泥門の2番手   作:実らない稲穂

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 今回のお話は序章最終話となっておりますが当然これから先も続きますのでご安心を……それと新オリキャラも登場します。


 それではどうぞ




epilogue of Prologue(序章最終話)

 

 

 〜小早川瀬那視点〜

 

 

 王城ホワイトナイツに負けて大会が終わった。

 

 昨日の試合の疲れが酷く、歩くのもままならない程筋肉痛があって……まもり姉ちゃんに貰った湿布で何とか誤魔化してるけど無理そう。

 

 王城戦、僕は4回タッチダウンを決めることが出来た。

 タッチダウンする度に興奮が強くなって、もっともっと走りたいと思えた。

 

 

 でももう走れない。

 大会で負けてクリスマスボウルへの道が断たれ、2年の先輩達は引退。【まだ秋大会があるので引退はまだ…セナはそれを知らない】

 1年は僕とモン太だけになってしまった。【モン太はまだ野球部所属であることを忘れている】

 

 たった1試合だけ……本当に楽しくて楽しくて……試合中に沢山の人に助けられて、痛かったけどアメフトが楽しいって、アメフトのおかげで僕は少しだけ変われたんだって思えて……。

 

 

「あ、あれ…?」

 

 昨日の試合を思い出していたら胸が熱くなるのと一緒に目元が濡れる。

 

 

 

 そうだ、僕は楽しかったのと同じぐらい悔しかったんだ…!

 最初から僕が進さんを抜く事ができたら、僕が双葉さんに守られなくてもいいぐらい強かったら、僕がもっとタッチダウンを決めて点を取っていたら…!!

 あの時ああしていればと後悔ばかりが頭の中に浮かんでくる。

 

 3点差…もう1本タッチダウンしていたら逆転、もっと僕がタッチダウンを取っていれば勝てたんだ!

 

 

 

「う、うぅ……」

「何朝から泣いてんだファッキンチビ」

「いだっ!」

 

 道の真ん中でヒル魔さんに背中を蹴られた。

 

「ヒル魔さん!」

「今日と明日は練習禁止だ。双葉が復帰するのはまだ先、基礎練をみっちりやるぞ」

「……へ?」

 

 基礎練を……みっちりやる?練習できるの?

 

「何バカ面をしてんだ、クリスマスボウルへ向けた準備は始まってんだぞ」

「!」

「テメェ勘違いしてやがったな…!?アメフトは春と秋の大会2回!んでクリスマスボウル行きは秋!秋大会が本番だ!!」

「し、知りませんでした…」

「ちっ!そういうとこ教えるのサボりやがってファッキンセカンドがぁ!ぶっころしてやろうか!!」

「あっそうです!双葉さんはどうなったんですか!?……ひっ!」

 

 何故かヒル魔さんがハンドガンを僕の目の前で構えた。

 

「テメェが首突っ込む案件じゃねぇ…!これは俺とファッキンセカンドが解決する案件だ、関わったら最後…テメェのドタマぶち抜いてやっからよーく理解しておけ」

「……」ブンブンブン!!

 

 ヒル魔さんの言葉に全力で首を縦に振って答える。

 殺られる、殺気のような恐ろしい雰囲気を感じた僕は逃げるように学校へ向かった。

 

 

 なんにせよ、まだヒル魔さん達とアメフトを続けられる!秋大会を優勝してクリスマスボウルに行くんだ!

 

 

 

「そういうわけでモン太!秋大会に向けて一緒に練習頑張ろう!」

「おう!……ってちげーよ!!」

「え?」

「俺は野球部!アメフト部じゃ!ねぇ!!」

 

「で、でも!」

「負けたのはめちゃくちゃ悔しかったけどよぉ!春大会が終わるまでの助っ人だったし終わったなら俺は野球部に戻る!俺はプロ野球選手になる為に努力マックスで励むぜ!!」

「えぇー…」

 

 そんなぁ、せっかくこれからだって時に……。

 

 

 

 ■■■■■■■■■■

 

 〜双葉蓮次視点〜

 

 

 

 個室の病室内、カタカタとパソコンに入力する音と機械音が鳴っている。

 

「どういう状況?」

 

 パソコンに入力しているヒル魔へ聞いた。

 

「テメェが気にするような事はなーんもねぇ、さっさと怪我治して復帰しろ」

「それは別にいい。今この状況について非常に疑問があるんだが答えてくんねぇか?」

「酸素カプセルって言えばわかるか?」

「あれだろ?高濃度の酸素で満たされた中で治癒の促進や疲労回復に効くって機械だろ、おかげで今なんかいい感じ」

「あぁ、そうだ。良いカモがいるからこれでもかと使ってんだよ」

「あーそういうことか、王城どんまい」

 

 請求書がとんでもない額になりそう。

 

 

「んでテメェの大好きな桜庭だが、どうやらしばらく謹慎処分。芸能活動もだ……というか事務所が活動休止って話だ」

「謹慎は知ってるがジャリプロもか、なんかやっただろ?」

「徹底的に潰す」

「それ八つ当たり」

「黙れファッキンブービー」

 

 いつもみたいにニヤニヤしながら言うのかと思えば真顔で答えるヒル魔、ガチで頭に来てんだと見てすぐに分かる。

 

「ジャリプロが桜庭春人のヘルメットにシールを貼るよう指示したのは裏が取れてる、つーことはテメェのそれ(骨折)は桜庭がやらかしたと言ってもそれを貼るよう指示したジャリプロが原因だ。向こうが違うと否定しても言い逃れが出来ねぇよう証拠写真もバッチリ揃ってる。会社を潰す」

「おお怖い怖い…可哀想な芸能事務所だこと」

 

「知るか、アメフトを舐めた結果だ。こうならないようにしたけりゃ初めからシールなんてバカげた真似をしなけりゃいい、プロのスポンサーはもっとちゃんとやってるのを知らねー奴の落ち度だ」

「確かにヒル魔の言う通りだ」

 

「つーわけでテメェはさっさと治して復帰しろ」

「了解了解」

 

 

 

 

 

 しばらくして酸素カプセルから出た俺はヒル魔と一緒にブラックコーヒーを飲んで寛いでいると、ヒル魔がパソコンを閉じた。

 

「帰んのか?」

「あぁ、テメェと話してると嫌な気分になるからな」

「そりゃ悪かった、さっさと退院して復帰するから心配すんな」

「……ちっ…じゃあな」

 

 ヒル魔が病室から出て行った。

 

 1人になった俺は枕元に置かれたビデオテープを手に取り、再生。

 画面には昨日やった試合が初めから再生され、テーブルに置いて昨日の反省点を書き出すが……利き手の方の鎖骨が折れててやりにくい。

 

 やーめた。

 

 

「横からの映像は分かんにくいな、上から撮れる奴が欲しい」

 

 何度も巻き戻しと再生を繰り返し、試合が終わる頃には晩飯が出される時間まで続いた。

 

 

 

 

 ■■■■■■■■■■

 

 

 〜蛭魔妖一視点〜

 

 蓮次は1ヶ月近く復帰出来ねぇ、タイトエンドの代わりなんて誰も務まらねぇ。秋大会に向けてこれからだって時にクソザルは野球部へ戻った。

 

「ちっクソが」

 

 クソザルは連行するとして、試合で使えるカードが殆ど消えたのがキツイ。

 エースを上手く使う為のジョーカーが消え、使えたはずのカードが手元から離れて行く感覚は気分が悪い。

 

 

「こんにちは蛭魔妖一さん」

「あ?」

 

 角から黒い制服を着た茶髪のガキ、背丈はファッキンチビと同じぐらいだが制服は新しさがあるから恐らく中一。

 顔は幼さがあるが随分と整った顔立ちをしていて芸能人だと言われてもおかしくねぇレベルの顔。特に特徴的なのは目、視線を奪われるぐらいの何かがある。

 

 これだけ整ったガキだ、もしかしてジャリプロの関係者か?

 

「俺に何の用だクソガキ」

「はじめまして、いつも兄がお世話になってます」

 

 深々と頭を下げて澱みなく話すガキは俺を知ってる癖にビビってねぇ。

 

「兄だと…?」

「双葉蓮次の弟の、煋治(セイジ)と言います。芸能人目指して稽古に励む中一です!漢字で書くとややこしいのでセイジって呼んでください」

「何の話だ」

 

「こっちの話ですのでお気にならず。今日蓮次兄ちゃんにお見舞いへ来ようと思ったんですが何やらビデオを見るのに集中してまして、その帰りにヒル魔さんを見つけて後を追って待ち伏せしました」

「で?俺に何の用だってんだ、俺は今気分が悪いんだ…くだらねぇもんだったらぶち抜くぞ」

 

「アメフトの試合、上からの撮影する人要りませんか?」

「あ?」

 

「どうやら蓮次兄ちゃんは横からのビデオに苦戦してまして、上から撮れる奴が欲しいってボヤいてました。そこで!僕が協力して蓮次兄ちゃんの助けになりたい!って思いまして、どうでしょう?まだデビューしてませんがカメラに関しては理解がありますし使い方さえ教えてもらえれば撮影係になります!」

「何のメリットがある」

 

「僕は蓮次兄ちゃんの助けになりたい、アメフト部は上から撮れる奴が欲しい。お互いウィン・ウィンの関係じゃないですか?」

「ほーう?」

 

 随分肝っ玉のあるガキだ。

 ハンドガンで脅しても眉一つ動かさずにペラペラ喋れる奴は珍しい。

 

 

 どうすっかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 セイジ
 中学1年生 将来の夢は役者
 身長155cm 体重40kg

 双葉蓮次の弟。
 とある縁から芸能事務所に所属(ジャリプロではない)、役者になる事を目標に稽古に励んでいるが未だ芸能の仕事はない。
 アメフトについては知らないが、慕っている蓮次がやっているのを知っている為助けになりたいと思い、ヒル魔と接触。
 ヒル魔に脅された時は心臓が飛び出るかと思う程緊張していたが、稽古による演技力で何とか誤魔化す事に成功していた。
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