王城高校から泥門高校へ戻った俺達は早速練習を始めた。
いい加減どぶろく先生を元に戻したヒル魔が王城対策を用意しろと言い、四六時中濡れたマスクをつけた高地トレーニングモドキで基礎体力をつけることになった。
これが息苦しくてキツイ、全力で呼吸しねぇと酸欠になる程の通気性の悪さ……これをずっと着けるとか死ぬわ。
「んでエベレストパス対策だが、ここにちょうどおあつらえ向きの練習台がいる」
どぶろく先生が俺の背中を叩いてモン太に提案していた。
「エベレストパスみてぇにバカ高いジャンプは期待してねぇ、だが双葉からボールを取れなきゃ話になんねぇ。残りの3日間ずっとパスの競り合いをやれ」
「ウッス!」
「スタミナを鍛えつつの競り合いだ!死ぬほどしんどいが桜庭に勝ちてぇなら食らいつけ!」
「双葉先輩オネシャス!」
「おう、死んでもやるぞ」
「ウッス!!」
そこからボールを射出する機械を使ってモン太と猛特訓を始めた。角度は異常に高く設定されていて俺がジャンプしてもギリギリ届くかどうかの高さだ。
モン太とぶつかり合いながらボールを確保するポジションを譲らず走り、放たれたボールをジャンプしてキャッチ。着地するまでの短い時間でもモン太に取られないようにボールを胸元へ入れる直前にモン太が奪いに来る。
「キャッチマーックス!」
「っ!」
モン太に俺の胸とボールの間に指を入れられ、よく見ると上手く縫い目にしっかりと指がかかっている。
同じボールを掴むなら縫い目に指がある方が強い、結局取ったと思っても最後にはモン太に奪われてしまった。
「っしゃああ!双葉先輩倒したり〜!」
「なるほど、そういう感じで奪われるのは結構キツイな」
次は防ぎながらやってみよう。
「まだやるぞ」
「おっス!」
今やられた取られ方の対策、ボールをキャッチした俺は胸元へ入れる時にボールを腕も使ってガッチリ掴みこんで着地した。
これならモン太の手が入り込んで来ても掴む場所が少なく、片手で取りに来ても2本の腕と1本の腕じゃ明らかに2本の腕が強い。
「くぅー!双葉先輩のパワーじゃ負けるッスよ!」
「……」
この体勢ならモン太に取られねぇが、次の動きが遅れるな。もし俺が桜庭と相手するって言うならここを狙う方がいいかもしれねぇ。
「モン太、試しに俺がボールを取って着地した瞬間を狙え」
「?」
「競り合いを敢えて捨てて無防備になる着地の瞬間ぶっ殺しに来い」
「はいッス!」
次のボールが放たれ、モン太が競り合いに来ないで下で構えている。
「タックルマーックス!!」
着地した瞬間モン太のタックルが来た。
「いや倒れねぇッスけど!!?」
「お前軽いし…どうせなら足を狙えよ」
バカ正直に腰に来ても倒される程俺は非力じゃねぇんだよなぁ…。
「くっそ〜!やっぱここは双葉先輩とぶつかりながらでも空中でキャッチした方が……双葉先輩をぶっ飛ばす程のスピードでぶつかりゃきっと…!」
モン太1人で色々と考えてやろうとしているのがよくわかる、納得行くまで付き合ってやろうか。
そしていよいよ試合当日。
この日は豪雨の予報で、野外である江ノ島フットボールフィールドは雨に晒されていた。
心肺機能養成ギブスである濡れマスクを外すと、雨によって冷えた空気が肺の中へ入り込んだ。
「試合前のこの感じいいよな、なんかこう…血が冷たくなるって言うかさ」
「石丸さんまた同じこと言ってる…」
石丸の言葉にセナが反応すると悲しい表情をしていた。
コイントスが行われ、泥門の攻撃と宣言された。
「泥門デビルバッツの始まりは王城からだった。泥門デビルバッツ結成してすぐに王城と試合してボロ負けで、今年の春にセナとモン太を入れたメンバーで挑むも負けて……様々な経験を経てここへ来た」
試合開始直前に少しだけ語ると、栗田が涙目になっているのが見えた。
泥門デビルバッツが結成して間もなく……黄金世代がいる王城へ練習試合を申し込んでボロ負け。
春大会になればムサシが離脱。
残ったヒル魔と栗田と俺はいつかムサシが戻ると信じ、3人で練習を続けた。
2年になってセナが入部してから本格的に始まった。
春大会の為に何人も助っ人を呼んで…その中にモン太も入って挑んだ春大会。
2回戦で王城とぶつかって、いい所まで来たのに俺は怪我をして離脱…その後逆転負けしてしまった。
あの時程悔しいものは無かった。
病室で1人で泣いて、怪我さえなければと何度悔やんだか……。
仲間を集め、夏休みでは地獄のデスマーチを乗り越えて挑んだ秋大会。
王城にリベンジする前に敗退してしまい、結果3位。
この試合も悔しい思いをした、同時にこれまでの戦い方を改める良い機会でもあった。
そして今日……ようやく、ようやく王城との因縁にケリをつける日がやって来た!
「悪いが俺には石丸の気持ちは理解出来ねぇ。柔道で兄貴にやられてから熱が冷めた時だったらもしかしたら理解出来たかもしれねぇがな」
「いいよいいよ…」
「アメフトを始めた時から今日までずっと心を熱くさせていた俺には血の一滴も冷たくさせる暇はねぇんだ」
右手を力いっぱい握り締めて逆サイドにいる王城を見た。
「この試合、全員で勝つぞ…勝ってクリスマスボウルへ行くぞ。全員試合終了の笛がなるまで心を熱くさせろ!!」
『おう!!』
「俺らは敵を倒しに来たんじゃねぇ」
試合開始直前、円陣を組むとヒル魔が宣言した。
ヒル魔の言葉に続きがあるのを全員が理解しているのか、拳を強く握り締めて次の言葉を待っている。
「殺しに来たんだ!!」
ヒル魔が真剣な顔をして言うと息を吸い始め、俺達も同じように息を吸う。
『ぶっ殺す!!』
『YEAHー!!』
ヘルメットを被り、雨で視界が悪くぬかるんでいるフィールドを歩いて定位置まで歩き、試合開始を告げる笛が聞こえた瞬間。
体の熱が過去1番に燃え上がった。
いよいよ次回から王城戦!
果たしてどうなるのか乞うご期待!!
それでは次回をお楽しみに!!