小結、ハァハァ三兄弟、雪光の5人がアメフト部に入部。
これでアメフト部は11人、選手は10人になった。
「朝練をしたい?」
姉崎が作ってくれた連絡網で、雪光からの連絡が来た俺に朝練について聞かれた。ちなみに連絡網の最後はセイジとなっているが俺と同じ番号なので俺とセイジ兼用にして作られている。
「はい!僕は素人ですし少しでも早く追いつきたいんです!」
電話の向こうでもやる気を見せている雪光の声に力が入ってて相当なものだろう。
「やってるやってる、俺は3時から来て練習してる」
「3…!?夜中ですよ!!」
「栗田は2時から来てやってる。時間は特に気にしなくてもいいから来るなら来い」
「行きます!」
「じゃあ明日な、ユニフォームとかは支給したはずだし……途中で休憩するからおにぎりとか軽い飯と水分は用意しておけ、あとは…あぁプロテインも揃ってるからシェイカーがあれば良いか」
「シ、シェイカー…?」
「粉と水を混ぜて作るから漏れない様にするものだ、無いならうちのあまりを用意しておくけど、その辺でも売ってるから時間がある時買っとけ」
「はい!」
「他には?」
「えぇっと、僕のポジションとかどうなのかな〜っていうのは気になります」
「それはこれから判断する、焦んな」
「は、はい!」
電話が終わり、朝練の準備をするが……シェイカー余ってたよな?
「蓮次兄ちゃんさがしもの〜?」
「ん?あぁシェイカーをな、あると思ってたんだがなかったか」
「そっか〜」
「雪光には悪いが俺のを1回貸してやるか」
まだ日は登って居ない午前3時、泥門高校のグラウンドには栗田と小結がタックルマシンで練習をしていた。
「おーす」
「おはよう蓮次!良い朝練日和だね!」
「ふ、ふごっ!」
「朝練日和ってまだ日は出てねぇけどな」
「蓮次はまだ怪我が治って間もないんだから程々にね〜」
「分かってる、ラダーから始めて体を起こして行く」
「おはようございます!今日からよろしくお願いします!」
4時になれば雪光が合流、朝練を止めて雪光の方へ行くと鼻息を荒くしていた。
「おう、初日から厳しく行くから耐えろよ。それとシェイカーだが余ってなかった、悪いな」
「いえ!昨日の夜買いに行って用意してます!」
「助かる。じゃあ早速やってくぞ、アメフトには色々あるが先ずは基礎からだ。基礎がなけりゃ何にも出来ねぇ、俺は水分補給してくるから体伸ばしてストレッチしとけ」
水分補給を終えて戻って来ると、栗田が力技で雪光のストレッチを手伝っていて雪光が既に死にそうになっている。
十分に解れた雪光を生き返らせ、軽く走り込み。その後はコーンの間をジグザグに走り、最後にはラダードリル。
「ぜぇ……ぜぇ……」
また死にそうになってる……。
「準備運動は十分そうだな」
「ハゲェー!?」
「水分補給してから次はスピードを上げてもう1セットだ」
「えぇー!!?」
「…………」
2セット目には雪光が倒れて死んだ。
ここまで体力がないってなると難しい。技術面や戦略といった要素は後から身につければ良いが実行するのに必要な体力や筋力が無いと出来ない…とは言え、体力なんて1日2日でつくはずもなく、継続していかなればダメだ。
「立て、ここで死んでたら後のことが出来ねぇ。立って続きをやるぞ」
「うっ……や、やるんだ……僕だって…!」
「言っちゃ悪いがお前は雑魚だ。雑魚なら雑魚なりにもがけ、今お前に必要なのは泥臭くて1番キツイ基礎練だ」
「は、はい…!!」
「これから毎日最後まで付き合うから安心して死ね」
「ハゲェー!?死ぬんですか僕!!」
「大丈夫大丈夫、疲労と息切れで何回も吐いては生き返っての繰り返しだから」
「大丈夫じゃないですぅー!!」
朝6時過ぎ、休憩している所へセナとモン太も合流。続いてヒル魔もやってきたので全体での朝練を始めた。
雪光?今も死んでる。今日これで5回目。
「生き返れ生き返れ」
ペシペシと雪光のデコを叩いて蘇生し、全体練習へ混ざることにした。
「雪光君に無茶させたでしょ」
朝練を終え、教室へ入って早々姉崎に怒られた。
「させてね……させたわ。おぅ、今回はさせたと認める」
「初日なのにどうして!?」
「時間が足りねぇからだ、体力をつけるなんて普通年単位の努力が必要。今のままじゃ1クォーター持つか怪しいぐらいだ」
「じゃあワンポイントで使うとか…」
「今のところ、運動神経雑魚の雪光が有効になるワンポイントなんてありゃしねぇ、突出した何かがあれば別だがどう見てもあれは運動オンチのレベルだ」
「もしかしたらきっと凄い何かが…」
「あったとしてもそれは基礎が無きゃ無理。足し算引き算が出来ねぇのに金勘定出来るか?それと一緒だ」
「それとこれとは…」
「運動に限らず勉強も基礎がなけりゃ応用も発展もねぇ、突出した何かを活かすのに体力がねぇなら使えねぇ。厳しいがそれが現実だ」
「それはそうだけど…もう少し雪光君の事を考えてあげなよ」
「地獄の片道切符を手に取ったのは雪光自身だ、俺は一言もやれと強制してねぇ。雪光の事を考えてやるなら俺は雪光を鍛え上げて戦力にさせる、それだけだ」
「分からないなぁ…私にはぜんっぜん分からない!」
「じゃあ黙って見とけ、雪光の為を思うなら尚更。アメフト部の事を思うのならもっとだ」
「…………まだ納得いかない、けど今は見ておく」
「そうしろ」
放課後、今日も今日とて酸素カプセル行き。終わったら病院で練習は無し。他のメンバーは練習をやっている中酸素カプセルに入った俺の傍でヒル魔がパソコンで何やら作業をしていた。
「まだ治らねぇのか?」
「無茶言うな、これでも早いって言われてんだよ」
「ちっファッキンブービーが」
「ブービー言うな」
「はえぇこと復帰しろ、この先おもしれーもんが待ってるからな」
「面白いもの?」
ヒル魔が見せて来たのは月刊アメフトと言う雑誌。
開いて見せてくれたページには月刊アメフト杯と書かれていて、抽選に選ばれたチームが日本代表となってアメリカの高校アメフトチームと試合をすると書かれていた。
「おいこれ抽選って書いてるが……もしかして…?」
「おう、申し込んだぞ」
「無謀ー!!バカかお前!バカだな!?やっぱりお前もバカじゃねぇか!!」
「ケケケッ!やるなら同格か格上だろ?その方がうちの連中に良い経験値が手に入るってもんだ!」
「そりゃそうだが……勝てんのか?」
「勝つんだよ、秋大会で勝ち進むには必要な経験値だ」
「まぁ…頑張れ、俺はまだ出られそうにねぇし」
「つーことでテメェの復帰戦はここ!それまでに治せ!」
「無茶言うな!!!」
とは言ったものの、アメフトの本場アメリカのチームと試合出来るのはワクワクしている自分がいる。
どれだけ強いのか、自分達の力がどこまで通用するのか、どうやって勝ちを取りに行くのか……まだ見ぬ対戦相手に想像を膨らませながら病院へと行くのだった。
後日、抽選で選ばれたのは神奈川の強豪校で、ピラミッドラインと呼ばれる超重量級のラインで有名な”太陽スフィンクス”と決まった。
この決定にヒル魔が怪しみ、アイシールド21の取材を餌に月刊アメフト社内のパソコンをハッキング……太陽スフィンクスの決定を削除し、泥門デビルバッツと上書きしてしまった。
「そうまでしてアメリカと試合したいのか…?」
「ケケケッ抽選と言いながら出来レースなんてものはぶっ壊すに限る。ついでに太陽を煽ってやれば乗ってくれたぜ」
「おいまさか太陽スフィンクスとも試合するって言わねぇよな?」
「おう!やるぜ!」
「はぁー!?……ほんとマジでお前スパルタ」
格上と試合する事で経験値稼ぎ、しかも短期間で2試合も組むなんて無茶苦茶。
「時間が足りねぇんだ、やれることは全部やる!太陽をぶっ殺してアメリカもぶっ殺す!秋大会への準備はもうとっくに始まってんだからいい加減復帰しやがれファッキンセカンド!」
「わかったわかったわかったからアサルトライフルの銃口を俺の頬に押し付けんな」
「復帰戦が迫ってんだ、チンたらしてたら置いてくぞ。テメェがいねぇと泥門デビルバッツは揃わねぇ」
「そうかい、俺はあと1人来ねぇと揃わねぇと思ってんだがな」
「…………必ず戻って来る。それまでやることは変わんねぇだろ」
「勝ち続けるだけだ」
「それでいい。練習行くぞ」
「了解、全く…お前の無茶ぶりはいつまで経っても慣れねぇな」
日常パートその1でした!
対戦相手が2つ決まり、いよいよ復帰戦も近付いて来ました!
蓮次が雪光をスパルタで鍛えて行く……果たしてどこまで伸びるのでしょうか!?
やったね雪光君!君の出番が早まるかもしれないよ!それまで何度でも死んで生き返ってね?
次回は日常パートから試合前となります!お楽しみに!!