな言い訳は許されない。レゼは、できるだけ甚大な被害を出し、混乱に紛れて逃走する計画を立てていた。

 

「ダメみたいだな~。そりゃダメか~。なら仕方がない。皆殺しコースかな」

 

 レゼの首元のピンが抜かれる。それは、脳無としての力を解放するスイッチ。

 

 彼女は、ロビーに集まるヒーローたちを吹き飛ばそうと、指を弾く。爆弾の個性――空気中の物質、地面、コンクリートすら爆弾に変える強個性。だが、その爆発は必ずレゼ自身が起点となる。

 

 パチン。

 

榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!」

 

 爆弾の個性を、爆破の個性で相殺する。エンデヴァー事務所の多数のガラスが犠牲になったが、人的被害はゼロ。その攻撃を、たった一人で受け止めた爆豪勝己に、レゼは少しだけ評価を改める。

 

「酷いな~爆豪君。今の威力、当たってたら私も痛かったよ」

 

「安心しやがれ。これから、もっと痛い思いをさせてやる。後からDVで訴えるなよ」

 

 ようやく身体が温まってきた爆豪。スロースターターの彼の本領は、ここからだ。

 

「ふふ、エンデヴァー事務所のみなさ~ん。助けてくださ~い。顔の怖いヴィランみたいなヒーローに襲われてま~す」

 

「けっ。どんな理由があるか知らねーが、全部吐きやがれ、レゼ」

 

 裏社会の事情など、爆豪が知るはずもない。それこそ、彼の同級生で一番詳しい裏ビティに聞けば、色々教えてくれるだろう。もちろん、タダではない。

 

「ふぅ~。それができれば苦労しないんだよね。爆豪君が一緒に逃げてくれるなら、全部教えてあげられるのに」

 

「平行線か。じゃあ、力づくで分からせてやるよ」

 

 だが、爆豪は思い知らされる。個性とは、使えば使うほど伸びる。ロシアの諜報員として厳しい訓練を耐え抜き、個性を極限まで鍛え上げ、さらに脳無として改造された彼女の実力は――爆豪の何歩も先を行っていた。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 神代真一たちは、遠く離れた高台からエンデヴァー事務所付近での大乱闘を眺めていた。レゼの腰の入った拳は、爆弾の個性を併用しており、爆豪を天高く吹き飛ばす。人間なら木っ端みじんになる威力――だが、爆豪は爆破の個性を持つ。同種の性質ゆえ、五体は残っていた。

 

「爆破に耐性があるって、もはや人間と呼べるのか疑問ですね。いくら個性で防いだとしても、原形をとどめている時点で彼も化け物ですよ」

 

「ねぇねぇ、神代君。なんか、すっごく被害が大きくなってない?建物とか道路とか、ガラスが割れて市民にも被害出てるよ」

 

 葉隠透が市民への被害を心配する。

 

 爆弾と爆破――衝撃による周辺被害は甚大だ。だが、こういう時のためにヒーローは“クソ高い保険料”を払っている。泣くのは、保険会社だ。

 

「いいえ、それこそヒーローたちの仕事です。税金で飯を食っている以上、避難誘導や人命救助は頑張ってもらわないと。幸い、まだ死者は出ていません。それに今日は花火大会です。運がいいことに、彼らの爆発も花火と勘違いする人が多いでしょう。……凄まじい花火ですがね」

 

「でも、お祭り会場に駆けつけたヒーローが3人いたよね?」

 

「大丈夫です。死傷者は出ていません。巻き戻し――素晴らしい個性ですね。死んでさえいなければ、何でも直せる。彼らが失ったのは、車一台だけ。まぁ、保険で何とかなるでしょう」

 

 半殺しどころか死にかけていたが、神代壊理の“巻き戻し”によって一命を取り留めた。現在は“記憶障害”という体裁で病院に隔離されている。

 

………

……

 

 個性の深化――それは、死にかけた時に発動する。より深く個性を理解し、強くなる。神代真一も、ナイフで刺され死にかけるたびにこれを経験してきた。爆豪も、レゼの爆弾の個性により死にかけたことで、個性が深化した。

 

 全身の毛穴から放出される汗を起爆剤にして、超スピードを獲得。さらに、スピードの情報処理により、個性の威力も爆発的に跳ね上がった。

 

「嫌ですね。まるで漫画やゲームの主人公みたいじゃないですか。で、ラグドールさん。その目で、しっかりとレゼさんたちを捉えましたよね?」

 

「えぇ、もちろんだニャン。壊理ちゃんのおかげで個性も戻ったし、AFOさんから追加で個性ももらったし、年下の男の子と愛人になったし、神代家の一員にも迎えられたし……人生って何があるか分からないわね」

 

 神代壊理の“巻き戻し”は、すでにAFOにとって手に入れるに値するレベルに達していた。明日にも、この個性はAFOの手に渡り、魔王の完全復活が完了する。これにより、日本政府は兼ねてよりAFOにオールインしていた恩恵を受けることになる。

 

 各国もその事実を知れば、日本はかつてない好景気を迎えるだろう。

 

「おやおやおや、緑谷君。痴話喧嘩に無関係な人が参戦するのは、良くないと思いますね。……仕方がない」

 

 神代真一は、待機している裏ビティに連絡を入れる。

 

『こちら裏ビティ。神代論理次官、どうしました?』

 

『痴話喧嘩に乱入した君の“彼氏”……邪魔なので、どうにかしてもらえませんか?』

 

『私とデク君は、まだそんな仲じゃ~。でも、私じゃ緑谷君を止められ……』

 

『ますよね? 大丈夫です。彼はOFAの継承者です。肉体の丈夫さはオールマイト並みですよ。あなたが必殺技でライダーキックでも決めて、数キロ先まで吹っ飛ばす。それだけでいいです。でないと、ハス太の力で彼を止めることになりますよ』

 

 並の力では緑谷を止められないのは事実。OFA継承者として、歴代個性を使えるようになり始めた彼を止めるには、殺す勢いが必要になる。

 

 裏ビティは、裏世界の住人として、第六世代の特異点――神代ハス太の力を見せられていた。裏切らないようにという“楔”でもある。それを知った上で、どの選択肢が正しいか判断できるようにするためだ。

 

 裏ビティたちが雄英高校に入学する前、日本のすぐ隣で大事件が起きていた。それは、隣国が「一つの中国」のために台湾へ軍事侵攻を開始したこと。当然、これは対岸の火事ではない。台湾を足がかりに、周辺国家への軍事圧力を高めるのは明白だった。

 

 中国の人口は日本の10倍以上。つまり、エンデヴァークラスの強個性持ちが10倍いるということ。その猛者たちを大量動員した軍隊が侵攻を開始した数時間後――全員が海の藻屑となる大惨事が発生した。

 

 当時の映像には、深海から緑色の巨大な化け物が現れ、すべてを飲み込む様子が記録されていた。

 

 クトゥルフ神話の“ダゴン”。それが、その化け物の正体だった。

 

 神代真一は、日本政府の要請で神代ハス太の第六世代の力を解放し、隣国に大打撃を与えることに成功した。しかもその事件は、台湾が中国に大打撃を与えたことになっており、日本に調査の手が及ぶことはなかった。台湾には“世界最強格のヒーローがいる”ということになっている。

 

『私、頑張る! 絶対にデク君を止めてくるから』

 

『期待していますよ、裏ビティ。あと、変装は忘れずに』

 

………

……

 

 個性を深化させているのは、爆豪や緑谷だけではない。裏ビティもまた、触れた物を連鎖的に無重力にする個性を体得していた。重量制限というリミットから解放され、彼女が触れた物質はすべて地球の自転から切り離され、その場に“取り残される”。

 

 恐ろしい個性へと進化していた。

 

 さすがは、AFOの最側近で“矛”と呼ばれるだけはある。“盾”のギガントマキアと双璧をなす――いや、あのマキアですら彼女の攻撃にどこまで耐えられるかは未知数だ。

 

 それから少し後、謎の女性が「PLUS ULTRA!!」と叫びながら、緑谷を遥か後方へ蹴り飛ばした。その吹き飛ばされた緑谷を、さらに抜かす勢いで移動する裏ビティ。彼女専用のコスチューム――《アーマード裏ビティ》は、音速にも耐えられる肉体へと彼女を強化していた。

 

 このスーツは、AFOが彼女のために用意したもの。各国に伝手を持つAFOが、メリッサ・シールドが開発したスーツデータを流用して製造させた。

 

 本当に人の嫌がることをやる天才――それがAFO。その裏ビティの姿を、いつオールマイトに見せようかと、今から楽しみで眠れないほどだった。

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 体術、個性の扱い――どれを取っても、レゼは爆豪の上を行っていた。個性においても、爆破の上位互換とも言える“爆弾”。爆豪も個性の深化によって徐々に差を詰めていたが、まだ遠い。だが、そんな彼女に対して、爆豪が確実に上回るものが知恵と気合と根性。

 

 そして、賭けに出る覚悟。

 

 ジリ貧で負けるわけにはいかない爆豪は、ある手段を選ぶ。

 

「諦めなよ、爆豪君。諦めてさ……君の遺伝子を私に頂戴」

 

「ふざけんな。何が遺伝子だ。俺はまだまだ戦える。そっちこそ火力が落ちてきてんぞ。さっき確実に吹き飛ばして足を復元までしやがって……複数個性持ちが多すぎんだろ。脳無かってんだ」

 

「あぁ~、そっか。爆豪君ってまだ私の正体知らなかったんだね。その通りだよ。私はロシアの諜報員で、複数個性を持つ“ロシア産の脳無”でした~。パチパチパチ……」

 

「そういうことかよ。ようやく合点がいった。さっき、デクの野郎を連れ去った謎の奴。見覚えのある個性だった。姿形は変えてもな。そして、脳無繋がり……何も知らねー顔した奴ほどやべーってのは本当だったんだな」

 

 爆豪の周囲に、小さな爆発がパチパチと起こる。

 

 全身から発汗し、それが外気に晒されて爆発していた。そして、その威力を最大限にまで高めることで、人間の反応速度を超えた移動を可能とする。

 

 彼は掴んだ。痛みによる誘爆のタイミングを。機会を狙う。チャンスはそう多くない。

 

「ねぇ、諦めて遺伝子を渡す気になった?大丈夫だって、最高の思い出にしてあげられるように頑張るからさ。それとも、まだ諦めない? まだ、私のことを助けられるとか思ってたりするのかな?」

 

「あったりめーだ。ヒーローに不可能なんてねーんだよ」

 

「……無理だよ。君が思ってるほど、国は甘くないんだよ。ロシアの諜報員ってさ、なんで外国で捕まったって話を聞かないか知ってる?みんな、裏切ったら個性で死ぬように仕組まれてるんだよ。知らなかったでしょ?」

 

「けっ、いけすかねー発想だな。イレイザーヘッドってのが日本にはいる。抹消の個性持ちだ。俺の担任だ。そいつに頼めば、その仕込まれた個性も消せる可能性がある」

 

 個性由来の裏切り防止ならば、個性抹消でどうにかなるのではないか――爆豪はそう考えた。抹消という“チート個性”を使えば、不可能ではない。ただし、それは常時イレイザーヘッドが彼女を見張っておくなど、現実的でない条件が満たされればの話だ。

 

「無理なの分かって言ってるよね。そんなの、君たちのことを調べた段階で考えたよ。抹消の個性は、発動した後の個性は消せない。それこそ、一度死んだり、個性ごと消失でもさせない限り、リセットはできない」

 

「オーケー。じゃあ、両方試せばいいんだな。身体も温まった。準備も終えた。レゼ、てめーは、水中でも爆発できんのかぁぁ!」

 

「えっ、はやっ!」

 

 海中へのダイブ。これこそ、爆破系個性を封じる最適解に近い。酸素がない空間では、爆発の威力は極めて落ちる。さらに、生きて呼吸する必要がある人間にとって、水中は活動領域ではない。

 

 爆豪は、レゼと過ごす中で、彼女が“呼吸する人間”であることに気づいていた。USJの脳無のような存在なら分からなかったが、彼女には“息”が必要だった。ならば、水中に押し込めればいい――それが爆豪の答えだった。

 

 水中から逃れようとするレゼを、爆豪は抱きしめたまま離さない。意識が尽きるまで、彼は彼女を離さなかった。

 

 意識が薄れる最中、彼の手を誰かが引っ張るのを感じた。

 

………

……

 

 翌朝の浜辺。

 爆豪とレゼを水中から引き揚げ、必死に浜辺まで泳いで辿り着いた緑谷は、力尽きて砂の上に倒れ込んでいた。その横で、レゼが目を覚まし、状況を確認する。生きている。それだけでなく、何の拘束もされていない。

 

 ほぼ同時に、爆豪も目を覚ます。

 彼は立ち上がり、スマホを探す。裏に伝手がありそうな女生徒に連絡を取ろうとしていたが、肝心のスマホが見当たらない。緑谷の服から漁ってみるが、彼も持っていなかった。

 

「くっそ、使えねーな。デクの野郎……」

 

「……ふ~ん。その子と仲いいんだね」

 

「うっせぇ。腐れ縁だ。……一緒に逃げてやる」

 

「No.1ヒーローの夢は、いいの?」

 

 爆豪は、少し考える。

 

「俺がお前のNo.1ヒーローになってやる。それに、お前を逃がしたらババアに殺されんだよ」

 

「ははは、なにそれ。口説き文句でも、他に色々あるでしょう。……ねぇ、少しだけ目をつぶって」

 

 爆豪が目をつぶると、レゼに顎を殴られて脳震盪で倒れる。

 

「て、てめぇぇ……なにを……」

 

「もしかして、私がまだキミを本気で好きだと思ってるの? キミに会ってからの表情も、頬の赤らめも、全部嘘だよ。訓練で身につけたもの」

 

そのまま、レゼは砂浜を歩き、町の方へと向かっていく。

 

「じゃあ私は、逃げるから」

 

「待てよ。待てって言ってんだろ……今日の12時に、いつもの喫茶店で待ってるからな。必ず来やがれ。いいな!!」

 

 レゼは振り返ることなく、そのまま姿を消した。

 




次で閑話は終わり予定。

超常解放戦線とヒーロー達との激闘だーーー!!

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