転生カードゲーマーは知らないデッキと戦いたい 作:フロントトリガー
ついでに、描写カロリー高めです。ご注意ください。
※感想、お気に入り登録。ありがとうございます。
不定期ですがよろしくお願いします。
荒廃した街の一角。
比較的治安の安定した繁華街と、食うにも困る無法地帯。
その境目に配置された巨大なドーム施設。
表向きには国が所有するトレーニング施設。*1
実態としては、監視塔の役割を持っていた…その建造物の前で、一人の美青年と、粗雑な印象を与える少女が向かい合っていた。
「ふざけんな! とっとと帰れ!」
「悪いけどマナ、僕はユージンに用事が…」
「学園の犬に成り下がったアンタにユージンと会う資格はねぇ!」
「───。マナ…」
一人はとある学園の上位数名。
その中でも、人格と実力が認められ、自由裁量権を与えられた生徒会の直属部隊──『
その中でも第二席の座に着く、新進気鋭の美青年───エスペルト。
柔らかい金髪をいわゆるマッシュヘアに整えた彼は、その実力を示す純白のマントを風で靡かせながら。
悲しげな表情で、攻撃的な少女───マナを見つめていた。
「…よせ、マナ。」
そんな彼女の肩に乗せられたのは穴あきグローブ。
漆黒の髪を少し長めのウルフヘアで整えた青年───ユージン
とある理由から、このドームの責任者とも言える立場にある彼は。*2
今日も今日とて、ワイシャツにジーンズと言う普通の服装に、ビニール袋を片手で持って現れた。
「「ユージン!!」」
「立場がどうあれソイツは俺の客だ。」
「ッ! ケッ。」
彼の一言に言葉を飲み込み、イラつきを隠す事なく立ち去る少女。
「…ありゃ荒れるな…」
「ごめんユージン。」
「別にいい、それで何の様なんだ?」
それを見送ったユージンはその特徴的なアホ毛をへにゃりと倒し、戸惑った様子で言葉を返した。
「最近の君の行動は目に余る。僕は、学園の代表『五芒星』の一人として、君を止めなくてはならない。」
「──俺は挑まれた勝負を買ってるだけなんだが…?」
美青年の言葉に、不服そうに返す青年。
実際、彼はこのドームに訪れる挑戦者や、辺りの治安を悪化させかねない悪党を、暇つぶし程度にカードゲームで相手取っているだけで、ある種の公権力に目をつけられるような事はしていなかった。*3
「だとしても…いや、だからこそ。そんな理由で札遺物を集める君を、見逃すことはできない!」
そんな青年の言葉に、少し語気を強める美青年。
そんな彼の手元には祭壇が具現化し、ドームのギミックにより、辺りに半透明なホログラムの壁が現れる。
「…別に
戸惑う青年はぽつりと呟き、増えてしまったデッキケースに視線を投げるとかぶりを振って、右から二番目。
アニメキャラクターのデザインされたデッキケースを手に視線を上げる。
「ッ! ユージン…君は、変わったね…」
「そう言うお前は変わらないな…。」
言葉と共に、お互いのデッキケースを祭壇にセット。
不思議な力でデッキがその場でシャッフルされると、デッキカバーのロックが外れ。それぞれの国家を象徴する色味で、卓上のデッキが輝き始める。
「まぁいい、いくぜ!」
「この勝負、絶対に勝ってみせる!」
───そうして、閃光。
祭壇がデッキの色に染まり、現実と架空。
その二つの間に偏在を開始する。
「
「スタートソウルユニゾン!」
宣言を聞き、ふわりと舞い上がる虹の燐光。
薄い膜が二人を中心に辺りに広がり、異なる色味で再構築された天球が辺りを包み込み…
───ここに新たなる聖戦の火蓋は、切って落とされた。
☆
「さぁて、俺はターンエンドだ。見せてくれよ、お前の力!」
戦う前に見せた不満そうな気配は微塵も感じさせず、青年が笑顔と共に手を広げる。
彼の場には、彼と手を繋ぎ、その片手・片足を二人三脚のように鎖で繋ぐ天使《泥絡の礎 サレティール》。
彼女の足元には、毒々しい色の泥が広がり、彼らの周りを沼地へと書き換えつつあった。
それに対するは、蒼くうっすらと輝く東洋鎧──それを纏った金髪の剣士。
自らのライフを削り、強制的に共鳴値3にまで至った彼は、早くも四点目のダメージを受け。ヒビ割れた装甲からその力の残滓が、モヤの様に溢れ出していた。
「なら、遠慮なくいかせてもらう。僕は…《再臨せし勇者 ラムセル》に深化!」*5
「新しい
「その通りさ! そしてこの瞬間! 素材となった《変幻流 ヤマトアームズ》の効果!」*6
「フッ。来い!」
「このカードが深化の素材となった時ソレが別名のカードでも共鳴深化を発動する!」
そうして装着者の言葉と共に蒼く燃え上がる東洋鎧。
その炎の中で美青年がカードを前にかざすと、重なるように、新たに白と金の西洋鎧を纏った戦士が現れる。
彼──ユニットと共鳴したエスペルトが。
目の前に突き刺さる業物の両刃剣を空に掲げると、炎は火の粉のように空中で停滞し。蒼い力の残滓が拡散し始める。
「3ターン目にいきなり、
その光景に、ニヤリと笑みを浮かべる青年。
傍らの天使が怖がる様に腕に抱きついてきたので、その頭を撫でながらのセリフである。
「……。《壮麗の騎士 ナービア》をサモン! その効果により山札の上三枚を確認し、一枚スペシャルサモンできる!」*7
「優秀な専用サポートまで…! クック…いいねぇ!」
「行くよ《ぱるがおん》!」*8
「くっ、だが一匹くらいなら想定内だ」*9
そうして、次々と現れる勇者の仲間たち、光の軍勢が次々と現れ。徐々に戦へ向かう準備は整っていく。
「バトル!〈ライズハルト〉で攻撃!」*10
「
「いい読みだ、でも甘い! 〈ナービア〉で攻撃!このバトル後〈ぱるがおん〉の効果を使わせてもらうよ!」*11
「高打点のラインも攻撃…ってことは、後続展開か…! ノーガード!……よしッ、
そうして放たれる連撃。
泥沼から伸びた鎖が片側から迫る相手を縛り、もう片側から迫る女騎士の攻撃を受ける為、ユージンが天使を抱きしめるとデッキから眩い光が放たれ、ピンクの結界が生み出される。
「流石だね。けど、ここから!《再臨せし勇者 ラムセル》で攻撃! ──効果発動! 墓地から《蒼弓の騎士 ザルベリス》と《再臨幻獣 レフィストーム》をスペシャルサモン! 効果で〈ラムセル〉を手札に!」*12
「いいねぇ…だが、通さん! 完全ガードだ!」
「リライズチェック! ゲット、ダメージリライズ! 全て〈レフィストーム〉へ! ─セカンドチェック! キュアリライズ…ダメージを回復し〈ザルベリス〉のパワー+10000!」
そこへ迫る白金の戦士。
その一撃が、青年の前に展開された巨大な盾に防がれるも、その剣から飛び散った力のカケラが、蒼い炎として、味方の武器に宿っていく。
「ま、マジかよ…やってんなぁ。」*13
それをアホ毛をピンと張りながら見つめる青年。彼の視線は、盤面に存在するダメージゾーンの枚数───。すなわち三点まで回復し、墓地に送られた《共に重ねる守備の魔導》へと向けられていた。*14
そうして続く連続攻撃。
一発をそのまま受け、再びデッキからリライズカードの恩恵を受けたユージンは、その後の攻撃をたった一枚で凌ぎ切る。
「なんで一枚で防がれるのかな…? エンドフェイズ。ダメージ値は同じなため、エフェクトゾーンの《共鳴せよ我らが鼓動》は発動できない。ターンエンドだ」*15
「いくぜ、俺のターンドロー! 手札の《スターライトパラダイス エレシア》を捨てて
そうして訪れるターンチェンジ。
青年の宣言と共に、青年と天使が足元から伸びる鎖によって隠されると、〈エレシア〉の合図により、その鎖がライトアップされ、羽を広げた〈サレティール〉によって内側から吹き飛ばされる。
「来たね…〈堕天使〉!」ギリィ
「え、何。怖……っと、〈堕天使サレティール〉の効果! バインドのグレード2。〈ライデス〉をデッキに戻し、ドロップから、〈ララパート〉と〈エレシア〉をバインド! いつもの1ドロー!」
そのまま吹き飛ばされた鎖によって〈エレシア〉の足が掴まれると、墓地より様子を伺っていたオレンジショートヘアの少女〈ララパート〉を巻き込み、グルグル目のまま異空間へと吸い込まれて行った。
「さらに〈ララパート〉をコール1ドロー。《泥絡の標 ザルバニア》もコールさせて貰おうか」
「ッ! そのカードは!」
「あぁ、俺は手札全てをバインドゾーンに置く事により、効果発動! デッキより、《泥絡の淀 ガルード》を
そうして現れる少女と、片翼の堕天使。人と天使の混ざり者である堕天使が、そのローブの下の瞳を赤く輝かせながら魔導書を広げると、巨大な魔法陣が現れ、泥で形作られた巨大な怪鳥が現れる。
「ぐっ、なんだ!?」
登場すると同時に急速に拡大を始める穢れの沼地。
そこから何本もの鎖が放たれ、それを弾く白金の武器に、泥が付着していく。
「フハハハ、教えてやろう。〈ガルード〉は場に存在する限りバインドゾーンのカード五枚につき、相手
青年の言葉に合わせてニタリとした笑みを浮かべる堕天使。
バインド枚数に合わせるように、鎖がさらに青年へと絡まり。
「な!? お前ェ!」
それに反応した金髪の青年が殺気を込めた瞳で睨みつけると。怖がって見せる銀髪の天使──サレティール。
彼女は青年の「大丈夫だ、一緒に勝つぞ。」と言う呟きに、頬を染め、満面の笑みで抱きつき直した。
「さらにフィールドの《ハーモニクスエフェクト》を発動! [
「く、…こんな状態でも君は…!!」
そうして天使を大切にしながら、的確なプレイングにより、一枚ドローを確定させた青年を見て、好青年は表情を曇らせる。
増していく悍ましい力。
彼らを囲う様に、何重にも張り巡らされた穢れの鎖はその距離を一定に保ちながら公転していた。
「バトルだぁ! 〈泥絡トークン〉の
「リライズユニットでガード!」
「そうだ! それでいい! 〈サレティール〉でアタック!」
そこから始まる怒涛の連撃。
片翼の堕天使が放つ泥の弾幕を仲間たちが弾き、その遥か後方。
青年と共にある堕天使が、巨大な魔法陣を展開するのが見え、息を呑む。
「ッ! 完全ガード!」
それを見て、飛び出したのは少年騎士。
カードテキストにより、絶対守護の力を授かる彼が、後方の仲間を守り切る為、巨大な魔導障壁を展開し───。
「おいおい、効果ぐらい聞いても損しないぜ? 〈サレティール〉の効果発動! バインドゾーンから二枚選択し、山札の下へ戻し二つの効果を適用する!」
───その視界の先で魔法陣が回転しながら、天頂へとかざされる。
「一つ目! バインドゾーンの
その真下には堕天使と青年。
…彼らの頭上から、ゆっくりと降りる魔法陣は、辺りの泥を吸収しながら巨大化を始め。
彼らの周囲を公転する泥の鎖と干渉し、バチバチとショートしながら、その魔法陣を中心とする半球を形作る。
「二つ目! バインドゾーンの
そしてそのまま、押さえ込むように収縮を始める穢れの鎖。
魔法陣が圧迫され、鎖に遮られ二人が見えなくなる事に焦りを感じ、無意味な力の解放を止めようと、金髪の青年が声を上げる。
「だが! 守護者を使用した今! その攻撃はヒットしないはず!」
「…
それに返されたのは、高揚感をにじませながら…しかし、冷静にはっきりとした男の声。
「何!?」
その真意を確かめようと、眉をひそめた青年の目の前で、浮かび始めた鎖の球体が、最高速で公転を始め、徐々に、その表面が黄金に染まっていく。
「『虚構解脱』…リベレイションスキル発動!」
そうしてついに、青年の宣言が響き渡り…
☆
───視界に、ノイズが走る。
爆発的に拡大した鎖の結界。
ドーム内に展開された虹の天球と寸分違わぬ体積を持つ結界は、天球の内側…不安定な狭間の幻想を描き換えた。
最初に目に入るのは黄金色の空。
鎖の合間に広がる、室内に似つかわしくないそれは、まるで本物の空の様に、柔らかい雲が浮かんでいた。
足元には無限の沼地。
数多の墓標が突き立ったその中心部には、崩れたログハウスのような物が存在し、斜めに沈むブランコが、もの寂しさを心に訴えている。
そうして…それを見下ろす自分は、白金の騎士。
崖の上に立ち、その風景を見下ろしている自分は、仲間と共に、その沼地に住まう化け物達へ剣を向け───。
☆
───バチンと。何かが途切れる気配と共に、意識が現実に戻ってくる。
「手札0の場合、相手のリアガード及び、ガーディアンユニット全てを退却し、その効果を無効にする!」
青年が、祭壇の上のカードを操り、コチラに視線を向けている。
僕は驚愕と共に、ユージンへ問いをぶつけていた。
「馬鹿な!? そんな効果存在していい筈がない!」
「あぁ、その通り。強大な力には代償が存在する…。この効果発動後、〈サレティール〉はソウルより、《泥絡の礎 サレティール》にレスト状態でライドされてしまう」
冷静に、しかし。面白いだろ? と自慢する様な表情で告げるユージン。
だが、それは。あまりにも重い代償だった。
「ッ…ソレはつまり…」
「あぁ。」
「「〈サレティール〉は共鳴深化できない」」
共鳴深化。同名カードに深化する事により、前列のユニットを援護する。このカードゲーム最大のギミックだ。
「は、はは…ユージン。君はどうして、そんな…」
そしてそれは、そんな単純な話でもない。
この共鳴率は、そのユニットが存在する為に必要な存在証明。いわば、絆の力だ。
この力を蓄えたカードは、新たなカードとなり、新しい力を得る。
しかしその反対に、その力を失ってしまったカードは白紙へと戻り。
歩んで来たストーリー、その全てを失ってしまうとされている。
…それはいわば、カードの死とも言えるものだ。
「勝つ為だ、それ以外に理由は必要ない。」
「そんなの…そんなの間違ってる! 僕はソレを証明してみせる!」
それを…意図的に行ってはいけないタブーを、この男はやろうとしている。
勘違いしていたのだ…彼、ユージンは闇のカードに負けず、カードの絆と共にその災厄を乗り越えられたのだと。
慢心していたのだ…闇のカードを作る組織、そのトップを倒し、生み出していた博士も捕縛した以上。闇の力は蔓延することは無いのだと…
その結果が、コレ。
カードと強固な絆を繋いでいた彼は、ジワリジワリとその精神を蝕まれ、取り返しのつかないほど歪に、歪んでしまっている。
「フッ、ならいくぞ!
しかもその上で、彼のデッキとの絆は健在。
異常とも言える引きの強さで、たった今も押し切られようとしている。
でも───。
「トドメだ! 〈ララパート〉の
───諦めるにはまだ早い!
「完全…ガードだ!」
☆
そうして金髪の青年は、再び剣を取る。
イメージが途切れ、弾き出された仮想世界へ。その、持ち前の才覚とカード達の助力によって『共鳴深化』によって再び共鳴し、仲間たちと共に穢れた沼地に剣を向ける。
───高められた絆の力。
新たな未来をも切り開くその力は、美青年の決意によって高まり…。
…故にこそ、彼が。その力を引き出してしまうのは必然であった。
「そしてこれが繋げた軌跡の象徴! ディスティニースキル発動!」
「Dスキル? このエフェクトは…」
共鳴による力の覚醒。
現実世界のカードイラストが描き換えられ。
与えられたのは純白の翼。
2翼から成る救世の翼は、蒼く輝くと共に大きく広げられ。光り輝く白い羽根がひらりひらりと舞い始める。
「Dスキルはゲーム中に一度だけ発動できる! 墓地に存在するダメージリライズを──全て選んで山札に戻す!」
「
それは白金の騎士の新たな力。
諦めずに手を伸ばし続ける者の元へと舞い降りる…純然たる癒しの力。
「そして、このターンユニゾンユニットは3回リライズチェックができる!」
──誰かを救う。
決意を形とし、未来を変える。
そんな可能性の事を人々は…
「………レザエル?」ボソ
────【奇跡】と呼んだ。
「…はぁ。」
ピシリとピシリと、世界が悲鳴をあげる。
鎖によって、無理矢理にとある惑星と繋げられた祭壇では、悍ましい力の名残が一点に集まり始めていた。
その中心には、一人の青年。
何かに気づき、それに失望したかの様に表情を殺した彼の元に。*17
穢れの鎖がその世界を巻き込みながら、急速に集まっていく。
「バトル!〈シバ〉の援護! 〈ナービア〉で攻撃!」
「トリガー二枚でガード」
それを食い止めんと、カードを振るうのは金髪の青年。
「〈ぱるがおん〉の援護! 〈ライズハルト〉で攻撃!」
「〈サレティール〉の効果でバインドのカードをソウルへ。だがダメージは受ける。」
油断をすることなく、正確に最短の道のりで戦いを終わらせようとする彼の一撃で、青年はその肩に、決して軽くは無い衝撃を受ける。
…しかし、鎖は止まらず。ただ一点。彼と天使の元へ集まっていく。
ついに、青年の姿が見えなくなり。
覚悟を決めた金髪の青年がその力の全てを込めて、ユニゾンユニットへと手を向ける。
「〈ラムセル〉で攻撃宣言! ──効果発動! 墓地から〈ガルセリウス〉と〈ザルベリス〉をサモン! 効果で山札の上を確認し…! 上へ!」
光が、彼のデッキへと集まる。
次々と現れたユニットの効果により、その奇跡が確定し、蒼く輝く彼のユニゾンユニット。
イメージの中で、大きく剣を振りかぶった白金の勇者が、限界まで高めた力を解き放とうとして……
「…お前の戦術の底は知れた。手札全てガーディアンゾーンへ。『虚構解脱』…リベレイションスキル発動!」
───鎖が、辺り一面に張り巡らされる。
「馬鹿な! このタイミングで特殊効果だって!?」
歪む幻想。
イメージが、新たなイメージに覆い隠され。
制限無く高まる悍ましい力によって、二人の両足が泥沼の幻覚に沈み込んでいく。
「悪いが、紛い物の奇跡なんぞに負けるつもりは無い! 〈サレティール〉の効果により、俺はバインドゾーンの
「な、あ!?」
──奇跡の剥奪。
未来を切り開く、そんな可能性を否定して。
ただ、何も起こらない現実に縛り付ける。
そんな普遍性の付与により、鎖に絡め取られたイメージを最後に。
……視界が現実へと戻っていく。
「さあ、捲れよ。そこにあるんだろ? 奇跡が」
ユージンの感情を感じさせない声。
どこかあざ笑うような、はたまた責めているかの様な冷めた口調に、喉が渇いていくのを感じる。
「リ…リライズチェック…」
そうして金髪の青年がデッキに手を置いた刹那。
「ユージン! 大変だ!」
玄関口で口論をした少女──マナが、バトルコート内に駆け込んできた。
☆
「…マジかよ」
「あぁ、マジだ!
「…正面は足りてるな?」
冷静に、カードを手に固まる美青年など、視界に入らないと言った様子で、少女と青年は言葉を繋げる。
「余裕だ! あんな寄せ集め連中敵じゃないぜ!」
「わかった、なら俺は裏から出る。お前も正面に向かってくれ」*18
それは、彼の、誰かを守る為の姿。
がむしゃらに、前を進む事しかしてこなかった美青年とは違い。
生まれ故郷を守り、友や、師を支える事を選んだ大きく頼りになる男の背中。
「了解!」
決して綺麗なだけではない。
清濁併せ飲んだ、手の届く場所を守る正義のあり方は、闇の力に呑まれてなお…変わらない。
「エスペルト、勝負は預けた。」
「ま、待ってユージン。僕も…」
なら、やはり。
闇の力になんて溺れていないんじゃないか?
いつかの日、困った様に笑いながら共に戦ってくれた時の様に。
…再び、肩を並べることもできるんじゃないか?
そんな希望を込めて、発した美青年の申し出は──。
「お前は来るな。」*19
──ただ一言で切り捨てられた。
「ユージン…」
振り返ることもなく、彼の背中が遠ざかっていく。
対戦相手がいなくなった事で、電子祭壇が消え、バラバラと地面に散らばるデッキ。
その中心では、僕の相棒たる〈ヤマト〉がたった一枚。表になって悲しみに暮れる僕を見つめていた。
※裏口に、なんかインテリ系の二人組がいたので、ユージンはファイトでボコって簀巻きにしておきました。
ルールーに勝ったら書く。