セイジの傍に座ってこれから来る奴らを見送る役を勝手に始めた。
今のところセナとモン太だけで、後は誰も辿り着いていない。
「あめぇ……砂糖入り氷をかき氷にしてシロップとか甘すぎだろ」
セナから貰った氷をかき氷にして食べてはいるが……元々砂糖入りなんだからめちゃくちゃ甘い。
「もう飽きた」
「だろうな、食い過ぎたら晩飯入らねぇ」
「だよねーもう要らない」
「せめて作った分は食い切るぞ」
「そうしよう、セナさんがくれた分は食べなきゃ」
「ふごっ!」
「は…」
「はぁ…」
「はあぁぁ…」
小柄なデブ…確か小結だったか?ドアを壊して入ってきたのを覚えている。そいつとハァハァ三兄弟が来た。
「ほら、出番だぞ」
「いらっしゃいませ〜氷くださいな?」
カゴを手に持ったセイジが問いかけた。
「こ……っ!?」
「は?」
「はぁ?」
「はあぁぁ!?」
そりゃそうなるよな、誰だって必死こいて氷運んで来たのにくれなんて言われたらキレる。
「もう少し上がったらゴールだから選ぶのは自由だ。さぁ氷をやるか、断るか……選べ」
「…………んっ!」
小結が手一杯の氷をカゴへ入れる。
「ありがとうございます!」
「……ちっ、ほらよ」
十文字が氷1粒…続いて戸叶と黒木も1粒カゴへ投げた。
「……ふー」
3人を見た小結が鼻で笑っている?笑うというより呆れている感じだ。
「は?」
「はぁ?」
「はあぁぁ!?」
そんな小結に三兄弟がキレると、袋を逆さまにしてセイジのカゴへ全部入れている。
「好きなだけやらぁ!」
「俺もだ!」
「おらぁどうだ!」
「わ〜ありがとうございます!」
「……ぁ、空になっちまった」
「また最初から!?ここまで来たのにそりゃねぇぜ!」
「だぁ〜!やっぱ返せ!!」
バカだ、バカ三兄弟だ……後先考えずにやるからそうなるんだよ。
「はいはい怒らない怒らない、お好きなだけ持ってってください」
「「「よこせ!!」」」
セイジがボックスを開けるとまだまだ大量の氷。
それを見せるとハァハァ三兄弟が取り合いになりながらも最初よりも多いぐらいの氷を手に取り、先に行った小結の後を追いかけた。
「気持ちのいい人達だったね」
4人から貰った氷をボックスの中へ入れながらセイジが感想を言う。
「あの4人は癖があるがいい感じになるかもな」
「蓮次兄ちゃんのいるアメフト部って全員癖すごいね」
「そうだ……おい、俺も変人だって言いてぇのか?」
「てへぺろっ★」
「誤魔化せると思うなバカ」
それからしばらくすると何人か来るが全員氷をくれず報復の乾燥剤攻撃を食らわせ最初から。何人かキレて来たがゲンコツで黙らせてやると、やがて誰も上がって来なくなってしまった。
「蓮次兄ちゃんとセナさんとモン太さん以外で上へ行ったの4人だけ?」
「だな、4人入部テスト合格だ」
「そっかぁ少ないね」
「まぁここまで来る根性のある奴を入部させたいからな、いい感じにふるいにかけれただろ」
「ふーん」
カン……カン……カン
下から登る音が聞こえる。
「誰か来たぞ」
「みたい」
「ハァ……ハァ……」
大量の水が入った袋を持ったハゲ頭…確か2年の雪光か、成績上位だから割と記憶にある奴だ。
そいつが必死に水を運んでいる、氷はもう全部無くなっただろうに……気付かず来たな。
「いらっしゃいませ〜氷くださいな?」
「こ、氷…!?」
「あれ〜?もしかしてない?」
「え……嘘、溶けちゃった…!」
「これどうしたらいいと思う?」
「悩ましいな」
スルーさせて行かせても合格基準には満たせない。かと言って引き返させてももうここへ来るまでの気力はないだろう……。
「まぁ根性あるし、もうこれ以上来るやつも居ねぇだろ」
「じゃあ…?」
「先ずは熱中症になる前に冷やすぞ」
「りょりょ!お兄さんこっちで一休みしてください!」
「え……い、いいの?」
「どーぞどーぞ。地獄
「地獄
「はーい!」
雪光の首に砂糖入り氷袋を当てて冷やしながらスポドリをゆっくり飲ませる。息切れもしているから一旦寝かせて風を送ってやった。
「あ、ありがとう…ございます…」
「もやしのお前がここまで来るとはな、根性あるじゃん」
「最後の…チャンス…ですので」
「確かお前思い出作りに来たんだよな。いい思い出にする為には地獄見るぞ、それでも良いか?」
「……このまま、やりたいことやれずに……終わる方が、いや…です」
「最後通告だ。ここから先は地獄への片道切符、途中下車は俺もヒル魔も許さん。終点はクリスマスボウルに行って日本一だ。お前みたいな運動をしたことないもやしが思い出作りに来るような優しい部活じゃねぇ、怪我をするだけならまだ良い方、最悪今後の日常生活が脅かされる可能性もあるぞ」
「それでも!僕はやります!」
強い意志を感じる。これ以上脅しても無駄だな。
俺はこいつを合格にさせてやりたい気分になってきた。
「そうか、なら行け」
「……はい!」
立ち上がった雪光が下へ行こうとしている。
「待て」
「え?」
「これが地獄への片道切符だ、受け取れ」
ボックスを開いて氷を見せた。
「い、良いんですか?僕氷を渡せてないですし…」
「良い、ヒル魔がごねるなら俺が何とかする。お前の覚悟を見せて貰った餞別だ」
「あ……ありがとうございます!!」
また袋いっぱいに氷を入れた雪光が1歩1歩階段を登って行った。
「仏の兄ちゃんだ」
「好きに言え」
「悪い意味じゃないよ、ああいう諦めない人が蓮次兄ちゃんの好きなタイプでしょ。蓮次兄ちゃんは
「兄貴は関係ねぇ」
「ん、ごめん」
「いい。俺は1度折れたが今はこうしてアメフト部に入って折れずに続けている。俺よりもお前の方が凄いじゃねぇか、役者になるんだって宣言して何年も経つのに諦めずに稽古を続けている。ほんと自慢の弟の1人だ」
「えへへーやれば出来る俺でしょ!略してYDO!」
「ダッセェ」
「ひどっ!」
それからしばらくしても階段を上がる音が聞こえず、逆に上から階段を降りる音が聞こえた。
「帰るぞファッキンセカンドにクソガキ」
ショットガンを肩に担いでいるヒル魔が来た。
「雪光は?」
「合格だ。あんなヘロヘロのもやしが氷をここまで持って来て氷のおすそ分けなんて出来やしねぇ、どこかのお優しいバカが餞別とか言ってやったんだろうな」
「そりゃまたお優しいバカな奴で、(氷の代わりに覚悟を見せて)貰ったから渡したぞ」
「そうかそうか、(氷が溶けて貰えないのに氷を)渡したのか」
「はははっ」
「ケケケッ」
「?…2人して何笑ってんの?」
会話が成立してない?それでも気にしねぇ、俺もヒル魔も雪光を合格にさせると決めたんだから文句は受け付けねぇ。
「あいつが使えるようになるまで時間かかる、長い目で鍛えてやるぞ」
「しょうがねぇな、ズタボロになっても知らねぇぞ?」
「あぁ、地獄行きも承知の上らしい」
「そりゃいい、ずっと記憶に残るようないい思い出にさせねぇとな」
「えーいいなぁ僕もいい思い出ってやつを味わいたい」
「ここでの出来事は思い出にカウントされねぇってか…!?」
「あー……なるなる、なるよね。うん思い出にしますごめんなさい」
「分かればいい、行くぞ」
上へ戻ると栗田と小結がもりもりかき氷を食べていた。
そして三兄弟がまたタバコを吸っていたので頭にゲンコツをかまし、身ぐるみを剥いでタバコがもう無いのを確認した後、服を返した。
そして地獄の入部テストは終了、俺達アメフト部は東京タワーから出たのだった。
このテストで入部者は5名、いい感じにメンバーが揃ってきた。
入部テスト編終了!
次回は日常パートを2つほど入れて一気に試合へ!どこと試合するのは……その時をお楽しみに!!