泥門の2番手   作:実らない稲穂

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アイシールド21

 

 

 〜小早川瀬那視点〜

 

 昨日入部届を書いた僕は家に帰って想像してみた。

 一昨日に栗田さんに見せてもらったアメフトの映像も覚えているから想像するのは簡単で、タッチダウンした瞬間僕の心臓がまた大きく跳ねた。

 ずっとパシリをさせられて争うのが嫌いで貧弱な僕……そんな僕がフィールドを走り抜けてタッチダウンが出来たら……

 

 

 

 

 

「アメフト部!?」

 

 朝、幼なじみのまもり姉ちゃんと一緒に登校している時にアメフト部へ入部したと伝えるとびっくりされた。

 

「ダメだよあんな危ないの!」

「でも栗田さんや双葉さんは凄くいい人で主務をやりたいって言ったら歓迎してくれたよ」

「主務をやるの?」

「あっいや……選手をやろうと……」

「ダメ!セナなんて虚弱で貧弱で脆弱で最弱なんだから!」

「そこまで言わなくても……」

「アメフトは危ない部活だよ!セナなんてプチッとやられちゃうのにどうして選手なんかするの!」

 

「……確かに僕は虚弱で貧弱で脆弱で最弱かもしれない。それでも双葉さんはできるって言ってくれた、痛いのは嫌だけど僕は選手としてやりたい!」

 

 僕の気持ちをまもり姉ちゃんへ伝えた。

 決して軽い気持ちでやるって言ってない、昨日部室でアメフトを教えてくれて1晩考えて答えを出したんだ!

 今も想像するだけで手に汗握る程ドキドキする、まだ想像するだけで試合になったらきっともっとドキドキすると思う!この興奮を実際に体験したい!パシリで鍛えられた脚で勝ってみたい!

 

「セナ…」

 

 まもり姉ちゃんが僕を呼んで静かになった。

 

 

 

「ダメったらダメー!!」

 

 

「えぇーっ!?」

 

 

 

 

「セナは絶対にプチッとやられる!セナなんて脚が速いだけなんだから!!」

 

 きっとまもり姉ちゃんは僕を心配して言ってくれてるんだと思う。それは分かるんだけど僕の気持ちが伝わってないのが凄く辛い。

 

 

 

 

 

 

「アメフトは個人でやるスポーツじゃねぇ」

 

 紫っぽい黒髪をかきあげた髪型でちょっと細めの目をした双葉さんがおにぎりを食べながら現れた。

 

「双葉さん!」

「よっ途中から聞いてたが痴話喧嘩か?」

「ち、違いますよ!まもり姉ちゃんは幼なじみで僕を心配してくれてるんです!」

「ふーん」

 

「双葉君!セナを危ない部活に誘わないで!」

「姉崎が小早川を心配すんのは分かるが男が決意してやるって言ってんのを否定すんのは違ぇだろ」

「セナを巻き込まないでって言ってるの!」

「そのセナがやるって言ってんのなら背中押してやれよ」

「っ!!」

 

 双葉さんがまもり姉ちゃんを言葉で黙らせた…!

 

「虚弱だのなんだの言ってるがアメフトはチームスポーツ、1人に全部を任せるわけねぇだろ。それをダメだダメだと駄々こねてセナの思いを否定すんのは流石に見過ごせねぇな」

「うっ!……でも…!」

「それとも姉崎はセナが成長すんのが嫌だって話か?」

「ちっ違うから!」

「なら背中押してやれ、泥門デビルバッツは小早川瀬那の入部を快く歓迎して本人もやる気を見せている。じゃあ外野の姉崎は黙って見てろ」

「う…う〜っ!!」

 

 まもり姉ちゃんが何か言いたいみたいだけど唸っているだけで何も言えてない。

 双葉さんが僕の味方してくれるのが嬉しくて1歩双葉さんへ寄るとまもり姉ちゃんがまたびっくりしていた。

 

「…………ほんとにやるの?」

「うん」

「危ないよ?怪我するかもしれないよ?セナみたいな最弱なんて簡単にプチッてやられるよ?」

「それでも僕はアメフトをやりたい」

「………………そっか、そしたら何も言わない」

「ありがとうまもり姉ちゃん!」

 

 

「俺は先に行ってるぞ、朝練遅れんなよ」

 

 双葉さんが僕の頭に手を置いて先に行ってしまった。

 

 

 

「双葉さんってカッコイイなー」

 

 思わず声に出してしまう程カッコイイと感じた。

 

「双葉君って兄弟が多いって言ってたし絶対セナを弟だと勘違いしてる」

「そうなの?」

「同じクラスだから話してるの近くで聞こえたんだよね」

「双葉さんってどんな人?」

 

 学校へ向けて歩きながら聞いてみた。

 

「言葉が悪いけどいい人だよ」

「うん、昨日初めて話して凄く伝わる」

「あとヒル魔君と比べて真面目で先生達からも信頼されてる」

「へー」

 

「ヒル魔君があれだから相対的に思われてるだけかも」

 

 確かに。

 

 

 

 

 

 

 

 校門でまもり姉ちゃんと別れた後部室へ向かった。

 

「おはようございます!今日からよろしく……」

「おせーぞファッキンチビ!!」

「ヒィぃぃぃぃ!!」

 

 ダダダっ!といきなり銃を撃って来た!!!

 

 

「ファッキンデブとセカンドはもう来て朝練やってんのにテメェだけ何ちんたらしてんだ!」

「すいませんすいません!」

「おら!さっさとこれに着替えろ!」

 

 ヒル魔さんが僕にユニホームを投げ、両手で受け取った。

 背番号21番…ヘルメットへ緑のガラス?みたいなのがついてる。

 

「ヒル魔さんこれは?」

「アイシールド、試合中はそれをヘルメットに付けて顔を隠せ。運動部がテメェを見て争奪戦が始まっちまうのを防ぐ為だ」

「はぁ…」

「試合中は小早川瀬那って名前も捨てろ、お前の選手登録名(コードネーム)は……」

 

 

「アイシールド21!!」

 

 

 

 

「分かったらさっさと着替えてグラウンドへ来い!!」

「あだだだっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セナ君おはよぉー!!」

 

 ヒル魔さんと一緒にグラウンドへ着くと栗田さんが手を挙げて挨拶してくれた。

 

「おはようございます!遅くなってすみません!」

「全然いいよー!一緒にクリスマスボウル目指そうね!!」

 

「このファッキンデブは朝の2時から来てやってっから気にすんな」

「はやっ!?」

「ちなみにファッキンセカンドは3時、バカ共に付き合う必要ねーぞ」

「はやっ!!?」

 

 そんな時間から練習って……いつ寝てるんだろう…?

 

「ってあれ?ヒル魔さん、さっき来る途中で双葉さんと会ったんですけど」

「あ?……早めに上がって家に帰ったんだろ」

「そうですか!」

「んな事いちいち気にしてねぇで朝練すっぞ」

「はい!」

 

 

 そこからはヒル魔が1つ1つメニューについて教えてくれた。

 はしごを使ったラダードリルにアメフトボールを発射するマシンでボールを取る練習にタックルをする練習。ボールは上手く取れないしタックルの練習をする時はちょっと痛かったけど楽しかった。

 

 そして最後に40ヤード走をする事となった。

 40ヤードって確か……36mぐらいだっけ?何秒で走ったら速いんだろう?

 

「ヒル魔さん、40ヤード走って大体何秒ぐらいなものなんですか?」

「普通の奴なら5秒台、5秒の壁が凡人と短距離選手(スプリンター)の境界線だな」

「5秒ですか」

「高校生で4秒8とか出したらどこ行ってもエースだ。高校最速は進って奴の4秒4。ま、こいつはバケモンだがな」

「な、なるほど」

 

 そんな凄い人がいるなんてアメフトの世界って凄いなー。

 

 

 

 

 

 

 ドオオオン!!

「!!」

 

 びっくりした!

 ヒル魔さんがロケットを放ってスタートの合図なんて聞いてないよー!!

 

 

「…6.5秒だな」

「こ・の・ファッキンデブ!前より遅くなってんじゃねぇか!!何が朝練だ!!」

「しょうがないじゃん疲れてんだから〜!」

 

 双葉さんが記録、そして栗田さんの記録に怒ったヒル魔さんがお腹を何度も蹴っている。

 

「次!ファッキンセカンド!」

 

 ドオオオン!

 またロケットを発射させて合図を送ると、双葉さんが走る。

 

 

 

 

 

「……5.9秒です」

「テメェもか!テメェも何遅くなってんだよ!朝練の意味ねぇじゃねぇか!!」

「俺だって疲れんだから!」

「ブービーの2番目になってんじゃねぇ!ぶっ殺すぞゴラァ!!」

 

 双葉さんがヒル魔さんにお尻を蹴られて怒られている。

 

 

 

 

「えーい!見てやがれ!!」

 

 次にヒル魔さんが40ヤード走を走った。

 

「……5.1秒です」

「YA-HA-!!自己ベストタイ!」

「去年よりも速くなったなぁ」

「そうだねぇ!」

「テメェらがおせーだけだ!」

 

 ヒル魔さんが栗田さんと双葉さんへ怒ると僕へ銃を突きつけた。

 

「最後はテメェだ…!気を抜いて走ったら分かってんだろうなぁ!!」

「は、はいぃ!!」

 

 

 

 

 

 スタート位置についた僕はヒル魔さんの合図を待った。

 気を抜いたら撃たれる…そう思うと膝が笑ってしまう。

 

「セナー!期待してるぞー!」

 

 双葉さんがゴールの方から声をかけてくる。

 

 

 そうだ!双葉さんだけじゃない、ヒル魔さんも栗田さんも僕の脚に期待してくれているんだ。

 走ろう!最後まで気を抜かずに走りきろう!

 

 

 

 ドオオオン!!

 

 ヒル魔さんの合図と同時に1歩踏み出し、最後まで全力で走りきった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「YA-HA-!!!見やがれあいつの本領を!!」

 

 ゴールを超えて気が付けばグラウンドの端まで走り抜けると、後ろからヒル魔さんの声が聞こえる。

 

 

「高校記録どころじゃねぇ!プロのトップスピードだ!こんなもん誰にも止められねぇ!!」

「ほんとに黄金の脚だな」

「凄いよセナ君!!」

 

「ど、どうでした?」

 

 3人の元へ小走りで向かうとストップウォッチを見せてくれた。

 

 4.2秒……!

 

 僕ってこんなにも速く走れるんだ!?

 

「やる気だしゃあこいつは化ける!バケモンを超えるバケモンだ!」

「いやーそんなそんな…」

「もう1回走れ」

「え?」

「今のがまぐれじゃねぇって証明しろ」

「い、いや……僕も初めて参加する朝練で疲れて……」

「なに〜?走りたくて仕方ねぇって?しょうがねぇな〜!」

 

 ヒル魔さんがニヤニヤしながら骨のお菓子を僕の背中へ入れた。

 

「ケルベロス!!!」

 

 ヒル魔さんが叫ぶと、怖そうな犬が現れ……僕を見てヨダレを垂らしている。

 

 

 

 

 

 『オオーン!!』

「ヒイイイイイイ!!!」

 

 

 

 

 

 

 2回目を走っても40ヤード走は4.2秒らしく、ヒル魔さんが大喜びしているのがケルベロスに襲われている僕にも聞こえたのだった。

 

 

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