下拵え 休息 その2
昨日ゲームセンターで貰った水族館に行くことになったのですが、カワサキの顔がとても険しい。
「そんなにトリニティは嫌ですか?」
「俺の生まれ育った場所みたいで嫌だな。まぁ直接見て無いから想像で嫌ってるだけかもしれんが……どうもな」
カワサキは最近色々と思い出しているようですが、どうも個人的には嫌な内容ばかりを思い出しているようでどんな事を思い出したのかを私やユメ先輩には決して話してくれない。
「上流階級だったんですかね?」
「……さぁな。覚えてない」
これだ。言いたくない事は口を閉ざしてしまう。長い付き合いでは無いが、カワサキについて大分分って来た。愛想はよく、面倒見も良い頼れる大人だが、自分が言いたくないこと、知られたくない事は口を閉ざす傾向がある。恐らくカワサキにとって自分の生まれは相当な地雷なのだろうと判断してそれ以上は踏み込まない。
「最初は海獣エリアに行こうと思うんですが、カワサキは好きな動物とかいますか?」
「俺はあんまり海の動物には詳しくないからな、逆にホシノはどうなんだ?」
「え? あー私はやっぱりクジラとかイルカが好きですね。ユメ先輩は?」
「私? 私はアザラシかな。丸くて可愛いし」
「分ります。アザラシは可愛いですよね」
子供のアザラシのコーナーもあるので、クジラとイルカを見た後はアザラシを観に行っても良いかもしれない。私達はトリニティ行きのリニアに揺られながらチケットと一緒に貰ったパンフレットを読み、水族館に心を躍らせるのだった。
「なんか想像してたのと違うな」
トリニティに着き、いざ街に歩き出すとカワサキは少し驚いた様子でそう呟いていた。
「どんなのを想像してたんですか? カワサキさん」
「もっと高層ビルとか立ち並ぶDU見たいのを想像してた」
「ああ。トリニティはどちらかというと宗教的な街並みですからね」
確かのトリニティはゲヘナと同等のマンモス高だが、それと同じ位宗教色の強い学園だ。歴史的価値のある建物も多く、生活するには少々不便な所もある。
「宗教……ね。まぁ良いが、それで水族館はどっちだ?」
「こっちみたいですね。行きましょう」
カワサキは余り長くトリニティの校舎の近くに居たくない様子なので、早く水族館へ向かおうと思い。パンフレットを片手に水族館行きのバス停へ向かう道中アビドスでは、いや多分他の学区でも見ないような服装の生徒とすれ違った。
「えーアンちゃん。私ケーキ食べたいなー」
「ナギサ様とお茶会なのでしょうミカ様? ナギサ様がケーキを作って待っていますのにここで食べるのですか?」
トリニティらしいお嬢様という容姿のピンクの髪をした生徒は良い。ちゃんとトリニティの制服を着ているし、だけどその後ろに控えている生徒には驚いた。
(メイドさんだ)
(メイドですね)
(メイドだな。良いところのお嬢様か?)
黒を貴重としたメイド服姿の女性がミカと呼ばれた生徒に付き従っている光景には少し面を食らった。どう見ても同年代なので何故という疑問符が頭を過ぎる。
「う……それはナギちゃんに悪いよね。えーっとじゃあ、あっ! ナギちゃんの好きな茶葉を買ってくのはどうかな?」
「それは素晴しいアイデアですねミカ様。ではナギサ様に紅茶を買っていくとご連絡をしてくださいますか?」
「うん! ナギちゃん喜ぶと良いなー♪」
楽しそうな女子生徒は私達に目もくれず、メイド姿の女性は私達に小さく会釈をしてからすれ違ったのだが……。
「カワサキさん。急ぎましょう」
「バスの時間に遅れると水族館に入れる時間が短くなりますから」
「ん? まだ余裕……っとと、そんなに押さなくても良いだろ」
カワサキの言葉に返事をせず、私達はカワサキをそのメイドから引き離した。何故ならカワサキの手帳に記されていた紋章と良く似た柄の鞄を持つ生徒から少しでも早く遠ざけたかったからだ。
「……」
「アンちゃん。どうかした? 確かに男の人は珍しいけど、らしくないじゃんね☆」
「いえ、どこかで会ったような気が……いえ、多分気のせいですね。行きましょうか、ミカ様」
「そうそう! ナギちゃんとのお茶会に遅れちゃうから早く茶葉を買っていこ☆」
カワサキは気付かなかったが、聖園ミカの付き人であり、次期ティーパーティ付きメイドである君従アンナは遠ざかるカワサキの背中をジッと見つめているのだった……。
トリニティでもカワサキさんの手帳に記されていた紋章と同じ装飾のアクセサリーを持つ生徒がいた。話しかければカワサキさんの何かが分かるかもしれないと思いはするが、それでカワサキさんがいなくなってしまうと思うと話しかけようとは思えなかった。
「ユメ先輩見てください! イルカが手を振ってます!」
普段のクールな感じと違って興奮している様子のホシノちゃんに我に帰る。水槽の中でイルカが円らな瞳で私を見て手を振ってる。
「かわいー♪」
「ですよね、可愛いですよね!」
こんなに可愛い動物がいるのに嫌な事を考えている暇なんてない。ホシノちゃんと一緒に水槽の中の動物を見ながら進む。
「ほう。鮫か……フカヒレが美味いんだよな」
「どこを見てるんですか、どこを」
「ん? ああ、すまん。偉く立派な鮫なんでな。大量のフカヒレが取れそうなだなって思って」
「見るところ違うと思いますよ」
分かってると返事を返すカワサキさんだけど、その目はじっと鮫のヒレを見ていて、カワサキさんをこのままにするのは良くないと思った。
「あっち行きましょう。アザラシエリア」
「お、おお。行くか」
どう捌くかと呟き始めたカワサキさんの手を引いてアザラシエリアへ向かう。そこにいるのは赤ちゃんアザラシばかりらしく、高い声で鳴きながら飼育員さんの足元をぽよぽよと跳ね回っていた。
「おーこれは可愛いな」
「でしょ! 私はアザラシ好きなんですよ」
「確かにこれはぽよぽよしてていいですね」
ボールのように跳ね回っているアザラシはずっと見てられるような愛くるしさだ。出来ないと分かっていても持って帰りたいと思うほどの愛くるしさだ。
「ユメ、ホシノ。写真撮影OKらしいが、写真撮るか?」
「良いですね! 記念写真です、撮りましょう!」
アザラシが水槽の中でぷかぷかと浮かんでいる前でホシノちゃんと並んでピースサインをする。カワサキさんが水族館の入り口で買ったインスタントカメラで写真を撮ってくれる。
「じゃあ今度はユメ先輩とカワサキで撮りましょう」
「俺か? まぁ記念だし撮るか」
「じゃあこっちに」
ホシノちゃんがカメラを受け取り、私とカワサキさんがアザラシの前で並んで写真を撮る。
「じゃあ今度ホシノちゃんとカワサキさんね!」
「え、はい。お願いします」
そして今度はホシノちゃんとカワサキさんの番なんだけど……私の時はアザラシは一匹だった。だけど今は3匹のアザラシがまるで茶柱のように浮かんでいたのに思わず微笑んでしまいながら写真を撮る。
「すいませーん。写真お願いしても良いですか?」
「はい、良いですよ」
そして最後に従業員さんにお願いし、カワサキさんを真ん中に右隣に私、左隣にホシノちゃんが立って3匹のアザラシと共に記念写真を撮った。
「よーし! じゃあ次ペンギン! ペンギン見にいきましょう! ホシノちゃんはそれで良い?」
「はい! ペンギンみたいです」
「じゃあペンギンエリアで決まり! 行きましょう!」
アザラシを見たからか可愛い動物が見たくなった。ホシノちゃんも賛成してくれたのでペンギンエリアに向かう。
「ここの水族館はペンギンの散歩の時間があるんですよ! もうすぐです」
「あ、来た来た! 来ましたよ!」
飼育員に先導されよちよちと歩いてくるペンギンの姿に私だけではなく、回りの生徒達からも黄色い歓声が上がる。それほどに真ん丸の身体をしたペンギンは愛らしく、思わず1匹持ち帰れないかと思うほどだった。
「良し、今度はイルカショーだね! ちょっと早いけど場所取りに行こう」
「はい!」
今なら良い場所が取れるとイルカショーの場所へ向かおうとするが、カワサキさんに肩を掴まれて止められる。
「どうかしました?」
「急がないと」
「カッパかポンチョを買え。濡れると風邪を引くし、服が透けるぞ」
透ける……一瞬何の事かと思ったがすぐに言葉の意味を理解し、顔が赤くなるのを感じた。
「そ、そうですね! ホシノちゃん、雨具を買いに行こう」
「で、ですね! まだ時間に余裕がありますし」
今までは同姓のみだから気にしなかったが、カワサキさんがいるのに服が透けるのは駄目。絶対駄目となり、私達はさきに雨具を買ってからイルカショーを見に行き、カワサキさんがいるのに気付いて慌てて引き返していく他校の生徒が多数いたのでゆっくりとイルカショーを楽しむ事が出来た。
「あー楽しかったー! ね! ホシノちゃん」
「はい! でも見れてないところも多かったですね」
流石お金持ちのトリニティだけあって広い水族館だったので全部を見ることは出来なかったのが無念だ。
「また来れば良いだろう。今すぐは無理でも、また来よう」
「はい!」
だけどそれでまたこうして水族館に来ようとカワサキさんが言ってくれたので、無念ではあるが次の約束が出来たことに私もホシノちゃんも微笑みながら水族館をあとにするのだが、その時にも一騒動があった。
「また無賃乗車しやがって! 金払えッ!」
「うっせーッ!! こんな所で下ろしやがって! ゲヘナに戻ったら払うって言ってんだろッ!?」
「それで何度無賃乗車したんだ! お前らはとっくの昔ブラックリスト入りしてんだよッ!!」
ハイランダーの生徒とゲヘナの生徒が激しい銃撃戦をしながら口論をしていた。
「カワサキさん。私の後ろに」
「ヘイローのないカワサキでは致命傷になりかねませんからね」
折りたたみの盾を展開し、カワサキさんを盾の後ろに庇っているとカワサキさんが不思議そうな表情をする。
「ヘルメット団みたいに叩きのめさないのか?」
「他校の自治区で銃撃戦をするのは政治的に面倒なんです。防御くらいなら良いですけど、銃を抜けばあーだーこーだと文句を言ってくる連中が居るので」
倒そうと思えば倒せるが、それをすると間違いなくトリニティが文句を言ってくるのでそれを避ける為にも身を守り、正義実現委員会が来るのを待っていると、カワサキさんが顔を上げた。
「どうかしましたか?」
「なんか来るぞ」
「は? 何か来るって何が……」
ホシノちゃんが顔を上げ、それにつられて顔を上げると人影が建物の上から飛び降りてきた。
「そこまでだっ! これ以上暴れるのならばこちらもそれ相応の対応を取らせて貰うッ!」
白い制服に私の持っているのと違う盾を左手に、右手に警棒を握った茶髪の女子生徒が声を張り上げる。
「うるせえッ! 口を「警告はしたぞ」……げぼっ!?」
凄まじい踏み込みで間合いを詰め、警棒を腹に突き刺し、茶髪の生徒の回し蹴りがゲヘナ生を蹴り飛ばし、駅の壁に叩き付けられた崩れ落ち、反吐を吐きながら腹を押さえてのた打ち回る。
「てめ「遅いッ!」がはっ!?」
銃を構えるより先に警棒の一閃でもう1人の顔面を殴りつけ、呆然としていた3人目にシールドバッシュを叩き込み殆ど一瞬で無力化させた。
「この3人はこちらで預かる。君達は電車運行に戻ってもらって良いかな?」
「わ、分りました」
不満はあるだろうがその生徒に頼まれたハイランダーの生徒は電車へと走って行った。その姿を見て私も盾を畳んで電車の改札口へと向かって歩き出したのだけど……。
「失礼なのは承知なんだけど、どこかで会った事がないかな?」
カワサキさんを見てその生徒がどこかで会った事がないかと問いかけてくる。
「電車に遅れるから行きましょう!」
「ええ、アビドス行きはダイヤが少ないですから」
「アビドスの……呼び止めて失礼しました。お気をつけて」
そうやって見送ってくれる女子生徒だったけど、カワサキさんに向ける視線がやけに熱っぽい気がしたのは多分気のせいではなかったと思う。
「タツミ。またスタンロッドを使いましたね? あれは程ほどにしろと言いませんでしたが?」
「申し訳ありません委員長。ですがあの場合はあれが正解だったと思ったもので」
「はぁ……全く貴女は優秀ですが、やりすぎる。スタンロッドを使うのはほどほどにしてください」
「気をつけます」
「それと正義実現委員会の制服を着るように」
「それは承諾しかねます」
即答で正義実現委員会の制服を着るのを拒む後輩に委員長と呼ばれた生徒は深い溜息を吐き、行ってよろしいといって少女――草薙タツミを帰らせ、救護騎士団に確保されるゲヘナの生徒に冷たい視線を向ける。
「容態は?」
「内臓破裂と頬骨と眼底骨折、それと肋骨が4本折れていますね」
「……また面倒な事になりますね」
ゲヘナを嫌う委員長ではあったが、タツミがやりすぎたことに対しては申し訳なさ、そして間違いなくゲヘナからのクレームが入り、ティーパーティに呼び出されるという約束された未来に頭を抱えるのだった。
ユメとホシノを家に帰した後。俺はアビドスの生徒会室で次について考えていた。この1週間はユメとホシノ休息でもあるが、それと同時に向こうの出方を見るための時間でもあった。
「報道は駄目か……なるほど腐った権力者の見本だな」
ゴーレムが捉えたヴァルキューレの生徒と連邦生徒会の生徒についてはクロノスにリークした後に解放したが、その報道は一切されていない。クロノススクールはマスゴミではあるが報道については真摯だったので情報をリークしたのだが、やはり無駄だった。
「まぁそれでも止まらんがね」
モモッターの投稿ボタンを押す。それはゴーレムに仕込んでおいたカメラで撮影されたゴーレムに捕獲されるヴァルキューレと連邦生徒会の姿だった。ゴーレムには警告するように命令しているので、しっかりと警告していたが捕獲された生徒達の返答は鉛玉だった。それ所か連邦生徒会に逆らう愚か者めなどと叫んでいて、本当に馬鹿しかいないなと呆れながら、調べていた資料――シェマタの行方不明について調べているとくすくすと笑い声が聞こえて来て顔を上げた。
「実に愚か。愚か過ぎて笑えて来るだろう?」
「どちらさんで?」
アビドスの生徒ではない、黒い制服に身を包んだ悪魔のような角・羽・尻尾を持つ銀髪の生徒がスマホをひらひらと振りながら出入り口に背中を預けて笑っていた。
(すり抜けた? 馬鹿な、いや……こいつはまさか倒したのか……?)
ゴーレムの反応が2つ消えていた。それはこの少女がゴーレムを倒したという証拠だった。
「emeth「e」が消えると、残りは「meth」即ち死だ。いやはやゴーレムを見るとは夢にも思わなかった」
楽しくて楽しくてしょうがないという様子で笑いながら妖艶な雰囲気を纏う少女は俺に近づいて来た。
「初めましてゲヘナの生徒会長のヴァーヌだ。親しい人間には雷帝と呼ばれている」
「これはご親切にどうも、カワサキだ。それで何の用かな?」
ヴァーヌと名乗った少女は艶かしい表情をして俺に白目と黒目が反転した目を向ける。
「貴方が欲しい。貴方がいればキヴォトスは私の物になるからね、勿論私も好きにしていい。どうだろうか?」
ぞわりとした感覚がしたので習慣でつけていた指輪をヴァーヌ、いや雷帝に向けると俺を包み込んでいた悪寒は消え去った。
「驚いた、無効化したのか私の神秘をッ!?」
「失礼な奴だ。悪いが帰ってくれ、俺はアビドスに協力すると決めた。だからお前の下に付く気はない」
しっしっと手を振ると雷帝はますます楽しそうな表情を浮かべた。
「それは残念。だが私は連邦生徒会を潰したくてねぇ、少なくとも後2年の間にはね。だから何時でも声をかけてくれたまえ、私は君達アビドスの味方だよ、君達が世論を使うなら私は武力を提供するよ。まぁ今日は顔見せ、良く考えておいてくれよ」
そう笑って闇の中に溶けるように消えていく雷帝。クランの管理帳を開いて金貨を使って校舎の守りを強化してから生徒会室を出る。
「騙されたか、化け物め」
ゴーレムの額の真理の文字を消して死にする。それは確かにゴーレムの攻略法の1つだ。雷帝もそうしたような事を言っておきながら、奴は完全に警備ゴーレムを破壊していた……。
「ぎギギ」
「ごがああ……」
頭部と上半身の僅かな部分だけを残され、転がっているゴーレムだった物の残骸を見て眉を顰めているとスマホが鳴り、画面を確認すると雷帝の文字。
「もしもし?」
嫌だなと思いながら通話ボタンを押すと楽しそうなクスクス声が聞こえて来た。
『やぁ先ぶりだね、壊してしまったけど必要なら何時でも尋ねて来てくれたまえ。弁償するからね、ではおやすみ』
一方的に要件を告げて雷帝は電話を切った。登録した覚えもない番号がアドレス帳に何時の間にか追加されていた。
「やれやれ、厄介な奴に目を付けられたな」
個人的に関わりたい部類の相手では無いが、どうもそうも言ってられないらしい。連邦生徒会と事を構える以上間違いなくあいつは首を突っ込んでくる。ゲヘナとアビドスが協力して連邦生徒会を潰そうとしているとなってしまうと余りにも都合が悪い。今のアビドスには戦力が足りないので戦うという形に持って行かれるとアビドスを潰す正式な理由になってしまうからだ。それが分かっているからあいつは俺の前に顔を出し、そして避けられない状況を作り出していったのだろう。
「行きたくは無いが、行くしかないか」
明日は暇だよっとモモトークで送られて来ているのを見て、行くつもりはなかったがゲヘナに行く事になりそうだと俺は深い溜息を吐いた。
「限りなく黒寄りのグレーなんだよな、あいつ」
シェマタが最後に目撃されたのは雷帝と共にゲヘナ・アビドス両校でのアビドス砂漠の大捜索の時。そしてその大捜索は大失敗に終わり、戻って来たのは雷帝ただ1人だけだったという当時のアビドス生徒会のメモを思い出し、俺は面倒事になるのを確信し、ユメとホシノになんて説明するかと頭を抱えるのだった……。
なおカワサキが雷帝に目を付けられ頭を抱えている頃ユメとホシノは……。
「えへー♪ 大事にしよー」
「うへへ♪」
それぞれの家で水族館の帰りに買って貰ったイルカとクジラのぬいぐるみに顔を埋めていたりするのだった……。
モモッターのSNSに短い動画が投稿され。それが驚くべきスピードで拡散されていく、その動画の内容はカワサキが投稿した物……だけではない、ゲヘナ、そしてDU地区からも投稿されている動画だった。
『ここから先はアビドスの自治区になります。現在責任者であるアビドス生徒会は不在なのでお引取り願います』
西洋の騎士を思わせるロボットから響く警告に対して、カメラに映っている2名ヴァルキューレの生徒、そして3名のSRTの生徒……。
『我々連邦生徒会はアビドス自治区を自治区として認めていない』
『いいえ、既にアビドス自治区は承認されております』
『認めていない、我々連邦生徒会が法だ。我々が認めなければ認められてなどいない』
連邦生徒会の傲慢の象徴がそこにあった。正規の方法で自治区の申請がなされているのにその生徒はアビドス自治区を認めなかった。
『撃て』
『よろしいのですか室長。アビドスとの外交問題になりますよ』
『2人しかいない弱小高が我々に逆らうなど言語道断。あのガラクタを破壊しろ、これは命令だ』
『攻撃行為を確認。これより反撃および捕縛に移ります』
室長――そう室長だ。この場にいる生徒は連邦生徒会防衛室長であり、生徒達が1体のロボに制圧され捕縛された所で動画は終了していた。動画時間は約3分。だがその3分の動画の中での室長の発言が問題され爆発的な勢いでこの動画はキヴォトス中に拡散していった。
「まぁですよねー。本当何もしなくてもどんどん自滅してくれますから楽ですねー♪」
ゲヘナは雷帝、アビドスはカワサキ、そしてDU地区からの投稿はいうまでも無く後にアロナと呼ばれることになる少女の仕業だった。
「でもあんまり沈みすぎると困りますしね、ほどほどにっと」
連邦生徒会の権威を下げたいが、下げすぎても後々困ることになる。程ほどに、自分の手腕で回復させることが出来るレベルを的確に見分け、少女は今も動き続けているのだった……。
下拵え 休息 その3へ続く
ミカについているメイドさんと最後に出てきた生徒が一応ギルメンソウルの持ち主ですが、メイド服なのは本人の趣味なのでメイドスキーの人達では無いと言っておきますね、そしてもう1人は分ると思いますが今は秘密ということで、彼女達にどのギルメンの魂が宿っているのかご期待ください。それと雷帝のヴァーヌと言う名前は元ネタと言われるイヴァン四世からとってみました。本当の名前が分れば訂正するので仮名称ということで、次回はゲヘナ編、今回はギルメンソウル持ちではなく、原作の三年生組とのエンカウントを書いてみようと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。