マジックザギャザリング:多元宇宙の守り手   作:ナタタク

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第12話 支給品

「クラウド君、これを試してみてください」

「バイク…?」

プリマビスタの中になぜか存在するサーキットに案内されたクラウドとティファ、バレットが船長に見せられたのは彼らにとっては見覚えのあるバイクだった。

エアリスを救出し、神羅ビルからの脱出する際にクラウドが奪取したバイクであるハーディ=デイトナ。

違いがあるとしたら、マフラー部分は桁違いに大きいこととフロント2輪、リア1輪の三輪バイクであることで、見るからにパワーはハーディ=デイトナを上回っているだろう。

「サーキットがあることもそうだが、バイクまであんのかよ…どうなってんだ?この飛空艇は」

「飛空艇ではありません。次元踏破船です。見た目は確かに飛空艇ですが、次元操作によって、こうした空間も確保しているのですよ」

「そういえば、この場所への行き来の時は…なんつうか、グルグルする妙な場所から入ったな。まったく、わけがわからねえな」

「仕組みがわからなくても、使い方がわかれば問題ないものですよ。このバイクはあなたの適正に合わせて用意したものです。数多くの剣を収容でき、それでも余りあるほどの荷物の保管も可能です」

「そんなバイクをどうして…?」

「白鷺市では足で動くだけでは限界があります。ケイ君は自転車を持っていますが、それでも足りないでしょう。ですので、白鷺市での活動範囲を広げるために用意したのです。最も、警察からすると道路交通法違反の改造車になります。ですので…。クラウド君、停車して降りた後でカードを抜いてください」

「カード…?」

1周走り終えたクラウドがバイクの左ハンドルあたりにあるETC車載器のようなものにはカードが差し込まれており、クラウドは言われたとおりに降りた後でカードを抜く。

するとバイクが変形とともに小さくなっていき、スマホのような形となってクラウドの手に収まる。

スマホはカード差込口が追加されている分、ケイが持つスマホと比べると大型だ。

「ケイたちが使っている電話か…?」

「はい、そしてエネルギーは通常のスマホと同じく電気を使います。そして、カードそのものもETCの機能がありますので、高速道路に入ることもできます。また…ゲームにも使えます」

「ゲームにも…」

《スマートマシン、フェンリル》という名前は刻まれたカード。

確かにMTGのカードに見え、表面はスマホ、裏面は先ほどのバイクのイラストになっている。

 

スマートマシン、フェンリル ③

伝説のアーティファクト

あなたがコントロールしている伝説の人間はそれぞれ+1/+1カウンター1個が置かれた状態で戦場に出る。

(T):好きな色1色のマナ1点を加える。

⑤(T):このカードを変身させる。その後、このカードはターン終了時までアーティファクト・クリーチャーになる。

 

『携帯できるモンスターマシン、そんなものはこの世界にまだ存在してはいけない』

 

ライディングマシン、フェンリル ①

伝説のアーティファクト-機体

(T):好きな色のマナ2点を加える。

あなたのライブラリーの一番上にあるカード1枚をいつでも見てもよい。

「ライディングマシン、フェンリル」が攻撃するたび、あなたのライブラリーの一番上のカードを公開してもよい。それが装備品・カードであるなら、それをマナ・コストを支払うことなく戦場に出し、あなたがコントロールしている人間・クリーチャー1体を対象とし、それにつける。この効果で装備された装備品は次の終了ステップの開始時に、その装備品をはずす。

搭乗1

6/6

 

『狼は孤高の象徴。なれど、孤高は孤独にあらず。一人にあらず』

 

「フェンリル、か…」

「現状、あなたしか乗りこなせる人はいないでしょう。この世界のためにも、よろしくお願いします、クラウド」

 

「クラウド専用のバイク、か…。確かに、俺には乗りこなせそうにないな」

フェンリルを受け取るクラウドを見守っていたアンジールは目を細める。

移動手段が増えるのはいいが、気になるのはいつの間にこのようなものを船長が用意していることだ。

ただの親切心、と思えればどれほどよかったか。

英雄になるためにソルジャーになり、今では自由になったアンジールだが、それでも生きている間に染み付いた経験が疑念を抱かせる。

(船長…いったい何者だ?)

 

プリマビスタの慧の部屋。

慧はベッドに座り、向かいに座る茜の目をまっすぐに見つめていた。

「…ごめん。今まで、ずっと黙ってて」

茜は拳をぎゅっと握り、唇を震わせながら言った。

「慧が…あんな戦いをしてたなんて…」

彼女は先ほど、バス停の屋根の上で見た光景を思い出し、胸が締め付けられるのを感じた。

金色の髪になった慧、現実ではありえない怪物のような存在、カードが実体化して戦う光景。

「プレインズウォーカーって…慧が選ばれたってこと?」

「うん…僕自身も、まだよくわかってない。でも、このデッキケースに触れた瞬間から、全部が変わった」

慧はボロボロのデッキケースをテーブルに置き、静かに説明を続けた。

ファイレクシアという脅威のこと。

プリマビスタと船長のこと。

ジタンやラムザ、クラウドたちが自分の体を借りて戦ってくれていること。

茜は最後まで黙って聞き、深く息を吐いた。

「…わかった。全部、信じるよ」

彼女は慧の手をそっと握った。

「でも、慧…私には戦う力がないよね? プレインズウォーカーじゃないから」

慧は目を伏せた。

「うん…ごめん。茜を危険な目に遭わせたくない。今日のことも、できるだけ忘れてほしいって……船長も言ってた」

茜は少しだけ笑ったが、その目は真剣だった。

「忘れられるわけないでしょ。慧が毎日あんなに疲れて、命がけで戦ってるなんて…知っちゃったんだから」

彼女は慧の手を強く握りしめた。

「私にできることが何かあるなら、教えて。戦えなくても、支えることくらいはできるはずだよ」

慧は茜の真っ直ぐな瞳を見て、胸が熱くなった。

「…ありがとう、茜」

 

プリマビスタの船長室。

船長が一人、紅茶を淹れながら静かに呟いていた。

「支給品は無事に渡せましたか…。次は、彼女の扱いですね。ただ…あなたの入室を許可した覚えはありませんよ、ディリータ君」

壁に背を預けて船長をにらむように見つめるディリータ。

明らかに怪しんでいることは誰の目で見ても分かることだろう。

「勝手に入ったことは詫びる。だが、聞きたいことがある」

「…何でしょう?」

「お前…ラムザをどうするつもりだ?」

ディリータの声は低く、抑揚を抑えていた。

「オヴェリアを救うために協力することには異存はない。だが、お前の目的がわからない。ラムザを利用しているのではないかという疑念がある」

ただ、世界平和のためだけにこんなものを作り、活動しているとは到底思えない。

ラムザのような人間が船長ならそうするかもしれないが、あのような人間は一人で十分で、船長はお人よしとは到底思えない。

船長はカップを静かに置き、黄色い瞳をディリータに向けた。

「利用、ですか。言葉が厳しいですね」

「答えないということは、図星か」

船長は小さく微笑んだ。

「それほどに大切なのですね、親友である彼が…」

「…あいつを利用していいのは、俺だけだ」

「なるほど…私は多元宇宙の均衡を守るために動いています。ファイレクシアの侵食を止めること。それが私の目的です。ラムザ君をはじめ、皆さんの力は必要不可欠です」

「それだけか?」

「それだけです」

ディリータは一歩近づき、船長を睨みつけた。

「煙に巻くな。お前が何を考えているのか、すべてを見透かしているわけではないが…ラムザを駒のように扱う気なら、俺が許さない」

「あなたはいつも、疑うことから始めるのですね。それがあなたの生き方なのでしょう。ですが、今は同じ船に乗っているのです。互いに疑い合うよりも、信じるべき時ではないですか?それとも…同じ過ちを繰り返しますか?」

ディリータは答えず、ただ冷たい視線を船長に注いだまま、音を立てて扉を閉じて部屋を出て行った。

船長は一人残り、窓の外の久遠の闇を見つめ、紅茶を口にする。

「…まだ、早いですね」

まだ熱く、色の出も薄い。

普段ならしないミスに船長は苦笑する。

 

廃墟と化した世界の中心、夢の都の残骸の奥深く。

巨大な球体が浮かぶ玉座の間では、皇帝が静かに座っていた。

その前に跪く黒い鎧の騎士に皇帝が口を開く。

「次に送る駒は決まったぞ」

皇帝は指を鳴らすと、カプセルから黒い油のような液体を取り出した。

その液体は蠢き、まるで意志を持つかのように形を変える。

「ミルダーヴ…お前をもう一度、表舞台に立たせてやろう」

液体が床に落ち、瞬時に人の形を取る。

現れたのは、かつてイヴァリースでラムザを深く憎んだ男——ミルダーヴ・フォルス。

今やその体はファイレクシアの油に侵され、肌は不自然な金属光沢を帯び、瞳は赤黒く輝いていた。

ミルダーヴはゆっくりと顔を上げ、皇帝に向かって跪いた。

「…ラムザ…ベオルブ…」

その声には、かつての憎悪がより濃く、ねじくれた形で宿っていた。

皇帝は満足げに笑う。

「ラムザへの憎しみは、油によってより強くなっているようだな。行け、ミルダーヴ。お前が望む復讐を、存分に果たせ。ただし…あのプレインズウォーカーの灯も、必ず手に入れろ」

 

ミルダーヴが消え、再び2人きりとなる皇帝の間。

しばらくの沈黙が流れ、口を開いたのは皇帝だ。

「一つ…問おう。我がダークナイトよ」

「ハッ…」

「お前は何を望む?かつて、私に成り代わってパラメキア帝国を手にし、そしてパンデモニウムで私を殺した貴様が、なぜ再びその鎧で私にひざまずく?」

黒い鎧のダークナイトは、ゆっくりと顔を上げた。

兜を外し、レオンハルトとしての顔を見せる。

「私は…確かにあなたと戦いました。しかし、皇帝であった時のあなたのすべてを否定していたわけではありません。あの時、私は確かに感じた。あなたの覇道こそが、世界のためになると」

皇帝は静かに目を細め、レオンハルトの言葉を聞いていた。

レオンハルトは淡々と、しかし熱を込めて続ける。

「私はあなたを殺した。だが、それはあなたが暴走し、世界を滅ぼそうとしたからだ。今のあなたは…違う。ファイレクシアをも支配したあなたはかつて、私が信じたあなたと同じだ。圧倒的な力による支配こそがすべてを救済する。それが正義だと信じているからです」

ダークナイトとなった時のレオンハルトの姿を皇帝は思い出す。

力を渇望するあの姿を皇帝は信じた。

「…ふむ。ならば、引き続き我が右腕として働け。ミルダーヴの援護も任せる」

「ハッ」

ダークナイトは再び兜を被り、跪いたまま静かに下がった。

皇帝は玉座の背もたれに体を預け、満足げに笑みを浮かべた。

「多元宇宙……面白い玩具が手に入ったものだ」

 

そのやり取りを、玉座の間の上層バルコニーから見下ろす影があった。

派手な化粧に、道化のような衣装を纏った男——ケフカ・パラッツォ。

彼は退屈そうにあくびをしながら、皇帝の会話を聞いていた。

「ふん…またラムザだの復讐だの、つまらない話ばっかり。皇帝陛下も相変わらず退屈な男だねぇ」

ケフカは指先で自分の頰を突き、にやりと笑った。

彼の手のひらには、黒く蠢くファイレクシアの油が少量、蠢いていた。

「でも、この油……面白いね。触れただけで世界が変わるような力…ふふふ、皇帝様が制御しているつもりみたいだけど…」

ケフカは油を指で弄びながら、狂気じみた笑みを深めた。

「僕ちんがもっと上手に、もっと楽しく、もっと壊れるように使ってあげようかな…?へへへ…どんな顔で壊れていくのか、見てみたいよねぇ!」

ケフカは高らかに笑いながら、闇の中に溶けるように姿を消した。

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