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前回の更新からたいぶ時間が空いて申し訳ありません。正月休みを満喫してましたわ!……なんて言えたらよかったんですが色々あってメンタルやられてエタりかけてました。
ひけらかすような内容でもございませんが、後書きにでもちょこっとだけ乗せておきます。興味ない人は飛ばしてもらって大丈夫ですよ。
今回、ちょっと文字数多くなったんで区切ったんですが、ほぼ回想であまり話は進んでないかも…。
13
───開いた口が塞がらないとはこういうことなのだろうか?
眼前に広がる光景に…ふと、そんな思考が脳裏をよぎる。
私ことリンは、ビデオ屋の店長を兼任しながらパエトーンとして活動していき、伝説のプロキシとして様々な依頼や出会いを経験してきた。
本当に色々なことがあった……最近では市長からの依頼でこの衛非地区に訪れ、ここ数日は起伏の激しく忙しい日々を送っていたが、そのどれもが替えの聞かない充実した日々であった。
驚愕の連続でも、人はいずれ慣れる生き物だ。
肝を冷やす予想外な事態や息を呑むような展開、そして住み着いたAIの
だが驚きの連続に晒される日々のおかげでそんじょそこらのプロキシなんかには負けないくらいには成長を重ね、それ相応の動じない胆力というものを身につけて来たつもりだ。
いや、“つもりだった”と言ったほうが正しいかもしれない。
そんな自分も成長が足りなかったというべきか、それとも発展途上であり自分には成長の余地がまだまだあるのだと喜ぶべきなのか、その答えは私にはわからない。
心臓に毛が生えている、なんて言わないがそれでも大抵の物事には動じないと思われていた私の声音は思っていた以上に動揺を隠せず、震えていることが自分でもわかった。
これではもはや『胆力(笑)』もいいところだ。
ぷるぷる、と震えた手を向けて問う。
指先が示す先にはここ数日の間に、共にラマニアンホロウや衛非地区の危機に立ち向かい苦楽を一緒にした銀髪の青年の姿がある。彼から発せられた言葉に、聞き間違いかともう一度問いただす。
そんな私の様子に、頭の上に疑問符を浮かべているのが幻視出来そうな姿でファイノンは不思議そうに首を傾げている。
「え、えっと……ファイノン、いまなんて? 聞き間違いかもしれないから、もう一回お願いしてもいい…?」
「ん? 構わないよ、それならもう一度紹介させてくれ。この子は浮波柚葉、悪戯好きでちょっとお転婆なところもあるけど可愛い自慢の妹さ! 君やアキラくんたちと一緒に、この子の交友関係を広げていけると僕も嬉しいかな」
「……え、えええええええぇぇぇぇぇ!!!?」
「驚いた、すごい声量だ。リンは朝から元気だね!」
どうやら聞き間違いなどではなかったらしい。
宇宙の真理に気がついてしまった猫のような表情を浮かべること数秒、驚愕から意識が戻って来たことにより脳が再起動を開始する。
いもうと……?
い、いいい妹さん!?
───え、嘘でしょ!? 妹さんがいたのぉ!!??
初耳なんですけどぉ!?
にこやかな表情で嬉しそうに隣に居る赤毛の少女を紹介するファイノンの姿に、思わず喉が開くほどの声を張り上げて驚愕してしまう。バッ、と赤毛の少女へと顔を向ければ彼女は私の視線に驚くように、一瞬ビクッと肩を跳ね上げていた。
向けられる好奇な視線と自慢げに語るファイノンからの紹介に何処か恥ずかしそうにしている、ボリュームのある特徴的なおさげを揺らす赤髪の少女。
謎の沈黙に包まれる。
ファイノンの隣で沈黙状態にきょとん、としていた赤毛の少女は私と彼の姿を交互に見ると、やがて何かを察したように納得した表情を浮かべた後、頭を抑えて呆れたようにため息をついていた。
コロコロと表情を変える少女。
そしてその傍にはこちらを見守りながら状況を察した真斗くん、私の隣には状況を理解できずオロオロとしている兎のシリオンの少女が困ったように立ち尽くしていた。
……あ、妹さんがファイノンの脇腹ド突いてる。
なんて綺麗なボディーブローだろうか。
不意打ち気味に喰らった一撃に悶絶しているファイノンを見下ろしながらシャドーボクシングをしている妹さんの姿と……いや、どうやら攻撃を仕掛けた彼女のほうもファイノンの腹筋の硬さに拳を痛めたらしい。手首を抑えて蹲っている。
そんな2人の側で、やれやれと言わんばかりの身振りをする小さなたぬき……なんとなく2人の兄妹としての関係性が垣間見えた気がする。
───この状況を説明する為にも、私にとって予想だにしなかった衝撃的な出会いから時刻は少しだけ巻き戻る事となる。
それは数日前のことだ。
以前、ラマニアンホロウで衛非地区の住人たちを巻き込み讃頌会が引き起こした事件を覚えているだろうか。ファイノンや師匠たちと共に讃頌会の企みを打ち砕いたあの出来事から数日経ったある日のこと。
ここ最近は適当観で術法などの修業をこなして、師匠や姉弟子たちのお手伝いしていた時のことだ。突然、適当観へダミアンから晩餐会の誘いが届いた。
『お弟子ちゃん、ダミアンの野郎は覚えてるよな。ほれ、ポーセルメックスが衛非地区を任せてた奴だよ…あいつから何が来たと思う? なんと晩餐会の招待状だ!』
『晩餐会の、招待状…?』
相談したいことがある、と真剣な顔でお兄ちゃんと一緒に話していた潘さんからそう告げられた時は、てっきりポーセルメックス絡みで裁判所から何か送られて来たのかとヒヤヒヤしてしまったくらいだ。
なぜこんなものが適当観に、なんて思っていたがどうやらコレはただの招待状ではないらしい。
話を聞くに、衛非地区ではTOPS主導で2週間にわたる「安全調査」が行われることとなったらしい。それにあたって、ポーセルメックスは各関係者をこぞって招き入れ晩餐会を開くことにしたようだ。
いきなりどうしてそんな事を、と疑問が浮かんだがそんな私の様子にお兄ちゃんが補足するように経緯を説明をしてくれた。
『讃頌会が衛非地区で起こした騒ぎは、TOPSの圧力で大々的なニュースにこそならなかった。けれど、市内ではあれだけの騒ぎはとっくに知れ渡っているんだ』
『
お兄ちゃんの言わんとしていることは理解できた。
けど、それとこれが……安全調査と晩餐会という話題に何の関係があるというのだろうか? 疑問に疑問が重ねるような状況に、今度は潘さんが補足を入れてくれた。
『はっはは! それはだな、お弟子ちゃん…大々的に調査する以上は、衛非地区に関係者がたくさん来る、ポーセルメックスもホスピタリティってもんを見せにゃならんわけた』
……なるほど、
その言葉の意味を理解して納得する。
2週間に渡るその「安全調査期間」の第一手として、TOPSの大掛かりな安全意識の
以前お兄ちゃんが釈淵さんから聞いたところによると、例の件が終わってすぐダミアンから豪華な謝礼も届けられたらしい……最も、師匠はそんなものは受け取らなかったらしいが。
師匠の方針としては、雲嶽山とポーセルメックスは
とはいえ、私たちが衛非地区で活動する以上はダミアンからの誘いも無下にするわけにもいかずお兄ちゃんと潘さん、それから私の3人は雲嶽山の関係者として情報収集も兼ね一応ダミアンの顔を立てる為にも晩餐会に出席することになった。
師匠や釈淵さんは不在で適当観におらず、大姉弟子の福福は算術の不合格で補習の真っ最中らしく泣く泣く参加できなくなってしまったようだ……どうやら雲嶽山では学業も疎かにはできないらしい。
因みにファイノンは緊急で用事ができたことと、自分は雲嶽山の正式な関係者ではないので遠慮しておくよと断られてしまった。
『え、ファイノンは一緒に行かないの?』
『僕も興味を惹かれないと言えば嘘になるけど、ダミアンさんが送った招待状はきっと…いや、あくまで
『部外者だなんてそんなこと……!』
『ははっ、すまない…言い方が悪かったね。もちろん、みんなが僕を受け入れてくれていることは理解しているし嬉しいよ。けど今回は僕のことは気にせず晩餐会を楽しんでくるといい、面白そうな土産話なんかも期待してるよ』
……いつも一緒に行動していたこともあり気にしていなかったが、確かにファイノンは雲嶽山の修行者ではないということをすっかり忘れてしまっていた。
『これはこれは、雲嶽山の先生方。潘先生と、それに…見習いのお二人にご出席いただけるとは、主催者として光栄の至りでございます』
『なんだい、ダミアンさん。師匠の出席が叶わなかったことに、失望の色があるようだね?』
『ハッハッハ…何を仰いますやら。遥か雲嶽山より、儀玄先生が信頼できるお弟子さまを遣わしてくださったのです。どこに不満や失望がありましょうか』
……ということで、私たちはパーティー会場へと向かうことに。何やら胡散臭いダミアンに出迎えられ、そこにはTOPS上層部の人間たちも多く参加していた。それだけではなく、軍のゲストもこの晩餐会に出席しているらしい。
ダミアンからの解説を耳に入れながら周囲を見渡せば、まるで輪から外れるように少し離れた所に立つ、黒い衣服に身を包んだ綺麗な女性が周囲には目もくれず妖艶な雰囲気を纏い静かにグラスを傾けてお酒を嗜んでいた。
その綺麗な女性は、どうやら今回軍を代表して来たイゾルデさんというらしい。軍属ではなく、『
ダミアン曰く『軍の主要人物』ではなく、あくまで『軍関係者の民間人』として絶妙な立ち位置の人間を参加させることで、
輝磁を巡って軍とTOPSは
それからしばらくしてマイクから声が響き、この晩餐会の主催者が登場した。
その主催者というのもポーセルメックス・グループ共同CEOで最高責任者のルクローとフェロクスである。
こちらもダミアン曰く、どうやらこの2人は水面下で権力争いを繰り広げているらしい。ダミアンの言葉を全て鵜呑みにするわけではないが、晩餐会に招待されたゲストたちの話を聞くに容易に想像もつく。
そんなダミアンはというと2人の権力争いに巻き込まれないよう中立を維持していたようだが、中立を維持する以上はさらなる昇進も難しいらしいようで、なにやら板挟みの状態にあるようだ。
あんな2人を上司に持つなんて、考えただけでも胃が痛くなりそうだ…。
しかし晩餐会自体は終始和気藹々とした雰囲気。
この場に集まった彼らは安全調査や讃頌会も気にも止めず『輝磁の供給をどうやって元に戻すか』にしか関心がないようであった。
……ひとまず、これ以上の難しい話は無しにして今は美味しい物を食べて空腹を満たそうと決める。
ポーセルメックスの側の奢りで食事をするなんて滅多にない機会だ、潘さんなんてウェイターに直接注文してお持ち帰りの手配までしていたくらいだ……いや、注文し過ぎだよ潘さん。
お兄ちゃんと共に会場を回ろうとした時だ。
私たちの横を通り抜けた少女とスタッフがぶつかった際に落としてしまったと思われる物を、お兄ちゃんが足元に落ちていた名札を拾い上げ持ち主へと手渡した。
『すみません。落としましたよ』
『?……あっ、ありがとう。助かったのだわ』
『いえ』
『わぁ、調査監督チームの人? 同い年くらいなのに専門家だなんて〜!』
『……っ! 失礼、その、用事があって』
自分たちと年齢が近そうなことに驚きながら、気安い雰囲気で話しかけたつもりだったのだが、馴れ馴れしかったのだろうか…少女は表情を強張らせたままそそくさと背を向けて離れていってしまった。
それから、それを近くで見ていたイゾルデさんから話しかけられ、意味深な呟きと共に調査チームの話を伺った後、彼女と別れを告げてその後豪勢な夕食に舌鼓を打った…。
それから晩餐会が終わった深夜、皆が寝静まるような夜の帳に包まれた適当観にて、門を叩く切迫した音が眠りを遮ったのだ。
あまりの物音に微睡んでいた意識は覚醒して、こんな時間にいったい何がと部屋を出てみれば、私と同じように目を覚ましたであろうお兄ちゃんの姿もあった。
『おや、リンも起きていたのか…』
『うぅ、思いっきり叩き起こされた気分……今のドンドンって音、気のせいじゃないよね?』
『いや、気のせいではなかったよ。ちょうど潘さんが見に行く様子も聞こえたからね』
どうやら気のせいではなかったらしい。
こんな夜更けに適当観へ尋ねてくるなど、余程の急用に違いない。そう言って思案するお兄ちゃんへついて行くように、私も様子を見に行くこととした。
『…先生! 本当よ! 本当に、窓の外に光る物体がいたのだわ! これはタイムフィールドの名に誓ってもいいのだわ!?』
『あ〜コラコラ、誓うな、誓うな…潘先生はな、可憐なお嬢さんが健気にそういうことしてくるのにめっぽう弱いんだ! こんな夜中に適当観へ訪ねてきたんだ、別に嘘だと疑っているわけじゃないぞお嬢さん』
『私たちも来たよ、潘さん何かあったの…?』
『おぉ! いいタイミングで来てくれたなお弟子ちゃんたち! こちらにいる、タイムフィールドさんのお嬢さんなんだが、どうもお前さんたちに用があるらしいぞ』
正門へ向かうと、そこには困ったように来訪者へ対応する潘さんの姿と、縋り付くかのように怯えた様子の来訪者の姿があった。その来訪者の正体は、数時間前に晩餐会で顔を合わせたシリオンの少女。
───この時、私たちが出会った少女こそが調査監督チームの一員として晩餐会に参加している『タイムフィールド家』の御令嬢であるアリス・タイムフィールドとの本当の意味での邂逅とも言える瞬間だったのかもしれない。
『へ……なっ、あ、あの時の……あ、貴方たちが…「アキラさん」と「リンさん」…!?』
『えっと、ど、どうも〜…私がリンだよ。こっちがお兄ちゃんで、アキラって言うの。またあったね、あはは〜…』
『リン、その話題は深掘りしないでおこうか…』
……なんとも言えない気まずい再開であった。
それもその筈、晩餐会で顔を合わせたタイミングでは半ば逃げられてしまうような形で彼女とはまともな会話をする事もできずに終わってしまったから。
だがしかし、気まずい空気なんてなんのその、ここは私のパーフェクトなコミュニケーションで乗り切ろう。いままで意識していたつもりはないが、コミュ力が高そうなファイノンにだってその腕前を褒められたのだから!
数分後、アリスはこれまでの経緯を大まかに説明してくれた。
彼女いわくあの晩餐会の後、部屋で休んでいるタイミングで窓の外に正体不明の発光体を見たことにより、その恐ろしさからこの適当観へと駆け込んで助けを求めに来たようだ。
それにしても、まさかルーシーとアリスが知り合いだったとは驚いた。どうやら2人はセレスティア女学院の生徒で交友があったらしい。
ルーシーといえば、現在は郊外へ絶賛家出中で『カリュドーンの子』のメンバーと共に郊外でバイクを乗り回している剣呑で棘のあるお嬢様言葉が特徴で……うん、確かにご令嬢だった……。
いまでも2人は連絡を取り合っているらしい。
そしてルーシーのお墨付きということで、アリスは私たちに窓の外で見た未確認物体の正体を解き明かしてほしい……とのことだった。最初はポーセルメックスの人間に頼もうと考えていたらしいがそれはできない、というよりはしたくないらしい。
どうやら“訳あり”のようだ。
アリスが調査監督チームにいるのはタイムフィールド家の人だからって聞いたけど、『Fariy』に調べてもらったら彼女のおじいちゃんが病気でその代理としてアリスは来ているのだ。
何があったのかはわからないが、この子の様子からポーセルメックスに脅されているという可能性だってある。晩餐会の時もアリスのことを全然気にかけてなかったみたいだし、他のゲストと比べて待遇が違うのは明らかだった。
私とお兄ちゃんはアリスの頼みを引き受けることにした。
ルーシーのお友達が困っていると言うなら一肌脱ぐくらいなんて事はない、それに不安そうにこちらを見つめるアリスを見捨てるような真似は私にもお兄ちゃんにもできなかった。
……タイムフィールド家のご令嬢からの頼みごとということもあり、後ろにいた潘さんからの『絶対に引き受けるんだ』的な謎のプレッシャーがなんだかすごいことになっていたが。
まあ、そんなこんなあって、既に時間は深夜を過ぎていた事も含めてアリスには適当観の空き部屋に泊まってもらった。それから私たちは早朝に適当観の前へと集合して、昨夜アリスが宿泊していた場所のビルの下階へ向かい調査を開始したのだ。
───結論から言ってしまおう。
調査の結果で分かった犯人は小さな小動物だったのだ。その小動物物が残した痕跡、蛍光塗料によってできた動物の足跡を追い真相へと辿り着いたのだが……。
『この子よ! 逃さないのだわー!』
『こらー!待てーっ!!……あ、お店に入っちゃった!』
『昨日のイタズラはあなたの、しわ…ざ…』
『え? あれ、狛野くん……!?』
『んぁ?……あぁ、ったく……おい柚葉、客だぞー』
『りょ〜。いまいく〜……はーい、何をお求めですか〜? ……ありゃりゃ、やっぱりバレちゃった?』
犯人の小動物、おしゃれな格好をした狸を追いかけた先でそれが逃げ込んだ場所は衛非地区にある輝磁工芸品店だった。そこで思っても見なかった人物と出会したのだ、お店の入り口にはバイクの手入れをしていたと思われる駒野くんの姿があったのだ。
彼も一瞬、驚いたような顔をしていたが私たちに追われ逃げるように駆け込んで来た狸の姿に何かを察したようで店の区へと気怠げに声を掛けた。
そして店の奥から現れた赤い髪の少女こそが今回の騒動の主犯とも言える人物だったのだ。彼女はアリスの姿を見るなり、口元に弧を描いてイタズラがバレた子供のような表情を浮かべていた。
『そこの貴方! 貴方が、そこの狸の飼い主ということでよくて?』
『この子は釜之助。だから、かまちーって呼んであげて』
『……へ?』
『だーかーらー、ちゃんと名前があるの。その狸、なんて呼び方じゃなくてね。それと私は別に飼い主じゃないよ、私たちはただの仲間で、かまちーには首輪もついてないからね』
『そ、それは…、私としたことが、無礼だったのだわ……』
『ま、かまちー本人も気にしないって言ってるし。この話はここまで!』
『そ、そう…心使いに感謝を……って誤魔化されないのだわ!』
どうやら手強い相手のようだった。
私たちのほうが文句を言いに来たのに、なんでかアリスが宥められ謝るような流れへと会話が運ばれて行ってしまっている。それに随分と商売上手なようだ、危うく流されてアリスがお買い物をしてしまうところだった。
『昨夜は貴方とお仲間からのイタズラで、大変な迷惑を被ったのだわ!』
『え〜、ショック! かまちーの挨拶、気に入ってくれると思ったのに……』
『あ、挨拶…? 悪いけど、おっしゃってる意味がわからないのだわ』
『ん〜? わからないってことはないんじゃない。だって、先にイタズラを仕掛けたのはそっちだもんね。ポーセルメックスは徹底的に調査して御非地区のみんなを納得させる……そう言ったよね? でも結局、専門家で構成されるはずの調査チームには、何も知らないただの女の子が紛れてる……それっておかしいよね?』
『───!! そ、それは……』
鋭い視線に射抜かれたアリスは喉を詰まらせて俯いてしまう。
何やら険悪なムードになってきたことを察し、私もアリスの弁護の入ろうとしたタイミングだった。店の扉が開くと、外の様子を伺うかのように見知った相手が顔を覗かせて来た。
『2人とも何かあったのかい? 店の前が少し騒がしいようだけど、って……あれ? リンじゃないか。いらっしゃい!……それにしても朝早くからどうしたんだい、もしかして適当観のほうで何かあったとか』
『え、ふぁ、ファイノンこそ、どうしてここに……!?』
先程までの空気感は彼の登場によって掻き消された。
その見知った相手こそがファイノンだった。
いつもの白いコート姿ではなく、上着を脱ぎ襟を立てた黒いシャツ姿のラフな格好をした見慣れない青年の姿に驚いて目を丸くしてしまう。
そんな私の反応に、首を傾げていたファイノンだったがキョロキョロと周りを見渡した後、何かを理解したかのように外へ出てくると世間話でもするかのように会話を続けていた。
『はは、今日は家の手伝いをしようと思ってね』
『ここ最近は忙しくて顔を出せてなかったけど、いつも他の子達が店番を頑張ってくれているからね。こういう時くらい、偶には僕も兄貴分らしくというか、長男らしいことをしなくちゃね』
『そ、そうなんだ……なんでファイノンが店番を……ん? というか長男って……!?』
どこか嬉しそうに、そして照れ臭そうに語るファイノン。
───そして彼から発せられた言葉を咀嚼して、理解が追いついた事によって話は冒頭へと戻ることとなるのだ。
普段の頼れるお兄さん感のある雰囲気や、年下の子供へ接し慣れていたりと、その片鱗を感じされる仕草や言動などで『お兄ちゃんみたいな人だな』なんて思ってはいたが……まさか本当に兄妹が居て、リアルお兄ちゃんだったとは……!
※後書き、興味ない人は飛ばして大丈夫ですよ!
リアルで色々あってメンタルやられてエタりかけてました。
前書きでも言ったように、ひけらかすような内容でもないので事細かくは載せませんが、ちょうど更新が止まった時期くらいに身内が突然倒れほぼ植物状態というか、病院に運ばれ実質的な余命宣告を受けました。お見舞いに行ったり、家族の間で話し合いがあったり手続きしたりというかと、あっという間で色々ありました。
まあ、「あ、この人忙しかったんだな〜」くらいで思ってもらえれば大丈夫です! 気分紛らわしたいとかもあるんで、次回は早めに投稿できるように頑張りますわ!