泥門の2番手   作:実らない稲穂

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骨抜きの宣伝試合

 

 

 

 モン太が野球部をクビになり、アメフト部へ入部してくれたおかげで部員は5人から6人になった。

 そのアメフト部は今筋トレに励んで体を鍛える事にした。

 

「「1〜2〜3〜」」

 

 まだ体が出来ていないセナとモン太には基本的な首のトレーニング。ヒル魔は下半身、栗田は上半身のトレーニング。俺は未だ骨折が治ってないのでセナとモン太の補助をやることにした。

 

「く、首を鍛えるのって…どんな意味があるんですか?」

 

 セナがプルプルしながら質問してくる。

 

「タックルを食らった衝撃で首をやられない為、下手したら死ぬ」

「し…!?」

「ちゃんと力入れろ」

「うぎぎっ!き、きついー!」

 

「ファッキンチビは筋トレが終わったらケルベロスの散歩に行け、クソザルは手ぇ空いてて暇な奴がいるからパスルートについて学べ」

「散歩…?」「了解ッス!」

 

 …手が空いてて暇な奴?………あ、俺か。

 

 

 

 ケルベロスについている首輪に縄を括り付け、セナの胴体に巻く。仕上げにケルベロスの前に骨のお菓子をぶら下げるように固定してセナにお散歩セット(お菓子とウ〇〇の袋とスコップ)をアメフトボールに入れて手渡した。

 

「あの…これボールですよね」

「前に使ってたボールでな、ボロボロになって使えなくなったのをケルベロスの散歩用にリメイクした」

「手芸部が快くやってくれたぜ〜」

 

 脅してやらせたの間違いだろ。

 

「それを持って走れって事、試合を意識しながらの体力アップメニューだ」

「あっはい」

 

「じゃあ、死ぬまで走ってこい!」

 『オオオオン!!』

「ぎゃー!!!」

 

 ヒル魔が手を叩くとケルベロスが走り始め、セナが引っ張られながら行ってしまった。

 

 

 筋トレ、体力アップ目的の走り込み。基礎はどれぐらいしても足りない。1日2日で増える訳じゃなく日々の努力が結果として現れる。

 地道な努力こそが大切だ。

 

「つーことでモン太にはこのパスルートを頭に入れて体で覚えてもらう」

「多いッス!めちゃくちゃ多いッス!!」

「ほんの16個だけだ」

「それが多いんスよ!」

 

「半日で1つのパスルートを頭と体に刷り込ませる。1日2ルートの計算だ、8日で済む」

「無茶〜…」

「やれ、それがワイドレシーバーの仕事だ」

「!」

 

「ケケケッこいつのお勉強はスパルタだぞ〜?なんせ努力しまくって地道な道を嬉々として進む脳筋野郎だからな」

「邪魔をするなヒル魔、地道な努力が実を結ぶんだ」

「俺様ならもっと簡単に教えられるがどうする?」

「いや!俺はこれで覚えるッスよ!努力マーックス!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふにゃふにゃ〜…………」

 

 開始5分、モン太が頭から煙を吹いてダウンしてしまった。

 

「なんでやれないんだ…?」

「クソザルの脳がサルレベルだからキャパオーバーなんだよバカ、少しは考えてやれ」

「うーん難しいな」

 

 ここまで覚えが悪いと教えようがないんだけどなぁ。

 

 

「しょうがねぇな……おいクソザル、パスルートを見て3つ気に入ったのを言え」

 

 紙に書いたパスルートをモン太へ向けると3つ指差し、モン太はヒル魔に簀巻きにされて引き摺られて行った。

 

「じゃあ先ずはその3つを走って覚えてもらおうか!ついでにパスも出してやっからそのルート通りに走れ!」

「ウキャー!!?」

 

 出ていく時のヒル魔の顔はほんとに嬉しそうで、ちゃんとしたワイドレシーバーが加入してヒル魔が1番嬉しいんだろうな。

 

 

 

「ランニングバックにワイドレシーバーが入って次はラインのメンバーが欲しいよね〜」

 

 筋トレを終えて休憩している栗田が少し寂しそうな感じで呟いている。

 

「ラインは後4人か、宣伝とか勧誘で集まるといいな」

「ラインはセナ君やモン太君みたいな花形じゃないしキツイポジションだけどアメフトで重要なポジションなんだよね」

 

 確かにラインが弱いと勝つのが難しい。

 パスを投げるにもワイドレシーバーが走る時間に投げれるワイドレシーバーを探す時間に投げるまでのタイミングを稼がないとダメ。

 ランに関してもそうだ、ランを止める為にディフェンスラインがランニングバックへ向けて走って来るのを止める役目がある。

 点に絡むポジションとは違い、点に繋げるポジション。ひいてはチームを支える縁の下の力持ち、それがラインというポジションだ。

 

 

「僕に任せて!」

 

 カメラ片手にセイジがひょっこり現れた。

 

「セイジ…お前学校は」

「終わって速攻来た、案外近いしいい運動になるよ。このカメラヒル魔さんに貰ったんだ〜いいでしょ?」

「はぁー………で?何の用だ?」

「栗田さんと同じポジションを探すのを手伝う!撮影係の出番だよ!」

「試合の撮影係だろ、今は必要ない」

 

「まぁまあ蓮次、セイジ君がやるって言うんだから任せてみようよ」

「流石栗田さん優しい!」

「ありがとうセイジ君、早速お願いしようかな。どうすればいい?」

「うーん先ずは〜……」

 

 

 

 

 

 

 ガシャーンガシャーンとタックルマシンにタックルをする栗田の様子をセイジはカメラでしっかりと撮影している。

 

「頑張ってくださ〜い!」

「ふんぬらばっ!」

 

 ガチャン!といい音を鳴らし……壊した。

 

「すご〜!!パワーやば過ぎ!」

 

 

「はぁ…」

 

 楽しそうにしているセイジを見てため息をこぼしてしまう。

 

「良い弟さんだよね」

 

 姉崎がセイジを見て微笑んでいる。

 

「どうして隠してたの?」

「あいつは芸能人になるんだ、大勢いる芸能人でもテレビに出るのなんてひと握りの世界。それなら成功するまでそっちに集中して欲しい兄心ってやつだ」

「へー」

「何か言いたいみてぇだな」

「兄弟の仲が悪いのかと思ってたけど違うんだね。ほら、いつも隠して言わないから言いたくない程仲が悪いって思ってた」

 

「仲が悪いって言った覚えはない」

「確かにそうだったね、他にも教えてよ」

「話は終わりだ、俺は足のトレーニングしてくる」

「逃げないでよ!」

 

「知りたきゃ俺の好感度稼いでみな、またそのうち口を滑らせるかもよ」

「好感度…!?」

「はっ!んな事で赤くすんなよ乙女か」

「また私をバカにしたでしょ!」

「はははっ!」

 

 姉崎を揶揄った俺はトレーニングルームへ向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 後日、セイジは栗田以外にもセナとモン太を撮影していたようで、撮った写真を姉崎と一緒に編集してポスターにしていた。

 『入部受付中』と描かれた宣伝ポスターが校内のあちこちに貼っては他の部活のポスターを破り捨て……これだけの宣伝で集まれば良いのだが、もう1つぐらい注目を集める何かが欲しいところだ。

 

「ねぇ蓮次兄ちゃん、試合しないの?」

「試合?あぁ練習試合か、今春大会中だからいい感じの所と練習試合は組めねぇな」

「どうして?」

 

「練習試合で怪我させたら公式戦出られないってのもあるし試合があると情報を聞いた敵チームが偵察に来て手の内がバレてしまうって時もある。それを嫌がってやりたがらないってのが普通だ」

「へーじゃあ空いてる所はないの?」

 

「あるにはあるが序盤に負けた弱小校ばっかり、そいつらとやってもうちの経験値にならねぇなら意味がねぇ、同等か格上のレベルぐらいがちょうど良い」

「弱いとダメなの?」

 

「雑魚に勝って喜ぶな。上を目指すなら強い奴を倒す、1つ1つ勝ちを積んで行けば最後には俺達が1番だ」

 

「おぉーカッコイイ!流石蓮次兄ちゃん!だから3時に学校に行って朝ご飯の時だけ帰って来るんだね!」

「朝練は関係ねぇだろ…ジジイは文句言ってねぇか?」

「父さんはよく寝てから行けって言ってるよ?」

「いつもの事か、ほっとけ」

「りょ〜」

 

 

 

「賊学なら空いてるからそこと練習試合組むぞ、宣伝を兼ねてうちのグラウンドを貸切だ」

 

 ヒル魔がパソコンを操作して電話を始めた。

 

「じゃあ撮影出来る!?」

「屋上から撮影するぞ」

「やったー!撮影係の出番だぁー!!」

 

 

 

 

 それから数日後には賊学のアメフト部『賊学カメレオンズ』との練習試合が決まり、今週末の泥門高校のグラウンドでやるとヒル魔が宣伝。

 何故か500万円の賭けをしていたのだった。

 

 

 練習試合当日、泥門高校のグラウンドの周りに大勢の泥門生徒が観戦に来ていた。

 

「双葉。テメェはまだ治ってねぇから試合に出さねぇ」

 

 もうすぐ始まるというタイミングでヒル魔が話しかけてきた。

 

「出たくても出れねぇから上でセイジと撮影してる。俺が居なくてもちゃんとやれよ」

「ケッ…居なくても変わんねぇよ」

「はいはい」

 

 






 次回、賊学カメレオンズ戦!
 果たして蓮次が居ない賊学戦はどうなるのでしょうか!!

 
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