プリマビスタの広間、薄暗い照明の下。
戦いが終わってから数時間後、船は久遠の闇を静かに漂っていた。
ディリータは窓辺に立ち、遠くを見つめていた。
その背後に、静かな足音が近づく。
「……ディリータ」
低い、しかし確かに聞き覚えのある声。
ディリータはゆっくりと振り返った。
そこに立っていたのは、灰色の肌がほとんど元の色を取り戻したザルバックだった。
ボロボロだった鎧も修復され、聖騎士らしい威厳がわずかに戻っている。
二人はしばらく無言で見つめ合った。
「久しぶりだな…ザルバック」
顔を向けず、窓から外の景色を見ながらディリータは口を開く。
鉛のような沈黙が2人は漂う。
「…憎い、だろうな。私がティータを…お前の妹を殺したようなものだ」
国家の治安を守るため、無法なテロリストである骸旅団の要求に屈するわけにはいかなかったので仕方がない。
ましてや、自分の身内であるとはいえ、平民であるティータ一人のために取引に応じ、ジークデン砦から骸旅団を逃がせば、どのような災厄が起こっても不思議ではない。
あの時はその選択しかない、そう自分を納得させ続けていた。
「ティータのことは……ずっと胸に刺さったままだ。あの行動で確かに骸旅団は壊滅した。だが、お前とラムザ、アルマにつらい戦いをさせてしまった…」
「…」
「既に死んだ身の私が、今ここにいる…きっと、それには私にやらねばならんことがある、そういうことだろう。それを成すまではラムザの力になる。そして…事が終わったら、ディリータ…私を殺してくれて構わない。お前になら、殺されてもいい…そう思っている」
ディリータはようやくザルバックの方を向いた。
その瞳には、複雑な感情が渦巻いている。
「ラムザも、きっと…心の奥底ではティータを殺した私を許せないという気持ちがあるだろう。すまない…今の私にはその程度しかお前たちに償う術が思いつかないのだ」
亡き国王デナムンダIV世に「イヴァリースの守護神はガリオンヌにあり。ベオルブの名の下にこそ勝利がある」と絶賛された常勝無敗の武人。
そう世間で言われながら、一皮むけばこの程度の男でしかないとは。
そのような己を自嘲する。
挙句の果てにはこうして今、死に恥か生き恥、どちらかはわからないがこうして恥をさらしている。
このざまでは、とても今のラムザやディリータの手本となりえる騎士とは言えない。
ディリータは静かに息を吐いた。
「俺も同じだ。オヴェリアを傷つけ、利用し、結局は守れなかった。英雄王などと呼ばれながら、結局は……ただの惨めな男だ」
ザルバックは窓の外の闇を見つめながら、ゆっくりと言った。
砦の炎と共に湧き上がっていた持てる者たち、ザルバックやアルガス達への憎しみはあれからずっと冷えたままだ。
疲れただけなのか、それとも整理がついたのか、それはディリータでもわからない。
今あるのは唯一手に入れたと思ったもの、それへの未練だ。
「今あるのはオヴェリアを救うことへの思い、それだけだ…。それが終わるまでは、首を洗って待っているんだな」
結局一度も顔を向けることなく、ディリータは立ち去っていく。
その後ろ姿を見送ったザルバックはフゥと息を吐くと、壁にもたれた。
「ああ…覚悟して待っている。ディリータ。私を裁いてくれることを」
「ふむぅ…やはり、そうですか」
整備を行うモーグリからの報告書を読み終えた船長はフゥとため息をついてから、紅茶を口にする。
予測できていた事態で、対処そのものについては何も問題はない。
ただ、起こるのはもう少し後だと思っていただけだ。
プリマビスタ内にある慧の部屋。
学校の宿題を持ってきていて、問題を解いている慧の後ろで、ビビは食堂から持ってきたココアを飲んでいた。
「ビビ、プリマビスタはどこへ行ってるの?動いているの、初めて見たいだけど…」
呼び出されたときは何かまた事件が起こるのかと用心していたが、船長から言われたのは休憩をしにいくだけだという。
その場所へはプリマビスタへ向かい、あとは行ってからのお楽しみとのことだ。
動いているが、それほど揺れは感じられず、新幹線の中にいるような感じだ。
「ターミナルだよ、きっと…」
「ターミナル?」
「プリマビスタをメンテナンスするための場所だよ、船長と初めて出会ったのはそこなんだ」
霊気に満ちた久遠の闇の中、プリマビスタの正面に発生する裂け目。
その中に入ったプリマビスタを出迎えたのは電車のホームのような空間で、多くの人々が停止するのを待っていた。
「へへ…やっぱり俺は飛空艇乗り、ということか…。見ていると、ウズウズしてくる!!」
大きな工具を持つ、水色の髪をしたツナギ姿の男が鼻をさすっていた。
到着と同時に、船長によって食堂に集められた慧。
彼らが全員集まったのを把握した船長が見渡しながら発現する。
「到着しました、皆さん。今日は少々…休憩の日となります。ここでお楽しみいただければと思います」
「楽しむ?この世界は…?」
「ターミナルと呼んでいる場所です。ここでは、プリマビスタのメンテナンスを行っています。同時に、ここで働く人々や整備中待機することになる皆様が楽しめる場所もございます。メンテナンスが終わる予定については、後でお伝えさせていただきます」
席を立った船長は懐からいくつか封筒を出し、それを慧たちに配っていく。
隣にいるビビが開いて中身を確認しているのを見た慧も封筒の中を見る。
中には紙幣と折りたたまれたA4の紙が入っていた。
紙幣には女性の肖像画が描かれていた。
「皆様への、給与です。なお、食堂などの利用料は差し引かせていただいていますが」
「利用料!?」
慌てて封筒を開けたジタンは封筒の中にある紙幣と給与明細と思われる紙を見る。
給与明細には自分たちの仕事内容に対していくら発生しているのか、そして食堂などで利用した物が何で単価がいくらかが懇切丁寧に記載されていた。
「おいおい、聞いてねえぞそれ!給与のこともそうだけど、食堂、有料なのかよ!!」
「無償でお世話をするほどお人好しではありませんよ。最も、利用料については従業員特別割引を適応しておりますので」
「特別割引って、客なんているのかよ…」
「将来的は話です。それができるようになれば、平和になったということでしょうから」
「船長、よく戻ってきましたね」
出入口が開き、そこから入ってくる人物にジタン達の目が丸くなる。
入ってきたのは羽根つき帽子をつけているが、それ以外は背丈も身なりも声も、何もかもが船長そっくりの人物だった。
「おお、駅長。ご無沙汰しております」
入ってきた駅長と握手を交わす船長。
ビビは特に反応を見せていない。
「あの、船長…駅長って…」
「ええ。このターミナルの運営を行っている方です」
「兄弟…ですか?そっくりですけど…」
「いいえ、血のつながりはありません。気のせいでしょう」
「は、はあ…」
ビビと一緒にプリマビスタを降りた慧は人でにぎわう駅の屋内を見て回る。
日本の大きな駅のように、レストランやコンビニ、ドラッグストア、スポーツジムなどが立ち並んでいる。
「僕のおすすめは駄菓子屋さんだよ、ノラおばさんがやってるんだ。ここ!」
「ノラおばさん…?」
ビビに案内された場所は駅の改札口を思わせる出入口を出てすぐそばにある建物で、近くには子供たちが買ったばかりの駄菓子をベンチに座った状態で食べていた。
子供たちの服装には統一性がなく、慧のいる日本の子供たちが着用しているものだったり、王都ラバナスタの人々のように上半身が裸だったり薄い服装の子供たちもいた。
それを気にする慧をよそに、ビビはドアを開いて挨拶する。
「こんにちは、ノラおばさん」
「いらっしゃい、ビビちゃん。今日はお友達を連れてきたのね」
「うん、ケイっていうんだ」
「え、あ…こんにちは…」
「あら…ビビちゃんがお世話になっています。ちょっと、サービスしてあげないとね」
フフッと笑うノラと呼ばれた女性は真っ白なセーター姿で真っ白な髪をした女性だ。
慧にとってはゲームの中で見覚えのある女性で、目を丸くしていた。
「あら…どうしたのかしら?私の顔に、何かついているのかしら?」
「い、いえ…その、どこかで会ったことあるようなって思って…」
「あら…もしかしてあなた、コクーンに住んでいたのかしら?」
「コ、コクーン…!」
グラン=パルスにおいて、ファルシの恩恵によって約束された理想郷にして、オーファンによる人類の養殖場。
見間違いかと思ったが、ノラという名前と彼女が口にしたコクーンと言う言葉に確信を持つ。
「もしかして…」
「…!ケイ、こっち!こっちのお菓子を見てよ!!」
「え、あ、うん…」
ビビに引っ張られる形でうまい棒が大量におかれている場所に連れていかれた慧だが、彼女の言葉と顔が頭から離れない。
うまい棒を選びながら、ビビは口を開く。
「ごめん…ちゃんと説明したらよかったね」
「ビビ、ノラさんって…フルネームはノラ・エストハイム?」
「…うん」
駄菓子を購入し、少し離れた公園のベンチで買ったばかりのそれらを口にしつつ、ビビはそこから子供たちと一緒に遊ぶノラをみつめる。
「このターミナルには魂が集まってるんだ。僕も、目覚めた時にはここにいた」
「目覚めた時…?」
「うん。ここにいる人たちはみんな、何らかの理由で死んで、ここに集まっているんだ」
「やっぱり…」
ファイナルファンタジー13で、ハングドエッジで聖府によるパージ政策の下で行われたルシの疑惑のある人々の皆殺し。
人々を救出するためにスノウが動き、それを見た人々の中には生き延びるため、守るために武器を取ることを選んだ人々がいた。
その中にはホープの母親であるノラもいて、彼女も戦ったが力及ばず、最期は助けに来たスノウに息子を託して命を落とした。
彼女の死がホープがスノウを憎悪する要因となるとともに、彼を数奇な運命をたどるきっかけとなった。
「ここに集まった人たちは名前以外の、生きている間の記憶を失っていることが多いんだ。ここで暮らして、少しずつ思い出してる。僕はどういうわけか、記憶はそのままだったけど…」
「じゃあ、ノラさんは…」
「あの人は子供のために戦って死んだこと、コクーンって場所に住んでいたことは思い出したんだ。家族の名前はまだ思い出せないみたいだけど…」
「そうか…」
「それで、ここにいる人たちはみんな、生きていた時のことをちゃんと思い出して、いつか来る転生の時を待っているんだ。船長はライフストリームと同じようなもので、ここは休憩所みたいなものって言ってたよ」
「ライフストリーム…」
生物が死によって星の中心に還るときに、持っていた知識やエネルギーは星に蓄えられ、そのエネルギーがまた新たな生命を生み出す。
その流れの循環、ライフストリームはファイナルファンタジー7において大きなテーマとなった。
この久遠の闇が一つの星と考えるなら、ライフストリームのような循環があってもおかしくないだろう。
「僕も、いつかは転生するときがくる。それまでに、今の僕の体でどこまでできるかを知りたい…。そう思って、船長に協力しているんだ」
「ビビ…」
「こんな店があるのか…」
船外に出たクラウドはラムザと共に構内にある催事会場に足を踏み入れていた。
催事というだけあって、多くの出店があり、多くの人々が集まっていた。
売っているものも様々で、中にはヘンテコな民芸品があったりもする。
「クラウドも何か買っていったらいいよ、はい、これ」
「ああ…すまない」
「気にしないで。じゃあ、プリマビスタで」
お金を受け取ったクラウドは出店を見て回る。
その中で鼻につたわるのは懐かしさを感じさせるにおいだ。
その匂いの出ている出店まで歩くと、クラウドは大きく目を開いた。
その出店には大きな鍋があり、大量のシチューが暖められている。
そして、そのシチューを器に入れて売っているのは自分と同じ色の髪をポニーテールにし、エプロンをつけた女性だった。
「あ、ああ…」
「あら、いらっしゃい。ついているわね、今日は特売日よ」
客と思ったのか、その女性はクラウドの顔を見ると笑顔を見せて、先に並んでいる客にシチューの入った器を渡す。
彼女を呼ぼうとしたクラウドだが、病室で外出の許しをもらった時に船長に言われたことを思い出す。
(このターミナルの人々は生前の記憶を失っている者が多い。徐々に思い出してはいますが…。たとえ、自分の知人がその場にいて、あなたのことを忘れていたとしても、何も言わないように。思い出させるのではなく、自然に思い出していくものですから)
「あら…?どうかしたのかしら?私の顔、変かしら?」
「い、いや…その、懐かしいにおいがしたから…」
「あら、そうなの。私がここにきて、最初に思い出したのは、このシチューの作り方だったのよ。もしかしたらお店をやっていて、そのお客さんの中にあなたがいたのかも」
うれしそうに笑い、鍋のシチューをかき混ぜていく。
その横顔は忘れもしない、平穏の象徴そのものだ。
(母さん…)
ニブルヘイム焼き討ち事件でセフィロスに殺された最愛の母、クラウディア・ストライフ。
(クラウド、走るんだ。逃げて、生き延びて)
彼女の最期に立ち会った際に彼女が言い残した言葉が脳裏によみがえる。
そんな彼の前に器と紙袋を差し出す。
「元気のない顔ね、ほら、食べて元気を出しなさい。お金はとらないから」
クラウドは受け取った器を両手で包み込み、熱を感じながら静かに言った。
「……ありがとう」
母の顔をした女性はにこりと微笑み、次の客の対応に戻った。
クラウドはシチューを一口すくい、口に運ぶ。
懐かしい味が広がった。
幼い頃から自分に作ってくれた温かい味と同じだった。
食べ終えたクラウドは空になった器を返し、ラムザからもらったお金を出す。
「あら、いいのにお金なんて」
「この紙袋の分だ、こんなにもらって、サービスなんて…悪いから」
紙袋の中にはシチューの入ったタッパーが入っていて、何食分入っているかわからない。
代金を受け取った女性は数えた後でお釣りを出し、それから領収書を書き始める。
「宛名はどうすればいいかしら?」
「クラ…いや、書かなくていい」
「そう…わかったわ、はい。領収書。私はクラウディア、またここにお店を出すことがあるから、機会があったら、また食べに来て。紙袋のはお友達や恋人さんに食べてもらって、感想聞かせて」
「あ、ああ…恋人は、いないが…」
「あら?そうだったの?ごめんなさい、いるものと思ったから」
立ち去っていくクラウドの後ろ姿を見せクラウディアは笑みを浮かべつつ、彼を見送る。
「なんだか、懐かしさを感じる顔と声だったわ…。きっと、とても優しい子なのね。彼は」
「恋人、か…」
シチューを持ち帰るクラウドの脳裏に浮かぶ2人の女性。
守れなかった女性、そして傷つけてしまった女性。
恋人とは、おそらくは後者の方だ。
前者には既に恋人といえる存在がいる。
(あの時…メテオとホーリーがぶつかり合った時からのことは覚えていない。気が付いたら、あの場所にいて、周りには誰もいなかった。ティファ…もう、会えないのか…?)
「ふーん、想定以上にバリアシステムの負荷が大きかったか。まぁ、このパーツで組みなおせば、問題ないだろう」
船内のシステムを調べ終えた水色の髪の男がさっそく持ってきたパーツとバリアシステムの制御装置の中で不具合を起こしている部分を交換する。
外には彼の弟子がバリアシステムの点検や他にプリマビスタに異常がないかのチェックをしている。
「助かります。飛空艇の知識のあるあなたがここにいることが」
「へっ…死んでも、飛空艇についての知識だけはぎっちり頭に入ってるとはな」
「それだけ、人生をささげていたということでしょう…シド整備長」
「かもな…」
ここにきて長く時間がたつが、彼が思い出すのは飛空艇に取りつかれたことで騎士団長の地位も妻子も捨てたこと、そして死ぬ前に骨のある若者たちに自分が愛して飛空艇を『貸した』ことで、どれも飛空艇に関わるものだ。
さすがに家族を捨てたことについては後ろめたさを感じ、あの若者たちの名前をいまだに思い出せないことが引っかかる。
最近になって、ようやく顔を思い出すことはできたが。
「まだあいつらはここには来てねえみたいだな…ま、会わずに転生できれば、それに越したことはねえが」
「修理完了まで、どれほどかかりますか?」
「5時間だな、任せな。より頑丈にしてやるからよ」
「…」
誰もいない食堂で、ディリータは一人で酒を口にする。
ラムザたちがプリマビスタを出て、ターミナルを楽しんでいるらしいが、ディリータと船長だけは外に出る様子がない。
お土産をもって戻ってきたラムザが買い物袋をもって彼のそばへ行く。
「行かなかったんだね」
「どうでもいい。あくまでも、お前らと共にいるのは一時的な話だ。ここには、用もないからな」
モーグリが持ってきてくれた揚げパスタというシンプルな料理を口に運ぶ。
シンプルに塩で味付けしただけのそれのどこがうまいのかと疑問を抱いていたが、食べて気に入った。
なお、他にも白鷺市のある日本には焼鳥とビールという組み合わせもあるようで、オルランドゥが蜆の味噌汁と共にすっかり気に入った様子だ。
「…いたよ、彼女が」
ラムザの言葉に揚げパスタを口にするディリータの手が止まる。
ラムザの言う『彼女』で、ディリータに思い浮かぶのは一人しかいない。
「ティータ、ここにある学校で勉強していたよ。アリサっていう女性のもとで。遠くから見ていただけだから、もしかしたら見間違いかもしれないけど…」
「声は、かけなかったのか…?」
「うん…僕たちのことを思い出しているかどうか、わからなかったから…」
むしろ、まだ思い出さないままの方がいいのかもしれないとラムザは思ってしまう。
彼女を殺したのはザルバックであり、アルガスであり、あの時にイヴァリースの身分制度と社会そのものだ。
その存在の中にはラムザもいる。
恨まれても仕方ない自分が顔を見せるよりも、ディリータが彼女に会うべきだと彼は考えた。
「…いいの?まだ時間があるけど」
「…今の俺に、彼女に会う資格はない。あいつのような犠牲が生まれない世界を作れなかった俺にはな…」
「ディリータ…」
まるで、もうすでに死んでいるような言い草が気にかかる。
どういう意味か聞きたかったが、のどから出る前に飲み込んだ。
「…ラムザ。お前が見たあいつは、幸せに見えたか?」
「…うん、昔のように、笑っていたよ」
「…そうか」
食堂の隅で、クラウドは静かにシチューを温め直していた。
紙袋に入っていたタッパーの中身は、まだ温かかった。
一口すくって口に運ぶ。
母の味がした。
(母さん……ティファ……)
二人の顔が重なる。
守れなかった者と、誰よりも守りたいと思っている者。
クラウドはフォークを置くと、窓の外の闇を見つめた。
「俺は……まだ、何も守れていない」
その呟きは、誰にも聞こえないまま、久遠の闇に溶けていった。