泥門の2番手   作:実らない稲穂

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 今回思いつきの小ネタ【デビルバッツ劇場】付きで、全体的に長くなりますがよろしくお願いします。

 このデビルバッツ劇場、本編とは一切関係なくネタ枠です。



 それではどうぞ。



王城ホワイトナイツ戦その2

 

 

「たるんどる!!なんだこの体たらくは!!?」

 

 王城ベンチから怒鳴り声がよく聞こえる。

 

 

 

 

「ケケケッショーグン様の堪忍袋の緒が切れてやがるな」

 

 それを見てヒル魔が良い気分なのか悪い顔をしてら、実を言うと俺も今気分が良い。あの王城に2回もタッチダウンを取ってリードしてるんだ。

 

 このまま攻め続けて勝ちを取りに行く。

 

「進はバケモンだがディフェンスしか出てこねぇ、つまりこっちはカウンターを狙えば進は封じたも同然だ」

「インターセプト狙いでいくか?」

「そう言いてぇが相手はあの王城だ、もうあんな事は起こらねぇと思った方がいい」

「ならどうする」

 

「だからこそパスは捨てる!ラン警戒の陣形だ!」

「ずっとゴールラインディフェンスか?」

「あぁそうだ。ラインは栗田以外雑魚だから止めようがねぇ。アイシールドは毎回ブリッツ狙いに行け!栗田は相手を毎回ぶっ倒せ!」

「は、はい!」「うん!」

「泥門はディフェンスも攻める!攻めて攻めて王城のオフェンスをぶっころす!!」

 

 『YEAHー!!』

 

 ヒル魔が気合いを入れるとタイムアウトが終わり、試合再開となった。

 

 ヒル魔のキックでプレイが始まり、残り60ヤード。

 俺達が取る陣形はゴールラインディフェンス。ずっとラン警戒だ。

 

 『Set!』

 

 高見が掛け声をかける。

 

 『HutHutHut!』

 

 ボールを受け取ると、ワイドレシーバーの面々が動き出す。

 その中で桜庭マークの俺はピッタリと付いて走る。

 

「2度目の対決だアイドル」

「くっ!」

 

 身長差1cm、体重差は1kg。だが1度目の対決で俺はこいつに勝てると確信している。

 

 

 

 

 とは言ってもパスを投げる相手は桜庭以外にもいるから高見が選んだのは桜庭じゃなくてショートパス狙いの他のレシーバーだった。

 

 ヒル魔が何とかレシーバーを止め、7ヤード進まれてしまった。

 

 

「なんだ桜庭頼りじゃねぇんだな」

「……」

 

 プレイが止まったので独り言を呟いた。

 

 桜庭を見ると悔しいようなどうせ俺なんてみたいな顔をしている。そして桜庭のヘルメットに星型のシールがあるのを見つけた。

 

「おい桜庭」

「?」

 

 桜庭が戻ろうとしている所へ俺が声をかけて止めた。

 

「何でヘルメットにこんなもん付けてんだ」

「あっ!」

 

 ピッとシールを剥がすと桜庭が取り返そうと手を伸ばしてくる。

 

「返せ!」

「ハンバーガー屋のシール?」

「返せって!」

「あーはいはい返す返す」

 

 剥がしたシールを桜庭に返し、空いた手で胸ぐらを掴んだ。

 

 

 

「アメフトを舐めてんじゃねぇぞ!

「!」

 

 

「てめぇがアイドルすんのは自由だしやりたきゃやればいい。だがここはアメフトのフィールド、アイドル気分のままでプレイすんじゃねぇ!アメフトに全神経を集中させろ!」

「っ!」

「それが出来なきゃどっちか辞めちまえ!」

 

 

 言いたいことを言った俺は手を離してハドルをしてる円陣へ戻った。

 その間観客からブーイングの嵐、悪役(ヒール)になってしまったがどうでもいい。

 

 桜庭じゃなくてアメフトを見ろ。俺が言いたいのはそれだけだ。

 

 

 

 

 

 

「何話してきた」

「ハンバーガーのシール貼ってたからアメフト舐めんなってだけ」

「ケッ!しょーもねぇ事話してんじゃねぇよファッキンセカンド、どうせならビビらせて来い」

「言葉でビビらせるよりプレイでビビらせる。その方が後々効くだろ」

「だったら徹底的にやれ。2度とプレイしたく無くなるぐらいやれ」

「了解、徹底マークする」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『Set!HutHut!!』

 

 

 王城2回目の攻撃、こっちは相変わらずゴールラインディフェンスの陣形で迎えるがなんと相手はランを選択。

 

「ばっはっは!勝負は後でだ栗田!」

「!」

 

 大田原と栗田のマッチアップだったのに、ここへ来て栗田を放置した大田原が別のラインを押し倒して崩され……相手のランニングバックが中央突破に来た。

 相手のランニングバックがスクリメージライン超えた時点で桜庭を放置、ランニングバックを止めるために向かう。

 

 

 『10ヤードゲイン!ファーストダウン獲得!』

 

 何とか模部が止めてくれたがファーストダウンを取られてしまう。助っ人頼りだから仕方ないにしてもラインが弱いとどうしてもディフェンスに穴ができる。

 パス封じの為にブリッツを仕掛けるがその為のライン崩しが上手く行かない。そうなれば高見を止めに行けないから好きにパス相手を選ばれる……ランだって走られた時中央突破でこじ開けられて走られてしまう。

 ラインがしっかりしていれば…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 『タッチダウン!!』

 

 第2クォーター中盤にタッチダウンを取られ、12対6。その後のトライフォーポイントはキックを入れられて12対7。もう1回タッチダウンを取られれば逆転される。

 

 

 

 

「取られたら取り返す!攻撃だ!攻めるぞ!」

 

 ヒル魔が声をかけて全員の気合いを入れ直し、攻撃に臨む。

 

 ゴールまで70ヤード、進がいる王城ディフェンスを突破してタッチダウンを目指す。

 

 『Set!HutHut!!』

 

 栗田からヒル魔へボールが渡り、セナと一緒に走る。

 

 

「今度は抜かせん!」

 

 当然進がセナを止めようと来るよな。

 

「止めてやる!」

 

 セナを背中に進と対決。

 愚直にスピアタックルを来るかと思えば大回り……俺を無視するつもりか!?

 

「回った分追いつけんだよ!」

「いちま〜い!にま〜い!!」

 

 セナも進を見ていたから内側へ走り込む……マズイ!

 

「ばっはっはっ!!来ると分かってたぞチビ!さんまいめだ!!」

「ヒィィ!!」

 

 こいつ…!栗田ガン無視で大田原がラインを倒してこっちに来てる!流石に2人をカバーしきれない!!

 

「がっ!!」

 

 大田原に簡単に飛ばされたセナが倒れた。

 

 『2ヤードゲイン!』

 

 何とか前には進めたが後3回で8ヤード進まないと攻撃権が王城に移る。

 

「大丈夫か?」

「いたた…だ、大丈夫です」

 

 セナに手を伸ばして聞くと痛そうな顔をしながらも答え、俺の手を取って立った。

 

 

 

 

 『Set!Hut!』

 

 2度目の攻撃。

 

 今度こそ止めてやる!

 

「行くぞ!」

「はい!」

 

 俺&セナVS大田原&進

 

「ばっはっはっ!」

「何度来ても同じだ」

 

 

 

 

 だが勝負するつもりは初めからない。

 

 

 大体うちにはまだ攻撃する手札があるんだ、ランに釣られてくれたから楽になってるぞ!

 

「ぬあ!?」

「フェイク!?」

 

 

 

 

「ど真ん中がら空きだ化け物ラインバッカー!!」

 

 

 進も大田原もこっちに来てくれたおかげでパスのルートが出来上がった!

 

 

 

「YA-HA-!!」

 

 

 ヒル魔のロングパスが進がいたところを猛スピードで通り過ぎ、王城ディフェンスは誰も反応できずぐんぐん伸びて行く。

 

 

 

 

 

「キャッチマーックス!!」

 

 

 

 ヒル魔の狙い通りの場所にモン太が飛びついてキャッチしてくれた。

 

 

 『18ヤードゲイン!ファーストダウン獲得!!』

 

 

「どうだ!泥門にはこのキャッチの名人モン太様がいるぜ!!」

「よくやったモン太!!」

 

 ヒル魔の作戦にモン太のキャッチ力がある!さっきまでランを見せたからこそここでパスが活きる!

 

 行ける、勝てる!このまま最後まで攻め続ける!!

 

 

 

 

 

 ファーストダウン獲得したからまた1回目の攻撃。

 

 『Set!HutHutHutHut!』

 

 4回目の掛け声でヒル魔にボールが渡る。

 

 ヒル魔からボールを受け取ったセナが一気にスピードを上げて大回りで右サイドを駆け上がる。

 俺もフォローについて走ると進と3度目の勝負が来る。

 

 攻めて攻めて王城をぶっころす!

 

 

 

「抜かせはしない!」

「抜けさせもらう!」

 

 進のスピアタックルが俺へ向けられる。

 

 スピードに乗り腕を限界まで伸ばされたタックルは本当に槍で貫かれる感じだと去年進に骨を折られた奴が言ってた。

 

 なら体を張ってスピアタックルを受け止めるだけじゃ足りない。

 大田原をヒル魔と合わせた3人がかりで抑えている今進と真っ向から勝負できるのは俺だけ!

 このまま抑え込んで終わりじゃない、攻める!攻めに攻めてディフェンスをぶっころす!

 

「おおおぉ!!」

「くっ…!」

 

 セナを守る盾を辞めて進へ特攻!急の方向転換にまた距離を見誤った進が慌てて伸ばしてきた腕を避け、進の上半身を下から上へ押す!!

 

「ぬっ…!」

 

 力を入れて堪えてきた!それでも…!

 

「ぐぐぐっ!!」

「ぐっ!うおお!」

 

 

 

「まだ、だぁ!!」

「おおおぉ!」

 

 ラインをした経験を活かせ!進の体重以上を持ち上げられるパワーを使って進を仰向けにぶっ倒してやる!!

 

「ふ…ふんぬらばーっ!!」

「!!」

 

 本家本元の栗田に比べたら劣化版と言われるだろうがこれが俺の全力!進を仰向けに倒してやったぞ!!

 

「あの進を青天!?」

 

 フィールドのどこからかそんな声が聞こえたが俺はそんなことを気にする余裕は無くセナを見た。

 

 

「あいつまだ全力で走ってねぇだろ」

 

 だんだんと遠のいて行くセナの背中が見え、王城ディフェンスは誰も追いついていない。

 

 

 

 そして……

 

 

 『タッチダウン!!』

 

 

 18対7

 

 

 またセナが決めたタッチダウンに会場は静まり返る。

 静かな空気の中、トライフォーポイントは失敗してしまう。

 

 

 

 ざわ…ざわ…

 『これ、あるんじゃねぇか?』

 『王城が負ける?泥門なんて弱小校に?』

 『まだあれで創部2年らしいぞ』

 

 ザワつく客席。

 

 『泥門すげーぞ!やっちまえ!!』

 

 熱狂的なアメフトファンの泥門デビルバッツを応援する声がザワつく会場の中よく聞こえる。

 

 最初は1人、だがまた1人違う声、また1人、2人と……やがてアメフトファンの熱は伝道して観客を呑み込み……この会場にいる全員、王城ホワイトナイツが勝つと思い込んでいた雰囲気をぶっ壊した。

 

 

 

『いけー!泥門デビルバッツ!』

『王城をぶっ倒せー!!』

『ジャイアントキリングを見せてくれ!!』

『王城頑張れー!』

『桜庭くーん!』

 

 

 いつしか桜庭の応援の為に集まった黄色い声援はかき消され、変わりに泥門の応援が増えていく。

 

 前半が終了する笛が聞こえ、ハーフタイムの間も止まない声援。

 この異質な空気の中、ベンチに戻ったヒル魔と俺は無言でハイタッチを交わし、後半に向けて作戦会議を始めたのだった。

 

 

 

 

 





 【デビルバッツ劇場】

 「きゃー桜庭くーん!」

 『あはは!この王城エースの僕が華麗にタッチダウンを決めて泥門なんて倒してあげるさ!』

 「きゃー桜庭くーん」

 『そう慌てないで子猫ちゃん、このエース桜庭がいる限り王城に負けは「死ねぇ!」グワァー…!!』
「きゃー桜庭くーん!」
「あっあれは劣化スピアタックル!」
「劣化スピアタックル!?」
 
「説明しよう!ベンチプレス140kgのパワーで40ヤード走5秒の速度でエース(笑)桜庭とほぼ同じ高さから心臓を貫く一撃必殺の技だ!」
「きゃー桜庭くーん!」
「エースは死んだ、次からはこの…………大田原様がエースだぁ!ばっはっはっはっ!!!」




「うわぁ!!…………ゆ、夢か……」

 【END】









 王城ホワイトナイツ戦その2でした。

 前回の話で蓮次が桜庭ファンに対する反応が意外という声がありました。
 特に桜庭アンチではなく観客には「桜庭を見に来た」ではなく「アメフトを見て欲しい」って気持ちが強く、あんな反応をしたというわけです。
 今回はそんなアメフト大好きっ子こと双葉は桜庭のシールを見つけ1度剥がして叱咤。
 そしてエースの進をヒル魔の頭脳プレイで翻弄し双葉が劣化版「ふんぬらばっ!」で進を青天!



 3度のタッチダウンで一気に状況を変えた泥門デビルバッツは王城ホワイトナイツを倒し、見事ジャイアントキリングをするのか!?

 次回!王城ホワイトナイツ戦その3をお楽しみに!
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