〜姉崎まもり視点〜
前半残り4分。
セイジ君に指示を出しながら現在中継されている試合も録画に回していた。
「セイジ君!」
「もうちょい!もうちょっと…!!」
アナログ派の私と違ってセイジ君は器用にカタカタとパソコンを操作してくれて、大量にあったデータの編集が間もなく終わりそうになっていた。
『Set!Hut!』
編集している横で生中継を流していて、これから王城の攻撃が始まろうとしている。
泥門のディフェンスフォーメーションが変わっていて、桜庭君にモン太君と瀧君がマークしていた。
瀧君のポジションが空いているので高見さんはバリスタを右サイドに放ち、蓮次君が進君と戦う為に走っていた。
『はぁあっ!』
『!』
蓮次君の胸に手を当てて押し退けようとする進君に対し、蓮次君は進君を不良殺法で体勢を崩しにかかる!
『っ!』
堪えようとした進君の背中から蓮次君が腕を伸ばしてボールを持ってる猫山君の腕を掴んだ。
『捕まえ…『させん!!』っ!』
進君が蓮次君を片手でかち上げた!?
せっかく掴んだのにかち上げられて手を離してしまった!
『ぐはっ!』
『はぁああ!!』
そのまま蓮次君は進君に青天させられてしまうも、後に続いた黒木君が猫山君にタックルして止めてくれた。
『3ヤードゲイン!』
『Set!HutHut!』
2度目の攻撃は中央突破。
ラインを突破した進君の前に蓮次君が立ち塞がり、進君がグースステップで急加速して蓮次君のお腹へ向かってブロック…!
「か、はっ…!」
深々とお腹を突かれたせいで息ができない蓮次君を押してまた青天されてしまい、簡単に突破を許してしまった。
『15ヤードゲイン!ファーストダウン獲得!!』
大きく進まれてしまい、ファーストダウンを獲得したから計測の為に一旦時計が止まった。
「…セイジ君!」
「今出来ました!あとは今中継されている分の編集しますからまも姉ちゃんはベンチで続きの撮影をお願いします!」
「お願い!」
新・デビルバット号から出た私はカメラ片手に急いでベンチに戻った。
ベンチへ戻るとちょうどタイムアウトを取っていて、みんなベンチでそれぞれ休んでいた。
前半終了まで残り時間……2分。
「ってぇなクソ…」
蓮次君がお腹を摩りながら水分補給をしている。
「やり合ってれば多少でもスタミナを削れるとは言え肉壁になんのはキツイ…これでほんとに後半行けんのか?」
「……」
「なんか言えよ……まぁいいあの高見の事だ、前半終了と同時に攻撃が終わるように時間計算してるぞ」
「だろうな」
「どっかで止めねぇとタッチダウンを取られて後半厳しくなる。どこで仕掛ける」
泥門のゴールラインまで後60ヤード地点、このままタッチダウンを許してしまえば後半厳しい展開になってしまう。
「娑婆気のある高見の事だ、最後はほぼ間違いなく桜庭を使う」
「把握した、それまで進をぶっ倒そうとムキになってるわ」
「ケケケッ!」
「はははっ!」
悪魔とその右腕が悪い笑みを浮かべながらトントン拍子に作戦が決まって行くも2人の目は一切笑ってなく…完全に作り笑いだと感じた。
タイムアウトが明け、みんながフィールドへ行くと雨が更に強まって行く。
雨なんて関係ないと言わんばかりに王城は攻撃を緩めず、泥門はファーストダウンを取られ続けてしまう。
バリスタで進君を使ったランを止める為蓮次君が何度も挑みに行くもその度に抑え込まれてしまう。
これまでの経験を活かした不良殺法や柔道技を駆使して進君を突破出来ても、進君が光速の脚で直ぐに追いついて蓮次君をブロック、猫山君を守る為に奮闘している。
王城はランだけじゃない。
桜庭君へのエベレストパスも織り交ぜての攻撃もある。
モン太君と瀧君が必死にプレッシャーをかけても2人共足の速さで負けていて背丈も負けていて…バリスタもエベレストパスも止められずにどんどんとゴールラインが近付いてしまった。
前半残り時間15秒…ゴールラインまで後20ヤード。
「ふぅ、ふぅ……」
「はぁ、はぁ……」
途中から編集作業で見れなかったが、戻ってきてから約1分近くの攻防で蓮次君と進君の2人が誰よりもドロドロになって2人共膝に手をついて息を整えている。
みんなと比べて2人のスタミナがかなり消耗されているのがよくわかる。
『…Set!Hut!』
高見さんの掛け声で前半最後のプレイが始まった。
進君が右サイドへ走ると蓮次君が止めに動く。
だけど王城最後の攻撃は桜庭君を使う様で、モン太君と瀧君の2人にマークされながらもゴールラインへ向かって走って行く。
「畜生…!」
モン太君が悔しがりながらも両手を上げ、高見さんへ背を向けながらもキャッチの体勢になった。
「……!!」
何故か高見さんが投げる直前で止めた…!?
「殺った…!」
「なっ…!」
蓮次君が進君を放置して右サイドからブリッツ!?
「なぁぁあ!?何で双葉が高見に!!?」
「進君を放置…!」
ヒル魔君の作戦…!
これまで何度も蓮次君が進君と勝負を挑み続けて来たのにここへ来て裏をかいた!
「と、言うとでも思ったか?」
「させん!!」
「がはっ…!」
進君の光速ブロック!蓮次君の胸を押し上げて高見さんを守る盾になった!!
「…と、と言うとでも…!?」
「うおおおっ!!」
「セナ…!!」
セナも持ち場を放置してブリッツ!
「1人で無理でもなぁ!2人なら勝てんだよ!!」
「くっ!これは…!!」
進君が蓮次君の対応をしている今、セナを止める人が居ない!!
「……と、言うとでも?」
高見さんが猫山君に向けてパスの体勢になってる!!
「だから……殺ったってんだファッキンメガネ…!!」
「にゃあああ!!!?」
「ヒル魔君まで!?」
猫山君をマークしてパスを投げれないようにしてる!!
となれば残るのは……。
「うおおぉぉっ!!」
「っ!!」
セナの光速ブリッツ!
高見さんに飛びついてタックルを決めた事でボールをこぼした!!
「拾ってー!」
地面に転がるボールを泥門の誰かが拾えば逆転出来る!
「!」
こぼれたボールを拾ったのはヒル魔君!
「走れヒル魔!」
「妖一兄走ってー!!」
「ここで取れば一気に逆転だぞ!!」
どぶろく先生や鈴音ちゃんやムサシ君が叫ぶ前にヒル魔君はもう走り出していて、一発逆転のタッチダウンを狙いに行ってる!
だけど王城の切り替えが早く、猫山君がもう追い付いてしまう。
「お前は寝てろぉ!!」
「にゃげふっ!!」
蓮次君が猫山君に追いついて猫山君を吹き飛ばした!
「行けっヒル魔!!」
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〜蛭魔妖一視点〜
「行けっヒル魔!!」
猫山をぶっ倒した蓮次を見ることも無く泥だらけのフィールドを走る。
高見の脚なら俺に追いつけねぇ、猫山も今蓮次がぶっ倒した……残るは。
「っ!」
背中にバケモンの圧を感じる…!
「っぱくるよなバケモン…!!」
あんなバケモン相手に逃げ切れる脚はねぇ、左右に逃げてタックルを躱す技術もタックル食らっても堪えるパワーもねぇ…………詰み、か。
「クソが…!蓮次があれだけ削ったってのにまだ足に来てねぇのかこのバケモン!」
何がこれしか道がなかった、だ。
元々高校最速のバケモンが秋までにトレーニングを積み重ねて人間の限界に到達?これだから天才ってやつは…………こっちは1年半かけてコンマ1秒縮めても尚凡人の壁に到達してねぇってのに…!!
「ヒル魔さん!」
「!」
反射的に、何も考える暇も無く声をかけられた方へボールをトスをした。
普段ならぜってぇしねぇ……状況を見てから判断して行けるか計算して漸くやる、その過程をすっ飛ばしてしまった。
そしたら俺の横を猛スピードで走り抜けるセナがボールを持って行き、進が俺を追い越してセナを追いかけて行った。
同速の勝負となれば、早くにスタートを切ってる奴が勝つ。
「なっ!?……マジでバケモンかよ…!!」
同速勝負で勝つと思ってたのに…ゴールライン目前で進が飛んでシューズに指1本引っ掛けやがった!
『泥門タッチダウンならず!!』
後30cmって所で止められ、前半が終わった。
ここで前半終了!
残念ながら逆転ならず……(◞ ̫◟)
次回はハーフタイムの話、そして後半戦へと続きます。
それでは次回をお楽しみに!!