〜双葉煋治視点〜
第2クォーター点差は6対3。
栗田さんがトライフォーポイントのキックを弾いた事で追加点は防いだ。
ベンチプレス145kgに40ヤード走4秒2で隙が全くない化け物をどうにかしないと泥門が勝つ未来が見えない。
先制点を取って押せ押せだったムードが一気に静まり返っていた。
「?」
サッサとヒル魔さんがまも姉ちゃんにサインを送っていて、まも姉ちゃんが少し考えた後僕を見てきた。
「セイジ君、これまでの王城の試合のビデオデータある?」
「へ?い、一応…」
「じゃあ来て!」
「ちょ!あ、あー!!」
まも姉ちゃん試合どうすんの〜!?
まも姉ちゃんと来たのは新・デビルバット号という名の大型トラック。
「セイジ君時間が無いからよく聞いて、今から進君のプレイを全部1つのビデオに編集します!」
「!」
「これまで撮ってきたセイジ君のデータを使って進君攻略の糸口を見つけるから手伝って!」
「はい!」
「機材は全部揃ってるから急いでやろう!」
撮影係の出番だ!!
「僕がパソコンで編集しますから指示を出してください」
「お願い」
カバンの中からUSBメモリを取り出して1つずつ差し込み、急いで編集を始めた。
少しでも早く、少しでも多くの情報を用意する!
まも姉ちゃんの的確な指示とこれまで培ってきた撮影技術の全部を使って、蓮次兄ちゃんの助けになるんだ!!
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〜双葉蓮次視点〜
前半残り8分、セナのランと思わせて虚を突いた石丸のランだったが進は揺さぶられず、石丸がトライデントタックルの餌食になってしまいファンブル。
そして進が拾ってまた光速の脚で誰も追いつけずタッチダウンを決められ、キックも成功させて今は13対3。
点差が更に広がってしまった。
「スタミナ温存とかなりふり構ってらんねぇ、この点差を縮めつつ広げらんねぇ様にするぞ」
雨足が強まる中のハドルでヒル魔が全員に伝えた。
「石丸を下げて雪光を入れる。ハーフバックは蓮次、フルバックはセナでIフォーメーション。瀧をタイトエンドに置いて右サイドに雪光だ」
ファッキン と呼ばずに全員名前呼びをしている。
ヒル魔の中でチームメイトを信用し始めている証拠であり、切羽詰まった状況であると暗に示していた。
「蓮次がリードブロックで道をこじ開ける、セナはそこを突っ込め。ライン組は通り道を少しでも開けろ、そうすりゃ蓮次が後押しする」
『おう!』
「殺られる前に殺れ!守りに入んな!ラインをぶっ壊してぶっ殺せ!」
『おう!!』
ヒル魔の掛け声を最後にハドルは終わり、定位置についた。
さて、俺を石丸のポジションにつけたって事はセナの盾になれってわけで、今のところ進と真っ向からやり合えるのはセナの脚か俺のパワーだけ。
スタミナ温存とか言ってられねぇな。
「双葉さん」
「あ?」
後ろのセナが声をかけてきた。
「……僕は悔しいです、進さんに唯一勝っていた脚で負けてしまって…悔しいです」
「…」
後ろを見ればセナが下を向いている。
「それでも勝ちたいです、敵わないって分かっていても進さんに勝って超えたいです」
「……そうか」
落ち込むと思いきや持ち直したか。
雨で視界が悪いしアイシールドを着けてるから顔はよく分からねぇが気合いは十分だな。
「それでこそエースだ」
「役割を間違えんな、今のテメェは進のスタミナを1ミリでも多く減らす特攻役だ」
「あ?」
「進はどっかのスタミナお化けじゃねぇ、ここでスタミナを削れば後半勝ちの目が出てくる。進にぶつかって倒し続けろ」
「ハーフタイムで元通りだろ」
「戻りきらねぇレベルまで削れ、今テメェの役目はそれだ」
「…………」
セナの盾だけじゃなく進のスタミナ削り役か、全力でぶつからねぇと躱されて役目を果たせねぇか。
勝つためなら泥臭い役目もやってやるよ!
「双葉さん…?」
「悪いなセナ、進と勝負するのは後半からにしてくれ」
「え?」
「ちょっと先に殺ってくるわ」
地獄の泥仕合と行こうじゃねぇか…!
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〜実況席〜
『Set!』
「Iフォーメーションで泥門の攻撃が始まります!」
「前半残り時間は6分となりました」
『Hut!』
「ヒル魔君にボールが渡り双葉君とセナ君が中央突破を狙いに走る!!」
『おおりゃぁぁああ!!』
「目には目を!バリスタにはバリスタ!双葉君が中央のラインを破壊して突破!!」
「目の前には進さんが立ちはだかっています!」
『来い!』
『おらぁ!』
「パーフェクトプレイヤー進VS白銀双葉の熱いバトルが始まる!!」
『くっ!』『がっ!』
「お互いの胸に手をぶち当て押し合いに発展!体格差で双葉君がやや有利か!?」
「パワーは互角!」
『おおおっ!』
『ふんっぬらばっ!!』
『!!』
「スピードに乗っていた双葉君が進君を押し込む!」
「プラチナロードだ!」
「進君を押し進んで双葉君が道を空けるとセナ君が突破!」
『9ヤードゲイン!』
「だが流石の王城ディフェンス!セナ君の独走を許さずファーストダウンまで後1ヤード!」
「今回初披露されたバリスタでリードブロッカー役になる進さんに比べ、実戦の経験が多い双葉さんの方が有利っぽく思えます」
『Set!Hut!』
『はぁああ!!』
『オオオラァアア!』
『邪魔だぁ!』
『ぐえっ!』
「十文字君が猪狩君と勝負している後ろから双葉君が入り込んで十文字君をフォロー!そのまま2人で猪狩君を青天させた!」
『来い!』
『うっす!』
「そのまま十文字君も盾に入る!」
「2枚の盾で小早川さんのラン!」
「双葉君が進君を、十文字君が具志堅君をブロック!」
『今度は負けない!』
『ぶっ壊す…!』
『くっ…!』『ぐっ…!』
『『ぉぉおおおっ!』』
「お互いの胸をど突いてからの押し合いはまるで喧嘩殺法!」
「ほぼゼロ距離なら進さんのスピードは活かせず純粋なパワー勝負!」
(俺をスピードに乗せないよう体格を活かしたハンドテクニックでパワー勝負に持ち込まれてしまった…ブロック能力は俺よりも上!…それでこそ、ライバルだ!)
(先に手を出した筈なのに瞬発力で同時なんてな…!スピードに乗って押し合いになっても重心を落として押し負けないようにしてる…対応力が俺とは段違い、隙が全くねぇパーフェクトプレイヤーだなマジで!!)
(だが…)(けどよ…)
『『勝つのは俺だ…!!』』
ドンッ…!
『!』『!?』
「おおーっと!セナ君が双葉君の背中に肩を当てて押したぞぉ!」
「これで均衡が!…押し合いの均衡が崩れます!!」
(双葉さん、今僕ができるのはこれしか出来なくて…すいません!)
『最高の…手助けだぁ!!』
『う、うおおぉぉっ!』
ドチャア!!
「青天返しィー!!双葉君が進君を青天したぞぉ!!」
「初回のバリスタで倒されたお返し!あのパーフェクトプレイヤー進清十郎を倒しました!!」
「そのままセナ君が突破!王城ディフェンスがセナ君を止めようと集まる!!」
(双葉さんが進さんを相手してくれた!なら僕の役目は……ここでタッチダウンを取ること!!)
「光速を維持したままデビルバットゴーストで抜き、そして更にハリケーンで最後の1人も抜いた!」
「雨で地面が泥になってるのに足捌きが凄いです!」
「もう誰も追い付けなーい!!」
『タッチダウン!!』
「タッチダウーン!!!王城ホワイトナイツのゼロタッチダウン記録とうとう破れたりぃー!!!」
「こ、これで13対9!キックを決めれば13対10で3点差になります!」
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〜双葉蓮次視点〜
タッチダウンを決めたセナの元へヘルメットを外しながら歩いて行った。
「双葉さんありがとうございます!」
モン太達に囲まれて喜んでいる中、セナが俺の前へ来て礼を言ってきた。
「…」
「あの、どうしたんですか?」
「…よくやったセナ!」
「わっ!」
セナの頭に手を置いてわしゃわしゃと雑に撫で回し、最後に背中を叩いた。
「進にやり返せたし100点満点のサポートだった!」
欲を言えばもうちょい時間を稼いで進のスタミナを削りたかったが、ディフェンスで攻めればいいか。
その後、トライフォーポイントでムサシのキックが成功し13対10で3点差に詰め寄れた。
「ケケケッ分かってんだろうな蓮次」
「ラインバッカーに戻れってんだろ」
「そうだ、進に挑み続けろ」
「分かってる、スタミナを少しでも削ってやる」
「ディフェンスフォーメーションも変えるぞ、モン太と瀧の2人で桜庭につけ」
「はいッス!」「OK!」
「アメフト史上最濁、泥まみれの地上戦に持ち込む…!!」
進対策!
スタミナを削り続ける事!どっかの天才とは違って進はスタミナに限界があります!
大丈夫、蓮次と共倒れになればセナが活きる!
勝つ為に蓮次は死んで貰いしまょう!(無慈悲)
これを卑怯だと言わないでくださいね?
それでは次回をお楽しみに!!