白鷺市・駅南部の古い倉庫街、真夜中。
街灯の届かない暗闇の中で、慧に憑依しているジタンが倒した《ファイレクシアンの吸血兵》を見つめる。
取りつかれていたホストと思われる派手なスーツの男は気絶している様子で、一息つきたいジタンは近くの壁に背中を任せる形で座り込む。
「にしても、今日これで何体目だよ、これぇ…」
(確か、4体目かも…でも、《潜伏工作員》じゃないのが気になるね)
「だな…」
ここまで倒した4体すべてが《吸血兵》であり、肝心の《潜伏工作員》についてはいまだに見つかっていない。
かといって、憑依して暴れ回る彼らを捨ておくこともできないため、こうしてジタンやラムザが慧の体を借りて戦っている。
こうした連戦については、ジタンもラムザも問題ない。
こうした修羅場は経験しているから。
だが、問題なのは体を貸してくれている慧で、彼はあくまでも戦った経験のない一般の男子学生だ。
おまけにこの世界でいうインドア派で体力がない。
ジタンが慧の体から抜けると、慧は膝から崩れ落ちるように地面に座り込んだ。
「はあ…はあ…はあ…」
息が上がって、肩で大きく呼吸を繰り返す。
額から汗が滴り、戦闘服が汗でびっしょり濡れている。
「ケイ、大丈夫かよ…? もう限界近いだろ」
(ジタン…ごめん、僕、もう立てないかも…)
「無理すんなって。今日はここまでだ。プリマビスタに戻ろうぜ」
慧はデッキケースを握りしめ、近くの倉庫の扉に虹色の光をかざす。
扉が開き、プリマビスタの広間へ入るなり、慧は床にへたり込んだ。
「慧! 大丈夫!?」
ビビが駆け寄り、モーグリがポーションを差し出す。
ラムザも実体化して慧の肩を支える。
「すまない、ケイ。俺たちも無理をさせてしまった」
「いや…僕が、弱いだけだから…」
慧は苦笑いしながら、ポーションを一口飲む。
体は少し楽になるが、心の疲労は消えない。
なお、ここで慧が飲んでいるポーションはジタン達の知っているポーションとは違う。
ファイナルファンタジーのゲームを手掛けている会社と某飲料会社のコラボ企画で、スタッフの監修によって生み出された飲み物で、実質的には栄養ドリンクと言ってもいい。
なお、これはどうでもいい話ではあるが、とある動画配信者が購入したポーションに様々なドリンク剤や強精剤、サプリメントを混ぜ込んでハイポーションにしようとして大失敗したという動画を配信し、かなりの再生数を稼いだという。
だが、こうしたドリンク剤などは人体への影響などを考慮して慎重に配合して作られているものであるため、決してこのような真似をしてはいけないのは言わずもがなだろう。
船長が地図帳を閉じて近づいてくる。
「お疲れ様です、君たちが戦っている《吸血兵》は陽動とみて間違いないでしょう。本命の《追跡者》を追いたいところではありますが…」
「プリマビスタのレーダーで識別ができないのかよ?」
この4体はいずれも戦うギリギリまで《潜伏工作員》に擬態していた。
放っておくことができないとはいえ、それでも本命を倒さなければ何も解決にならない。
「いくらレーダーを調整しても、反応は同じでした。最も、このままで終わらせるつもりはありませんが…」
「何か、手段があるのかよ?」
「それは…これから考えるところです」
いつも通りの落ち着いた態度を見せた船長が自室へと戻っていく。
「これから考えるって…それって、大丈夫なのかよ…?」
「信じるしかないよ…だって、相手の方が…上手、だし…」
「慧はいったん家に帰って寝てろよ。今なら休めるからよ」
「大丈夫だよ、さっきポーション飲んだし…あれ?」
元気だと示すために立ち上がろうとした慧だが、フラリと前のめりに倒れてしまう。
どうにか起き上がりたかったが、やはり疲労に逆らうことができなかった。
「ほらな、家に戻れよ。ポーションのいいけどよ、やっぱ寝るのが一番だからな」
「ごめん…」
「家までは俺が憑いてやるからな」
ジタンの憑依を受けた慧がプリマビスタを出ていく。
「歯がゆいな…俺たちも、自分の体があれば、戦えるが…」
ゲームで召喚されるときはともかく、それ以外では憑依できるラムザやジタンと体を貸してくれる慧がいなければ現状、白鷺市では何もできない今の状況にオーランは歯がゆさを覚える。
結局、自分は獅子戦争の時から何も成長していないのでは?
無力感を抱くオーランに対して、ディリータは窓の外の久遠の闇を見つめるばかりだ。
翌朝のpauseのカウンター席。
疲れ果てた慧は制服姿でウトウトしており、そんな彼の前に天音が料理を置く。
「慧ちゃん、朝ごはんよ」
茜が用意してくれたコーヒーと焼き立てのパン、コーンスープに目玉焼き。
それらのにおいを感じたことで意識を目覚めさせた慧は礼を言った後で食事を口にする。
「お疲れね、夜更かししたのかしら?」
「ちょっとね…終わってない、宿題があったから…」
「駄目よ、しっかり寝ないと」
「ごめん…」
心配してくれる姉にわびながら、コーヒーを飲む。
その様子を見た天音は厨房へ入ると、仕込みを始める。
食べ終えた慧はカバンをもって店を出た。
「船長さんよ、あれから進捗はどうなんだ?」
船長室に入ってきたオルランドゥが詫びもなしに船長に問いかける。
再び彼らが動き出してから既に4日になる。
慧の負担を考えると、打開策を今すぐにでも出さなければこちらがやられることになる。
そろそろ彼の言う『考え』というのを出してもらわなければ。
「進捗ですか…実は、昨夜のうちに一つ仮説を立てました」
「仮説…?」
「ええ、《潜伏工作員》が求めているのはディリータ君と関係のある人物です。その人物の居場所を探すのに徹しているものが本体でしょう。故に、探すのは《潜伏工作員》ではありません。ようやく、出来上がりましたよ」
「何ができたというのだ?」
「あなた方と同じ存在を探知できるようにしました」
これまでのプリマビスタは確かにファイレクシアン達の存在を探知することはできた。
だが、ラムザやオーランのように魂だけの存在を探知することまではできなかった。
オーランを見つけることができたのはファイレクシアンに追われていて、追い詰められていたからだ。
「魂だけの存在を探知するというのは難儀です。現状、大まかな位置しか特定できないというのが現状ですが…」
先ほどまで読んでいた分厚い本を閉じた船長がフロッピーディスクを手にして船長室を出ていく。
(やはり、気になる…。何者なのだ?この男は…)
その日の夜、広間には慧たちが集まり、モニターに白鷺市の地図が映し出される。
赤い点が一つ、倉庫街のさらに奥――廃工場跡に強く点滅していた。
「ここか…」
ラムザが呟き、ディリータの表情が硬くなる。
「オヴェリアだ…間違いない」
「ですが…気になりますね。彼女のそばに、似た反応がもう一つ」
「もう一つ?」
船長がタブレットを操作し、映像を拡大。
廃工場の奥で、黒いオーラを放ちながら気を失っているオヴェリア。
そして、彼女をかばうように立ち、《潜伏工作員》と戦っている金髪の男。
「あれは…クラウド!?」
「クラウド…?」
「間違いない、クラウドだ!僕の仲間の!!」
彼が手にしている剣が武骨な片刃の両手剣で、自分の知っている剣ではないことが気になるものの、それでもその姿はラムザの知っているクラウドと変わりない。
「まずいぞ…肉体がない状態では、何もできないぞ!それに…なんだ、彼女から出ているオーラは…」
「急いだほうがいいかもしれませんね。彼女も…おそらくは、そのクラウドという男性も限界が近い」
「はあ、はあ、はあ、はあ…」
鉛のように重たい体に鞭うって剣を振るう男、クラウド・ストライフは既に限界を迎えつつあった。
いくら愛用の剣であるバスターソードを振るっても相手に傷一つつけることができず、あしらわれるだけ。
(なんで、だ…なんで、こんなに弱い、俺は…いや、当然か…)
ミディールでライフストリームに落ち、彼女と共に記憶を取り戻したクラウドだが、気が付くとこの町にいて、一緒にいたはずのティファの姿がどこにもなかった。
肉体がないことは物に触れられない違和感からすぐに分かった。
そして、化け物に追われている彼女を見つけたクラウドは何もできないことはわかっているくせに、戦ってしまった。
自分には助ける余裕などなかったのに。
《潜伏工作員》の細長い腕が再び襲いかかる。
クラウドはバスターソードで受け止めるが、衝撃で膝が折れる。
「…くそっ…!」
オヴェリアは意識を失ったままで、鼻に油のにおいを感じる。
既にファイレクシアンの油を受けていた彼女は徐々にファイレクシアン化しつつあり、黒いオーラはその証拠だ。
その時、廃工場の扉が蹴破られる音が響いた。
「クラウド!!」
ラムザが憑依した慧が飛び込み、《潜伏工作員》が彼に視線を向ける。
わずかに注意をそらしたタイミングでクラウドは倒れているオヴェリアを物陰に隠す。
「クラウド!君も、ここに来ていたんだね!!」
「ああ…だが、なぜ俺の名前を知っている?初対面のはずだ」
(初対面…?そういえば…)
ミュロンドの大広間でヴォルマルフと戦っていた時、彼がクラウドに対して奇妙なことを言ってたことを思い出す。
コピーとかどうとか言っていたようだが、戦いの中だったために細かく聞き取ることができなかった。
「クラウドは休んでいて!あいつは…僕がやる!いくよ、ケイ!」
(うん、ラムザ!)
「クラウド・ストライフ…やはり、彼もこの世界に来たか…」
船長室に戻った船長は本棚を動かし、そこにある隠し扉を開いて奥へと向かう。
真っ暗な通路を進む彼はその奥にある大きなカプセルを見つめる。
液体に満たされたその中にある何か。
「私は、構わないさ…。私が為してしまったことを考えれば、当然のこと。だが…彼は、違うだろう。彼に…何の罪があるというのだ?」
カプセルの中の存在に問いかける今の船長に、今までの船長の面影はない。
「できるなら…私の手で決着をつけるべきだろう。だが…今の私には、その力はない。この船がなければ…無力なのだ、私は…」
4ターン目(ラムザのターン開始時)
進化した潜伏工作員
手札5
LP20
場 吸血コウモリ 0/1(クリーチャー-バット)飛行
吸血鬼の夜鷲 2/3(クリーチャー-吸血鬼・シャーマン)飛行・接死・絆魂
土地(黒2 白2)すべてタップ
ラムザ
手札4
LP19
場 見習い騎士、ラムザ・ベオルブ 3/3(伝説のクリーチャー-人間・騎士)
リターン・ターミナス(伝説のアーティファクト-ターミナス・ストーン)
土地(水1 黒1 《始まりの町》1)
「いくぞ、僕のターン!」
ラムザ
手札4→5
「土地カードを1枚置き、僕は手札から《隠された真実》を発動。デッキの上から3枚を確認して1枚を手札に加え、それ以外を墓地へ送る」
デッキから墓地へ送られたカード
・暗黒騎士、セシル
・バハムートのドミナント、ディオン
「そして、僕は《善意の騎士》を召喚」
善意の騎士 2/2(クリーチャー-人間・騎士)黒からの呪禁・先制攻撃 ①・白
「《善意の騎士》は黒のパーマメントがコントロールされている場合、パワーが1アップする。僕のフィールドには《リターン・ターミナス》がある」
善意の騎士 2/2→3/2(クリーチャー-人間・騎士)黒からの呪禁・先制攻撃
(大丈夫?ラムザ。《吸血鬼の夜鷲》は飛行を持っているよ、それに…)
「大丈夫、僕はこれで、ターンエンド」
進化した潜伏工作員
手札5
LP20
場 吸血コウモリ 0/1(クリーチャー-バット)飛行
吸血鬼の夜鷲 2/3(クリーチャー-吸血鬼・シャーマン)飛行・接死・絆魂
土地(黒2 白2) すべてタップ
ラムザ
手札5→2
LP19
場 見習い騎士、ラムザ・ベオルブ 3/3(伝説のクリーチャー-人間・騎士)
善意の騎士 3/2(クリーチャー-人間・騎士)黒からの呪禁・先制攻撃
リターン・ターミナス(伝説のアーティファクト-ターミナス・ストーン)タップ
土地(水1 黒1 白1 《始まりの町》1)水1 黒1 《始まりの町》1 タップ
「私の…ターン…」
進化した潜伏工作員
手札5→6
「私…は、土地カードを置き、《マラキールの放蕩貴族、カーライル》を召喚!!」
青白い肌で金の装飾があらん限り施された絹の貴族服姿をした、300キロに届くほどの太った体をした吸血鬼が周囲に料理が盛り付けられた皿や椀、ワインがしこたま入ったグラスをいくつも浮かべて周囲に展開させた状態で現れる。
召喚されたそのクリーチャーはその場に座り、グラスを手にしてワインをグイグイと飲んでいた。
マラキールの放蕩貴族、カーライル 3/6(クリーチャー-吸血鬼・貴族)絆魂 ③・黒・黒
「なんだよ、この太っちょバンパイア。にしても、いやなのを思い出しちまうぜ…」
モニターでゲームを見ているジタンがこの太りすぎた体を見て、脳裏に浮かぶのは想い人であるガーネットの故郷であるアレキサンドリアの前王であるブラネだ。
ガーネットの養母であった彼女は霧とクジャに操られ、黒のワルツや黒魔導士兵を生み出して侵略戦争を繰り返して世界を混乱させた。
彼女も目の前のクリーチャーと同じく青白い肌をしていて、とても生きているように感じられなかった。
「《カーライル》は黒のバットすべてに種族の吸血鬼を追加する」
吸血コウモリ 0/1(クリーチャー-バット→バット・吸血鬼)飛行
「《吸血鬼の夜鷲》で攻撃」
真正面にいたはずの《吸血鬼の夜鷲》がまるで最初からそこにいなかったかのように消えてしまう。
ラムザがどこにいるかと周囲を見渡すが、気配を見つけることができない。
そして、いきなり真後ろに姿を見せた《吸血鬼の夜鷲》がラムザの首筋にかみつき、吸血する。
「うがあ…この!!」
右拳を振るって追い払おうとするが、腕が来る前に再び姿を消し、《吸血鬼の夜鷲》が主のそばへ戻ってきていた。
ラムザ
LP19→17
進化した潜伏工作員
LP20→22
「私はこれで…ターンエンド…」
進化した潜伏工作員
手札6→4
LP22
場 吸血コウモリ 0/1(クリーチャー-バット・吸血鬼)飛行
吸血鬼の夜鷲 2/3(クリーチャー-吸血鬼・シャーマン)飛行・接死・絆魂(タップ)
マラキールの放蕩貴族、カーライル 3/6(クリーチャー-吸血鬼・貴族)絆魂
土地(黒2 白3) すべてタップ
ラムザ
手札2
LP17
場 見習い騎士、ラムザ・ベオルブ 3/3(伝説のクリーチャー-人間・騎士)
善意の騎士 3/2(クリーチャー-人間・騎士)黒からの呪禁・先制攻撃
リターン・ターミナス(伝説のアーティファクト-ターミナス・ストーン)タップ
土地(水1 黒1 白1 《始まりの町》1)水1 黒1 《始まりの町》1 タップ
(種族を追加するクリーチャー…何かあるよ、ラムザ)
「分かってる…僕のターン、ドロー!」
ラムザ
手札2→3
「僕は土地カードを1枚置いて、6マナを使い《世界を巡る旅》を発動。このカードは僕がコントロールしている街の数だけコストが軽くなる。僕はデッキからカードを4枚ドロー。そして、僕は《マテリアブレイド》を発動。このカードは5マナ以上のソーサリーかエンチャントのカードを唱えたターン、コストなしで発動、装備できる!《善意の騎士》に装備!」
(マテリア、ブレイド…だが、この剣は…)
《善意の騎士》が手にした身の丈ほどもある巨大な片刃両手剣。
その剣はクラウドが手にしている剣とあまりにもよく似ていた。
「《マテリアブレイド》を手にした《善意の騎士》のパワーは3、タフネスは2アップ!」
善意の騎士 3/2→6/4(クリーチャー-人間・騎士)黒からの呪禁・先制攻撃
「《善意の騎士》と僕で攻撃!」
「《ラムザ・ベオルブ》の攻撃は遠し、《善意の騎士》の攻撃を《吸血コウモリ》でブロック」
身代わりとなった《吸血コウモリ》の小さな体が両断されて消滅する。
攻撃したとしても、こうして阻まれるうえに《吸血鬼の夜鷲》がフィールドに残るのはわかっている。
だが、1体でも邪魔なモンスターを減らすことはできる。
一方で《見習い騎士、ラムザ・ベオルブ》の剣は敵に届いた。
「僕はこれで、ターンエンド!」
進化した潜伏工作員
手札4
LP22→19
場 吸血鬼の夜鷲 2/3(クリーチャー-吸血鬼・シャーマン)飛行・接死・絆魂(タップ)
マラキールの放蕩貴族、カーライル 3/6(クリーチャー-吸血鬼・貴族)絆魂
土地(黒2 白3) すべてタップ
ラムザ
手札3→4
LP17
場 見習い騎士、ラムザ・ベオルブ 3/3(伝説のクリーチャー-人間・騎士)(タップ)
善意の騎士(《マテリアブレイド》装備) 6/4(クリーチャー-人間・騎士)黒からの呪禁・先制攻撃(タップ)
リターン・ターミナス(伝説のアーティファクト-ターミナス・ストーン)タップ
土地(水2 黒1 白1 《始まりの町》1)すべてタップ
「私のターン…」
進化した潜伏工作員
手札4→5
「私は土地カードを1枚置き、《歓迎する吸血鬼》を召喚」
歓迎する吸血鬼 2/3(クリーチャー-吸血鬼)飛行 ②・白
「更に、《血の芸術家》を召喚」
血の芸術家 0/1(クリーチャー-吸血鬼)①・黒
「《歓迎する吸血鬼》の効果。パワー2以下でこのカードではないクリーチャーが私のコントロール下で戦場に出るたびに、1ターンに1度のみ、デッキからカードを1枚ドローする」
「また吸血鬼が2体も!」
《血の芸術家》がさっそく《マラキールの放蕩貴族、カーライル》をモデルに絵画を描き始める。
筆を持つ手は平常だが、体は震えていた。
「そして、《吸血鬼の夜鷲》で攻撃」
再び影から襲い掛かり、ラムザの血を吸う《吸血鬼の夜鷲》。
2度も血液を吸われたラムザはふらつきを感じ、息苦しさも覚え始めていた。
ラムザ
LP17→15
進化した潜伏工作員
LP19→21
「ライフは残ってるのに…くっ」
この感覚には覚えがある。
過去に傭兵として過ごしていた時、自身のミスで大けがをした時がある。
その時はガフガリオンに助けられて大事には至らなかったが、その時に彼に教えられたことを思い出す。
戦場での治療においてもっとも急ぐべきは止血であり、急いで血液に入った毒を出すためにあえて傷口を開いて出血させて追い出す必要があるときを除いては、早急に止血をすることで死ぬ確率を大幅に下げることができると。
そんなことを思い出すほど、今のラムザは血液を奪われているといえる。
(これだと、ゲームよりも先に、ケイの身体が…)
「私はこれで、ターンエンド」
進化した潜伏工作員
手札5→3
LP21
場 吸血鬼の夜鷲 2/3(クリーチャー-吸血鬼・シャーマン)飛行・接死・絆魂(タップ)
マラキールの放蕩貴族、カーライル 3/6(クリーチャー-吸血鬼・貴族)絆魂
歓迎する吸血鬼 2/3(クリーチャー-吸血鬼)飛行
血の芸術家 0/1(クリーチャー-吸血鬼)
土地(黒2 白3 白/黒1) すべてタップ
ラムザ
手札4
LP15
場 見習い騎士、ラムザ・ベオルブ 3/3(伝説のクリーチャー-人間・騎士)(タップ)
善意の騎士(《マテリアブレイド》装備) 6/4(クリーチャー-人間・騎士)黒からの呪禁・先制攻撃(タップ)
リターン・ターミナス(伝説のアーティファクト-ターミナス・ストーン)タップ
土地(水2 黒1 白1 《始まりの町》1)すべてタップ
「はあ、はあ、はあ…僕の、ターン」
ラムザ
手札4→5
「ケイ、ケイ、大丈夫…?」
(うん…すごく、眠いし、体が重いけど…)
「ごめん…」
今の慧の様子を考えると、また吸血鬼の攻撃を受けるわけにはいかない。
急いで決着をつけることを考えなければ。
「僕は5マナを使い《マテリアブレイド》の効果を発動!《マテリアブレイド》を追放し、《マテリアブレイド改》に変身させて僕のフィールドのクリーチャーに装備させる!」
《マテリアブレイド》の2つの穴にマテリアが埋め込まれる。
マテリアの力を得たためか、再びそれを手にした《善意の騎士》は両手でそれを構える。
「《マテリアブレイド改》を手にした《善意の騎士》のパワーは4、タフネスは3アップし、二段攻撃を得る!」
善意の騎士 6/4→7/5(クリーチャー-人間・騎士)黒からの呪禁・先制攻撃→黒からの呪禁・先制攻撃・二段攻撃
二段攻撃を手にしたとしても、それでもこのクリーチャーの攻撃は相手には届かない。
「(いや…このカードなら…)僕はこれで、ターンエンド」
進化した潜伏工作員
手札3
LP21
場 吸血鬼の夜鷲 2/3(クリーチャー-吸血鬼・シャーマン)飛行・接死・絆魂(タップ)
マラキールの放蕩貴族、カーライル 3/6(クリーチャー-吸血鬼・貴族)絆魂
歓迎する吸血鬼 2/3(クリーチャー-吸血鬼)飛行
血の芸術家 0/1(クリーチャー-吸血鬼)
土地(黒2 白3 白/黒1) すべてタップ
ラムザ
手札5
LP15
場 見習い騎士、ラムザ・ベオルブ 3/3(伝説のクリーチャー-人間・騎士)
善意の騎士(《マテリアブレイド改》装備) 7/5(クリーチャー-人間・騎士)黒からの呪禁・先制攻撃・二段攻撃
リターン・ターミナス(伝説のアーティファクト-ターミナス・ストーン)
土地(水2 黒1 白1 《始まりの町》1 水/白1)すべてタップ
攻撃が通るはずの《見習い騎士、ラムザ・ベオルブ》を含めて、何もしないままのターン終了。
そのラムザの様子に潜入工作員がニヤリと笑う。
「守りに入るか…私のターン」
進化した潜伏工作員
手札3→4
「私は手札より《白聖石》を発動!」
「しまった!!」
「このカードは白のカード、よって黒からの呪禁の対象外だ。そして、発動時にお前のフィールドの土地以外のパーマメント1枚を追放する。貴様の《善意の騎士》には消えてもらう」
フィールドに出現した真っ白なクリスタルの中に、《善意の騎士》が吸収されていく。
《マテリアブレイド改》は手から離れていたため吸収されずに済んだが、これでラムザは要を失った。
「そして、《血の芸術家》以外の3体のクリーチャーで攻撃」
食事に飽きた《マラキールの放蕩貴族、カーライル》がワイングラスを浮かべると、ラムザに向けて口から赤黒いブレスを放つ。
血の匂いが濃厚なそのブレスには毒素があり、それを受けたラムザは体中から痛みを感じてうずくまり、さらには2体の吸血鬼がブレスが収まると同時に血を吸いにかかった。
ラムザ
LP15→8
進化した潜伏工作員
LP21→26
「そして、《血の芸術家》の効果によりカードを1枚ドロー。ターン終了」
進化した潜伏工作員
手札4
LP26
場 吸血鬼の夜鷲 2/3(クリーチャー-吸血鬼・シャーマン)飛行・接死・絆魂(タップ)
マラキールの放蕩貴族、カーライル 3/6(クリーチャー-吸血鬼・貴族)絆魂(タップ)
歓迎する吸血鬼 2/3(クリーチャー-吸血鬼)飛行(タップ)
血の芸術家 0/1(クリーチャー-吸血鬼)
白聖石(アーティファクト)(追放:《善意の騎士》)
土地(黒2 白3 白/黒1) (黒2、白2 タップ)
ラムザ
手札5
LP8
場 見習い騎士、ラムザ・ベオルブ 3/3(伝説のクリーチャー-人間・騎士)
マテリアブレイド改(アーティファクト-装備品)
リターン・ターミナス(伝説のアーティファクト-ターミナス・ストーン)
土地(水2 黒1 白1 《始まりの町》1 水/白1)すべてタップ
「く、うう…」
(ラムザ、大丈夫!?)
「僕…は、ね。それよりも、君が…!」
《善意の騎士》が排除されてしまう誤算によって、大きなダメージを受けて不利な状況が生まれてしまった。
(すごく、きついけど…大丈夫、気を失ったり、しないから…!)
「…僕のターン、ドロー!!」
ラムザ
手札5→6
「よし…これでひっくり返せる!僕は、土地カードを1枚置き、僕は白2マナを含めた3マナを使い、ソーサリーカード《別行動》を発動!」
「何!?そのカードは!!」
「このカードはフィールドのタップ、もしくはアンタップされているクリーチャーのいずれかのすべてを破壊する!!」
二人のフィールドを包み込むような真っ白な爆発が巻き起こる。
その光の中に《見習い騎士、ラムザ・ベオルブ》が消え、攻撃を終えていた3体の吸血鬼を飲み込もうとする。
「まずい!!《カーライル》の効果!自らの代わりに、ほかの吸血鬼である《血の芸術家》を死亡させる!!」
《マラキールの放蕩貴族、カーライル》をかばって前に出た《血の芸術家》が消滅し、潜伏工作員のフィールドに残ったクリーチャーは守られたそのクリーチャーのみとなる。
「き、貴様ぁ!!」
「そして、《ザックス・フェア》を召喚!」
「…!ザックス!?」
ライフストリームのような光がフィールドに発生し、その中心にバスターソードを手にしたザックスが姿を見せる。
ザックス・フェア 0/1(伝説のクリーチャー-人間・兵士)白
「ザックス…なぜ、お前がそこに!?」
クラウドが召喚されたザックスに声をかけるが、何も反応を見せない。
どうして応えてくれないのかと思ったクラウドだが、フィールドにいる《見習い騎士、ラムザ・ベオルブ》との違いを感じて疑問を飲み込む。
(いや、違う…姿形が同じでも、今は…)
「そして、《マテリアブレイド改》の効果。1マナで《ザックス》に装備!!」
バスターソードにそっくりな剣を拾った《ザックス》が持っていたバスターソードを一度背中に背負い、手に入れたばかりのそれを構える。
「《マテリアブレイド改》は伝説のクリーチャーに装備する場合、コストを2少なくできる。そして、《ザックス》は召喚されたとき、1/1カウンターを1つ置く」
ザックス・フェア 0/1→4/4→5/5(伝説のクリーチャー-人間・兵士) 1/1カウンター0→1
「バトル!僕自身で攻撃!」
ブロックできるクリーチャーがいない潜伏工作員に《ラムザ》の剣が襲う。
ライフが20を超えている今の現状を考えると、大したダメージではないかもしれない。
だが、それでも少しでもダメージを与え、なおかつブロック可能なクリーチャーが存在することが励ましになる。
進化した潜伏工作員
LP26→23
「僕はこれで、ターンエンド」
進化した潜伏工作員
手札4
LP23
場 マラキールの放蕩貴族、カーライル 3/6(クリーチャー-吸血鬼・貴族)絆魂(タップ)
白聖石(アーティファクト)(追放:《善意の騎士》)
土地(黒2 白3 白/黒1) (黒2、白2 タップ)
ラムザ
手札6→3
LP8
場 見習い騎士、ラムザ・ベオルブ 3/3(伝説のクリーチャー-人間・騎士)
ザックス・フェア(《マテリアブレイド改》装備) 5/5(伝説のクリーチャー-人間・兵士) 1/1カウンター0→1
マテリアブレイド改(アーティファクト-装備品)
リターン・ターミナス(伝説のアーティファクト-ターミナス・ストーン)(タップ)
土地(水2 黒1 白2 《始まりの町》1 水/白1) 白1、水/白1、《始まりの街》1、水1タップ
「…」
形勢が逆転されかけている。
それを感じているであろう敵だが、何も言わずにカードを引く。
進化した潜伏工作員
手札4→5
「…!」
(どうしたの、ラムザ!?)
「分からない…あのカード、何か、あるんだ…何かが!!」
ラムザが震えているのを感じ、慧は相手がドローしたカードに警戒する。
ラムザの様子から、何か彼にとって恐怖となっている存在が出てくるというのか。
「いかんな…」
「義父上?」
プリマビスタでゲームの様子を見ているオルランドゥの言葉にオーランが反応する。
ラムザの様子がおかしくなっているのはオーランもモニターを見て感じているが、オルランドゥの様子から自分が思っている以上に深刻なものがあるのかと感じた。
「すべてのマナを使い、私はこのクリーチャーを召喚する…現れよ、堕ちた騎士よ!!」
「オオオオオオ!!!!」
地面が割れるかと思うほどのうめき声が響き渡り、同時に敵の正面に出現する魔法陣。
その中から現れたのは灰色の肌をした金髪の騎士。
数多くの傷を抱え、ボロボロになった鎧と赤黒く染まった剣。
灰色の肌には血管が浮き上がり、瞳が灰色に濁っている。
召喚されたクリーチャーに声を震わせたラムザが手札を落とした口を開く。
「ザルバック…兄さん…」
「現れよ、《意志奪われし聖騎士、ザルバック・ベオルブ》」
マラキールの放蕩貴族、カーライル ③・黒・黒
クリーチャー-吸血鬼・貴族
絆魂
あなたがコントロールしているバットは吸血鬼としても扱う。
このクリーチャーが死亡する時、代わりにあなたがコントロールしている吸血鬼1体を死亡させることができる。
3/6
「あのカーライルって貴人って何だよ?あれだけ血を吸って、高い飯に酒に、女も抱く。どこからそんな金が…」(とある下僕の吸血鬼)
マテリアブレイド ①・白・白
アーティファクト-装備品
装備しているクリーチャーは+3/+2の修整を受ける。
あなたがこのターン、コストが5以上のソーサリーまたはエンチャントを唱えている場合、あなたはこれを、これのマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。その時、マナ・コストを支払うことなくあなたのクリーチャーに装備することもできる。
限界を超える力⑤:これを追放し、その後、これをオーナーのコントロール下で変身させた状態で戦場に戻す。起動はソーサリーとしてのみ行う。その後、これをあなたがコントロールしているクリーチャーにつける。
装備②
とある異邦人の力を引き出すために設計された武器。その原理は誰にもわからない。
マテリアブレイド改 白
アーティファクト-装備品
装備しているクリーチャーは+4/+3の修整を受け、二段攻撃を持つ。
このカードを兵士または傭兵である伝説のクリーチャーに装備する場合、装備能力を起動するためのコストは(2)少なくなる。
装備③
この剣にも、マテリアブレイドにも特別な力はない。だが、異邦人にとっては特別であるからこそ、彼の力を引き出せるのかもしれない。