「残り3分!!みんな頑張って!!」
「ここが踏ん張り時だぁ!全員死んでも取り返すぞぉ!!」
「ふんぬらばっ!」
『うおおおお!!』
「キャッチマーックス!!」
「勝つんだ…!」
ピィー!!
『試合終了!!』
「雲水、ひとつハッキリした。今年の王城に去年の力は無え」
「黄金世代の3年が全員抜けたからな」
「怖えのは進と大田原だけだ、せいぜい東京ベスト4ぐらいだろ。むしろ泥門が台頭してくるだろうな」
「……かもな、去年程の力が無いとはいえ進と大田原がいる王城をあそこまで追い詰めたからな」
「所詮助っ人頼りとタイトエンド頼りのチーム、プチッとやられんのが目に見えている」
「ぬーん!!負けた!ハッキリ負けた!!栗田に負けた…!」
「……」
(アイシールド21……何度も止めることが出来たがラストプレイ、完全に抜かれて触れることすら出来なかった)
「負けた」
(鮮明に思い出せる。4秒2の”光速の世界”で俺を置き去りにしていく景色が、止めるために伸ばした手がユニフォームに触れることすら出来ずに空振りする感触が、完全に負けたと理解させられたあの敗北感が…)
「負けた」
(双葉蓮次と対峙した時もだ、あの時俺は距離を見誤ってなかった。完璧に入ったであろうタックルを見切られてしまった。それに飽き足らず仰向けに倒された……俺はまだまだ鍛え足りぬという事だ。俺以上に双葉蓮次は鍛え、勝つ為に全てを賭ける気迫を見せてきた)
「……次は負けない…!!」
(何やってんだろう俺)
「……」
(俺がシールを追いかけてフィールドに入った時、泥門の2番の双葉とぶつかりそうになって…双葉が俺を避けた勢いが止まらずベンチまで行ってしまった。俺は怪我をしなかったけど代わりに双葉に怪我をさせて……1番のヒル魔に殴られそうになって…)
「…」
(アメフトを辞めていたらこうはならなかった、アイドルを辞めていたらこうはならなかった、俺が中途半端なせいで……謝りに行かなきゃ)
試合が終わって解散……だけど助っ人に来てくれた人達も揃って病院へ行くことにした。
「ようファッキンブービー、地獄の病院送りされた気分はどうだクソ野郎、テメェが桜庭を避けっからそうなんだよバカ野郎、ぶっ殺しゃあよかったのによぉ甘ちゃんが死ね」
「ひでぇ言い草だな…少しは労りの心を……なんでもねぇ、ヒル魔に期待する方が間違いだ」
「おい」
202号室、個室の部屋の中でベッドで横になって外を見ている双葉君がこっちを向きながら話している。
様子は元気そうだけど…三角巾で腕を吊っている。
「右鎖骨骨折、復帰まで1ヶ月か」
「それは無理があるだろ」
「やれ、どんな手を使ってでも治せ。じゃなきゃ許さねぇ」
「善処する、試合は?」
「24対27で負け。春大会は終わりだ、テメェは怪我を治すことだけに集中しろ」
3点差……トライフォーポイントのキック成功で逆転された結果だった。
事故の後動揺が強く出た王城は攻守共に精細さが欠けていた。
だけどラインは栗田君だけが勝てたけど他の助っ人に来てくれた人は力に押し負けてしまってオフェンスもディフェンスもやられたい放題、それでもみんなが必死に頑張って試合終了まで耐え忍んだ。
パスはモン太君がディフェンスに囲まれながらもパスを全部取ってくれた。セナも進君と何度も勝負を挑んではやられて…見てて辛かったけど諦めずに何度も走っては挑んで、最後には抜いて3点差まで詰め寄れた。
ヒル魔君が必死に指示を出して王城を追い詰め………それでも勝てなかった。それでも3点差まで王城を追い詰めたのは誇れる部分だと思う。
「……そうか」
試合の結果を聞いた双葉君は窓の方へ向いて横向きになった。
「あいてて…横向きになるのも苦労するなぁこれ……ちくしょうが…」
「帰るぞ」
ヒル魔君が言うと無理やり病室の外まで出された。
「ちょっと!」
「空気読めクソマネ。テメェらもさっさと帰れ」
それだけ言うとヒル魔君は帰ってしまった。
「姉崎さん、今は蓮次をそっとしてあげて」
栗田君が泣きながら病室へ入ろうとする私を止めた。
「泥門デビルバッツは王城ホワイトナイツに勝つってヒル魔も蓮次も確信を持ってたのに負けちゃったんだ。蓮次も今悔しくて悔しくて堪らないんだよ…1人にさせてあげて」
栗田君がとぼとぼと帰ってしまった。
「まもり姉ちゃん、僕も帰るね」
「俺も帰るッス…おつかれっした」
セナもモン太君もとぼとぼと帰ってしまう。
本当は3人も声をかけたかったのかもしれないのに辞めて帰るって……女の私だから分からないのかな、でも………。
「帰ろう」
みんなが止めるんだからそうしよう。
「202号室はっと…………」
廊下を歩いているとセナと似たぐらいの背丈で茶髪の男の子とすれ違った。
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「庄司監督、今日の試合いかかでしたか?」
「今日の試合、ウチのメンバーが原因で相手チームに大怪我させてしまった。お互いプレイ中の出来事なら多少仕方ない部分があっただろう。だがプレイとは関係ない所で起こった事故だ、当事者には色々と覚悟してもらうつもりでいる」
「あの……試合についてですが…」
「相手の選手は元々気付いていた。非難されるのを覚悟でウチのメンバーを叱咤してくれた。対戦相手に敬意を払い、アメリカンフットボールに敬意を払ってプレイに臨んでくれていた選手だ、儂はその選手に感謝したい」
「あの〜庄司監督…?質問に答えて…」
「この試合の勝者は居ない!」
「え!?いやいや!王城ホワイトナイツの皆さんが勝ったじゃないですか!」
「こちらの不注意で事故を起こし、相手選手に大怪我させて勝った試合を喜ぶ監督がどこにいる!?正々堂々ぶつかってお互いの全てを出し切って初めて勝者を名乗れる!!この試合で王城ホワイトナイツは勝ったと思ったメンバーは誰1人居ない!!」
「ひっ…!」
「この1件は我々王城ホワイトナイツだけではなく他の関係者とも議論して結論を出す!取材は終わりだ!!儂は病院へ行く!桜庭ぁ!行くぞ!!」
「あっちょっと庄司監督!」
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〜双葉蓮次視点〜
「本当に申し訳ございませんでした」
「申し訳ございませんでした」
ショーグンと桜庭が病室へ来て頭を下げた。
「今はまだ議論してはいないが、我々王城は君の治療費を全額負担しようと考えている。加えて王城ホワイトナイツは春大会を辞退するつもりだ」
「うちは裕福じゃないので治療費全額負担は有難く貰います。が、後者は俺とは関係ないのでしっかり決めて結論を出してください」
関係ないとは言えない出来事だけど俺としては治療費負担してくれるだけで十分だ。
「桜庭」
「は、はい」
「俺の怪我はお前が中途半端な事をしていたからだと心に刻め、その後どうするかよく考えろ。辞めるなら辞めるで良いし続けるなら続けるではっきりしろ」
「……」
「俺が言いたいのはそれだけだ、次試合する時はボコボコにしてプレイすんのが嫌になるぐらいにぶっ殺してやる」
「…………」
迷っている桜庭は何も言わず、その隣でショーグンが微笑んでいる。これは和解したと理解した意味の微笑みとは違い、俺の言葉の本音はアメフトのフィールドでまた桜庭と戦うつもりだと察したのだろう。多分。
「本当に申し訳ございませんでした」
「謝罪は受け入れるからさっさと帰れ、お前にはまだ春大会が残ってるだろ。惨めな試合をしてみろ、ここを抜け出してお前を病院送りにしてやる」
「それなんだが。もし王城が出場停止処分されずトーナメントを進むことになれば桜庭だけは出場させないつもりだ。しばらく部活動も謹慎にさせる」
「っ!……はい」
「そりゃまた、どんまい」
「それでは我々は失礼します」
「失礼します」