H・EROアカデミア   作:新グロモント

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59:異能解放戦線7

 死柄木弔の復活。

 寝起きの悪い彼は、あたりを見渡す。そこには、ヴィラン連合の面々と、黒い鎧を纏った女――裏ビティの姿があった。

 

「……あ~、イライラする。ドクター、起こすならちゃんと起こしてくれよ」

 

「弔よ!! よく無事じゃった。今は、それどころではない。ここにヒーロー達が攻めてきたんじゃ。体は完成前じゃ……80%。儂が不甲斐ないばかりで済まぬ」

 

 その完成度を聞いた死柄木は、頭を抱える。

 

 本来なら100%で目覚めるはずだった。この情報が漏れたこと自体、ドクターの隠蔽力を考えればあり得ない。つまり――内部に裏切り者がいる。

 

「わりーな、ボス。俺がホークスにここで強化中って話しちゃった」

 

「……トゥワイス。お前は、口が軽すぎだろう。まぁ、終わったことをとやかく言うつもりはねぇ。目覚めたばかりの準備運動には、ちょうどいい。お前らも働けよ。それと、そこの黒い女も。たぶん、マキナと同類だろう。お前からは、先生と同じ空気を感じる」

 

 その言葉に、裏ビティは心底ショックを受ける。

 自分は裏家業に染まりながらも、ヒーロー側だと信じていた。だが、そう思われても仕方がない。わずか半年で裏世界に名を轟かせ、ヴィラン連合を無傷で救出し、蛇腔病院まで運んできた。その腕前は、全盛期のオールマイトに匹敵する。

 

『いや~、私はただのタクシー代わりでして~』

 

「はぁ~?働けよ。お前、そこら辺のヒーローより強いだろう。それとも、ここで本名で呼んでやろうか?わかるよな?俺が優しさで名前を呼んでないことを」

 

 仕事が終わったので逃げようとする裏ビティ。

 しかし、パワハラ上等の死柄木弔からの“熱いデートのお誘い”は回避不能。しかも、目の前にはイレイザーヘッドがいる。

 

 だが、それはチャンスでもあった。

 

 死柄木が不完全とはいえ復活した今、ヒーロー側の勝機は極めて薄い。この場でイレイザーヘッドを生存させるには――裏ビティが“ボコボコにして地平線の彼方まで飛ばす”しかない。

 

『殺しませんからね!! ここは狭いので、とりあえず地上に出ましょう』

 

「俺は構わないぜ。地上に出るなら、ここら辺を吹き飛ばしてやろうか」

 

 裏ビティが壁に触れ、指をパチンと鳴らす。

 

 触れたものすべてを無重力にして地表に浮かび上がらせる。その力は地下施設に触れているヒーローたちにも作用する。まさに規格外の能力。その気になれば、宇宙空間まで全員を埋葬できる。

 

 イレイザーヘッド対策も忘れない。

 彼の視界を遮るようにアーマーのシールドを展開し、姿を見せないようにする。

 

 地下施設が丸ごと地上に浮遊する様子は、まるでジブリのラピュタ。空に浮かび上がり、地上が遠くなるのを感じたヒーローたちは慌てる。個性で飛べない者にとって、この高度から落とされれば死は確定。

 

 しかも、裏ビティが死ねば、この質量は地上に落下する。抹消で個性を消しても同じ。合理的に考えて、最悪の展開だった。

 

「この空間でヴィラン連合と戦うことになるとは……合理的に考えて最悪だ」

 

「はははは、お前って最高にえげつない方法を使うな。気に入ったぜ。俺らよりヴィランやってるぜ。これでヒーローの誰もお前を攻撃できねーんだから。どんな育ち方したらそんな発想できんだよ」

 

『違っ、そんなつもりじゃ……』

 

 ヒーロー側よりヴィラン側に評価される裏ビティ。正しい評価であり、これが彼女の“価値”だった。

 

 そんな“友情”のような空気を許せないトガヒミコが割り込む。死柄木には悪いが、トガにとって裏ビティは“恋人候補”。彼女の野望は、緑谷と麗日に挟まれて幸せになること。世間では受け入れられないが、ヴィランなら実現できる――それが彼女の生きる目標。

 

「ダメですよ、弔君。そんなに誘っても、お茶子ちゃん(・・・・・・)は私の物なんですからね。譲りませんよ」

 

「……お前、俺の気遣いを無駄にすんなよ」

 

 頭を抱える死柄木。

 

 裏ビティには、表側でも立ち回る便利な駒として期待していたが、駒が一つ消えた。

 だが、それ以上に驚愕していたのは――イレイザーヘッド。この作戦において、山荘側にいたはずのウラビティ。物理的な距離、個性の特性から考えても、移動は不可能。

 

 聞き間違いであってほしかった。

 

「麗日なのか……本当に……。トガヒミコの変身やトゥワイスの二倍じゃなく……本当に。お前ら、俺の生徒に洗脳でもしたのか」

 

『せ、先生。た、助けて……体がいうことを……』

 

「誤解だぜ、イレイザーヘッド。って、こら裏ビティ!! お前なんで急に洗脳されたフリしてんだ。さっきまで何もなかっただろう。まぁ、仕事さえしてればそれでいいや。お前がイレイザーヘッドを抑えろよ。落ち着けってイレイザーヘッド。俺らは、ヒーローたちと違って、まっとうなヴィランなんだぜ。洗脳系個性使わない、家族を人質にも取らない……狙う時はだいたい正々堂々と正面から戦ってきたじゃねーか」

 

 裏ビティの迫真の演技。

 

 洗脳に抵抗する雰囲気を出すため、頭を壁にぶつけ、苦しむような声を上げる。苦し紛れではあるが、もはや隠しきれる状況ではない。ここは、“洗脳されてました”ということで罪を擦り付けようとする浅ましいヒーローが誕生した。

 

「お茶子ちゃんて、意外と浅ましいんですね。でも、それも素敵!!それじゃあ、一緒にイレイザーヘッドを倒しちゃいましょう。他は、お願いします」

 

「しゃーねーな。俺は、エンデヴァー担当な。この時を待っていたぜ」

 

 ヴィラン連合とヒーローの雌雄を決する戦いが始まる。そして、その戦いと同時に――全国放送が始まる。

 

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