パーフェクトイケメン救世主(偽)   作:七夕ナタ

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 大変お待たせしました。
 もう少し早く投稿したかったんですけど、無理でした(泣)
 言い訳は後書きにでも……!

 戦闘シーンバシバシやっていきたいけど、戦力差ありすぎて描写しにくいから難しいのよね。


 ps.ちょっとややこしくなりそうだったので、後半のシーン少し修正しました。




08

 

 

 そんなこんな現在に至る、というわけですね。

 

 

 「以上が僕がここに至るまでのことの経緯なんだけど、何か疑問や不明な点はあるかい? 言ってくれれば事細かく、とまでは言わないけどできるだけ質問へ答えられるようにするよ」

 

 「ちょ、ちょっとタイム……意外と情報量が多くて消化するまで時間がかかりそうっていうか、なんとなく理解は出来たけど……結局、ロア先生はなんでボコボコにされてるのさ?」

 

 「え、そうだな……暴力に頼るのは良くないと穏便に話し合いで済まそうとも考えたけど、どうやら向こうは拳で語り合いたいようだったからね。それならこちらも誠意を示して穏便に暴力で済ませたんだ」

 

 「すごいですよこの人。見てください、曇りのない綺麗な瞳でサラッと恐ろしいことを口走ってますよお弟子ちゃん」

 

 「なるほど。それじゃあ仕方ないね」

 

 「お弟子ちゃん??」

 

 

 どうやら、誠心誠意伝えた甲斐もあって理解してもらえたらしい。

 

 フーフーちゃんは若干納得言ってないような顔だが、細かいことは気にしちゃあいかんのよ。偉大なるお方は仰いました『議論なんてそんな野蛮な…ここは穏便に暴力で…』と、俺もそれに従い肉体言語を用いて対話を試みただけに過ぎないのさ。

 

 それからあの見るからに怪しい女幹部のチャンネーことサラとの邂逅を果たした後、足止めの如く現れた讃頌会の教徒たちも軽く一捻りでボコボコにしてやったのだが……無限湧きするゾンビのように現れては邪魔して来るのでダルいったらありゃしない。

 

 意外に面倒この上ない、というやつだ。

 本人にもホロウの裂け目で逃げられちゃうし……いや、本気でやれば妨害されようと諸共やれたよ? やれたけどその場合ラマニアンホロウだけじゃなくて衛非地区も吹っ飛んじゃうというか、俺が使える大技って殆ど広範囲すぎて調整むずいんだって。

 

 流石に無関係の人間巻き込んで討ち取るのは、ほら…救世主ムーブ的に解釈違いというかナンセンスというか…(必死の言い訳)。

 

 俺がキアナちゃんばりに「壊滅の一撃、ばぁん♡」で終焉ビーム宜しく指向性を持った高出力壊滅レーザー撃ったら、相手を焼き払うどころかマジでホロウ消し飛ぶんじゃないか?……いや、怖すぎてやらんけど。

 

 というか冷静に考えて人間相手に使っていい規模の技じゃないでしょ(真顔)

 

 それから変装して接触してきたサラの情報を元に、浸蝕緩和剤の供給地点の付近を探索してみれば本当に使われていない使用期限ギリギリの薬の入った山積みのダンボールがいくつか発見できた。

 

 これに関してはサラの情報通りだった。こうして向こうからちょっかいかけて来るには初めてではないのだが、なんというか偶にこっちに有益な情報を流して来ることがあるのだ。

 

 いやほんとになんでぇ?

 

 俺も全部を鵜呑みにしているわけではないが、不思議なことに向こうから伝えられた情報が嘘だったことは今のところはない。のだが、ハッキリ言ってあの女が何の為だとか何がしたいだとかは不明なんだが。

 

 ……もしかして上司にバレるかバレないかギリギリの瀬戸際を反復横跳びというか、こっちに情報を横流ししてそのスリリングな状況で愉悦を満たそうとしてるとか、そんな感じの変態さんなのか?

 

 いやいや、そんなわけないか。

 

 他の地区にあった讃頌会の拠点を潰した時も、あの女が情報を流して来たからなんて事もあった。なんだか利用されているようで腹立たしいが、『汚物は消毒だぜヒャッハー』の精神なので構わずやったが。

 

 ……気のせいかもしれないが偶に俺を見る目が怖いというか、なんかこう、ゾワゾワするものがあるんだが。ほんとに何なんだあれ。

 

 

 「本当に、本当にありがとうございますっ! ファイノンさんが居なかったら、今頃僕と妻は……ッ、ほんとになんとお礼を申し上げれば言えばいいのか……!」

 

 「よしてくれ、そう畏る必要なんてないんだ。君からの誠意は十分に受け取った、なら後は帰ってゆっくり休むんだ。僕に恩返しを、なんて考える必要はない」

 

 「そんな!でも……っ」

 

 「それから英気を養ったら、奥さんや娘さんに目一杯家族サービスをしてあげればいい。家族の為に仕事を頑張るのも立派な事だが、家族全員で現在(いま)を一緒に過ごす時間はそれ以上にかけがえのない大切な物のはずだ……そうだろ?」

 

 「っ……はい、はいっ……!」

 

 「よし! それならこれ以上僕からは伝えるべきことはないかな、この話もこれで終わりにしよう。どうにも説教臭くなる話や湿っぽい空気は僕も苦手でね」

 

 

 なのでパロさんや、そろそろ泣き止んで肩から手を離してくれると嬉しいでやんす。泣き過ぎて顔面すんごい事になってるし、肩に手を置く力が強くて普通に痛いんよ…!

 

 くそ、湿っぽい空気は無しにしようって言ったのになんで更に号泣してんねん。いい加減泣き止んでくれ頼むから、ちょっとそこの茶トラ猫ちゃんとパンダさん? そんな『私たち感動しました!』みたいな顔をしてないでパロさん引き剥がしてクレメンス。

 

 ちょ、やめ、ヤメロォォォ!

 ヤローの涙で俺のおニューな白コートがぐちゃぐちゃになっちゃうぅぅ!! 女の子とのハグならウェルカムだけどヤローとのハグシーンは求めてないんだよぉぉぉ! 泣きつくなら奥さんにしてきなさいよっ!

 

 くそぅ、既婚者と彼女持ちは全員俺の敵だ!(血涙)

 

 ばっかやろう!

 これ一張羅やねんぞ!

 

 救世主ムーブする際に必需品というか、それっぽいロングコートをお店で探すの大変なんだからね!……いや、この際自分で仕立てるか? もしくはそういうのは請け負ってくれるお店探してみるのもありだな。

 

 芸能界というか、そういうのが可能な有名人御用達的な服屋さんのことならイヴさんに相談すればなんとかなるかもしれんしな。あの人、確か今は大人気な女性歌手のマネージャーかなんかやってたでしょ?

 

 ええやん、ツテとか今度紹介してもらお!

 オンパロスの救世主衣装仕立てて貰ってムーブに拍車を掛けるとするかァ!

 

 

 「さて、待たせたみたいでごめん。そろそろ()()()の問題を片付けるとしようか」

 

 「ううん! 気にしないで、寧ろファイノンが動いてくれてたおかげでここの人たちも無事だったんだしさ。感謝の言葉と気持ちは伝えるべきだし、伝えられるべきことだからね!」

 

 「ははは、確かにその通りかもね。だけど今回僕は偶々居合わせたというだけで、彼らが生きることを諦めずにいたからこその結果だ。真に褒められるべきは、僕じゃなくて彼らの意志の強さだろう」

 

 「───そんなことないさ! そいつは謙遜が過ぎるってもんだぜファイちゃん! お前さんがここ居る労働者たちの為に薬を探して讃頌会の奴らと戦ってくれたおかげで被害をゼロに抑えて救われた命があるんだ、お師さんもそう思うだろ?」

 

 「……そうさな。お前さんの謙遜は美徳でもあるが、過ぎた謙遜も毒にもなる。時には自分を尊重し褒めてやるのも大事なことだ、感謝の気持ちくらいは素直に受け取っておけ。それで罰が当たるわけでもあるまい」

 

 「───……っ。なら、そうさせてもらおうかな」

 

 

 い、いや〜、確かにその通りなんすけど。結果的に間に合ったというだけで、道中迷子になって散歩してた結果色々あって偶々彼らを見つけて助けられたってだけなんス。彼らの危機を察知して危険を顧みず現場に1人で急行したとかじゃないんですよ。

 

 そんな善意100%というか、そういうわけじゃなくてぇ……だから特撮のヒーローを見るみたいなキラキラした純粋な瞳を俺に向けるのはやめてくれフーフーちゃん。

 

 心が痛いッ。

 なんだか騙してるみたいで罪悪感がすんごいんだから…!

 

 ひとまず、背に浴びるみんなから向けられる温かい視線から気を逸らしながら元凶であるロア先生……否、讃頌会に属する狂人へと視線を向ける。

 

 そこにはロープでぐるぐる巻きに縛られ顔面をボコボコに腫らした男が、こっちを射殺さんばかりの目つきで睨みつけながら俺に対して敵意を剥き出しにしていた。

 

 ひぇ、ブッサイクな化け物がこっち見てるぅ…。

 おめぇひでえ顔だなぁ、誰かに襲われたんかぁ?(犯人)

 

 いや、仕方ないやん。思ったよりも抵抗して来たし、なんか高みの見物で煽ってくるから思わず力んじゃって、オラオララッシュしてやったらイイのが入っちゃったというか。というかあの程度の頭数で俺に勝てるわけないだろうが!

 

 時代は量よりも質なんやで!

 

 

 「さてと、それじゃあ何か言い訳でもあれば聞いておこうか? とは言っても、お前たち讃頌会の口から出る言葉にはなんの重みもない妄言ばかりだけど」

 

 「黙れぇ! 始まりの主の御意志に逆らう不届者がッ! 運良く生き残った消耗品(モルモット)の分際で、恩寵を与えられておきながら仇で返すなど何様のつもりだ! 貴様の所為で、貴様さえいなければ……ッ!」

 

 「……なるほど。ファイちゃんにこれだけコテンパンにされても、まだまだ物足りないって感じみたいだなこりゃ」

 

 「始まりの主から賜った力を我が物顔で振るい、その挙句には司教様から頂いた使命を果たそうとする僕の邪魔までしている! どこまでも傲岸不遜で生き汚い奴なんだな貴様はッ!」

 

 「なにそれ、どの口が言ってるの……っ!!」

 

 

 ちょちょちょちょーい、落ち着こ?

  一旦落ち着こうよヲタクくん。興奮したら早口で捲し立てるのはヲタクくんの悪い癖だよ、あと唾飛ばしながら喋んないでくれない? 普通に汚いからやめてねそれ。

 

 というかマジで一旦落ち着こうか。

 じゃないとリンちゃんとかパンさんとか、周りにいる人がすんごいピリついてるから。

 

 てかパンさんも声のトーンが急に低くなるのやめてね普通に怖くて心臓に悪いから、あとリンちゃんも女の子が拳をパキパキ鳴らしながらにじり寄るんじゃありません!

 

 ちょ、姉弟子と儀玄先生ってばお弟子さんたちが暴走仕掛けてますよ!? 止めてくださいな……え、なんで2人ともそっち側に立ってやる気満々な表情浮かべてるんですか?

 

 いや、流石に加減なしで4人にでボコられたらヲタクくん死んじゃうって!?

 

 

 「……それだけか? この期に及んで、貴方の口から出てくるのは僕への恨み辛みだけなのか。お前たち讃頌会が利用し巻き込んだ人たちに対して、なにも思うことはないのか?」

 

 「ははは! 彼らに対して思うことだって? 勿論あるさ、邪魔さえ入らなければ彼らは今頃は主の供物として、徒労に終わるだけだったその一生を実りあるものとして捧げられたというのに……残念で仕方ないさ!」

 

 「───そうか。仮初であろうと()()という身分を持った貴方のほんの少しの善性を期待してみたところで、意味はなかったみたいだ。もう十分だ、後は檻の中で治安官を相手に司教様からの使命とやらを熱く語ってもらう」

 

 「僕としても、お前たち讃頌会の語り並べる御託はもう聞き飽きた」

 

 

 とりあえず、警察のみなさんにポイってして逮捕してもらうか。

 

 見逃してやるようで気分は乗らないが、だからと言って俺も白昼堂々と殺人をやらかす気もないので。というよりもこの手のタイプの熱狂的な狂人は何もなし得ることが出来ずに役に立たないまま一生檻の中で囚われていた方が一番キクだろう。

 

 讃頌会もこの程度の下っ端を危険を顧みずに救出しに行く、なんてこともありえないだろうから。檻の中で幻想に囚われたままひっそりと消えてくれ。

 

 後はあれだな、今では原作知識の記憶も霞んでしまい断片的で朧げもいいところだ。大した情報源にもならなそうだが、今後の為にも少しでも情報は多くあったほうがいいだろう。

 

 讃頌会の動きを少しでもしれたほうが俺の身の安全……というよりもリンちゃんたちや柚葉やビビアン、讃頌会となにかしらの因縁や関係を持っている者たちの為にもなるだろ。

 

 

 「……けるな……っ!」

 

 「おいおい、今更妙な真似は……!」

 

 「ふざけるなァ! 頂いた使命を果たすまで僕は、僕はこんなところで終わりなどしないッ! ああ!……ああ、司教様! そして始まりの主よ! 敬虔なる信徒足りえなかった僕をどうかお許しください!」

 

 「ちょ、なにするつもりなの!?」

 

 「ッ! リン! 福福! そいつから離れろ!」

 

 「ですが最後に僕の献身もって証明して見せましょうッ! この僕の命は、主の前途を照らす灯火となり! 邪魔をする者を排除して必ずや息を呑む儀式を成功させてみせるとっ!!」

 

 

 突然、発狂し出したかのように大声を上げるロア。

 油断していたわけではないが、彼の執念がこちらの警戒を上回ったというべきか。

 

 いつの間にか自分を拘束する縄を抜け出しており、自由の身となったロアは懐から取り出した何かを掲げる。

 

 ───それは注射器のような器具だった。

 なんの変哲もない器具に見えるそれは、中身を不気味な薬で満たしており医療目的で用いられる者ではないことは明らかだった。そしてその中身がなんなの、狂人の言動からすぐに理解できた。

 

 

 「待ってください! いったい何するつもりですか!?」

 

 「さあ! メヴォラク司教、始まりの主よ! どうか照覧あれ! 始まりの主よ…僕に、再創を───!」

 

 「───そんなこと、させるわけないだろう?

 

 

 ミアズマに満たされた容器の中身、その薬が自身をエーテリアスへと変化させるサクリファイスと関連する薬であることは理解できた。だが一矢報いるかのような、最後に本懐を遂げ華々しく散ろうなどと許されるわけがないだろうに。

 

 皆が驚愕し動きを止めてしまう中、瞬時に接近して注射器を持つ腕をその容器ごと並外れた握力に物を言わせて問答無用で握り潰す。

 

 その瞬間、嫌な感触と共に鈍い音が響き耳障りな悲鳴が鼓膜を震わせる。

 

 バッキャロウ!おめえ目の前の敵が律儀に変身シーンのお約束を待ってくれるのはフィクションくらいだぞ。もしくは実力差から余裕のある場面くらいだろうに。

 

 え、俺の変身シーンはどうなんだって?

 そりゃお前、戦闘中の変身はロマンなんだから力技でゴリ押すに決まってるでしょうが! 気分はフリーザ様だね「光栄に思うがいい!!」とか言って変身したいわ。

 

 

 「ぎぃ、ああ、ああああああ!!?」

 

 「悪いが、容赦はしないぞ。近くにはまだホロウから脱出出来ていない労働者たちもいるんだ。それなのに彼らを危険に巻き込むような真似はさせるわけがない」

 

 「ぐ、あああああ、ああ、うでが! 僕の腕がぁぁ!!」

 

 「これでも加減はしたんだ、その腕をヘリオスで斬り落とさなかっただけマシだと思ってくれ」

 

 

 涙を流しながら折れた腕を押さえて叫んでいるが、一応加減はして物騒な手段は使わなかったんだからそこは許してちょんまげ。しかし骨を砕いた際に注射器の容器ごと粉砕した所為で破片が手のひらに突き刺さったり指が可愛くない方向に曲がってるからちょっとグロテスクなことになってるかも……ヒェ。

 

 割とショッキングな光景な為、周りの様子を伺ってみれば一瞬の出来事だったからかリンちゃんたちはポカーンとした表情を浮かべていた。ひとまずドン引きされてないようで安心した。

 

 ホッと息を吐いていたが、それが良くなかった。

 

 ───窮地に追い込まれた獣の執念を侮っていたというべきだろうか。

 

 

 「ファイノン!!」

 

 

 焦ったような表情でこちらに駆け出したリンちゃんの姿が視界に映った。どうしたのだろうと…そんな疑問を抱いた瞬間、がっしりとこちらに組みついてくる男の姿が視界の隅に映った。

 

 

 視線が交差する。

 その瞳はドス黒い狂気に染まっていて、悍ましいほどに濁っていた。

 

 

 「ひ、ひひ、ひひひひッッ! 見ていてください始まりの主よ!あなたの邪魔をする者は、この僕が一匹残らず───!!」

 

 

 男の胸元には、瞬時に判断できる爆発物とそれに取り付けられたミアズマに満たされた容器が妖しい輝きを放っていた。そしてそれは今にも兵器としての役割を果たさんと熱を帯び鼓動している。

 

 おっほ!

 お前いつのまにそんな物騒な物持ってたんや!ちょい待ちないって、離せこのやろう! 駄々っ子のようにしがみついてくるんじゃありませんヲタクくん!!ちょ爆発オチなんてサイテェェェ!?

 

 ……ん?

 え、リンちゃんなんでこっちに走ってきてるん……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  


 

 

 

 (───なんで、どうして走り出してるのさ私は!?)

 

 

 遠目から見ても、隠し持っていた何かを取り出したロア先生がなにをするつもりなのかすぐに理解できた。罪のない無関係な人たちを巻き込むことになんの躊躇いもないあの狂人は、ファイノンへ組みついて諸共に自爆するつもりだ。

 

 嫌な予感が脳裏を過り、最悪な結末を幻視する。

 

 本気でやるつもりだ、それが理解できてしまった。

 あの人の狂気と執念は短い時間の中で嫌でも感じ取ることが出来たのだから。妄信的なまでの讃頌会の人間は、きっと簡単に自分の命を投げ捨てるだろう。

 

 ファイノンの力なら脱出も容易かもしれない、だが気がつけば彼を助けようと私の体は勝手に動き無我夢中で走り出していた。

 

 正直に言って、私が飛び込んだところでどうにか出来る自信もないし余計なお世話かもしれない……けど、だからと言って目の前で大切な友人を見捨てる選択肢は私にはなかった。

 

 

 「ファイノン───!!」

 

 

 ロア先生を振り払おうとしていたファイノンは私の声に反応して振り向いた。

 

 駆け寄る私に血相を変えて、本気で焦ったような表情を浮かべている青年が目に入る。

 

 彼の優しすぎる性格を考えれば、きっと自分の事よりも私の身の安全を心配して焦っているに違いない……私としてはもう少し彼には自分のことも顧みてほしいくらいだが。彼に何かあればビビアンは泣いてしまうだろうし、私だって悲しい。

 

 動揺して珍しい表情を浮かべる彼の姿に、少しだけ笑ってしまいそうになる。だが走り出してしまった足を止めるつもりもない。

 

 走馬灯のように、景色の変化がゆっくり感じられる。

 なんて事のない距離の筈なのにどうしてか、もどかしい程に自分の足は遅くて彼との距離が遠く感じてしまう。

 

 自分がもっと体を鍛えていればすぐにでも駆けつけられるのに、なんて日頃の行いにちょっとした後悔が脳裏を過るが反省はまた今度にしよう。

 

 ───重く感じられる程の足取りで、漸く彼の元へと辿り着いた。

 

 必死にこちらを静止しようと何かを叫んでいるようだが、正直なにを言っているのか聞き取れないほどに自分の意識は一点に集中してしまっていた。

 

 だが、私が彼を押し除けようとするよりも早く拘束を振り解いたファイノンが焦りを見せる表情でこちらに接近してくる。やはり余計なお世話だったかな、なんて思ったのも束の間。

 

 

 「─────!!!」

 

 

 黄金と紺の綺麗な翼が広げられる。

 私の体は正面から抱き止められ、次の瞬間───鼓膜を劈くような爆発音と身体が吹き飛びそうになるほどの衝撃が当たり一面へと響き渡り、一瞬にして私の意識は皮一枚でつながるような状況へと陥った。

 

 抱き止められたまま、勢い良く地面を転がっていく。

 

 今にも吐き出してしまいそうな感覚。

 視界は酷く揺れていて、耳鳴りも酷くて凄く気持ちが悪い。

 

 「お弟子ちゃん!!……ファイノンさん背中が……っ!」

 

 「くそ、あのヤブ医者やりやがった! 大丈夫か2人とも!?」

 

 「ぐっ…、僕は問題ない! それよりもリンが! あの爆発はミアズマを帯びていた、彼女はその影響を受けているはずだ!」

 

 「それはお前さんも一緒だろう! 待ってろすぐに治療を…っ!」

 

 「いや、僕よりも先にリンが触れてしまったミアズマを祓ってくれ!」

 

 ─────リン。体、辛くない?

 

 

 遠くで声が聞こえる……。

 みんなは近くにいるはずなのに、分厚い壁越しに語り掛けられているような途切れ途切れの声音だけが耳に届いていた。だが、それとは別に私に語りかけてくる懐かしい先生の声も聞こえた気がした。

 

 私の顔を覗き込んでくる師匠たちやファイノンの顔が霞んだ視界に映る。師匠が私やファイノンの体に手を触れて、暖かな光に満たされいく心地よさに意識が微睡んでいく。

 

 ─────ぼんやりと薄れゆく意識の中、私の意識はどこか別の場所へと()()()()

 

 

 『はぁっ…ハァッ……! どこもかしこも、怪物だらけ……!』

 

 『みんなは…どこに……!』

 

 『ファイ■■■■■ノン■■■■■』

 

 『……え?』

 

 『■どう■し■■て?■■』

 

 『まさか、僕に…話しかけているのか……?』

 

 『■■死に■たく■■■ないよ■■……■■』

 

 『み■んな■■■友達■■■じゃ■ないの■■?■』

 

 『あっ……え……? その、スカーフ……それに、この怪物たち……っ!!』

 

 『痛い■■■痛■■い!痛い!!■■痛いよ!!!■■■■ファイ■■ノン■■■■■』

 

 『は…はは……そんな、こんなの、こんな……嘘だろう……?』

 

 『お、おおおおおお願い■■■願い■■■願い■■■■』

 

 『助け■■て助■■■て助けて■■助けてよおおおお■■■■!!■■■■』

 

 『あ、ああ…嫌だ…嫌だ……いやだ………っ!』

 

 『ああっ…ああ……ううっ、ああああぁぁぁ! ああああぁぁぁ!? どうして…どうして……!!?』

 

 

 新エリー都ではない、郊外にあるホロウのどこかと思われる風景。

 血のように真っ赤に燃える太陽、枯れ果てた麦畑、そして燃え上がる火の粉に包まれた小さな村。

 

 まるで世界の終わりの真っ只中に直目したかのように、悲痛な叫び声を上げる幼い銀髪の少年の姿が私の意識には映り込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 
 えー、遅くなって申し訳ない。
 理由としては567にやられてダウンしておりました。職場変わったばかりでタイミング悪すぎて最悪でしたねはい。いまだに喉と関節がヤバいですね。

 皆さんもお気をつけください。
 そして明日はスタレのストーリー更新、色々と不穏すぎて怖いけどハッピーエンドを信じてますよ私は!……pv不穏すぎたけど大丈夫だよねファイノン?





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