「こんにちは!今日から助っ人として来ました双葉兄弟の三男、双葉セイジです!蓮次兄ちゃんいます?」
蓮次兄ちゃんを探してここへ来たのであろうセイジ君は敬礼しながらニコニコしている。それよりも蓮次兄ちゃんって……。
「双葉君の弟!?」「双葉さんの弟!?」
「蓮次ならさっき出て行ったよ?」
「うげ〜マジかぁ入れ違いだったのか〜まぁいいや、今日は顔合わせって感じでこれからよろしくお願いします!それでは!」
「待って待って待って!」
セイジ君が帰ろうとしているのをまもり姉ちゃんが止めた。
「君が双葉君が言ってた芸能人の弟さんだよね?」
「芸能人ですがまだデビューしてないのでたまごが正しいです」
「どっちでもいいよ!とりあえずセナ!セイジ君と並んでみて!」
「?」
まもり姉ちゃんに言われてセイジ君の隣に立った。
「あっ僕小早川瀬那、よろしくね」
「よろしくお願いします!セイジです!」
すっごい元気で明るい!なんか僕も気分が晴れやかになる気がする。
「一緒!セナとセイジ君同じ身長だよ!」
それって僕が小さいってこと!?
「どんまいです」
「うぅ…僕だってこれから背が伸びるはず…」
「僕も蓮次兄ちゃんみたいに背を高くしたいので一緒に牛乳飲みましょ」
ポンっと僕の肩に手を添えて励ましてくれた。
「おう来たか撮影係」
「ん〜!んんー!!」
ヒル魔さんが何かを引き摺りながら部室へ入ってきた。
「あっヒル魔さん。蓮次兄ちゃんいないので失礼します!」
「おい待てクソガキ、失礼すんじゃねぇ」
「んんんー!!!」
「ヒル魔君何を持って……モン太君!?」
「モン太!!!?」
簀巻きで猿轡を噛まされたモン太が必死に暴れている…それを見てセイジ君がケラケラ笑っていた。
「おう、このクソザルがアメフト部に入らねぇって言いやがったから連行してきた」
「そんな無理矢理やったらダメでしょ!」
「これで撮影しろ、やり方はこの前教えたから分かるな?」
「モーマンタイ!」
まもり姉ちゃんがモン太の猿轡を外しながら怒るけどヒル魔さんがビデオカメラをセイジ君へ渡して無視をしていた。
「ヒル魔君!説明して!」
モン太を解放したまもり姉ちゃんがホウキ片手にヒル魔さんに怒るけど、ヒル魔さんはガムを膨らませているだけだった。
「クソザル、野球部クビ、以上」
「絶対嘘!!」
「嘘じゃねえ」
「あのーセナさん」
「ん?どうしたのセイジ君」
「この白いユニフォーム着た金髪の人ってジャリプロの桜庭春人ですか?」
ビデオカメラの画面を見せてくれたのは王城の桜庭さんだった。
「うん、そうだよ」
「そっかぁ……へーこの人がーふーん」
怖っ!どうしたのいきなり!?
「だ、大丈夫?」
「この人の不祥事探して垂れ込めばいいですよね?王城高校の不祥事とかあればアメフト部なんて簡単に潰せますよね?なんでこんなクソがのうのうとアメフトなんてスポーツやってんの?蓮次兄ちゃんが大怪我したのに頭下げて終わり?ぶっ殺していいよね、うん殺そう。社会的にグサッとやってボキッとやって蓮次兄ちゃんの受けた痛みの1億万倍で返してやろ」
「ヒイィィ!」
この子怖い!めちゃくちゃ怖い!あと1億万倍っておかしくない!?
「ダ、ダメだよそんなことしちゃ…」
「なんでぇ?」
ぐりんって感じで僕の方へ顔を向けると恐ろしいぐらい感情が無い目で背筋が凍った。セイジ君の目から逸らそうとするけど不思議な引力があるのか目が離せなくて段々と距離を詰められた。
「なんで蓮次兄ちゃんが骨折したと思う?このクソがグラウンドに入ったからでしょ?悪いのはこのクソ、分かる?分からないならちょっと高校生として恥ずかしいよ?バカァ?蓮次兄ちゃんは今年でアメフト辞めないといけないんだよ?1日1日が大事でアメフトに集中したいのに出来ないんだよ?分かる?」
「アッハイ」
「じゃあやることわかるよね?」
「アッハイ」
「言ってよ」
「アッソノ…エット」
「言え」
「ヒィ…」
「何でここへ来てんだセイジ。つーか桜庭の件はもう終わってんだ、今更掘り返すな」
セイジ君が僕を詰め寄って部室の端にまで追い詰められると、セイジ君の頭に手が置かれた。
「蓮次兄ちゃん!」
「!?」
さっきまで目がドロッドロの真っ黒になってたのに急にキラッキラになった!?
「病院は?」
「病院じゃねぇよ。なんでここにいるか言え」
「助っ人!撮影係になった!僕が来たからにはもう安心してよ!ドヤァ!」
「ゴラァ!ヒル魔ァ!!うちの弟に手ぇ出しやがったなぁ!!」
双葉さんがブチ切れたぁー!!
「大丈夫モン太?」
まもり姉ちゃんと双葉さんに怒られてもガムを噛んでは膨らませるだけのヒル魔さんと2人を止めようとしている栗田さんを横目に、僕は放置されたモン太の傍へ寄って背中についた土を落としてあげた。
「あ、あぁセナ…ヒル魔さんマジでやべえ…忍者みてえに攫われたと思ったら簀巻きにされて校内引き摺りの刑だってずっと引き摺られてよぉ…ケツが痛えぜ」
「パンツ破けてるよ!」
「どうりでケツ痛えわけだ!」
「あっパスキャッチでカッコイイ人だ!」
「!」
セイジ君がキラキラした目でモン太を見ている。こんなにも純粋で子供みたいな目をするセイジ君だけど……つい数分前は恐ろしい程に目が怖かったのが頭に残っていて思わず後ろへ下がった。
「王城戦すっごい活躍したんですよね!」
「おうよ!俺は雷門太郎、モン太って呼んでくれ!」
「セイジです!よろしくお願いします!アメフトってよく分からないけどモン太さんのキャッチしてる姿……めっちゃカッコ良くて最高でした!」
「そうかぁ…?いや〜そこまで褒めてくれちゃ照れるなぁ」
「もっと見たいなぁ、モン太さんのパスを取ってる姿を撮りたいんですけど……助っ人なんですよね、見れないの嫌だなぁ」
「うぐっ…」
セイジ君、ちゃんと双葉さんの弟だ……やり口が双葉さんと凄く似てる。
むしろこんなにも分かりやすいぐらい悲しい顔をして純粋な気持ちで言ってる(様に見える)から余計に良心をチクチク刺してきてタチが悪いぐらい…。
「モン太さん、アメフトの試合楽しかったですか?」
「おう!めっちゃ楽しかったぜ!」
「野球とどっち?」
「あー……うーん……どっちも同じぐらい…」
「野球でレギュラー取れるか分からないのに日本一目指すのと、アメフトでレギュラー確定してて日本一目指すの、どっちが熱いと思います?」
「……!」
「僕は野球もアメフトもやった事ないですけど……やるならやっぱり1番になりたいですしその中心に居れる方がもっと嬉しいって思っちゃいます。モン太さんは野球とアメフトどっちが熱くて楽しいですか?モン太さんの背景を抜きにして心のままに教えて欲しいです」
セイジ君の質問にモン太が固まった。
アメフトをやってとは一言も言わずに心に尋ねる……僕が出来なかった事をセイジ君がやってて純粋に凄いって思う。人の心を動かす何かを持っているのが羨ましいまである。
「アメフト…」
モン太が答えるとパァァって感じでセイジ君の表情が晴れやかになった。
「ですよね!僕モン太さんのアメフトをしてる所見たいです!撮りたいです!撮らせてください!」
「おう…………ってちょっと待て!俺は野球一筋で─」
「クソザル、テメェは泥門野球部の3軍堕ちだ」
モン太とセイジ君が話している所へヒル魔さんが真剣な顔をして話に割り込んできた。
「3…軍…?」
「つまり野球部として認められねぇ、つまりクビ。同好会の1人で部員ですらねぇ」
「ヒル魔君!少しはオブラートに包んで話して!モン太君の気持ちを考えてよ!!」
「生易しい言葉よりも現実を突きつけてやった方が早えだろ」
「だからって…!」
「俺は…野球部じゃ…」
「セイジ、上から撮るやり方を姉崎から教わってこい」
「はーい」
「姉崎も教えてやってくれ」
「……行こうセイジ君」
「よろしくお願いしまーす」
双葉さんがまもり姉ちゃんとセイジ君を部室から出した。
「モン太、下手に取り繕わなくてもいい。泣きたいなら泣け、挫折してもお前にはまだ道がある。野球部がお前を見限るならアメフト部はお前を歓迎する。野球に拘るのじゃなくてお前の根源…つまり何が元になってるかよく思い出せ。じゃあな」
双葉さんが言うと部室から出ていき、ヒル魔さんと栗田さんも後に続いた。
「モン太君、僕達アメフト部はモン太君と一緒にアメフトやりたいよ」
去り際、栗田さんが悲しい顔をして言うと部室のドアを閉めた。
「モン太…」
「……何も言うな、分かってたんだ…俺はプロ野球選手になれないって…」
「……僕はヒル魔さんに選手になれって言われたけど痛いのが嫌で主務になりたいってここに入ったんだ。でも双葉さんの熱に僕の心が動かされて、主務じゃなくて選手になろうって決めた」
「そうなのか…?」
「僕の理想とは違っちゃったけど、今のが楽しい。そういうことだってあるよ」
「……」
「ごめん、それだけ」
モン太を1人残して部室を出た。
翌朝、部室へ行くと背番号80番のユニフォームを着たモン太が仁王立ちしていた。
「俺は野球選手を夢見て来たがここは俺の理想とは違う…けどな!俺のキャッチ1つでここまで熱くなれるなら俺もやるぜ!」
「モン太…!」
「本庄さんには昨日土下座して謝った!野球選手になれませんでしたって何度も謝った!今度はアメフトでキャッチナンバーワンになるぜ!」
「歓迎するよモン太!一緒に頑張ろう!!」
モン太が正式に入部してくれた!これで部員が増えた!!
ようやくモン太の正式加入!ついでにセイジも加入!
モン太は原作と同じく、グローブの前で土下座して本庄さんに謝罪していました。
次回はモン太が入部してから始まる新生泥門デビルバッツと、宣伝に向けた行動のお話になります。次回をお楽しみに!