〜熊袋記者視点〜
第1クォーター終盤まで攻撃していた太陽陣だったけど、思いのほかディフェンスが上手い泥門に阻まれ、とうとうパントを選択。
ヒル魔君がパントをキャッチすると、アイシールド君と双葉君が並走、太陽陣が止めようと迫り来る。
双葉君とアイシールド君がブロックして道を作り、ヒル魔君が走る。
太陽陣地まで残り40ヤード、そこで止められた。
第1クォーターが終わり、ここからは第2クォーター。
ずっとディフェンスだった泥門にようやく攻撃のチャンスが生まれた。
『Set!』
ヒル魔君の後ろにはアイシールド君、ラインの左側にはモン太君と佐竹君、右側には双葉君と30番。
”スプレッドフォーメーション”と呼ばれるフォーメーションだ。
「ランとパスの両方に対応したフォーメーションか、これならディフェンスもどっちを守れば良いか難しいね」
『Hut!』
栗田君からヒル魔君へとボールが渡り、モン太君と双葉君が上がると太陽コーナーバックがついて行く。
「デビルバット・ウィングは羽ばたくだけじゃねぇ!高く飛ぶんだ!」
ヒル魔が高くボールを投げた!
ラインの頭上を超えて高く、高く……一発逆転のヘイルメリーパスの様に高い弾道のパスだ。
着地点には既に双葉君が入っていて、コーナーバックと競り合いになる。
身長はほぼ同じ、ここで求められるのはキャッチ力とぶつかっても揺るがない体幹だ。
「貧弱だなぁ!」
空中でぶつかるも双葉君は動じない!コーナーバックを押し退けて取るとそこで倒れた。
『10ヤードゲイン!ファーストダウン獲得!』
あれだけ高いパスをしたけど思ったほど進んでない…本当に高く投げただけなんだ。
「空中での競り合いならファッキンセカンドに分があるみてぇだしもういっちょ行くか」
ハドルをする前にヒル魔君が太陽陣にまで聞こえる大きさで言うと、ハドルを始めた。
『Set!』
「ん?位置変わってる?」
ヒル魔君の後ろに双葉君がついて、オフェンスラインの両側にはアイシールド君とモン太君、30番と佐竹君がいる。
さっきもう1回するって言ってたのは?あれ嘘なの?
『HutHutHut!』
3度目の掛け声でヒル魔君へボールが渡り、4人が一斉に前へ走る。当然コーナーバックも4人について行き、ライン周りはがら空き。
ライン勝負ではいつの間にか青天されなくなった泥門ラインが粘るも、番場君が栗田君の脇に腕を入れてすくい上げて倒すリップで突破、一直線にヒル魔君へと向かう。
「ヒィー怖いよー」
ヒル魔君がわざとらしい泣き言を言うと、後ろへパス……そこには双葉君がいた。
「空けてくれてありがとよ!」
ボールをキャッチした双葉君が右へ移動してスペースを空けると、栗田君が倒されて空いたスペースを通る真っ直ぐなパスが放たれた。
「キャッチマーックス!からのー」
「モン太!」
「手渡しマーックス!」
モン太君がしっかりとボールをキャッチして着地すると、ボールをアイシールド君へ手渡し…パスからランへと切り替わり、あとはもうアイシールド君の独壇場。
『タッチダウン!!』
これで12対0。
「今のパスは反則じゃないのか!?」
「そんな訳ないですよ編集長。ヒル魔君から双葉君へのパス、モン太君からアイシールド君へのパスはラテラルパスって言って何度でも使えるバックパスです。反則行為は1つもありません」
「なんだと!?」
「しかし今の上手いプレイングですよ。ヒル魔君を囮に番場君を引き付け、後ろにいた双葉君がパスを投げる時間とレシーバーが走る時間を稼いでパス。そこから一緒に走っていたアイシールド君へ手渡ししてランに繋げる……本当に攻撃的なチームだ」
しかし…ディフェンスでも要所で止めたり点に繋げたり…アイシールド君が目立つチームだけど双葉君もまた良い選手だ。
その後のトライフォーポイントは失敗。
12対0のままで泥門キックからプレイが始まり、太陽ボールになった。
『Set!Hut!』
残り55ヤードから始まる太陽陣の攻撃。
ライン同士がぶつかる。第1クォーターの時は散々青天されていたけど今は耐えている。
「ピラミッドラインは無敵だ!たとえ後衛がどれだけ優秀であろうとラインが貧弱なら無駄だ!」
編集長が太陽ラインの様子を見て言うと、太陽ラインの1人笠松君に動きがあった。
「負けっ放しは!─「なっ!?」─趣味じゃねぇんだ!!」
「にぃーっ!?」
マッチアップしていた十文字君が笠松君の袖を引っ張って倒した!
この瞬間、ピラミッドラインが崩れてしまい笠松君を倒した十文字君が原尾君へブリッツ!
高くボールを構えている原尾君がタックルされてボールを落としてしまいファンブル!
誰が確保するのか!?
「ふごーっ!!」
ボール確保の為に密集した中から小結君がボールを高く投げ飛ばす珍プレーが起こり、ボールがフィールドを転々と転がる。
そこへアイシールド君がボールを確保してカウンター!
泥門陣がアイシールド君をフォローして太陽陣をブロックしてランルートを作りつつサイドラインギリギリを走って行く。
「抜かせはしない!」
アイシールド君の前に番場君が立ち塞がる。
番場君の巨体が中央側へ走る道を塞ぎ、外へ出るかここで止めるかの2択に狭まれてしまう。
「ケケケッ白銀様を忘れちゃいねーか?」
「おおおぉ!」
「なにぃ!?」
「デカイ奴が勝てるとは限らねぇ!人間、横からどつけばヤワなもんだ!」
双葉君が番場君を横から押してサイドラインへと押し込んだ!これで道が開けて先へ進める!
「いけっ!」
「はい!」
「ぬ、抜かせは…!!」
番場君が必死に手を伸ばしてアイシールド君を止めようとするけど届かず抜かれてしまった。
『タッチダウン!!』
18対0。
その後のトライフォーポイントは失敗でホイッスルが鳴った。
前評判では圧倒的に太陽スフィンクスが優勢だったのに蓋を開けて見れば全くの逆。
重量ラインが持ち味でピラミッドラインと呼ばれるほど強固なラインが崩れ、泥門の優勢で前半が終わった。
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〜姉崎まもり視点〜
「YA-HA-!」
ヒル魔君がものすごいテンションで機関銃を乱射している。
その横では頭からタオルを被った双葉君がベンチに座り込んでいた。
「大丈夫?」
「大丈夫そうに見えるか?」
病み上がりなのにこの暑さと運動量で双葉君の疲労は溜まっている。今も小声で話すのが限界みたい…というかヒル魔の銃の音で聞き取りにくい!
「よーしテメェら後半も攻めに攻めまくるぜ!」
「ヒル魔君!」
「前半はファッキンセカンドがバカみてぇに活躍したからなぁ今度は俺がやるって奴手ぇ上げろ」
ヒル魔君が言うと、セナとモン太君が1番に手を挙げた。続いて十文字君に戸叶君に黒木君と小結君の4人も挙げる。
「ケケケッ!上等じゃねぇか!全員後半フルに使ってやっから覚悟しやがれ!」
ヒル魔君がバシバシと双葉君の頭を叩いてからタオルを剥ぎ取った。
「制限時間は第3クォーターが終わるまで!それまで活躍出来てねぇクソ共は試合が終わってから江ノ島まで走って来い!モノレールは禁止だ!」
「?」
どうして制限時間を設けたんだろう?
「……ぁ」
ようやく気付いた。
ヒル魔君は双葉君を第3クォーターをフルで休ませ、第4クォーターから使うつもりだ。
双葉君が居ない間セナ達のモチベーションを上げて点を取り続ける事で第4クォーターに双葉君を出さなくても大丈夫な様に点を取り続けるつもりなんだ。
ヒル魔君が円陣を組んで作戦会議を始めた。
「ハァハァ三兄弟の長男は不良殺法を使ってブリッツを仕掛けろ。だが毎回するな、たまにでいい、それが効果的だ」
「おう!」
「アイシールドのランとクソザルのロングパス、この2つを使って進めて行く。ライン共は死ぬ気で耐えろ、それが出来なきゃライン組全員走って江ノ島行きだ」
「うん!」
ハーフタイムが終わって双葉君の代わりに山岡君が出た。
双葉君はベンチに座って静かに息を整えながら水分補給をしている。横から見ると、しっかりと目を開いてフィールドを睨みつけるかのような感じで見ていた。
「大丈夫?」
「問題ない、第3クォーターは休ませてもらって第4クォーターから出るって段取りだ。今はしっかり休ませてもらって最後にまた暴れてやる」
「そう…頑張って」
「おう」
試合に集中しているから気持ちが切れていない。熱中症で倒れるかと思ったけど大丈夫そう。
「姉崎」
「うん?」
「心配かけたな、俺は大丈夫だから安心しろ」
双葉君が私を見て言うと、また直ぐにフィールドを見てしまった。
「選手のサポートをするのがマネージャーの仕事だもん」
だから双葉君のサポートもちゃんとやるよ。
太陽スフィンクス戦その2でした!
地獄のロシアンルーレットオフェンス編でもあります。
ここで”ヘイルメリーパス”ってなんじゃいって方に、原作では帝黒戦でモン太に投げた超ロングパスの事です。
リアルでも存在するパスでゴールまで40〜90ヤードで投げたパスの成功率はなんと3%らしいです!
とはいえ今回投げたパスはヘイルメリーパスとは違い、ただただ高く投げただけのパスというオチでした(笑)
次回はスタミナが切れた蓮次が抜け、第3クォーターからのお話です。お楽しみに!!