H・EROアカデミア   作:新グロモント

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58:異能解放戦線6

 ヴィラン連合および異能解放戦線との戦いにおいて、山荘での戦闘はヒーロー側の勝利に終わった。

 

 逮捕されたヴィランは合計50名。行方不明者は3万人以上、薬物中毒者は1万人を超える。ヒーロー側の死傷者も100名を超えていたが、圧倒的多数を相手にした戦果としては“大勝利”と呼べるものだった。

 

 しかし、薬物中毒者の多くは現実と夢の区別がつかず、神代コナンの個性によって狂気に汚染され、半数以上がそのまま自殺。実に“経済的に優しい事故”が発生した。他の者たちも病院への入院予定はない。

 

 テロリストかつ薬物中毒者を受け入れる病院など、現実にはほぼ存在しない。しかも支払い能力がないため、誰も受け入れたがらない。本来、逮捕されたヴィランは警察に引き渡されるが、警察側は「これはヴィランではなくテロリストだ」として、引き取りを断固拒否した。

 

 そこで、あるヒーローが“名案”を思いつく。

 

「こいつらをここに置いていこう。少し冷静になってきたんだが、俺たちもこのままじゃヤバい。良くてタルタロス行きだ。こいつらが生きている限り、生きる証人だ……だったら、山荘でヒーロー側が負けたことにして、政府に後を引き継いでもらおう。そうすれば、こいつらだって日本政府が作戦失敗の後始末をするだろう。一か八かの賭けになるが、ここでの出来事は全部“政府がやったこと”にすれば、俺たちの責任はこねーんじゃねーか」

 

「賭けだな。確かに、それでいけるかもしれん。だが、無理でも押し通さないと……」

 

 冷静さを取り戻し始めたヒーローたち。流石に“殺しすぎた”。

 一人二人なら乱戦での事故として処理できるが、数万人規模では通らない。生き証人も、この場合は“邪魔”でしかない。ヒーローとしての功績より、今は“未来”を取るべきだ――そうプロヒーローたちは判断した。

 

 もちろん、そんな考えに反対する者もいた。だが、「今の生活を捨ててまで正直に話す必要があるのか?」という現実が重くのしかかる。だったら、日本政府が引き継ぎ、“彼らがやったこと”にする方が合理的だ。

 

 作戦本部や後方にいるヒーローたちは、この悲惨な最前線を知らない。だからこそ、ギリギリ誤魔化せる。デトネラット社による電波妨害もあり、すべてを知る者は“現場”だけだった。

 

 彼らは、今の生活や立場を守るため、決意する。

 

「作戦失敗!! 作戦失敗!! 敵は違法麻薬を大量に散布しており、被害が拡大している。すでに我々側に100名以上の死傷者が出ている。重症者などを含めればその倍はいる。日本政府に作戦を引き継ぐことを要望する」

 

 その“勇気ある決断”。

 

 確かに、人としては間違っていない。だが、その結果――血税で支えられているヒーローの価値は“紙屑”となる。高い税金で“うまい飯”を食っている連中が、決死の作戦を“失敗”するなど、許されるべきことではなかった。

 

………

……

 その連絡を受けた日本政府。首脳陣はため息をついた。

 

「まさか、国内で再び秘匿兵器を使う日が来るとは……」

 

 だが、兵器とは倉庫にしまっておいて嬉しいものではない。特に、BH爆弾は“ナマモノ”だ。消費期限が尽きる前に使用せねば、維持費が無駄になる。

 

 当然、その連絡は神代真一にも届く。

 

 政府の連絡網から情報を得た彼は、首を傾げる。裏ビティからの情報では、山荘ではヒーロー側が絶対的優位を誇っていたはず。そろそろ制圧が終わる頃だったのに、なぜここにきて“作戦失敗”なのか。

 

 AFOが介入したかと思い確認したが――スマブラ中だった。

 

 まさか、ヒーローが“我が身可愛さ”に山荘の悲惨な状況を“日本政府の暴挙”にすり替えようとしているなど、想像の遥か斜め下だった。

 

 だが、すでに日本政府が動いた以上、止まらない。三分で、すべてが消し飛ぶ。

 

 神代真一は、爆豪に電話する。

 

『爆豪君。今って、もしかして山荘付近?』

 

『あぁん?誰かと思ったら、神代か。電話番号教えてねーのになんで知ってるかは、この際どうでもいい。……その付近で避難民の誘導だ。ふざけんなよな、なんで俺がこんなことしなきゃいけねーんだ』

 

『あぁ、それなら運がよかったね……山荘から三キロ圏外まで三分以内に脱出しないと、塵も残らず死ぬよ。個性の覚醒・深化を遂げた爆豪君なら余裕だろう。あと、2分35秒。私を結婚式に呼ぶ約束を守りたいなら、すぐに離れてね。高度一万メートルから“何か”が落ちてくるよ。安心していいよ、裏ビティさんなら既に脱出済みだから』

 

『裏ビティ”さん”案件かよ。前線には、A組の連中が……クソがぁぁぁぁ。俺の個性なら、間に合う』

 

 通話が切れる直前、凄まじい爆音が響いた。だが、神代真一は気にせず通話を切る。

 

 山荘上空、高度一万メートル。

 Tier1のBH爆弾が、静かに投下された。その質量と加速度は、地上に到達するまでに空気を裂き、雲を消し、軌道上の衛星にまで影響を与える。爆豪は、A組の仲間たちを抱えながら、爆破推進で地表を滑るように脱出する。

 

 その背後では、山荘が光に包まれ、音もなく消滅した。

 

………

……

 

 その頃、雄英高校では――オールマイトが、皆の無事を祈っていた。

 

 かつてはNo.1ヒーロー。今は引退し、教職に就く身。塚内警部のように情報をリークする者もいない。力も、伝手も、情報網もない。

 

 それが“普通”であることを、彼は少しずつ理解し始めていた。だが、理解と納得は別物だ。

 

「情報がないなら、手に入れればいい。私には、エルクレスがいる。メリッサ・シールドが作った、最高のAIだ」

 

『エルクレス。メリッサ・シールドに連絡を取れるか?そして、日本のヒーローたちが行っている大規模作戦の映像が欲しい。頼む』

 

『オールマイト。それは不可能です』

 

 オールマイトは首を傾げる。天才メリッサと最先端技術の粋を集めたAIが、“不可能”と言うなどあるのか?

 

『それは、犯罪行為だからか?』

 

『いいえ。現在、その作戦が行われている現場に、私の同型機が存在しています。ハッキングは不可能です。ADA(エイダ)――彼女は、過去に流出した私のデータを元に開発されております。同型機は、アーマード・裏……ガガガガガ。ハッキングを受けたため、ネットワークを遮断してスタンドアローンモードに移行しました』

 

 オールマイトは、言葉を失った。

 

 切り札であるはずのエルクレスが、現場に“同型機”がいると言う。しかも、それがヴィラン側にある可能性が高い。想像できる範囲は、そこまでだった。

 だが、資金と技術力によって完成されたアーマード・裏ビティは、エルクレスを上回る性能を持っていた。そして、その搭乗者が――自分の教え子であるなど、想像の遥か斜め上だった。

 

 こうして、オールマイトが蚊帳の外にいる間にも、現場では死人が増え続け――そして、山荘は、完全に消滅した。




裏ビティ・オリジンでもどっかでやりたいな。

さて、いい感じの戦力が削れてきました!!
そろそろ決着させて、アメリカのNo.1ヒーローの個性が欲しい。

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