転生カードゲーマーは知らないデッキと戦いたい 作:フロントトリガー
男は強かった。
生まれつき力が強く。
それゆえに、世界に訪れた災厄の日も、生き延びる事が出来た。
…しかし、だからこそ、理解できなかった。
カードゲームと言う。厄災へ対抗しうる力。
ソレを操る理外の存在が。
己の力ではなく、カードユニットなどと言う存在しない物に頼る存在が、何より強い力を持つ事が。
だから男は、趣味であったソレを捨てた。
純粋な力として、厄災に対抗するプロジェクトの実験台として。
その存在を少しでも理解する為に、不愉快な実験にも参加して。男の力は姿を変えた。
そうして、男は最強になった。
不快な物は、厄災のカケラであろうと跳ね除け。その圧倒的な力でもって、カードの可能性を示し続けた。
その頃には、男の周りには仲間が増えた。
馬鹿な事を馬鹿なままやる、真っ直ぐな男達。強さと言うわかりやすい指標に集まった者達は、この世界において。
何よりも理解しやすい存在だった。
だから、ソイツらと駆け回り。
時にカードを日銭に変えながら。
……そして、アイツと再会して絶望した。
…理解ができねぇ。
…説明がつかねぇ。
…アレはなんだ?
なんで、確率の砂漠からその結果が引きづり出される。
──どうして俺は…
「良いとこ無しね?」
「ほら、捲りなさい?」
「あーあ、勿体ないわね?」
目の前の少女の言葉が脳裏にこびりつく。
足りない、やっぱり強い奴には敵わない。
それじゃ、ダメだ。
俺は強くなった。
着いてくる仲間だっている。
勝たなきゃならねぇ。負けちゃいけねぇ。
最強のデッキだ、負けるなんてありえねぇ。
じゃなきゃ…
俺は何のためにコイツを変えた?
何の為に戦っている?
───何のために、お前らを…
「ヴァーロン! 昔のお前は、もっと輝いて居たぞ!!」
──パキンと、何かが割れる音が聞こえる。
そして流れ込む、いつかの記憶。
よくある話。
加減の効かないガキが拳を振るい、周りから人が離れていく。
そんな当たり前の思い出。
ソレを変えたのは、たまたまその街を訪れていた女と仏頂面の少年だった。
女はデカいだけのガキに遊びを教えた。
少年は、その遊びに付き合ってくれた。
…そりゃ、楽しかったさ、夢中になって。
だけど勝てなくて。
だから、ガキは詳しそうな奴らに声をかけたんだ。
殴って悪かった、でも、勝ちてぇ奴がいるんだって…
そしたら、アイツら。
嬉しそうにポケットからカードを取り出してさ…。
───その日から、俺は一人じゃなくなったんだ。
☆
夜空に輝く二つの月が照らす荒野。
ゴロゴロとした岩肌の広がるその場所で、漆黒の龍人〈エクスザリオン〉と少女───白金の騎士〈ラムセル〉が対峙する。
「───やってくれたわね…あの男…」
一人ぽつりと呟いたのは、騎士を纏う少女。
薄く輝くオッドアイを細め、イメージの剣を構えた少女は。
つい先程立ち去った、自称普通の男の背を睨みつけていた。
「いくゼェ! 墓地に存在する《黒金潜り ランボス》の効果発動!」
対する龍人は、自らの存在を示す様に、強く吠える。
ソレに応え、地面を突き破って現れた、青い身体に漆黒の装甲を身に纏った恐竜が歓喜の声をあげる。
「さらに《黒金の軍閥・武羅津苦》を発動! ヒャハハ! 待たせたなァ! 《黒金纏い ケイロス》」
続けて、信号弾の様に打ち上がり発光する浮遊石。
その目印に応え、月の光をバックに現れたのは、丈夫な飛膜を広げた岩肌纏う鳥竜。
「俺サマの効果発動! 〈ケイロス〉を退却後、後列1箇所を使用不可にし、『武導マーカー』を生成するッ!!」*1
「『武導マーカー』?───!?なぜソレが!?」
「〈ケイロス〉の退却時効果により、〈ブロックトークン〉を二枚スペシャルサモン!! コイツをゲージインしてドローする!」
それが、龍人の元で平伏すると。
その身体にこびりついていた岩肌がショートを起こしながら浮遊を開始し。
あたりの地中から岩石竜が次々と現れると、巨大な結晶の元へ集まっていく。
「ハハハ! ヒャハハハ!! そうだよなぁ! アイツ以外に負けらんねェよなぁ〜! 来い《黒金の呼声 ジャキィ》!」
そうして結晶から現れたオレンジ色の恐竜が彼らの下へ集えば。
荒野は、月夜を照らす無数の浮遊石が舞い踊る。竜達の狩場へと変貌した。
「バトルだァア! 〈ランボス〉で攻撃!」
「ノーガード! ゲット、キュアリライズです!」
「知るかよォ! 俺サマの攻撃時効果発動! 〈ランボス〉を退却し、その共鳴値と同じ数。山札の上二枚をスペシャルサモンする!」
「ヘッ、構わねェ。お前らも俺サマの力だ! 行くぜェ《夏玲のイグナイド》《ホロホロ・ピートドラゴン》!」
「え、ぇえええ!? ───完全ガードよ!」
そうして飛びかかる青色の恐竜。
その一撃を弾き飛ばすように、白金の騎士から結界が張られ。
着地した〈ランボス〉は、背後の結晶体の前まで歩くとその身を捧げ。ソレを取り込んだ結晶が浮遊石リンクするように光を飛ばすと。
月灯を受ける空中の結晶からは、赤茶色の竜が現れ、地表からは、黒岩に身を包んだ竜が現れる。
そのまま空中の〈レフィストーム〉を叩き落とした赤茶の竜は、地面に降り立つと龍人に礼をする様に首を下げた。
「いくぜェ? リライズチェック! エールリライズ! セカンドは無し。サード…ヒャハッ!! エールリライズゥ!!!」
「ッゲージと合わせて+35000の前列強化ですって!? ───ヒュッ。」
そうして放たれる龍人の一撃。
踏み込みで地を割り、大量の浮遊石を生み出した彼の一撃が、白金の騎士へ迫り、ソレを食い止めんと、守護の少年騎士が強固な障壁を展開し…着弾。
凄まじい轟音が世界を揺らし、その余波で、騎士を守らんと張られた結界がガラスの様に砕け散る。
「〈春耀〉で攻撃ィ!」
「ぅ、ノーガードです…。」
「〈夏玲〉も攻撃ィ!」
「ワァ…手札───ノーガードよ。」
そうして次々と騎士に迫る竜の大群。
深緑の竜が光線を放ち、ソレを受けた騎士の体勢が崩れると、続けて迫る赤茶の竜がその剣を弾き飛ばす。
「〈ジャキィ〉で攻撃ィ! 効果で〈春耀〉を退却し山札上…《黒金師団 ブロキィ》をスペシャルサモン!!」
「ま,まだ増える!? やっぱりt───ノーガード! …ここまでよ。」
そうして彼らを飛び越えて襲いかかった軍隊竜の一撃が、騎士の装甲を大きく凹ませ…
「…。なるほどなぁ…見えたぜェ? …ヒャハ………理不尽だなァ…」
「ゲット。エクストラリライズ───。パワー+一億です!」*2
───凄まじい極光が、騎士へ降り注ぎ。
絶対強者の加護を授けた。
「だが、タダじゃやられねェ! 〈ブロキィ〉で〈ハルト〉を攻撃! 効果により〈ジャキィ〉をゲージに置き、ゲージから《黒金の軍閥・武羅津苦》を手札に加える!」
「構わないわ…なぜならここが───ファイナルターン!です!」
キラキラと輝くデッキトップ。
その輝きを手に高らかと宣言した少女は、六枚に増えた翼を大きく広げ。
仲間と共に龍人へと立ち向かうのだった。
☆
「探しましたよユージン」
「…。生徒会長か…」
少女と男が激戦を繰り広げる天球の外。
とある美青年の止血を済ませた青年の背後から澄んだ女性の声が聞こえ、ゆっくりと青年が振り返る。
その手は警戒からか、無意識にデッキへと添えられ。特徴的な跳ね髪もピンと伸ばされていた。
「おや、もう名前では呼んでくださらないのですね?」
そこにいたのは、制服の上に漆黒マントを纏う銀髪の女性。飾りと言うには鋭利にすぎるアクセサリーを頭部につけた彼女は、マントの内側に流れる星空を揺らしながら青年を見つめていた。
「…お前をソレで呼ぶには、いささか立場が悪すぎる」*3
「貴方は常にソレで呼ばれていると言うのに?」
バツが悪そうな青年。
ソレを無表情に見つめ首を傾げる彼女は、穏やかな口調の裏に威圧感を感じさせ。
青年は、その名を口にする。
「……わかった。───。」
「…ええ、それで良いのです。ユージン。」
───巡る星の輝き。彼女の元に灯るソレは、青年の言葉を受けて、更に輝きを増すのだった。
極光に勝ったら続き書く。