試合は最初から圧倒的だった。
王城は大田原と進が中心になってチームディフェンスをするチーム、対して神龍寺は才能頼り。
後者の方が悪いように見えるが実際は違う。
21対0。
前半終了時点で神龍寺ナーガが王城ホワイトナイツを完封。1点も与えずに選手の努力と才能で攻守共に王城の選手を上回っている。それでも3回のタッチダウンで抑えてるのは流石の王城。
対して攻撃は悲惨としか言いようがない、桜庭とマッチアップしているコーナーバックの細川一休。バック走4秒9と俺よりも速い石丸と同じ速さを持っている、もう一度言う……バック走でだ。
これが如何にやばいかと言うと、パスカットされるわインターセプトされるわ、引き離そうとしてもしっかり着いてこられるわで完全にレシーバーの精神を抉ってくる。
「モン太だよなあいつは」
「は?テメェがぶっ殺せ」
「俺タイトエンド、レシーバーちがう」
「レシーバーとクォーターバックとランニングバックも兼任だろうが」
「俺タイトエンドだよな…?」
なんかいつの間にか全ポジションを兼任とか言われたんだけどこいつ怖い。
「モン太、あれが関東最強のコーナーバックだ、鎌車が霞むぐらいに強い」
「…!」
「いつか勝てれば良いなんて言うなよ?今年の秋にはあいつに勝たなきゃクリスマスボウルなんて行けねぇぞ」
「うッス」
あの最強の細川とマッチアップする桜庭は何とも可哀想に思えて来る。高見からのパスは弾かれ盗られ…レシーバーとしてのプライドなんてズタボロになるだろう。
神龍寺ラインも太陽ラインと比べて強固、泥門ラインが低レベルなのが痛感させられる。
大田原に一切仕事させず完璧に封じ、残されるのはラインバッカーの進だけ……進1人で何とかなるわけがない。
「これでまだ金剛阿含がいないってのがもう…厳しいな」
「蓮次兄ちゃん、金剛阿含って誰?」
「100年に1人の天才、最強で最凶のプレイヤーだ」
「そんなに!?」
「ちなみに金剛阿含に1番勝ち目あるプレイヤーはここにいる白銀お兄ちゃんだぞ」
「すげー蓮次兄ちゃん!」
「それはない、勝つなんて無理」
「ケケケッ負けはしねぇって言ってんぞ」
「何回かやって1回、運が良ければだけどな」
「今のテメェの状況でだろ?これが3ヶ月後になれば勝率が上がるって話に変わる」
「かもな」
果たして俺に伸び代があるのか分からねぇけどな。
「行かせてください。
タイムアウトを取った王城ベンチで進がショーグンに話しているのが聞こえる。
「バリスタって…?」
「確か、巨大な丸太の弓を発射して壁とか破壊する攻城兵器ですね」
タイムアウトが終わり、試合再開。両チームを応援する声で会話が聞き取りにくくなるとヒル魔が話しかけてきた。
「バリスタ、どう思う」
「……進が関係しているのは分かる」
「進自身がショーグンへ言ってるからな」
「ヒル魔はどう見る」
「想像したくない作戦が1つ浮かんだ」
「言ってみろ」
「進の両面」
「……確かにそれは嫌な作戦だ」
「どういう事でしょうか?」
そこへ雪光も会話に加わる。
「名前の由来からバリスタは攻城兵器、それって普通目立つよな?」
「そうですね、壁を破壊する兵器ですから大型な物だと思います」
「相手側からすれば攻城兵器は厄介、止めようと何とか攻撃するが止められない。つまり、進という1本のバリスタが……敵に攻撃するって作戦だ」
「最後なんでそんなふわっとした感じなんだテメェは」
「詳細なんて分かるはずがねぇ。元々ディフェンス1本の進が両面なんてなればうちはかなり厳しくなる」
「進さんの止めようがないって事でしょうか?」
「40ヤード走4秒4、ベンチプレスは140kg、そんな化け物にタックルしようものならスピアタックルが飛んでくる。さぁ問題だファッキンハゲ、どうやって止める?」
「えっと……ほぼ同じぐらいの人が止める、でしょうか」
「ケケケッだとよファッキンセカンド」
「抜かれたら追いつけねぇんだよ…!」
ピイィィ!
『試合終了!!』
35対3。
キック1本入れて精一杯の抵抗を見せた王城に対して神龍寺は容赦なく点を取る一方的な試合だった。
「全部撮ったか?」
「撮れた!桜庭のダサいところもバッチリ!」
「全力でプレイした人をバカにすんな」
「いっ…!!」
セイジの頭にゲンコツを食らわせた。
セイジの言葉はどうであれ、アメリカ戦が終わって落ち着いてからこの試合のビデオをじっくり見るとしようか。
「見とれ神龍寺!今日のは桜庭が久しぶりの出場やからや!」
試合が終わり、両チームが引き返そうとしている所へフィールドに入り込んだ虎吉が神龍寺の面々へ叫んでいた。
「秋には余裕で倒したるわアホー!!神龍寺のアホー!ヘタレー!!」
アメフトファンでアメフト選手の桜庭ファン故に神龍寺へ攻撃的な言葉を浴びせている。
「虎吉のバカが」
王城達も聞こえているだろうに負けた悔しさからか、止めに行く様子も無く、知っている奴だから止めに向かった。
「!」「!!」
虎吉へ向けてボールが!?レフリーの間を通す正確さと豪速球!!あのままだと虎吉に怪我が…!!
「危なーい!!」
「危ないって思って助けたけど…」
「ボールが来たからキャッチしたけど…」
「「この子誰!?」」
「桜庭…モン太…セナも、助かった」
急いで向かって止めに行こうとしたが間に合わず、桜庭とモン太が2人同時にボールを掴んでいた。
しかも虎吉はセナのおかげで避難、怪我は無かった。
「俺の友達だ、よく守ってくれた」
なんにせよ……アメフトボールを使って怪我させようってのは許せねぇ…!!
「ボール寄越せ」
「双葉?」「双葉さん?」
「いいから寄越せ」
桜庭とモン太の2人からひったくる様にしてボールを手に取ると、まだ見える神龍寺の所へ向けて振りかぶり、全力で投げ返した。
「忘れもんだぞ最強チーム!!」
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「うわっ!鬼ヤベぇパス!!」
一休が両手で掴んでいる。
「回転がちょっとブレてるのか取ったら弾かれそうになったっすよ!」
「はっ!んなカスボールをわざわざ投げ返してくるなんてな」
「いやー球が鬼早くてびっくりしたっすよ…阿含さんよりも早いんじゃないっすか?」
「あ゙ー?今なんつった一休」
「いやだから阿含さんよりも鬼早い球だって…」
「ぶち殺すぞ」
「ひぃー!正直に言っただけっすよ!」
「投げた奴は誰だ」
「あの紫っぽい黒髪の奴っす!」
一休が指さした方を見ると確かにいて、こっちを見ている。
「行くぞ阿含」
「……ちっ」
投げ返してやろうかと思ったが雲子ちゃんが俺を止め、渋々無視することにした。
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「やっぱ精度悪いなぁ…阿含向けて投げたのに一休に向いてしまった」
「ケケケッ良い宣戦布告になったじゃねぇかぁ?これでお前は間違いなくターゲットにされる、いいご身分だなおい」
「来るなら来い、不敗神話に穴開けてやる」
「今のが神を穿つ球であったのを知るのは、もう少し先である。まる」
「何適当なこと言ってんだセイジ、帰るぞ」
「はーい」
最後に……。
「虎吉、負けて悔しいのは分かるが相手をバカにする言葉は言うな。どんな相手だろうが同じスポーツをしている以上相手に敬意を払え」
「せやけど…!」
「言われたから言い返したってか?お前は言った奴と同じ低レベルの人間だぞ」
「っ…!!」
「安心しろ、神龍寺ナーガは俺達が倒す」
「いや、違う」
俺の言葉に桜庭が否定してきた。
「俺達王城が倒す。秋大会で必ず、今度こそ。その時には泥門にも勝つ」
「言うじゃねぇか、その時を楽しみしてるぞ」
秋大会まで後3ヶ月…少しでも早く強くなろう。
関東大会から数日、月刊アメフトの特集号が発売された。
秋大会の注目チームの評価や中心選手のインタビューが書かれていて、その中に非常に興味深いインタビュー記事があった。
『神龍寺?余裕だぜ!金剛阿含?細川一休?そんな雑魚この白銀様の相手じゃねぇ!雑魚よ雑魚!』
白銀と名付けたのはヒル魔だが、まさか泥門以外で白銀を名乗る人がいるなんて知らなかった。どんな奴なんだろう?
ヘルメット被って顔は見えねぇな、しかもこのヘルメットって泥門の…?
『クリスマスボウルへ行くのはこの白銀様率いる泥門デビルバッツよ!神龍寺ナーガも王城ホワイトナイツも俺様がぶっ殺してやる!!』
おれ、インタビュー、うけたきおくない。
つまり犯人は……。
「ヒル魔ー!!!」
「ヒル魔のバカはどこにいる!?出て来い!ぶっ殺してやらぁ!!」
この日、泥門高校では悪魔と悪魔の右腕による銃撃戦が繰り広げられた。
警察?脅迫手帳で1発。俺とヒル魔を止める猛者なんて姉崎だけだ。
というわけで王城VS神龍寺戦でした。
原作とは比べ1タッチダウン抑えた王城、これは泥門と試合した結果による鬼練習の成果です。(ほんの誤差程度ですけどね)
虎吉とは接点がなかったセナとモン太ですが優しい子達なので咄嗟に体が動いて助けました。
そして神龍寺へ喧嘩を売る蓮次…王城戦から既に阿含の目に止まっていましたがこれで本格的に狙われるように…なるのかならないのか。
次回は日常パート!蓮次の事について触れつつ、対NASAエイリアンズ戦へ向けた事も始まります。
それでは!