泥門の2番手   作:実らない稲穂

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ヘルタワー

 

 

 賊学カメレオンズと試合をした次の月曜日。泥門高校のアメフト部の部室前に人が大勢集まった。

 目的は入部希望説明会、入部希望者を募る為にした練習試合は大成功と言っても過言では無いと思う。

 

 部室の中ではアメフト部全員が待機して順番に面接、一人一人話を聞くのは飽きた。

 どんな奴が来たのか?まぁ一癖も二癖もある奴らばっかり、入部希望者が多いのは大変喜ばしいが…やる気のない奴を入部させる訳には行かないので入部テストを実施することにした。

 

 場所はどこか?

 

 

 

 

 〜東京タワー前〜

 

「今日は貸切だ!」

 

 東京タワーの真下でヒル魔がアサルトライフルを肩に担いで大声で伝えた。

 

「ルールは単純!ゴールは特別展望台!デブがかき氷を食おうと待ってるから氷を届けろ!」

 

 本当にそれだけのルール、単純過ぎて笑える。

 階段を登って特別展望台へ行くのなんてもっと笑える。

 5月なのに暑い中砂糖を混ぜて溶けやすくなった氷を持っていくのなんて更に笑える。

 

「氷はどれだけ持って行っても構わねぇ!溶けてきたら補充に戻るのも自由!ゴールに着いた時少しでも氷が残っていたらクリア!入部テスト合格だ!」

 

 キッツイ入部テストだ事……まさか俺もリハビリだから軽く走って来いなんて言われなければなぁ……1番に合格目指すか。

 

「骨はもう治ったのですか?」

 

 アイシールドになったセナが俺に聞いてきた。

 

「もうちょい時間がかかる。医者からは練習参加してOKって言われてるがコンタクト系は禁止だし試合はまだダメだがな。ま、軽くクリアして甘いかき氷を食うとするか」

「余裕そうですね…」

「負けないッスよ〜!」

 

「お?じゃあ勝負するか?負けた奴は飯奢りってルール、ハンデとして俺は10分遅れてスタートしてやるよ」

「おぉやりましょう!一緒にやろうぜ!」

「ぼ、僕も…!?」

「そしたら2位は1位にジュース1本、ビリは1位と2位に飯奢り。階段登り始めてからスタートな、ほら行った行った」

 

「うおおおおぉ!ダッシュマーックス!!」

「ま、待ってよー!!」

 

 氷を袋に入れた2人が勢い良く上へ登り始めた。

 

 

 

 周りを見れば意気揚々と登って行く奴らに怠そうな感じで様子見の奴ら……中にはタバコ吸っている三兄弟までいる。

 そいつらにはゲンコツを食らわせてからタバコをゴミ箱へ捨て、キレて来たのでまたゲンコツ食らわせて黙らせた。

 

 

 

 

 10分経過。

 

 さて、そろそろ準備しようか。

 

「あっ双葉君」

 

 製氷機の前には姉崎が氷の管理をしていて、俺を見つけると袋を手渡してくれた。

 

「今日は暑いから熱中症にならないように気をつけて。あとヒル魔君が何か準備してたからそれも気を付けて」

「おう、どうせヒル魔の事だから普通に登るだけじゃねぇとは思ってる」

「だよねー…」

「どうせすぐ何人も氷取りに戻ってるだろうな」

「頑張って」

「あぁ」

 

 

 

 ■■■■■■■■■■

 

 〜小早川瀬那視点〜

 

 【第1関門・地獄の番犬】

 

『シャアベフォアァ!!』

 

 なんでこんな所にケルベロスがぁ!?しかも何故かシャーベットって叫んでるような気がする!!

 

 どうやって突破しよう!?……そうだ!

 

「えいっ!」

 

 砂糖を混ぜた氷を適当な所へ投げるとケルベロスがそっちへ行った!作戦成功だ!

 

 

「助かったぜセナ」

「ううん、僕も危なかったしおあいこだよ。次に行こう」

「っとその前に、これやる」

 

 モン太の手に氷……もしかして僕に?

 

「対等な勝負だ、助けられてばっかじゃ対等じゃねぇからな」

 

 対等…嬉しい。

 

 

 

 

「ありがとう!投げずに袋に入れて欲しい!」

 

 

 氷投げたらどこへ行くか分からないしケルベロスが来たら危ない。

 

 

 

 

 【第2関門・地獄の釜】

 

 ケルベロスが追いかけなくなってから到着したのは大展望台。ゴールの特別展望台までの中間地点ぐらいかな?

 ちょっとだけだろうけど階段がないのは有難い、少しだけ休憩しようかな……いや、今は勝負なんだ!最後まで気を抜かずに行こう!

 

「暑っ!」

 

 大展望台に入ってすぐに熱気が…!ストーブがあちこちに置かれてる!!

 

「ヒィィィ!これじゃあ氷が溶けちゃう!」

「ウキャー!溶けたぁ!!」

 

 モン太の氷が溶けた!今がチャン……僕も溶けたぁ!!

 

 

 

 

 ■■■■■■■■■■

 

 〜双葉蓮次視点〜

 

「うわああぁぁぁぁ!!」

「ダッシュマーックス!」

 

 上から2人の声が聞こえた。どうやら氷が溶けて取りに戻ってる感じか?

 

「よしよしケルベロス、満足したか?」

 『シャアべ!』

 

 ケルベロスの頭を撫でた俺はケルベロスと別れ階段を走って登る。

 

「うおっ!双葉さんサーセン!」

「すいません双葉さん!」

 

「気を付けろよー」

 

 途中で2人とすれ違い、大展望台に到着。

 どうやらここで引き返したんだろう、熱気が充満しているこの部屋なら氷が溶けても仕方ない。

 

「こりゃ多めに用意してて正解だな」

 

 多少溶けるが仕方なし。

 大展望台を抜けて熱気が収まったところで溶けた水を捨てて先へと上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ!蓮次兄ちゃ〜ん!」

 

 もうすぐ特別展望台に着く前、階段の踊り場でかき氷機とカメラを用意したセイジがいた……。

 

「氷欲しい!」

 

 【第3関門・地獄の門番】

 

「おいこら強請るな」

「ほ〜し〜い〜!暑いところでずっといるのヤダ!」

「だったら下の大展望台へ行け」

「あそこもっと暑いじゃんバカなの!?いいからその氷でかき氷しよう!」

「あのなぁ………まぁいいか、ほらよ」

「ありがとう!」

 

 ガリガリと氷を削ってかき氷を作る弟を眺める。やってる事全部が楽しそうで、下手くそな鼻歌まで歌っている。

 

「ここは楽しいか?」

「うん!この前の賊学戦凄かったね!蓮次兄ちゃんも出てたら良かったのに」

「上手く撮れてたから次も期待してる」

「任せて!」

 

「演技の稽古はどうだ?」

「まぁまぁ、まだ仕事は来ないから耐える期間だって社長が言ってた」

「華が咲くのに時間がかかるか、暇だからってこっちに肩入れし過ぎて自分のやりたいことを疎かにすんなよ」

「はーい……できたぁ!いただきまーす!」

 

 美味そうにかき氷を食うセイジを見て俺は先へ進むことにした。

 氷は……ちょっとギリギリかもな。

 

「あっ!氷くれたからこれあげる!」

 

 セイジが椅子替わりにしていたボックスの蓋を開けるとそこには大量の氷……。

 

「あるならそれ使えよ!」

「ダメー!これは氷くれた人にあげるやつだってヒル魔さんが言ってたの!蓮次兄ちゃんは氷くれたからあげる!好きなだけ持ってって」

「ヒル魔よ、これはどういう意図なんだ…?」

 

 まぁ貰えるなら貰うが、あんまり取りすぎたら他の奴の分が無くなるしある程度で止めておこう。

 

「じゃあ俺は上へ行くからな」

「頑張って〜今のところ蓮次兄ちゃんが1番だけど油断しないでね」

「あいよ」

 

 

 

 

 

 

 

「ケケケッブラコン蓮次が1着か、いつもは2番手の癖に」

 

 特別展望台へ到着するとヒル魔が俺を褒めたようでバカにした言葉をもらった。

 

「好きなだけ食え」

「ありがとう蓮次!」

 

 栗田に氷を渡し、適当なところで水分補給をして体を休めた。

 

「セイジを配置した意図を教えろ」

 

「あれは氷を渡さねぇと乾燥剤を袋に入れる役目だ、初見でやられりゃ2回目には氷を多く用意して対策するだろ、簡単に言えばボーナスタイムってやつだ」

「なんだそれ…ボーナスなんて要らねぇだろ」

「ガキだと甘く見る方が悪い、つまりはそういうこった」

 

「意味わかんねぇ」

「ケケケッ!あいつはいい演技するぜぇ?演技力はテメェより上だろうな」

「役者志望だから演技力がなくちゃ出来ねぇだろ。自慢の弟だから丁重に扱え」

「おーおーそうかそうか、ブラコン」

「いい加減ぶっころすぞ」

 

「そろそろ下に行って大事な大事な弟を守ってやれよお兄ちゃん?」

「……そういう事か!後で覚えておけよ…!」

 

 逆ギレしてくる奴がセイジに攻撃するかもしれねぇ!

 

 

 

 

■■■■■■■■■■

 

 〜小早川瀬那視点〜

 

「あっアイシールドさんとモン太さんちーっす!」

「セイジ君なんでここに?!」

 

 大展望台をクリアして階段を上がった先にはかき氷を食べているセイジ君がいた。

 

「氷ください!」

「かき氷食べてるのに!?」

「ダメ…?」

 

 うるうるした目で僕を見て氷を欲しがるセイジ君……それだけで僕の良心が痛む…。

 

「……まぁまた取ってくればいいか」

 

 残り少ないけどあげよう。

 

「あげるよ」

「ありがとうございます!」

「ラッキー!俺は先に行くぜ!おっしゃー!」

「てい」

 

 パシュンと音がなるとモン太が手に持っていた袋に穴が空いた。あれ?もしかしてセイジ君がヒル魔さんの銃を使った?

 

「??……あちぃ〜!!」

 

 モン太の持っていた氷が溶け始めてすぐに全部無くなった!

 

「何しやがる!」

「ケケケッ俺様の部下にひでぇ事する奴は乾燥剤を食らわせて溶かすんだ!ってヒル魔さんに言われたからやっただけでーす」

「ムキィー!!」

 

 

 

 

 ポンッ

「弟に何する気だクソザル?」

「…………ウキ?」

 

 怒ったモン太の頭に手が置かれ、モン太が冷や汗を流しながら振り返った。

 

 

「うちの弟に手を出そうって気なら…覚悟出来てんだろうなぁ?アァ!?」

 

 

 【第3関門・真地獄の門番】

 

 

「アイシールドさん、これどうぞ」

 

 セイジ君が椅子にしていたボックスから氷を取り出して僕の袋に入れてくれた。

 

「頑張ってください」

「ありがとう!モン太お先!」

「あっずるいぞセナ!」

「俺にぶちのめされるか下へ行って氷を取ってくるか選べ、さもなくば…」

「取ってきます!!」

 

 モン太が下へ行くのを見送ると僕は上へ進む。

 

 

 

「セナ君上がり〜2番目だね」

 

 僕は2着だった、後で双葉さんにジュース奢らなきゃ。

 

 

 それからモン太も到着、途中でセイジ君へ氷をあげて追加は要らないと言い切ったそうだ。

 これでモン太はご飯奢りに決定。

 

 あとは誰が上がってくるかな?

 

 

 






 入部テスト編その1でした!

 本来ならば第3関門はヒル魔がやっていましたが敢えてセイジを使ってヒル魔は上でゆっくり過ごすというね(笑)
 中一だからと言って油断すればヒル魔直伝の乾燥剤入りの発砲で最初から……しかも蓮次がゴールすれば逆ギレしてきても守ってくれるお兄ちゃんが現れてさぁ大変!
 ヒル魔的には1番に到着するのは蓮次だと思っていて、その後セイジの元へ行くと想定していました。つまり蓮次は上手く利用されてます(笑)


 次回は入部テスト編その2、いよいよ入部テスト合格者が決まり新生泥門デビルバッツのスタートとなります!!

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