〜第3クォーター時・双葉蓮次視点〜
「雪光、この試合をどう見る」
「え?」
隣に居る雪光へ聞くと驚かれた。
「ここはフィールドにいる選手と違った視点で試合を見られる。前半の様子を見てどう思った?これから後半の試合をどう思う?」
「え、えっと…前半は双葉君の活躍で0点に抑えられていましたし、オフェンスも要所で活躍してました」
「俺が目立つ前半だったな、おかげでスタミナ切れだ」
だからここで休ませて第4クォーターに出る作戦だ。
「後半は……すいません、よく分かりません」
「そうだな、初めてこの立ち位置で見る試合だから分からねぇよな」
「はい…」
「頭をフル回転させながら見ろ。ヒル魔が何を見てるのか、相手と味方の動きを、ボールじゃなくて全体を見ろ、そうすれば自ずと理解できる」
「…はい!」
雪光が両目をしっかりと開けて第3クォーターを見始める。
途中でタイムアウトを取ってバンプされたモン太にどうするか伝え、栗田に気合い入れてやった。
「双葉君、ヒル魔さんのパスがモン太君だけになってます」
「元々そうだが他のレシーバーは囮扱いでパスルートも知らねぇからな」
「こうなってくると相手はモン太君だけを警戒しますよね」
「そうだな、そうなったらランに切り替えられる。だけどそれもいつかは対策される、じゃあどうする?」
「…………もう1人、ショートパスかミドルパスを取れる人が欲しいです」
「流石、いい着眼点だ」
ここまで見えてるなら後はスタミナさえ着いてくれば実践で行けるか?
「……雪光はもっと試合を見て学んでくれ。基礎ができてない今出ても怪我をする」
「そうですか…」
「安心しろ、お前をしっかり鍛えて使えるようにする。それまでは俯瞰して試合を見られるようにしろ」
「……はい!」
そして第4クォーターが始まるとヘルメット片手にフィールドへ出たのだった。
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〜熊袋記者視点〜
『Set!Hut!』
第4クォーターが始まり今は太陽ボール。
原尾君がボールを取ると、低くボールを構えてパス相手を探している。
ラインの方を見ると、十文字君が笠松君の袖を引っ張り込もうとフェイントを入れて脇の下に手を入れて押し……笠松君を青天させた。
「くっ!」
原尾君が慌ててボールを投げるも誰も取れずにパス失敗で終わる。
『Set!HutHut!』
2回目の攻撃、今度はランを選択。
左サイドから上がるランニングバックと、泥門の小結君を上から倒したラインの1人が盾になりながら上がると、泥門陣は止めるために黒木君と戸叶君が走る。
「おりゃあ!!」
ブロックしようとしたラインの袖を戸叶君が引っ張って倒した!十文字君と同じ技だ!
がら空きのランニングバックに黒木君が飛びついてタックルして倒す。
『2ヤードゲイン!』
残り2回で8ヤード進めばファーストダウン、ランじゃ中々進めない太陽はどうするのかな?
『Set!Hut!』
ここへ来て太陽ラインの底力を見せた。
パスを防ごうと泥門ラインが押すが動かず、十文字君が引っ張り込もうとするけど崩されずに耐えられてしまい、悠々とパスをする時間を稼がれてしまう。
いつまで経っても投げない太陽陣とパスを貰うためにポジショニングを走って変えるレシーバーに翻弄され、フリーになったレシーバーを見つけると素早くパスを投げた。
『16ヤードゲイン!ファーストダウン獲得!!』
キャッチしてそのまま走り出そうとするも双葉君のタックルで倒される。それでもファーストダウンを取れた。
両面で出続ける泥門デビルバッツは太陽スフィンクスと比べてスタミナの消耗は早い、加えてこの暑さ……体のキレは最初と比べて悪くなっていて、1人休んで回復させたとは言え限界が来る。
スタミナの差で泥門はどんどんとパスを通されてしまう。
『タッチダウン!!』
トライフォーポイントはキックで入れて、これで24対14。
10点差になった泥門デビルバッツはどう攻撃するのか。
残り60ヤードから始まる泥門の攻撃。
『SetHut!』
スプレッドフォーメーションで始まると、モン太君と双葉君と30番と佐竹君が上がって行く。
モン太君についていた鎌車君だが、太陽ベンチから双葉君にバンプする指示が聞こえ、慌てて双葉君にバンプするも動きを止められずそのまま走り去った。
遅れて鎌車君が双葉君を追いかけるが、突然双葉君が方向転換して振り切られパスを貰う。
『10ヤードゲイン!ファーストダウン獲得!』
「正面から打ち破りましたか」
「あれだけ力強いバンプをものともせず走れるとは…」
「休んでいたからスタミナは残っている方、彼を主体に攻撃すれば太陽も中々厳しいと思いますよ」
「こうも予想とは違った展開になるとは…!」
『Set!HutHut!』
ファーストダウン獲得後の連続攻撃。
Iフォーメーションで後ろにはアイシールド君と30番がいる。
今度はアイシールド君がボールを持って右サイドから上がると、双葉君が並走。太陽ディフェンスが2人がかりで止めに来るも双葉君がリードブロックでしっかり道を作ると、空いた道をアイシールド君が駆け抜けて行く。
これではっきりした。
編集長が選んだ太陽スフィンクスと僕が抽選で引いた泥門デビルバッツ、どちらが上のチームで日本代表として相応しいか。
各部門で見ていくとラインは流石のピラミッドライン、太陽スフィンクスが勝つが途中から拮抗し始め、この試合だけで泥門ラインは急成長したかのように見えた。
厳しく見て6:4の太陽ラインの優勢かな。
後衛では終始泥門優勢で、第3クォーターに限り五分になりかけたけど、タイムアウト後からは泥門優勢に戻った。
総合的には泥門、実力で太陽を上回っている。
「このチームならきっとアメリカ相手でも良い勝負ができる!」
ピイィィ!!
『試合終了!!』
スコアは30対14。
アイシールド君がタッチダウンを決めて更に点差を広げた結果だ。
前評判を引っくり返す大金星!これだけのチームならあの王城に3点差まで迫れた理由も頷ける!
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〜双葉蓮次視点〜
「YA-HA-!!」
ヒル魔が消防車にあるホースを使って水を撒いて喜んでいる。
「ある程度余力を残せて良かった」
「?…どうしてこの点差で勝ったのに安心してるんですか?」
俺の独り言にセナが反応した。
「アメリカ戦、いつだと思う?」
「えっと……いつでしょうか」
「明日」
「明日ぁ!?」
「今日の疲労を早く抜かなきゃ明日バテバテになるぞ」
「ヒィ〜!じゃあ早くお風呂入って寝なきゃ!」
「バーカ、この後行くとこあるんだよ。水風呂入って筋肉を冷やす暇もねぇぞ」
「行くところ?…あっ!そういえば江ノ島がどうとかヒル魔さん言ってましたね!」
「そうだ、そこで神龍寺ナーガと王城ホワイトナイツの試合があるんだよ」
「王城!?」
「相手は関東大会8連覇中の関東最強チーム、王城はそこにだけ負け続けてる」
「そんな!?あの王城がですよ!」
「そんな神龍寺ナーガも負け続けてんだけどな」
「どこにですか?」
「西のチーム、クリスマスボウルでずっと負け無しの最強チームだ」
「!!」
「上には上がいる。ここで喜ぶのも良いが気を抜く暇は無いぞ」
「はい!」
「つーことで、行くぞ江ノ島」
制服に着替えてから江ノ島へ向けてモノレールに乗って移動を始める。
道中はちみつレモンを用意していた姉崎から貰い、少しでも栄養補給をしつつ、モノレールではしゃぐセイジを宥めていると到着。
関東大会準決勝、神龍寺ナーガVS王城ホワイトナイツ。
事実上の決勝戦が行われる江ノ島フットボールフィールドには、関東にいる多くのアメフトファンがこの準決勝を見に来ていた。
「すごーいこんなに集まるなんてお祭りみたい」
観客席に座るとセイジがキョロキョロと周りを見て驚いている。
「アメフトファンにはお祭りかもな」
「そうなの?」
「事実上の決勝戦がこれから始まる。秋には絶対に勝たねぇとクリスマスボウルに行けないんだ。撮影係の出番だぞ、1秒足りとも撮り逃すな?」
「りょうっかい!」
ビデオカメラ片手にどうやって撮ろうか悩むセイジの頭を撫でると、王城ベンチの隣には車椅子に乗った少年を見つけた。
「虎吉も来てたのか、誰かに連れてきてもらったんだな?」
ベンチの隣で必死に応援する虎吉を見て微笑んだ。
桜庭は春大会の間出場停止処分と謹慎をさせられていた。関東大会ならもう出場停止も謹慎も解かれている。それでもこの試合まで桜庭は未出場、ベンチを温めていた。
その桜庭が今スタメンのようで真剣な顔をしてショーグンの話を聞いている。
桜庭ファンは……この集まりだ、来ても邪魔されることは無いだろ。
いよいよ試合開始、ついさっきまで試合してたのに休む暇なく来たんだ。
いい試合を見せてくれ。
今回は第4クォーターと試合終了後のお話でした!
太陽スフィンクスとの試合、実力で上回る試合展開になったかなと思います。
この勢いでアメリカ戦、どうなるでしょうか!?
アメリカ戦が始まるまでは5話程日常パートを入れてからの試合となります。
それでは次回をお楽しみに!!