死柄木内閣が日本政府を牽引して、すでに8年が経過した。
その間、支持率は常に80%を超え、歴代最高の内閣と評されている。その評価の根幹には、ヒーロー業界を完膚なきまでに潰した功績がある。
この事例に倣い、各国でもヒーロー業界への公金注入問題が噴出。日本同様、ヴィラン役をヒーローが演じていた国家も少なからず存在し、国民の怒りが爆発。世界は、静かにヒーロー制度の再編を迫られていた。
そんな中、雄英高校ヒーロー科最後の世代――A組の同窓会が開催される。途中退学した神代真一と葉隠透にも招待状が届く。学生時代ならともかく、退学者にまで声をかける律義さは、A組の人柄の良さの証だった。
「会場はここで合ってますね、葉隠さん。いや〜、最近忙しかったんですが、何とか調整できてよかったです」
「えへへ、そうだよね。私は女子組とはたまに連絡取ってたけど、神代君はみんなに連絡先も教えてないじゃん。だから、私がまとめて近況報告してたよ」
中高時代の友達は一生物 -その言葉は、確かに真実だった。
神代も、メディアに露出している一部クラスメイトの情報は把握していた。中でも一番有名なのは……彼自身だった。会場に入り、懐かしい顔ぶれと挨拶を交わす。
「A組のみんな、久しぶりだね。1年の文化祭以来って人も多いかな」
「みんな、久しぶり〜!……って、どうしたの?そんなに驚いた顔して」
この8年で葉隠透は、個性のON/OFF技術を習得。「可愛い我が子に顔を見せたい」という一心で、個性が深化した結果だった。葉隠透の美貌は、10人いたら10人が振り向くレベルで美女だ。
「早かったじゃねーか、神代……法務大臣。戦後初の20代大臣とか、経歴も家系図も相変わらずおかしいだろ」
「爆豪君も久しぶり。制度を作る側になりたいって夢、叶えられて嬉しいよ。死柄木内閣のおかげで法案も制度もスムーズに通るし、本当にやりがいがある。それに爆豪君もすごいよ。日本で5人目のG級ハンター昇格、おめでとう。ハイエンド脳無を倒すなんて、そう簡単にできることじゃない」
徹底した管理社会。すべての国民を幸せにする制度は存在しない。だが、少数を切り捨てて大多数を守る――それが神代法務大臣の信条だった。
爆豪も今や、日本最大のエンタメ産業「モンスター・ハンター」の顔。AFO率いる変態個性持ちたちが魔改造した“死国”で、生死を賭けて戦う職業。ヒーロー業界が死んだことで、かつてのサポート企業もハンター支援に転向している。
爆豪とペアを組むレゼへの投げ銭は、世界累計100億円を突破。まさに、現代の英雄だった。ちなみに、ほぼレゼ当てへの投げ銭なのは周知の事実だが、誰も突っ込まない。
「当然だ。俺とレゼの個性が組み合わされば負けねー。……あとで子育ての相談に乗れや。反抗期で悩んでんだよ。お前、子沢山なんだからアドバイスの一つくらいくれよ」
「任せてよ。今じゃ10人以上いるからね。妊娠中の妻へのフォローも教えるよ……」
神代の身体に刻まれた刺し傷は年々増えていた。最近では、妻・愛人・彼女・セフレからも刺される事件が発生。
「まさかとは思うが、その頸動脈の傷跡が原因とかじゃねーよな。あと、歯形見えてんぞ」
「……壊理ちゃん、再来月出産なんだ。8年前の約束、覚えててさ」
約束を守らない大人は最低。だが、約束を守った結果、最低の男になることもある。家庭内リンチで死にかけた神代。流石の神代両親も、増え続ける孫の数に困惑し始めていた。
………
……
…
轟焦凍。
“地獄の轟家”と呼ばれた特番と、ヒーロー業界崩壊の煽りを受けた最大級の被害者。エンデヴァー事務所は死柄木内閣の手で1か月で閉鎖。サイドキックの退職金や残務整理に追われ、邸宅すら手放すことになった。
だが、親の罪は子の罪ではない。荼毘改め轟燈矢の手でエンデヴァーが死亡した時点で、轟家の崩壊は既定路線だった。
焦凍は、兄姉を守るため八百万家に婿入り。八百万百と高校卒業と同時に籍を入れる。名家である八百万家ならば、轟一家を匿うなど容易い事だ。
A組女子たちは背景を知らず、純粋な恋愛結婚だと思っていた。だからこそ、子供の写真を見て「可愛い」としか言えない。実際、可愛い。
子供自慢大会が始まる。未婚女子の心を殺す殺戮の場と化していた。
そして、最強の女――麗日お茶子改め、裏ビティさん。スターアンドストライプとの三度の激突を経て勝利し、個性をAFOに献上。今や国連にも出席するスーパーキャリア。神代ですら、彼女の機嫌を伺うほどの存在となっていた。
「そうでしたの。麗日さんもお元気そうで何よりですわ。お子さんは、おりまして?」
「そう!! そういう話題を聞いて欲しかったの。ありがとう、八百万さん!! 当然、写真も持ってきたよ。ほら、この子!」
その写真には、緑谷・トガヒミコ・裏ビティ・そして子供が写っていた。
「可愛いですね。それで、緑谷君とトガさん……どっちとの子供なのです?」
「「「………」」」
空気が凍る。そして、トガヒミコが答える。当然のことだが、彼女もA組の転入生であり立派なクラスメイトだ。だから同窓会に呼ばれる権利は十分ある。
「それが、分かんない!! DNA的には緑谷君だけど、個性的にはねぇぇぇぇ。どっちとの子供だろうね。私はどっちでもいいんだよ、お茶子ちゃん♡」
「いや、待って。ワンチャンあるから!日程的にはデク君の方が可能性高いからね!」
何がワンチャンなんだろうか、この場に居る誰もが思った。だから、仕方なく葉隠透は完璧な審査員を呼ぶことにする。
「じゃあ、神代君に判定してもらおう。子供とリアルタイム動画、繋げられる?」
「……やだ。葉隠さん、シュレーディンガーの猫って知ってるよね。箱を開けなければ、いつまでもデク君との子供なんだよ」
その答えで全員が察した。
爆豪が緑谷の注意を引きつけていたおかげで、彼には聞こえていない。さすが、裏ビティに恩がある男は違う。
だが、そんな箱など知る由もない神代真一。
「ふ〜ん、裏ビティさん。
その一言で、場の空気が一瞬にして凍りついた。裏ビティさんの顔が引きつり、拳が震える。神代真一は、にこやかな顔で話を続ける。
「どっちの子か知りたいなら、教えてあげようか?最近、壊理の一件で個性が深化してね。今じゃ、相手を見ただけで一親等までなら追えるようになったんだ。……でも、箱を開けるかどうかは、君の自由だよ」
そう言い残して、神代は男子組の輪へと戻っていった。
裏ビティさんは、今にも個性を暴発させて神代真一をこの場で亡き者にしようとも考えた。だが、葉隠透がそっとドミネーターを構えている。いつでも、裏ビティさんを物理的に止める構えだ。計測された犯罪係数は、AFOに次ぐ歴代2位。それでも、裏ビティさんはギリギリで踏みとどまった。
「神代の鬼・悪魔!! ちょっとは私にも優しくしろぉぉぉ!」
「嫌ですよ。だって、貴方……私のこと、好きになれないでしょう?私は、自分を好きになってくれる女性には優しい紳士なんです。それに、複数の異性と関係を持つなら、正直であるべきです。好きな人に嘘をつくのは、不誠実ですからね」
その言葉は、場にいたA組の面々の胸に静かに刺さった。
不誠実な関係は、いつか破綻する。それを避けるには、誠実であるしかない――その道のプロが、身体に刻んだ傷とともに語る“真理”だった。
「か、神代法務大臣……どうか、卑しい私を助けてください。デク君との関係をなんとか……」
「いや〜、実はその話、ちょっと聞きたいなって。この間ライブで知り合ったイケメンといい感じなんだけど、上鳴との関係もあるし……」
「みんな、ちょっと最低ねケロ。あ、私も実は……セルキーさんとシリウスさんと三角関係なのよ。なんか、お茶子ちゃんのところと似たような関係だと思っていいわ。神代君、アドバイス欲しいわ」
裏ビティさん、耳郎響香、蛙吹梅雨――そして、他の女子たちも、次々と“相談”を始める。これが、かつてHEROを目指していた者たちが、H・EROに目覚めた結果だった。
少年少女だったあの頃、彼らは「HEROアカデミア」にいた。
だが、時は流れ、彼らは大人になった。個性とともに、感情も、関係も、現実も深化していく。
そして今――彼らは「H・EROアカデミア」の住人となった。
ヒーローとは、誰かを救う者。
エッチとエロとは、人類を繁栄させる物。
その両方を経験した者達が、笑い、泣き、愛し合いながら生きていく。
それが、彼らの“卒業”だった。
長くお付き合いいただきました読者の皆様、最後までありがとうございました!!
暖かい感想があったからここまで走り切れました。
そして、平和的な最後で多くの原作キャラを幸せにできたかと思います。
ハッピーエンド最高!!
次回作は、全く予定がないため、少し休業予定です。
勢いとノリで走り切るのは流石に連続は厳しい。