メニュー4 柴関ラーメン
夕食の為に柴関ラーメンに向かう途中脳裏を過ぎっていたのは「裏切り」の文字だった。あれは結局カワサキの悪い大人のお芝居に引っかかった訳だが……自分で思っている以上にショックだったのを覚えている。
(それだけ絆されてしまったという事でしょうか……)
最初は私とユメ先輩のアビドスにずかずかと入ってきた嫌な大人だった筈なのに、今ではアビドスにいるのが当たり前で、信用出来る大人になっていた。私達を苦しめていた大人や、口先だけの大人と違って行動し、先行きの見えなかった私達に「未来」という道を示してくれた。寄り添ってくれた。それは自分で思う以上に嬉しく、頼りにしていたようだ。
「次演技でも裏切ったら本当に許しませんからね」
「分ってる分ってる。もうやらないって」
「カワサキさん。眼鏡掛けるんですね?」
もう演技でも裏切るなと柴関ラーメンに向かうまでの道中でも何回も口にしているのを見かねたのか、ユメ先輩が強引に話を変える。
「確かに目……悪かったんですか?」
黒のフレームに逆三角形に近い丸みを帯びたガラスの眼鏡を掛けている。1週間ほど一緒にいるが、カワサキが眼鏡を掛けているのを見るのはこれが初めてだったので、もしかして目が悪いのかと尋ねるとカワサキは首を左右に振った。
「ああ。これか、これは認識阻害のアイテムだ。ユメ達と一緒にいるのをカイザーに見られると不味いからな」
「不味いって土地の契約ですか?」
「ああいう悪徳企業のやり口はいやってほど知ってる。ヘルメット団だったか? あいつらと傭兵を嗾けてくる可能性も高い。特に俺とユメ達の繋がりがあると騙されたと騒ぎかねん。だから俺を俺と認識出来ないアイテムを装備してるんだよ」
からからと笑うカワサキ。カワサキに驚かされるのは今に始まったことでは無いので、もう突っ込まないですけども。常にカイザーを警戒しているのを見るとカワサキから見てもカイザーは悪辣で厄介な会社のようだ。
「契約を無効にされたらどうするんですか?」
「その前にあいつらを実利で殴る。早い段階で複合商業施設を建てて、形上はユメとホシノは俺の下についたってことにして、カイザーもネフティスも口を挟めないほどに形を整える。あいつらは敵だからな」
カイザーは勿論そうだが、ネフティス……アビドスを見捨てた企業も敵だとカワサキは断言した。
「敵って言いすぎですよ?」
「お前を遭難するのが確定の場所に送り出した連中に、連邦生徒会から金を貰っておきながら暴利を押し付けてくる企業だぞ? 俺にとっては敵だ」
「待ってください、ユメ先輩が遭難するのをネフティスは分っていたんですか!? それに連邦生徒会ってどういう事ですか!?」
聞き捨てならない言葉に思わず声を荒げるとカワサキは苦笑いを浮かべる。
「状況証拠だから証拠はないぞ」
「それでもです。教えてください」
カワサキはいつも状況証拠、根拠はないと言いつつも裏取りはしっかりしている。今回も何か証拠の1つを掴んでいると思い教えてくれと頼む。
「……まずだがアビドスは2人しかいないとはいえ学校として成立している。たとえ自治区が殆どなくても、ユメの生徒会長っていう肩書きは大きい。ユメがいなくなれば、残りはホシノだけ。ホシノがヘルメット団でもいい、傭兵でもいい、カイザーの圧力に負けてもいい。ユメを失い傷心のホシノがアビドスを離れればゲームセット。その瞬間にアビドスはカイザーかネフティスに乗っ取られる」
もしもカワサキがユメ先輩を見つけなければそうなっていたであろう可能性。つまり限りなくそうなっていた未来がカワサキの口から語られる。
「じゃ、じゃあ、連邦生徒会から金を貰っていたって言うのはなんなんですか?」
「連邦生徒会とカイザーのつながりはほぼ確実だと俺は思ってる。連邦生徒会から金をアビドスに出すのは嫌だが、カイザーに出資し、カイザーに恩を売りつつ、アビドスに金が行くように動いていたとし、書類上は連邦生徒会から支援を送ったと記載していたと考えると9億の負債は実際は0。カイザーは何の痛手も無く、歴代のアビドスの生徒からの返済金を受け取り、それで懐を満たす。そして連邦生徒会はしっかりとアビドスに支援は行っているが、現在のアビドスの在校生がそれを生かし切れていないとし、アビドスの衰退はアビドスの生徒の自業自得とする。そしてマネーロンダリングを黙る変わりにカイザーに就職って所だな。実際卒業した連邦生徒会の役員がそのままカイザーに就職しているのを見るとほぼ確実だな」
無論証拠は無いがと付け加えられるが、ありえない話ではないと思ってしまった。
「あとな、カイザーはアビドス砂漠で何かを探してるらしい。それが欲しいからついでにアビドスに圧力を掛けてるみたいだぞ、アビドス生徒会があれば邪魔をされる。だから先にアビドスを潰すことを選んだみたいだ」
「「は?」」
つまりあの異常な利息は私達をアビドスから追い出すのが目的で、カワサキのいう通り借金を回収するなんて目的は微塵もなかったというのだ。
「理事がそう言ってたんだ。たぶん兵器の類じゃないかと俺は踏んでいる。その場所を教える事が土地を売る条件だった」
「だ、大丈夫なんですか!? その兵器がこっちに向けられたら」
「一応契約は結んである。それに土地を獲得したことでクランアイテムも使えるようになるから守るのは大丈夫だと思う。ただあいつらの宝探しの動向は探っておく必要があるし、借金はまだある。土地を取り返して1歩前に進んだから次の段階だ。その柴大将だったか? その人は信頼出来る人なんだろ?」
「勿論です! 私とホシノちゃんをずっと応援してくれてます!」
「それにお金がない時はラーメンを奢ってくれる事もあります。アビドスの大人で数少ない信用出来る人物です」
話をすり返られた気がしなくもないが、カワサキの話の意図は分かっているのでその話に乗っかることにしました。
「出来れば色々と出来る技術職の人がいると良いですよね」
土地を手に入れた次は商業施設を動かす為の人員の確保。柴大将はアビドスの顔役でもあるのでここでカワサキを紹介するのは大きな意味がある。
「その通り。あいつらがこっちを叩く情報を集める前に先手先手で動く。ユメは近い内に俺とホシノと一緒に地籍調査票をDU地区に取りに行ってくれ、俺はクランアイテムの確認をする」
「分りました! 上手く行けば砂祭りに向かって大きく前進だね!」
「そ、そうですね。はい、私もそう思います」
私とユメ先輩の喧嘩の切っ掛けになった砂祭りの事を言われて一瞬硬直するが、ユメ先輩の言葉に同意する。今までの先の見えない道のりではなく、確かに前に進んでいるという実感がある。まだまだこれからだが……確かに前に進めた気がする。そんな話をしていると柴関ラーメンの前についた。
「良い匂いだな。これは期待出来る」
「すっごく美味しいからカワサキさんも気に入りますよ! 柴大将こんばんわー」
「こんばんわ」
ユメ先輩が先頭で暖簾をくぐり、私もそれに続き店の中に入りすぐに振り返る。今まで散々私達を振り回してくれたカワサキの驚く顔を見るために私とユメ先輩は先に店内に入ったのだからしっかり見せて貰わなければ意味がない。
「いらっしゃい! おや? ユメちゃんにホシノちゃん。後の大人は?」
「は……柴犬?」
キヴォトスに馴れていないカワサキが柴大将を見て、目を丸くしているのを見て私もユメ先輩も思わず笑う。いつも私達を驚かしてくれるカワサキの驚いた顔にほんの少しだけだが溜飲が下がるのを感じるのだった……。
柴関ラーメンの店主は柴犬だった。何を言っているか分らないと思うが俺も分らない。目元に傷があり、作務衣を来た二足歩行の柴犬がユメとホシノのいう柴大将だった。
「驚きましたか?」
「驚くに決まってるだろ。俺はロボットしか見てないんだから」
獣人がいるとは聞いているが、実際に見るのは大違いだ。柴犬が二足歩行し、ラーメンを作っているのは俺にとってはかなり驚きだった。
「一泡吹かせれたね!」
「ですね」
ユメとホシノのちょっとした仕返しにやれやれと肩を竦めてメニュー表を開く。
(思ったより充実してるな)
ラーメンは柴関ラーメンとジャンボ柴関ラーメン、そして塩・醤油・味噌・豚骨・豚骨醤油の5種類の7種類。それに炒飯や餃子、唐揚げといったサイドメニューも充実している。
「好きに頼んでいいぞ。土地を買いはしたが2400万残ってる。利息の500万を抜いて1900万は好きに使える遠慮はいらないぞ」
どれだけ食べると思っているんですかと突っ込みを入れつつもホシノは手を上げる。
「えっと私は柴関ラーメンにチャーシューと煮卵追加、あと柴関炒飯で」
「じゃあ私は豚骨醤油にもやしと炙りチャーシューと私も柴関炒飯でお願いします!」
「俺は柴関ラーメンをトッピングなしで麺少なめで」
追加トッピングなしでまず店名にもなってる柴関ラーメンを頼む。するとホシノが俺にジト目を向けてくる。
「好きに頼めって言っておいて自分はそれですか?」
「俺もそう思うぜ? ユメちゃん達にしっかり飯を食わせようっていう姿勢はいいが、2人が気にするぜ?」
「違う違う。ラーメン全部食べるから1つ1つ少なめにして欲しいんだよ」
柴犬だが、この柴大将の腕は一流だ。そんな職人のラーメンを食べないという選択はないが、通常だと全部食べ切れないので少なめにしただけなのだ。
「カワサキさんって実は結構食べます?」
「まぁ食うほうだな。というわけで柴大将。悪いんだが食べ終わるごとにラーメンを作ってもらって良いか?」
「あ、ああ。かまわねえよ。ちょっと待ってもらうかもしれんが」
「俺の我侭だからそこは気にしない、よろしく頼む」
快く引き受けてくれた柴大将に感謝しながら、彼の作業に視線を向ける。
(なるほど、一流だ)
ラーメンを茹でるタイミング、スープの調合、そしてトッピングの美しさ。どれも1級品だと分るのと同時に俺とは違うなと苦笑する。作れないわけでは無いが、このレベルのラーメンは俺には多分作れないだろう。
「そう言えば砂祭りとか言ってたが、なんなんだそれは?」
「あ、あー……私の夢なんですよ、カワサキさん。私はアビドスが発展していたときを知りません、だけど昔は笑顔に溢れていたって思うんです。だから砂祭りを開催してアビドスにもう1度笑顔を広げたいってそう思うんです」
ユメの夢は荒唐無稽と言えばそれまでだろう。砂祭りを開催しても誰も着てくれないかもしれない、アビドスが何か変わるかも分らないだけど……。
「いい夢だと思う」
「そうですか? ホシノちゃんには現実を見ろってよく言われるんですよ」
「ユメ先輩! それ言わないでくださいよ……」
きまずそうなホシノ。砂祭りがユメとホシノが喧嘩をした理由ならば、それを言われるのは気まずいのは俺でも分る。
「現実だけ見ても駄目だし、夢だけ見ても駄目だと俺は思う。現実主義のホシノと夢を語れるユメ。2人で俺は丁度いいと思う、どちらかが行き過ぎればどちらかが止める。俺はそれで良いと思う、それにユメの夢は綺麗だ。俺はそういうのは好きだ」
誰かの為の夢を語れるユメは素晴しいと思う。困難な道だろう、苦しい事や裏切りもあると思う。だけどそれでもその夢は綺麗で美しい物だと俺は思う。
「そうですかね……ありがとうございます。カワサキさん」
「私も今は良いと思います。ユメ先輩」
「ホシノちゃん……うん! ありがとう! カワサキさん、私もっと頑張ります!」
「良い心意気だよ。ユメちゃんはいよ! お待たせ!」
俺達の話を聞いていたのか、話が終わったタイミングで柴大将が威勢のいい声と共にラーメンを運んで来てくれた。俺はその丼を見なくても、いやもっと言えば食べなくても分った。柴大将は本物だと……その香りだけで分かった。
(これは美味い)
スープの香りだけで間違いなく美味いと分る逸品だ。ユメとホシノも嬉しそうな顔をしながら箸に手を伸ばす。
「それじゃあいただきまーす」
「「いただきます」」
ユメの号令で手を合わせていただきますと口にし丼に視線を向ける。澄んだスープの中に泳ぐのは中太麺、その上には半熟の煮卵と味が良く染み込んでいるであろうチャーシューが2枚。
(これで580円……安いな)
このクオリティでワンコインとちょっととは恐れ入る。麺を持ち上げて勢いよく啜り目を見開いた。
(……ストレート麺でこれだと……? これは相当な当りだ)
縮れ麺でスープが絡むのは分る。だがこれはストレート麺なのにスープが良く絡んでいる。それに麺もモチモチとコシが両立している。
(これは手打ちか、少なくともこの拘り。どっかに頼んだ代物じゃない、この配合は工場じゃ無理だし、やってくれるはずがない。柴大将の拘りの多加水熟成麺と見た)
多加水熟成麺は簡単に言えば水を通常よりも多く使い、数日間熟成させる必要がある。だが手間が掛かる分だけ美味い麺なのは間違いない。蓮華を手に取りスープを啜る。麺と共に食べるよりもスープ単品で飲むことで分かる事がある。
(……醤油から違うな。これはキヴォトスで買えるのか? 間違いなく最高の1品だ)
スープのベースの醤油から美味いのは間違いない雑味が一切ない。恐らく樽で熟成された昔ながらの醤油だろうが、間違いなく醤油の分類としては再仕込み醤油だ。
(……鶏がらと海鮮出汁。両方ともかなり味が濃いが、この醤油がそれを受け止めている)
ただの配合ではこの味は出ない、相当な時間研究を重ねた1杯だと分る。
「どうだい? 俺のラーメンは美味いだろう」
「ええ、とても美味しいです。俺には到底無理な味だ」
「ははは、時間があればあんただって出来るだろうよ。その手を見れば分る。その手は料理人の手だってな」
えっとユメとホシノが驚いているが、料理人の手って言うのは見れば分る物だ。
「最初は2人が騙されてるんじゃないかと思ったが、俺の勘違いだった。あんたは良い人だよ、俺には分かる」
「俺にも分りますよ。柴大将あなたはとても良い人だ」
「カワサキさん。口調ちがくないですか? なんかこう凄い丁寧です」
まぁ確かに俺の普段の口調とは違うだろう。俺は美味い料理を作る人間には敬意を払うようにしている。その知識とその技術に、そして何よりもその心に俺は敬意を払うのだ。
「美味い料理を作る人間に悪人はいないからな。その点柴大将は俺が会って来た料理人の中でも5本の指に入る」
客を見下したり、客によって使う食材を変えたりするのは論外。食べる相手の事を思いやれないのも、ただ良い食材を使うだけっていうのも気に食わない。良い食材や調味料を使えば美味い料理が出来るわけではない、無論良い食材も美味い料理の条件に入ってくるが、それだけでは駄目だ。食べる相手の事を考えて、心を込めて作る――それが大事だと俺は思っている。
「嬉しいねぇ、今度はあんたの料理も食べさせてくれよ」
「勿論。腕によりを掛けて作らせて貰いますよ」
人間の屑(カイザーグループ)しか見ていなかったのでキヴォトスは最悪だなと思っていた。だが柴大将という尊敬に値する人物と出会えたことで俺は少しだけキヴォトスの民度を見直したのだが……。
「やっぱりクソだな。キヴォトスの自称大人」
「分りますか、カワサキと柴大将が例外で、基本的にキヴォトスの大人は最悪です」
「あははは……否定出来ないかなー」
余りにも多すぎる屑と外道に少しだけ上方修正したキヴォトスの民度だが、すぐにそれは下降修正する事となるのだった……。
カワサキさんが柴関ラーメンの全メニューを制覇しているので隣のボックス席に柴大将に来て貰った。
「悪いな。今日は大分忙しくて」
「いえいえ、大丈夫です。それに柴大将にはとても大事な話があるんです」
鞄からアビドスの土地の権利書を取り出す、すると流石の柴大将も驚いた表情をした。
「まさか……買い戻したのかカイザーから!?」
「はい。と言ってもカワサキさんがですけど」
カワサキさんは私とホシノちゃんにアビドスの土地を売るという名目で譲ってくれたが、これではネフティスやカイザーの付け入る隙になると教えてくれた。
「準備が出来たら私とホシノちゃん、それとカワサキさんでの共有名義に変更します。これでアビドスの市街地は私達アビドスの物になります」
「そうか……そうか……頑張ったな2人とも」
頑張ってくれたのはカワサキさんで、私達はただ振り回されただけだけなのでそう言われると恥ずかしくなる。
「胸を張りなユメちゃん。あの人が手伝いたい、助けたいと思ったから助けてくれたんだ。そう思わせる事が出来たのはユメちゃんの今までの努力だ。それを恥じることはないんだ」
「そう……でしょうか」
ホシノちゃんには叱られてばっかだし、カワサキさんには助けられてばっかりだと俯くと頭に手をおかれた。
「カワサキさん」
「俺は誰にでも手を貸すわけじゃない。俺にとっての基準がある」
ラーメンを食べ終えたカワサキさんは柔らかく微笑み、私達が座っている席に腰掛けた。
「ユメとホシノの努力を全部知ったなんて言えないが、それでもお前達は頑張った。頑張ったからアビドスがあると俺は思う、俺はそんな2人の頑張りを嘲笑う奴を決して許さない。正しい方法でアビドスを救おうとしていたから俺もユメとホシノを助けたいと思ったんだ。それに俺もお前の夢に賭けて見たくなった」
成果は殆ど無かった。それでも間違った事をしたくないと前を向いてきた……それにもちゃんと意味があったのだ。
「ありがとう……ございます」
「礼を言うのはまだまだこれからだ。カイザーは邪魔をしてくるだろうし、借金問題も解決してない。全部終わってからだ」
借金問題はまだ解決していないし、砂嵐の問題も解決していない。ほんの僅かだけ前に進めただけ、だけどそのほんの少しが大きな1歩だった。
「柴大将。実はお願いがありまして」
「俺にか? 何をすればいい、ホシノちゃん」
「人を集めてください。実はこのカワサキさん魔法使いなんですよ」
「……熱でもあるのか? 「柴大将。これでどうですかね?」……たまげたな。おい……」
カワサキさんが右手に炎、左手に氷を出す光景を見て、柴大将は驚きながらも魔法使いって言うのを信じてくれたようだ。
「それでその魔法で砂嵐は何とかできるのかい?」
「正直言って分りません。まだまだ調査が必要ですし、それに仮に砂嵐を魔法で止めた場合のリスクが怖い」
「リスクって何ですか? まだなにかあると?」
ホシノちゃんがそう尋ねるとカワサキさんは思い過しなら良いんだがと前置きをしてから、自分の危惧していることを話してくれた。
「キヴォトスには神秘がある。砂嵐が神秘によって引き起こされた物と仮定すると無理に砂嵐を止めるとその砂嵐を起こしてる奴が乗り込んでくる可能性が高い。俺は自衛程度には戦えるとは思うが、ヘイローがないからユメとホシノほど耐久はないし、銃を使った経験は殆どないから攻撃力もない。ユメとホシノだけでアビドスを砂に沈めた化物に勝てるか?」
あれだけ発展していたアビドスを過疎化させ、都市部を砂漠に沈めた砂嵐を起こしている何かと戦えるか? と言われ、その何かとの戦いを想像するが私もホシノちゃんの答えは同じだった。
「それは無理かと……」
「勝てるわけがありませんね。2人では余りも戦力が足りない」
私は守りこそ得意だが攻撃は得意ではないし、ホシノちゃんも基本的に短期決戦型だ。今までは仮想敵がオートマタやヘルメット団だったので問題なかったが、そんな化物と戦うことを考えればそれは不可能としか言いようがなかった。
「だろ? だからここは慎重に動きたい。砂嵐を止めるのは戦力を整えてからだから後回しにして、暫くは砂嵐の被害を少なくする方針で動こうと思っている」
私とホシノちゃんだけでは勝ちきれないところか死んでしまう。いや下手をすればアビドスが滅びる可能性もあるかもしれない……それほどまでにアビドスを襲う砂嵐は脅威だ。
「戦える人員を集めろって言う話か?」
「違いますよ。短時間でアビドスを復興する為に俺の魔法で色々とやりたいんですけどね。如何せん手が足りなくて柴大将が声を掛けてくれたら何人か融通出来ませんか?」
「うーむ……出来なくはないが、具体的に何をするんだ?」
柴大将の問いかけにカワサキさんは悪戯坊主。年上の男性の男性に抱く感想では無いが、悪戯を考えているような子供のような顔で笑った。
「まずは超巨大プールを開業しようと思いましてね。その次に複合商業施設も準備します」
「魔法でそんな事も出来るのか?」
「出来るんですよ。でも従業員が必要でしょ? 後開業手続きも色々とありますがこれからの時期にプールは目玉になると思いませんか? 柴大将」
そう笑いながらカワサキさんはカレンダーに視線を向ける。その日付は5月31日……キヴォトス全域が暑くなろうとする6月……。そして衰退していたアビドスの復興が始まる私の人生で最も暑い6月が始まろうとしていた……。
メニュー5 水晶鶏 へ続く
柴大将のラーメン絶賛し、柴大将に敬意を払うカワサキさんを書いて見ました。腕のいい料理人は尊敬するカワサキさんなので聖人……いや聖犬の柴大将は尊敬対象ですね。土地を手に入れたので次回くらいから開発の準備ですね。あと原作前なので原作の連邦生徒会役員はほとんどでない感じで、まだ役職を得てない生徒会長とかを出せたらなと思っております。後ユメとホシノがダークサイドに落ちる理由の一旦に少し触れて見たいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。