飯食え・アーカイブ   作:混沌の魔法使い

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メニュー9 宝石肉の焼肉

メニュー9 宝石肉の焼肉

 

医者の最後の診察を終え、暫く安静にするようにと念押しをされた俺はアビドスへ帰る準備をしながら背後に向かって声をかけた。

 

「何時までそうしてるんだ? ユカリ」

 

「き、気付いておられたのですか!?」

 

気付かれていた事にユカリは驚いていたが、さっきから病室の外を行ったり来たりしている足音がしていれば気付くなというのが無理という物だ。

 

「ユメとホシノを人払いしてまで俺に何か言いたいことでもあるのかとな」

 

俺の言葉にユカリはびくっと肩を竦めた。勘解由小路家は百鬼夜行でも指折りの名家らしいが、病院にまで手を回し、俺とユカリだけで話す時間を作ったのは正直驚いた。

 

「お、怒っておいでですか?」

 

「何が?」

 

「み、身共は止められませんでした。邪魔をさせるなと言われたのに止められず……その頬の怪我は身共のせいですわ。申し訳ありませんでした」

 

深く、深く頭を下げるユカリ。なんとも生真面目な子だと苦笑しながらその頭に手をおいてわしゃわしゃと撫で回す。

 

「な、なんですの!?」

 

「あの場合は仕方ない。それに最後の1発助かったからな、それでちゃらだ」

 

あの1発が無ければ最後の攻撃に繋げられなかった。それほどユカリの最後の射撃は神懸っていた。デスナイトに突っ込む俺の顔スレスレを通った1発は本当に神技だった。

 

「で、ですが! 身共は」

 

「じゃあ今度百鬼夜行に来た時に案内してくれ、それでちゃらだ」

 

納得行っていない様子のユカリだったが、分りましたと返事をする。

 

「じゃあモモトークを交換しておくか。俺は忙しいからあんまり返事が出来ないかもしれんが、時間を見て返信はする。あと鈴木モモだったか? 彼女にはあまりちょっかいをかけないようにお前から陰陽部に伝えてくれ。今回はとめれたが、次はないかもしれんからな」

 

デスナイトくらいで済んで良かったが、失墜する天空でも使われていたら百鬼夜行が物理的に消滅していた可能性もある。プッツンすると暴走するみたいなので、自治区としては問題があると思うがモモは下手に追いかけないほうが良いだろうと助言する。

 

「陰陽部が納得しないかもしれませんが……」

 

「それなら俺のモモトークを教えて良いから俺に1度連絡するように伝えてくれ、頼めるか?」

 

「はい、必ずお伝えします。それと再びカワサキ様がお見えになられる時にカワサキ様に楽しんでいただけるように色々と計画しておきますので、再び訪れてくださる時を楽しみにしています。お気をつけて」

 

そう言って一礼するユカリに見送られて病室を後にしてロビーへと向かう。

 

(なんだろうな。なんか胸の中が軽い気がする)

 

胸の奥に感じていたもやもやした物が何故か消えている。それが何か分らないが、妙に晴れやかな気分だ。

 

「カワサキさん。遅いですよ」

 

「おお、悪い悪い。薬の注意とか聞いててな。安静にしろって何度も言われて大袈裟「殴って安静にさせてあげましょうか?」……冗談だ。冗談だから拳を握るなホシノ」

 

力技で俺を休ませようとするホシノ。その目が本気で俺は慌てて冗談だと言うとホシノは俺の鞄をひったくった。

 

「まぁ良いです。それより早くアビドスに帰りましょう」

 

「いや、荷物くらい……「入院患者は大人しくしていてください」……おう」

 

下手に逆らうと不味いと俺でも分るくらいホシノの眼光は凄まじく、俺の荷物を取り上げて歩き出すホシノの後を追ってユメと共に歩き出す。

 

(なんか色々あったが百鬼夜行に来て良かったな)

 

日本に似ていたのが良かったのか、本当に晴れやかな気持ちでアビドス行きの電車に乗って、俺達はアビドスへの岐路へとつくのだった……。

 

 

3日ぶりにアビドスに帰って来た私達を待っていたのは、この3日間で溜まっていた柴大将達では処理出来ない仕事の山だった。

 

「これだから1泊の予定だったんですけどね」

 

「イレギュラーが多すぎたからな。ほい、ユメ判子」

 

「ひぃんッ! 多すぎるよぉ」

 

ユメ先輩の悲鳴を聞きながらカワサキと共に書類を私で処理出来る物とユメ先輩で無ければ処理出来ない物へ分別する。

 

「休んでも良いんですよ? 病み上がりですし」

 

「ポーション飲んでるから問題ない。それにユメとホシノが働いているのに俺だけ休める訳ないだろ」

 

無理しないで欲しいのですが、そう言ってくれるカワサキにちょっとだけ嬉しかった。

 

「む。トリニティから面会要請が来てますね」

 

「こっちはゲヘナだね。どうしましょうカワサキさん」

 

ゲヘナにしろ、トリニティにしろ政治的なやり取りが絡んでくる。正直に言えば瀕死だったカワサキに負担はかけたくないが……カワサキがどういう判断を下すのかと思わず視線を向ける。

 

「用があるならそっちが来いって返事をするぞ」

 

「え? アビドスに迎え入れるんですか!?」

 

「こっちが行けば下手に出ることになるからな。向こうに行って態々挑発されるのも腹が立つ。向こうの出方を見る意味も兼ねて招いてみようじゃないか。向こうの器の大きさも分るしな。お茶会をアビドスでしましょうで返事をしてくれユメ」

 

大丈夫なのだろうかと不安に思うが、カワサキが余りにも自信満々なのでここはカワサキに任せてみよう。

 

「開店準備は着実に進んでるみたいですね。この様子なら夏休み前にはオープン出来るかもしれませんね」

 

「確かに、皆も頑張ってくれてるみたいですしね。カイザーはどうでもいいですが」

 

カイザーの店舗の準備はどうでも良いが、前々からアビドスにいてくれた人達のもうすぐ営業できるっていうのは嬉しくなっている。

 

「だな、夏休みの少し前くらいにプレオープン出来ると良いな」

 

アビドスの復興が形になって来ている。まずはプール、そして商業施設のオープン。夏休みにあわせて開業出来れば復興という夢に大きく近づいていくのがとても嬉しい。だが嬉しいことばかりでは無いのもまた現実だ。

 

「カイザーが退けたっていう傭兵と侵入してきた連邦生徒会の生徒とかどうします?」

 

被害報告書が出てきたのだが、報告書を見ると荷物の運搬をしていたアビドスの住民達が襲われたらしい、襲ってきたのはヘルメット団でもスケバンでもなく、獣人でもなくオートマタの一団らしいのでカイザーのマッチポンプが頭を過ぎる。

 

「俺はネフティスって踏んでるからそっちに関しては警備ゴーレムを回す。捕まえてる生徒に関してなんだが学籍を剥奪するのでアビドスで対処されたしってあるんだが?」

 

学籍の剥奪と聞いて思わず椅子を倒しながら立ち上がった。確かに襲ってきた相手であり、憎い相手ではある……だが彼女達は連邦生徒会に命じられて侵入した筈だ。捕まったから学籍を剥奪して知らないというのは筋が通らない話だ。

 

「学籍剥奪!? 嘘ですよね!?」

 

「いや、ここにSRTとヴァルキューレの生徒の学籍剥奪って「見せてください!」……お、おう」

 

ユメ先輩がその書類を引ったくり読んでいるので、私も横から覗き込む。名前と顔が一致しないが、確かに今捕まえている4人の生徒の学籍剥奪の旨の書類だった。

 

「そんなに大変なのか? 学籍剥奪ってのは?」

 

カワサキは今キヴォトスについて勉強中なのでそこまで辿り着いていないのだろう。事の重大さを理解していないようだった。

 

「キヴォトスで1番重い処罰ですね。まずキヴォトス生の8割は寮生活です。学籍がないとまず寮に住めません、次に銀行口座も凍結されますし、怪我や病気を患っても学生証に保険証も紐付けられているので診察も受けられません。ヘルメット団が執拗にアビドスを攻撃してくるのはユメ先輩の生徒会長の学生証が欲しいからでしょう」

 

「一応特級階級だからね、生徒会長は」

 

キヴォトスは学園都市だ。学生でなければ生活は殆ど出来ないと言っても過言ではない。だから学園のトップである生徒会長には様々な特権がある。1つは自治区の行政権、それと極端で無ければ校則の変更も可能だ。学籍を失いホームレスをしているヘルメット団やスケバンからすれば喉から手が出る程に欲しているのがユメ先輩の学生証だ。自治権に、生徒の入学、転校などの手続きも出来るユメ先輩の学生証は自治区が復活した今のアビドスでは途方も無い価値を秘めた物となっている。

 

「失敗したから尻尾切りか、可哀想ではあるがまぁ自業自得か」

 

「擁護しないんですね?」

 

カワサキはヘルメット団に炊き出しをするくらい甘い性格だ。だから擁護すると思っていたのに自業自得と言ったカワサキに意外だと思って尋ねる。

 

「腹が空いてる相手には飯を振舞うさ、悪人でも善人でもな。それは俺のルールだ。だが自分から犯罪に手を染めて没落する奴に手を貸す理由はないな」

 

飯は食わせてやるが、それ以上は知ったことじゃないと言うカワサキ。もう興味を失ったのか書類を見ているカワサキの姿にまた意外な側面を見た気持ちだ。

 

「なんだ? そんなに意外か?」

 

「いや、まぁ意外かなーって、カワサキさんは優しいですし、何か手助けするのかなって」

 

「俺は善人でも、悪人でもないつもりだ。俺は俺の正しいと思う事をするし、したいと思ってる。自分から道を踏み外した奴に手を差し伸べる理由はないな。まぁ反省してるっていうなら考えなくもないが、あんな傲慢を体現したような連中は1回地獄を見た方が良いだろ」

 

だから飯は食わせるが助けないと断言したカワサキは書類を机の上におき、大きく背伸びをした。

 

「そろそろ良い時間だ。飯にしないか?」

 

「え? あ、そう言えばそうですね。ホシノちゃん1回休憩にしようか?」

 

「ですね。柴関ラーメンでも行きましょうか」

 

カワサキも負傷しているので、今日は外に食べに行こうと提案する。だが……それはカワサキ本人に止められた。

 

「いや朝から凄いのを準備してるんだ」

 

「朝からってまた無茶したんですか?」

 

ジト目で睨むとカワサキは違う違うと手を振りながら笑った。

 

「ちょいと切って、タレを作っただけだ。俺の所為で休憩が中途半端に終わっちまった。だから特別な食材を用意したんだ。だからそれで焼肉をしよう」

 

「焼肉! 良いですね! 賛成です! ホシノちゃんは?」

 

「まぁたまには良いですね。やりましょうか、焼肉」

 

カイザーと焼肉していたと聞き、私も焼肉食べたいと思っていたので焼肉に賛成したのですが……。

 

「か、カワサキ……この肉は?」

 

「宝石肉という。俺の知ってる肉でこれ以上美味いものはないと断言出来る最高の肉だ」

 

「ひぃん……と、とんでもなもの出されちゃった……」

 

「で、ですね」

 

キラキラと輝いていて宝石肉の名前は嘘でも偽りでもない、そんなとんでもない肉を出された私とユメ先輩は思わず絶句するのでした……。

 

 

宝石肉とカワサキさんが呼んだ肉は本当に宝石のように輝くお肉だった。霜降りなんて言葉では片付けられないほどにサシが入っていて、鮮やかなピンク色をした肉の塊がホットプレートと共に机の上に置かれていた。

 

「カワサキ。この宝石肉っていうのは肉で言うとどんな部位なんですか?」

 

「全てだ」

 

「はい?」

 

「だから全て。ヒレ肉、サーロイン、肩肉、バラ肉、レバー、ハツ。肉のありとあらゆる味と食感を楽しめる。ただ食べてみるまでどんな味か分らないっていうのが面白い所だな」

 

なんかとんでもないもの過ぎて言葉が出ない。面白いとカワサキさんは言っているが見た目は普通のお肉なのに、ありとあらゆる肉の部位の味が楽しめるなんて普通じゃ考えられない。どう考えても魔法使いであるカワサキさんの世界の食材なのは明らかだ。

 

「そもそもこれって何の肉なんですか?」

 

「山くらいある鼻が2つ、足が6本あるマンモスの肉だ」

 

「「何ですかその化物」」

 

とんでもない化物の肉だった。これ本当に食べて大丈夫なんだろうかという不安が脳裏を過ぎる。

 

「美味い肉だから問題ない、どれとりあえず切り分けるか」

 

包丁でカワサキさんが肉に切れ込みを入れるとその瞬間に火花が散ったかと思うほどに肉の脂が飛び散った。

 

「へ……? なんでお肉から花火が……?」

 

「……本当に食べて大丈夫なんですよね?」

 

人間が食べて大丈夫なお肉か凄い不安になって来たが、カワサキさんは大丈夫大丈夫と笑うだけだ。

 

「まぁまずは食べてみてくれれば分る。これは生でもいけるがこうやって軽く焼くともっと美味い」

 

宝石肉がホットプレートの上に置かれると切り分けた時とは比べ物にならない花火が肉から散った。

 

「よし、こんなもんだな。ほれ、ユメ、ホシノ。食べてみてくれ」

 

私とホシノちゃんのお皿の上に置かれた時には宝石肉は黄金色に光っていた。これ本当に食べて大丈夫なのかなと不安に思うが、美味しそうと思う気持ちもあり、私はお皿の上のお肉を箸で持ち上げてみる。すると脂が滴り落ち、皿に当ると黄金の光が飛び散る。幻想的とさえ思うお肉を頬張る。

 

(え、なにこれッ!?)

 

軽く噛んだだけで肉汁が口の中一杯に広がる。だが見た目の華やかさと違って、お肉って感じのワイルドさを感じるようだ。お肉の美味しさだけをそのものを楽しみながら噛み締めていると急にお肉の味が変わった。

 

「おいしっ!? なにこれッ!? すっごい美味しいですッ!?」

 

お肉と脂の層が交互に顔を出す、この感じは多分バラ肉だ。しかも極上のバラ肉を何層にも重なっている。だが噛み締めると口の中でスッとほどけて肉汁が口の中に溢れる。

 

「これは……レバーですかね? しっかりと焼かれているのにクリーミーで癖が全くない。これは一体……?」

 

「肉の美味い所だけが凝縮されているんだ。食べているうちに食感や味が変わって面白いだろう」

 

確かに面白いし、美味しい。最初は食べて大丈夫かな? と不安に思っていたが、今はもう食べたいとしか思えない。

 

「ん! これはどこだろ? 美味しいけどあんまり食べたことがない食感」

 

ゴリゴリと固いのに、簡単に噛み切れる。そして噛み締めていると濃厚な旨味と程よい脂が口の中一杯に広がる。

 

「赤身肉でしょうか……凄く濃厚なお肉の味がします」

 

どこを食べても美味しいのは間違いない。だけどお肉の部位なんか殆ど知らないので美味しいということしか分らない。

 

「このサニーレタスに巻いて食べても美味いぞ」

 

「サニーレタス? これがですか? なんか光ってますけど……」

 

「害はないぞ。害は本当にないから、うん。害はマジでない」

 

「その言い方だと害以外の何かがあるんですよね?」

 

ホシノちゃんの突っ込みにカワサキさんは苦笑し、自分で肉をサニーレタスで巻いてタレにつけて先に頬張るのだが、私とホシノちゃんの耳に飛び込んできたのはカリカリっというサニーレタスとは思えない音だ。

 

「このサニーレタスに巻いて食べると肉の旨味が何倍にも跳ね上がるんだ」

 

「で、害はないんですけど、何があるんですか?」

 

ホシノちゃんの再度の突っ込みにカワサキさんはホットプレートの上にお肉を並べる。

 

「簡単に言うと永続的な身体能力の強化だな。ユメとホシノが怪我をしないようにの保険で微々たる物で、そこまで心配することはない。ほれほれ、焼けたぞ。どんどん食え」

 

私とホシノちゃんのお皿にお肉を乗せ、再びホットプレートにお肉を並べるカワサキさん。

 

「そういう事なら別に良いですけど、先に説明してくださいよ」

 

「能力が上がるのは副次効果、大事なのは味だからな。美味ければ良いだろうって思ったんだよ」

 

「美味しくて強くなれるなら良いですね! あ、これ牛タンだ。コリコリしてて美味しいです!」

 

カワサキさんはカワサキさんなりに私達の事を心配してくれていた。ならそんなに不安に思う必要はないと思って持ってくれたお肉を頬張る。

 

「んー美味しいです! でもこんなに美味しいとご飯が欲しいです!」

 

「勿論あるぞ。ホシノはどうする?」

 

「貰いますよ。焼肉にはご飯です」

 

華の女子高生としては正直どうかなーと思わなくもないけれど、やっぱり美味しいお肉を食べているとご飯が欲しくなる。

 

「口の中でお肉が溶けました!」

 

頬張った瞬間にお肉が脂に変わったんだけど、濃厚なのにさっぱりしていて喉越しがとても良かった。

 

「私も牛タンですね。コリコリしてて、美味しいですね」

 

見た目は殆ど同じなのに食べていると食感が変わるし、味わいも違う。お肉の美味しさだけを存分に楽しむ事が出来る。

 

「ほい。ご飯。それとこのタレもお勧めだ」

 

「わーい! ありがとうございます!」

 

湯気を放つご飯と新しいタレを受けとり、音を立てて焼かれているお肉を見てまだかなまだかなとワクワクしながら待つ。

 

「次が焼けたぞ」

 

「待ってました!」

 

「私もお願いします」

 

「おう。遠慮しないでどんどん食えよ」

 

勿論俺も食べるけどなと笑いながら私達にもどんどん食べろとカワサキさんはお肉を勧めてくれる。

 

「舌の上で溶けるみたい……それなのにお肉の味が凄く濃くて美味しいのに甘さも感じるや」

 

「凄い柔らかい……こんなに美味しいお肉食べたの初めてです」

 

どこを食べても美味しいし、今まで食べたこともないお肉の味と食感でご飯がとても進む。

 

「このサニーレタスも良いですね。こんなに瑞々しいサニーレタスは初めてです」

 

「うんうん! 分る。このサニーレタスにお肉を包んで食べるとサニーレタスの方が美味しくなるの不思議だね!」

 

お肉の脂と味でサニーレタスの瑞々しさが更に増して、お肉をさっぱりと食べる為の野菜なのに、野菜の方がずっと美味しく感じる。

 

「そりゃ良かった。美味いって事は良い事だ。栄養があってもまずいもんは食いたくねえからなぁ」

 

そう笑いながら食べるカワサキさんも本当に美味しそうに食べている。それに普段は難しい顔をしているホシノちゃんもうっすらと笑っているし、私も笑っているのが良く分る。

 

「美味しい物は笑顔になるんですね!」

 

「そうだよ。美味いものを食べれば誰でも笑顔になる。これも1つの魔法だな」

 

笑顔の魔法だと笑うカワサキさんにつられて笑ってしまう。なんでもなくて、誰でも出来る筈だけど難しい魔法だ。

 

「皆でテーブルを囲むから出来る素敵な魔法ですね」

 

「その通りだ。本当になんでもない事なんだ。皆でテーブルを囲んで同じ物を食べる。たったそれだけで笑顔は広がっていく物なのさ」

 

本当にそれだけ出来れば争うことなんかないのになと小さく呟いたカワサキさん。その一言はとても静かだったけど、重くて大きい物だった。

 

(ホシノちゃん。多分……これって)

 

(カワサキの考え方の原点なのかもしれないですね)

 

善人も悪人も大人も子供も関係ない、お腹を空かせている相手にはご飯を食べさせてあげる。ヘルメット団への施しは正直腹がたったけれど……人の生き死にを近くで見てきたからこそのカワサキさんなりの平和を目指す考え方なのかもしれない。悪い事は悪い事としつつも、それでもお腹を空かせた人を見過ごせないのがカワサキさんなのだろう。

 

「湿っぽくなったな。悪い悪い。ほかにも色々肉があるんだ。この牛鶏豚の肉なんかも美味いぞ」

 

「なんですか、その奇妙な生物は」

 

「豚と牛と鶏のキメラ。食用でな、これがまた美味いんだ」

 

美味しいものを出してくれるカワサキさん。ちょっと奇妙な生物の肉だったりするけど、美味しいのは間違いない。

 

「本当だ。鶏肉の味がするッ!」

 

「これはまた……独特で美味しいですね」

 

牛肉の赤身肉の歯応え、豚肉の脂、そして鶏肉のぷりっとした独特の食感は宝石肉とはまた違うが、美味しいお肉だった。食べすぎなくらい焼肉を楽しんでお腹一杯だったんだけど……。

 

「このアイス美味しすぎるッ!? なんですか味が食べてるうちにコロコロ変わるんですけど!?」

 

「濃厚なのにさっぱりしてて、いくらでも食べれそうなんですけど、これ何のアイスって言ってました?」

 

「虹の木の実。虹みたいに7回味が変わる木の実」

 

とんでも食材で作られたアイスは苺とか林檎とか、食べてるうちにどんどん味が変わって行く不思議なアイスのデザートもしっかりと食べてしまって……。

 

「無理、動けない」

 

「……少し休みましょうか」

 

「少し食わせすぎたか、すまん」

 

食べ過ぎて私もホシノちゃんも揃って動けなくなってしまったけれど、不思議と悪い気はしなくて、ホシノちゃんも怒る事も無く私とホシノちゃんは寄り添いながら昼寝をしたんだけど……

 

「カワサキさん。なんか身体が光ってるんですけど」

 

「害はないって言ってましたよね? なんなんですかこれ、めちゃくちゃ光ってるんですけど」

 

比喩じゃなくて身体が光っていた。ついでに言えば抜けた髪まで光っていた。間違いなくカワサキさんが出してくれた料理が原因だと思いどういうことだと尋ねたんだけど……。

 

「なにそれ、知らん。こわっ」

 

「怖いって何ですか!? 怖いのはこっちなんですけどッ!?」

 

「元に戻るんですよね!? これ元に戻りますよね?」

 

「いや、知らん。っていうか何で光ってるんだ? 俺は光ってないぞ?」

 

「だからそれが何ですかって聞いてるんですよ!?」

 

「害あるじゃないですか! 現在進行形でッ!!」

 

「いやでも、まじで知らないんだが……」

 

夜なのに昼レベルで光ってる私とホシノちゃんは結局次の日の夜まで光り続け、当然そんな様子では人前に出る事は出来ず1日生徒会室に篭もり書類整理に没頭する事になるのだった……。

 

 

メニュー10 お茶会 へ続く

 

 




女子高生ですけど、焼肉はありですよね? ここはちょっと悩む所でしたがセーフと思い焼肉を入れました。なお宝石肉と虹の木の実はトリコネタからですね、多分効能に神秘の最大量上昇とか、ランクアップとかあると思います。次回は付け焼き刃になる上に、原作では登場してない2年前のティーパーテイを出しつつ、お茶会をして見ようと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
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