泥門の2番手   作:実らない稲穂

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王城ホワイトナイツ戦その3

 

 

 

「ケケケッいい感じの空気じゃねぇか」

「まさか王城にリードしたまま前半終わるなんて想像してなかったよ!」

「浮かれんな栗田、ここで気を引き締めるぞ。まだ11点差だ。簡単にひっくり返される」

 

 栗田が嬉しそうな顔をしているが背中を叩いて気合いを入れさせる。

 

「あぁその通りだ。ラインが雑魚過ぎるから中央突破で来られちゃうちは太刀打ち出来ねぇ」

「大田原は栗田との勝負を避けて簡単に崩せる所を狙ってくる、堅実な作戦だな」

 

「なりふり構わず大田原でゴリ押しの中央突破なんてされりゃうちは終わりだ」

「栗田をぶつけたいが躱されるし…大田原は栗田のパワーに負けてるが足がある。栗田以外じゃ止められんねぇ、ディフェンスはラインに戻ろうか?」

 

「大田原は2人がかりで止める、ファッキンデブはオフェンスライン2人を相手しろ、できるだろ」

「任せて!」

「おい俺の話は?」

「アイシールドの代わりになれ」

「は?」

 

 

 

 

 

「集合!」

 

 ハーフタイムが終わる直前、ヒル魔が円陣を組んで作戦会議を始める。

 

「前半の事は忘れろ。今からゼロゼロでやると思い込め。勝ってるからと気を抜いた奴から呑まれるぞ」

『!』

 

 このジャイアントキリングの雰囲気に王城を追い詰めている空気感、初めて味わうこの雰囲気に呑まれるとヒル魔が忠告。

 実際セナとモン太は既に呑まれているが、ヒル魔の一喝で何とか持ち直したみたいだ。

 

「前半はアイシールドとクソザルは両面に出てたが後半はオフェンスに集中、ブリッツに行くのは双葉だ」

「それは別にいいがアイシールドとモン太を休ませるのか?」

「ここでエースを両面に出し続ければ最後まで持たねぇ」

 

 出した方が良いが……まだ体が出来上がってないのを考えるとここで温存した方がいいか。

 

「了解。2人共、気持ちは切らすなよ?オフェンスに全神経を注ぎ込め」

「はい!」「うッス!」

 

 

 

『ぶっころす!!』

 

『YEAHー!!』

 

 

 

 後半が始まった。

 

 前半は王城のキックからだったから後半は逆に泥門からのキック。ヒル魔がぶっ飛ばして始まる後半は何とか止めて自陣ゴールまで残り40ヤードからのプレイになった。

 

 

 『SetHut!』

 

 高見の素早い掛け声で始まる攻撃はラン、しかも右サイドから上がってくる。

 何とかファーストダウンを取られる前に止めるが王城の勢いは止められない。

 

 次の攻撃であっという間にファーストダウンを取られてしまい連続攻撃を許してしまう。

 

 

 『タッチダウン!!』

 

 

 何とか自陣ギリギリで止めた次の攻撃、またランを選択して止めに走るが余裕を持ってタッチダウンをされた。

 

 これで18対13

 トライフォーポイントもキックを入れられ18対14……4点差にまで追い付かれる。

 

 

「やっぱランか」

 

 プレイ再開前にヒル魔へ話しかけるとニヤニヤ笑いながら腰に手を当てている。

 

「アイシールドの代わりにテメェがブリッツでプレッシャーを与えてんだ、背丈でパスコースを防がれてやられんのが怖ぇなら走るしかねぇ。至極当然だ」

 

 わざと笑みを浮かべているだけ、まるで予定通りとでも言わんばかりのハリボテの笑みで誤魔化してる。

 

「攻めるぞ、第4クォーターだとか僅差とか言ってる場合じゃねぇ。連携プレイでビビらせる、そっからアドリブで増やしていく……ついてこい」

「あいあいキャプテン、泥門の両翼が羽ばたくってか?」

「ケケケッ!」

 

 ハリボテの笑みから本物の笑みへと変わった。

 ジョーカーを切る、特訓の成果を見せる時だ。

 

 

 

 王城のキック。

 偶然にも俺の所へ来てキャッチをすると、もう進が目の前に来ている。

 

「もう油断しない、お前を止める」

 

「おー怖い怖い、思わず逃げてしまった」

「!」

 

 後ろにいるヒル魔へノールックでパス。

 

「ごふっ…!」

 

 進が俺を止める為に伸ばされた手は戻らず、もろにスピアタックルを貰ってしまったがヒル魔が進んで行く。

 

「い、いてぇ…」

 

 何気に初めて食らった気がする、あーちくしょういてぇぞこれ……。

 

 

「ケケケッ!」

 

 ヒル魔が高笑いしながら進んで行き、フィールドの半分まで来たところでタックルされて止まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『Set!』

 

 1回目の攻撃。

 

『Hut!Hut!Hut!Hut!』

 

 4回目のタイミングでヒル魔へボールが渡りプレイが始まる。セナを右サイドへ走らせ、進が釣られるのを見た俺はヒル魔の後ろへ回って逆サイドへ走った。

 

「2番だ!21番は囮だ!」

 

 俺から見て左サイドにある王城ベンチからショーグンの指示が聞こえる。

 ボールを持ってるのがバレたところで、だ!

 

「クォーターバックとタイトエンドの連携プレイだ!よく見てやがれ!」

 

 ―デビルバット・ウィング―

 この連携プレイの名前だ。(命名はヒル魔)

 

 ヒル魔からボールを貰った俺が前へ出ると王城ディフェンスが止めに来る。

 

 ディフェンスの壁になりながらヒル魔を走らせ、抑え終えた後全力でヒル魔のパスを左サイドから貰う。今度はヒル魔がブロックしてランコースを作り、俺が中央へ入る。

 その繰り返しで左サイドと中央を短いバックパスで繋ぎつつ進んで行く。

 

「止めろぉ!パスを繋げさせるなぁ!」

 

 ショーグンの声がよく聞こえるが、俺のブロックとヒル魔のフェイクを混ぜたこのデビルバット・ウイングはディフェンスを撹乱している。

 さらには左右からの挟み撃ちが出来ない様サイドラインギリギリを攻めたこの攻撃位置は簡単には潰されない。

 

 ヒル魔の走るコースを確保した後、ヒル魔が中央へ入り込むのを見て左サイドへと周り、ヒル魔からのパスを受ける為に走った。

 

 

 

 

 

 

 

 ヒラッ……

「あっ!」

 

 (シール!多分埃が付いてて取れやすくなってたんだ!)

「ヤバっ!あれを無くしたら怒られる!」

「お、おい桜庭!」

 

 

 

 

 

 行ける!俺とヒル魔のデビルバット・ウィングなら王城ディフェンスを翻弄して抜けられる!

 

 

「とっ…たっ…!」

「はぁ!?」

「!!」

 

 俺のランルートに桜庭!?こいつフィールドに入り込みやがった!!このままじゃぶつかる!!!

 

 こいつを怪我させる訳には……!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドンガラガッシャン!!

 

 

 ピピィー!!

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 〜蛭魔妖一視点〜

 

 

「……あ?」

 

 何が起こった。ファッキンセカンドはどこへ消えた?

 何でファッキンセカンドが来るはずの場所にジャリプロの桜庭が頭抱えて座ってんだ?

 

「蓮次!!」

「双葉さん!」「双葉さん!!」

 

 ファッキンデブとチビとクソザルが何で王城のベンチの中へ走ってんだ?

 

 

 

「ヒル魔!蓮次が!!」

 

「…………蓮次ィ!!」

 

 ようやく事態を飲み込んだ俺はボールをその場に捨てて走った。

 

 

「どけぇ!!」

 

 王城の医療スタッフが蓮次を診ているのを退かして蓮次を見る。足か?腕か?頭を打ったのか?

 

「うっ……いってぇ……」

 

 右の鎖骨辺りを押さえて呻いている、意識はあるみてぇだ。

 

「おい蓮次何寝てんだ起きろまだ試合は終わってねぇぞ」

「げぇ……やっべぇーなウチのキャプテンは……マジで悪魔だろ。しゃーねーな…あーいてぇ……テーピングある?」

 

「動かないで!鎖骨をいってるかもしれないんだから!」

「救急車!!」

 

 

 試合は中断。

 

 

 

 

 

 

 

「ヒル魔……すまん、後は頼んだ」

 

 担架に乗せられた蓮次が悔しそうな顔で俺へと伝えると運ばれて行く。

 

 

 俺は返事をせずに見送るしかできず、王城ベンチから出た俺は拳を握り締め…………

 

「ヒル魔落ち着いて!!」

 

「離せ栗田!こいつがフィールドに入ってこなきゃ蓮次は…!うちのメンバーを病院送りにしたならこいつも病院送りにしてやらぁ!!」

「ダメだってヒル魔!!ここで暴力をしたら出場停止になるよ!!」

「プレイで病院送りになるのはしゃあねぇがこれは違ぇだろクソデブ!こいつが舐めたことしてっからこうなったんだろうが!!ぶっ殺してやらぁ!!」

「だからダメだよヒル魔ぁ!!」

「離せ!離しやがれってんだ!!」

 

 羽交い締めにされてベンチから離され、泥門ベンチにまで連れられた。

 

 

 

 

 

「審判員が3分後に試合再開するって」

 

 クソマネが試合再開の時間を言うが俺はもうやる気を無くした。

 

「後は勝手にしろ、俺は上がる」

「ヒル魔!?」

「ヒル魔さん!!?」

「蓮次がいたから勝率は99%あったが今もう0%だ。アイシールドを守る盾がなけりゃ進を止められねぇ、ボール取られて逆転されてハドルで時間潰されて詰みだ」

 

 これ以上やったところで無駄だ。

 デビルバット・ウィングで王城ディフェンスを撹乱してタッチダウン。次の攻撃でデビルバット・ウィングをチラつかせて王城ディフェンスを誘導した所へクソザルへのパスに繋げてタッチダウン。

 次にファッキンチビをウィングの中央に入れてショートパスで繋いでチビのランで抜き去って点差を広げて勝利。

 勝つ為の順序が出来上がってこれからだって時にこれだ。

 

 

「まだ勝てます!」

「あ?」

 

 アイシールドを付けたファッキンチビが帰ろうとした俺を止めた。

 

「僕が進さんを抜けば、僕が1人で進さんと戦って勝てば…!泥門デビルバッツは王城ホワイトナイツに勝てます!」

「俺もッス!ヒル魔さんのパスを全部取ったら勝てるッス!まだ試合は終わってねースから最後までやりましょう!」

 

 クソザルも乗ってきた。

 

「僕は双葉さんに何度も助けられました!なら今度は僕が双葉さんの分まで走って勝ちます!」

 

 

 

 ―ヒル魔……すまん、後は頼んだ―

 

 

 

「…………」

 

 蓮次の言葉と悔しそうな顔が脳裏にチラつく。

 

 

 勝率が1%出てきた。

 

「クソマネ、試合再開まであとどれぐらいだ」

「あと1分!」

 

 ハドルする時間はある。

 

「ランの作戦はアイシールドがボールを持って進を抜く。俺が指示する奴を0.5秒だけ止めろ、その隙にアイシールドが抜く。ラン警戒してくるからパスを交えながら進めるぞ」

『おぉ!』

 

「死ぬ気で守れ!死んでも守れ!ウチのメンバー1人ぶっ殺されたんだ!桜庭をぶっ殺した奴には100億払ってやらぁ!!ただ死んでもリードを奪われんな!点を奪え!試合終了まで攻め続けるぞ!!」

『うおおぉ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 18対14。

 第3クォーター終盤、第4クォーターを合わせて残り時間は12分程。蓮次が怪我で抜けたが最後の1秒が終わるまでやってやる。

 

  






 王城ホワイトナイツその3でした。



 ヒル魔との連携プレイ(デビルバット・ウイング)が決まり、大幅にゲインしていた矢先の事故でした……ちなみにあのまま進んでいたら進が追いついて止められていました。


 果たして試合の結果はどうなったのか!……次回で分かります。


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