転生カードゲーマーは知らないデッキと戦いたい   作:フロントトリガー

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ユースにトリガー勝ちしたので初投稿です。続きません。



§6 打ち破れ!武羅津苦怒羅金の罠!

 

 

 破棄されたボロボロの廃工場。

 錆びた鉄の匂いが蔓延するその中心地で、背筋を伸ばした金髪の美青年と。

 派手に改造された大型バイクにまたがる特攻服姿の男が対峙していた。

 

「約束通り、一人で来たよ」

 

 美青年は、我らが英雄───エスペルト。

 治安維持の為の見せ札として役割を与えられている彼は、とある任務で、無法地帯の一角。廃工場に訪れていた。

 

「よぉ〜英雄サマ? 歓迎するぜェ? ヒャハハハ!」

 

 ソレを迎えるのは、赤地の特攻服に黒龍を模したデザイン。『武羅津苦怒羅金』の文字を背負うオールバックの男───ヴァーロン。

 

 常日頃であれば敵対し、矛を向け合う間柄にある彼らがこの廃工場にて向かい合っているのには理由があった。

 

「それで…札遺物について話し。と言うのは?」

 

 札遺物───。

 ソレ単体で凄まじい共鳴率を誇る強力なデッキ群。

 その力のあり方故に持ち主を選び。

 下手な闇のカードよりも危険なソレが、見つかったとあれば。

 いかに、信用ならない相手であったとしても、青年はこの場に訪れる他なかった。

 

「おいおい、いくらツラがイイッても、早すぎん奴は嫌われんぜェ? ヒャハハハ!」

「…対話がお好みなら、近くの喫茶店にでも案内しようか? 良い茶葉が置いてあるんだ」

「茶葉ァ? んなもん、飲めりゃ一緒だろうがよぉ〜? 人をイラつかせんのも大概にしろや!」

 

 男が吠える。

 その手には一つのデッキ。

 黒一色の禍々しい気配を放つデッキケースが、バイクに併設された祭壇にセットされ、周囲の景色が一変する。

 

「辺り一帯を囲うほどの…ユニゾンフィールドだって!?」

 

 辺りを覆うのは、虹の虹彩。

 一般的に、カードバトルが行われる際に展開される特殊な結界───ユニゾンフィールド。

 世界そのものを切り取り、異なる階位にその空間を模倣するソレは、共鳴者の共鳴率を高め、ユニットの半実体化すら可能とする特殊空間だ。

 

 故にこそ、青年を囲う様に現れたのは、無数の恐竜ユニット。

 やや前傾姿勢の2足歩行、群れを作ることで知られるソレは、特攻服の男を主人として、そこに存在していた。

 

「その通りィ! 聞いたぜ〜英雄サマ? アンタ今、共鳴できないらしいじゃねぇの!」

「ッ…だけど、僕には頼りになる仲間がいるものでね、そのくらいどうってことないさ」

 

 ソレに対する青年は、蒼く輝く剣を手元に創造し、前に構えた。

 

 孤立奮闘。たった一人で油断なく剣を振う彼は、その身体に致命傷とはなり得ないかすり傷を刻まれながら、対話を続ける。

 

「ヒャハハハ! 強がるねぇ? そいつァ、出不精の星屑共の事か? ソレとも…入り口で足掻いてるガキの事かなァ?」

「ッ!? マ、マナ!? なんでキミが!」

 

 ソレを受けて男が手を振るう。

 展開されたのは、空中ディスプレイ。

 この工場の入り口にあたる雑に舗装された道路の上で、複数人の不良相手に獣ユニットを呼び出しながら大立ち回りを決める少女は。

 紛れもなく、ユージンの元で平和に暮らしているはずの少女だった。

 

「あららァ? 違ったか。ならアレか?」

「ッ!? まさか、お前ェ!?」

 

 次に映し出されたのは手錠で壁に繋がれた少女。

 ようやく怪我も治り、実力を上げる為学園で授業を受けている筈の少女が、制服姿のまま意識を失った状態で鎖に縛られていた。

 

「おう、悪いなァ、先にとっ捕まえさせて貰ったんだわ。良い子ちゃんはいいねェ? バトル中の相手を庇うんだからよぉ〜」

「この外道が!」

「ヒャハハハ!!」

 

 飛びかかる竜を弾き、時にかわしながら叫ぶ青年に。ソレが何より美味い美酒だと、腹の底から笑う男。

 

「だが、こんな事をして、学園が黙ってる筈は…!」

「んー? ソレが黙ってるしかないんだよなぁ…知ってんだぜ? 俺サマは」

「な、何を…」

 

 そんな彼らの攻防は、男の見下すような視線と共に紡がれた言葉によって、その拮抗を崩される事となる。

 

「あの、闇のカード。最初に作ったのは生徒会長サマらしいじゃねぇか?」

「…は?」

 

 ───手が、止まる。

 虚をつかれた事により筋肉が緩み、青年の持つ剣が竜の一撃によって弾き飛ばされる。

 

「そんな、馬鹿な話があるか!」

「おーおー、まぁ、英雄サマに信じてもらわなくてもいいんだわ。重要なのは、アイツらは出てこないって事だけぇ〜! ヒャハハハ」

 

 怒り否定する青年に、嗤う男。

 短い睨み合いの末。覚悟を決めた青年は手を伸ばす。

 攻撃の余波で、引き裂かれ薄汚れたマントの内側。たった一つのデッキが薄く光を帯び。

 電子祭壇が現れる。

 

「く…だが、ソレでもバトルは受けてもらうよ!」

「いいぜぇ? 勝てんなら勝ってみな? 札遺物になぁ!」

 

 ☆

 

「ヒャハハハ! 最強! 俺サマが最強だァア!! 《漆黒の殿堂 エクスザリオン》でアタック!」

「ぐわぁあああ!」

 

 金髪の青年が、漆黒の竜の一撃を受け吹き飛ばされる。

 勢いよくぶつかったコンクリの壁が崩れ、砂煙が辺りを包み込む工場内に騒音を響かせた。

 それを見て、男は高笑いを響かせる。

 

「ヒャハハハ! もう、立ち上がれねェみたいだなァ!」

「くぅ…はぁはぁ……」

 

 対峙していた青年は息も絶え絶え。

 純白のマントに赤い染め色が広がり、眩いばかりの金髪が、砂煙によってくすんでいる。

 

「さぁてコレで終いだァア!」

『リーダー! 大変ッス!』

 

 ソレに歓喜の声をあげ、仕留めようとした男。

 その視界に突然、焦った様子の舎弟が映る通信ディスプレイが現れる。

 

「あぁん? んだァよ。今、いいところだろうが〜」

 

『奴が! 奴が…s…!』ザザッ

 

 不機嫌そうに、しかし念のため。

 情報を受け取ろうとした男は視線を映像に向ける。

 映し出されたのは、工場前のだだっ広い道路。

 しかし、その画面は水蒸気の様なもので真っ白に曇り。

 続けて、鉄の塊のようなものが映ると、二の句も継がずブラックアウトしてしまう。

 

「はぁ? なんだっう……? …!」

 

 首を傾げ、そして視線を滑らせる男。

 辺りには相変わらず砂煙が舞い、入り口の方からは誰のものともわからない叫び声が聞こえてくる。

 ソレを受け、どうするべきか思考を走らせる男の視界の端。

 

 ──倒れ伏す青年のそばに制服姿の少女が現れる。

 

「テメェ、いつの間に逃げた」

 

「……」

 

 苦虫を噛むように表情を歪め、問いかけた男。それに対する答えは沈黙。

 少女は、真剣な表情のまま、意識を失いつつあった青年を日陰に横たわらせると、前を向き───。

 

「チッ…。でェ? あのボロ雑巾退かしてどうするつもりかなァ〜?」

「私が。代わりに戦う!」

 

 ───青年の祭壇に手を向けた。

 

「ヒャハハハ! こいつは傑作だァ! 喰い物にしかならないガキが俺サマにバトルだとォ? いいぜ! 戦ってやるよぉ〜」

 

 嘲笑する男。

 どちらにせよ、青年のデッキは回収する必要がある。

 しかし祭壇に設置された以上。バトルが終わらなければ取り外すことはできない。

 

 たった今も勝ち寸前に追い込めたデッキ…それも使い慣れていない奴が相手なら楽勝だろう。

 

「ただし、デッキはそのままでなぁ! ヒャハハハ!」

 

 そう考えた男の高笑いが辺りに響き渡り…

 

「──ねぇ」

「あぁん?」

「バトルしなよ」

 

 静かな、そして強かな視線が男を貫く。

 

 それは腐るほどぶつけられた言葉。

 男が唯一勝ったことがなく。

 それゆえに眼中にもないと、言外に伝えてくる理不尽な存在が…決まって放つ挑発の言葉。

 

 故に男は爪が食い込まんばかりに拳を作り…

 

「舐めんなガキィ!!」

 

「「スタートソウルユニゾン!」」

 

 ───ここに聖戦の火蓋は切って落とされた。

 

 ☆

 

 大小様々なユニットが空を斬り、地を削り。

 その自慢の武器で一人の青年に向かっていく。

 

「撃てぇ!!」

「っと」*1

 

 人型のユニットから、放たれた弾丸。正確に頭を撃ち抜く筈だったソレが、僅かな歩幅のズレによりかわされ、別のユニットの武器を破壊する。

 

「やれぇえ!」

「ん? あっ、あぶね…」*2

 

 巨大なカマキリのようなユニットの振るった鎌が、死角から迫り。

 青年がしゃがんだ事により、正面に迫っていた獣を真っ二つに切り捨てる。

 

「なんでアタんねぇええんだ!」

「うるさ…」*3

 

 全方位から放たれたユニットの一撃が、結界に阻まれ。その全てが、青年の周囲に発生した泥の中に飲み込まれていく。

 

「くるな! くるなぁあ!」

「…。はぁ、そう言うのいいからさ…」

 

 青年の呟き。

 そのまま一歩踏み出すと共に、青年の正面に現れたのは電子祭壇。流れるように差し出された右手がソレに触れ、セットされたデッキから銀色の光が溢れだす。

 

「おい、ファイトしろよ」

 

「あ、ぁぁぁあああ!!?」

 

 彼の背後には、蝙蝠の様な大魔獣に、少し機械的な合成獣。

 轟音によって辺りを震わせるその存在を背後に置きながら、青年は改めて手札を確認すると、告げた。

 

「サドンデスルールは楽でいいよなぁ…グレ3ターンの為サーチ開始」*4

 

 ───。

 

 グルグルと、カードが宙を舞う。

 ペンギンの魔獣が手を叩くと新たなカードが浮かび上がり。

 海牛の魔獣が天に吠えると、雨と共に、辺りに複数のホログラムが設置されていく。

 

 

 ─止まらない。

 

 

 ──止まらない。

 

 

 まるで迷いの無い札さばき。

 何をするべきか決まっている様な青年の選択に。【魔獣】達が歓喜の叫びをあげる。

 

 そうして、刻一刻と終わりが近づき…

 

 ──ついに、その瞬間が訪れる。

 

「《複合魔獣 エンドスクラッシャ》でヴァンガード(ユニゾンユニット)にアタック」

 

「ぎゃあああああ!!」

 

 極限まで発熱した鉄の塊。

 雨のホログラムを蒸発させ、辺りに熱霧を充満させた脅威的な一撃は。

 対戦相手の男を吹き飛ばした。

 

「対戦ありがとうございました…っと?」

 

「ユージン!」

 

 辺りを見渡す普通の青年。

 落ちたキーホルダーをベルトに付け直した彼は、近づいてきた少女に気づくと苦笑いを浮かべ。

 ぽんと頭を撫でると、クーポンチラシを片手に口を開く。

 

「悪りぃなマナ。遅くなったわ…んじゃ、アイスでも食い行くか?」

「…行きたいとこなんだけどよ…アイツが…カレンが中に…」

 

 悔しそうに俯く少女。

 

「……友達か?」

 

 ソレを意外そうに目を丸くした青年は、チラリと廃工場に視線を投げる。

 

「ちげぇ…と、思う。でも…借りがあるんだ!」

「そうか…」

 

 ほんの少しの沈黙。

 青年の特徴的な跳ね毛がくるくると回転し、ふと、何かに気づいたのか。ピンと跳ねる。*5

 

「フ、なら。ちょうどいい。俺もそろそろ文句を言ってやりたかったところだ」

「え、それじゃあ!」

「行くぞ」

「うん!」

 

 そうして、少女と青年は、寄り道でもする様な気楽さで、廃工場に向かったのだった。

*1
つまずいて半歩ズレる

*2
キーホルダーが落ちたので拾う

*3
デッキケースから結界が張られる

*4
サドンデスルール。ダメージ及び盤面を引き継ぎ、ダメージ表の状態で開始する。

*5
エスペルトのバイクが停まっているのを発見した。




月の試練を越えたら書く。
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