今回から地獄の合宿編!
視点はセナ視点です。
それでは、どうぞ。
地獄の合宿が始まった。
朝の5時に泥門高校の部室に集合し、ユニフォームに着替えた後ランニング。
行先は東京タワー……全員で走って向かい、前に登った特別展望台までダッシュ。
最下位の人は罰として、帰りの道をヒル魔さんが持っている銃が沢山入ったカバンを持ってランニング。
最下位は雪光さんで、途中で力尽きて倒れてしまったので助けに行こうとするも双葉さんに止められ、双葉さんが雪光さんのおでこをペシペシ叩いて起こしていた。
昼。
ライン組はタックルマシンでタックルの練習。
僕達バックス組はヒル魔さんが僕達の足元目掛けて銃撃してくるので必死に足を動かしてステップを繰り返した。
ステップが終わるとヒル魔さんと双葉さんからのパスを受ける練習。カゴいっぱいに入っていたボールが無くなるまでひたすらに投げられ、投げる度に走るコースを言われるのでその通りに走る。
投げ終われば今度はお菓子がついた服を着てケルベロスと鬼ごっこ。最初に雪光さんがケルベロスに襲われ……その隙に隠れた。
身を潜めていると、まもり姉ちゃんに見つかった。助けてくれるのかと思いきや「えいっ!」と掛け声と一緒にカラーボールみたいな物を当てられ、甘い匂いが僕についてしまう、その後めちゃくちゃケルベロスに追いかけられた。
夜。
全体練習でフォーメーションの練習や連携プレイの練習と一対一の練習。
一対一では双葉さんが相手で、何度も抜こうとするけど僕が曲がった途端捕まった。1度や2度ならず何回も捕まった。
攻守交替で僕が双葉さんを止めようとするけど腕で僕の体を押してタックルが出来ず簡単に抜かれた。直ぐに追いついて何とか倒せたけど抜かれる度に重りを付けられ、双葉さんも倒される度に付けられて行く。
最終的には一対一ではなくずっとタイヤを引かされた。
初日の練習が終わり、疲れきってお腹ペコペコの状態の僕達だが……ヒル魔さんのしごきはまだ終わらない。
「飯食いたきゃこれをぶっ壊せ!」
どこから持ってきたのか分からないけど栗田さん程の太さがある石、それをタックルで壊す……無理だ。
ヒル魔さんが飯抜き!って言うまで続けた。
「初日からきちーな」
モン太と一緒にまもり姉ちゃんに呼ばれ、家庭科室でヒル魔さんに内緒でこっそり用意してくれたご飯を食べながらモン太が話しかけてきた。
「うん、本当に疲れた…双葉さんを抜くなんて無理だよ」
「セナがタイヤ引いてる間俺はパスの競り合いだぜ?あの人背が高いから上での取り合いなんて厳しくてよぉ…下なら勝てんだが油断したら取られちまうぜ」
「おめーらなんかまだマシな方だぞ」
十文字君が僕達の会話に混ざってきた。
「俺らは一対一でラインの押し合い、不良殺法かまそうとしたら力技で押し込まれんだよ。タイトエンドだろ?なんで俺らよりもパワーがあんだよ、対抗する為に編み出した不良殺法なのにそれを力技で抑え込まれちゃ意味ねぇよ」
「元々双葉さんってラインのポジションをしてたらしいよ。それに不良殺法も十文字君達のを見て覚えてると思う」
「マジか!…道理でやられるわけだ、何でやめたんだ?」
「僕が入部した時にラインはクビだって、多分ヒル魔さんはタイトエンドをやらせたかったみたい」
「ふーん」
今更だけど……十文字君を始め、入部した人達には僕がアイシールド21だってヒル魔さんが言ったおかげで前みたいにパシリに使うような事は無くなった。でも今もちょっとだけ苦手意識があった。
それでも今接してみれば何となく十文字君にはアメフトに対する熱意を感じる。それだけで苦手意識が薄れて行った。
「双葉先輩は何でもできんだな、才能ってやつか」
十文字君の言葉で僕の頭の中では双葉さんの不器用な姿を思い出した。
「多分才能じゃないよ。今の双葉さんになるまで、何でもできる様になるまできっと沢山の苦労があったと思う」
「はぁ?」
「あの人、本当はかなり不器用な人なんだ。見よう見まねで始めて、長い時間をかけて出来るようにする。そんな人だってヒル魔さんが言ってた、きっと僕達が想像するよりも沢山練習してるんだと思う」
「不器用?双葉先輩が?想像できねぇな」
「ほんとに酷かったんだから……僕の走り方を教えた時なんてもう……どうすればいいか分からなかったんだから…」
「ふーん」
「つーか十文字、いつもの2人はどうしたんだ?」
「あぁ、タバコ吸ってんの双葉先輩にバレたからしごかれてる」
「お前も吸ってただろ」
「はぁ?もう辞めちまったよ」
「何があったんだ?」
「…………2人には言うなよ」
「「うん」」
「この前の太陽戦、黒木と戸叶は落第って評価されてた。俺はそれが許せねぇ、俺もあいつらもカスじゃねぇってのを証明してやんだよ」
十文字君は黒木君と戸叶君の事を思ってアメフトを頑張っている。理由を知った今、十文字君は凄く熱くて仲間思いの人だって気が付いた。
「そんな隠すような事せずに是非あのバカ共にも伝えてやれ」
『!』
土で汚れた双葉さんが十文字君の隣に座った。
「2人はどうしたんすか」
「ぶっ倒れるまでラインの練習相手になってやった。今頃吐いてるだろうな」
「うげぇ…」
「姉崎!どうせお前の事だから隠れて飯用意してんだろ、俺にも寄越せ!」
「そんな言い方をするのならあげません!あとこれで拭いて!」
「ちっ面倒くせぇな」
舌打ちをする双葉さんにまもり姉ちゃんがタオルを投げた。
双葉さんが渋々顔についた土を拭き、手も綺麗にすると十文字君の背中を軽く叩いた。
「俺はお前の気持ちがよく分かる。太陽戦でラインやってくれなきゃ勝てなかった、それなのに2人が落第なんて評価は頭にくるよな」
「あぁ」
「見返してやろうって気持ちになるのはそれだけ2人が大事だからだろ。その思い、2人にも伝えてやれ」
「ダセェじゃねぇっすか」
「そうやってまごついてる方がダセェ。男ならぶつかれ、ぶつかって気持ちを伝えてお前の熱を伝道してやれ」
「……」
「じゃ、俺はこれから練習行ってくる」
「ま、まだやるんスか!?」
「お前らの練習台になってばっかだからな、俺の練習する時間が足りねぇんだよ。じゃあな、貰ってくぞ」
「あっ!勝手に取らないでよ!」
まもり姉ちゃんが十文字君の為に用意していたおにぎりを2つ手に取って家庭科室から出て行った。
「もう!勝手な事して!…ごめんね十文字君、今新しいの用意するから」
「……俺も練習してくるっす」
「え?」
「このまま負けてらんねぇ、元ラインマンだろうが先輩だろうが関係ねぇ…!」
十文字君が燃えている、双葉さんの熱が十文字君にも伝わったんだ。
「……僕達もやろうモン太」
「やろうぜ!」
ご飯食べて少しだけ疲れが取れた!もっと練習して頑張ろう!!
グラウンドへ出ると、ヒル魔さんが双葉さんへロングパスをしていた。
「ロングポスト!」
ヒル魔さんがパスルートを伝えて投げるとその通りに走ってキャッチ、ヒル魔さんへ投げ返してからヒル魔さんの隣へ走った。
「ジグアウト!」
またパスルートを言うと走り出し、飛びついてキャッチして投げ返しては戻る。
「パスズレてんぞファッキンセカンド!!」
「お前のパスもズレてんだよ下手くそ!まともなパスすら投げられねぇのか!?」
「ざけんなファッキンセカンド!スライスインからフェード!カムバック!」
3種類のパスルートを言うとその通りに走り、ギリギリで取れずに弾いてしまった。
「取れってんだファッキンブービー!」
「下手すぎて取んのが面倒なんだよこの野郎!もう1回だ!」
「すげぇキツイパス…あんなの俺でも取れるかわかんねぇ…」
「ずっと走り続けてるのもキツイよ」
「ボール1個であんな練習するのって双葉さんも正確なパス出来ねぇと無理だよな。どれだけ練習したんだ?」
「さぁ…でも僕達も負けてられない、練習に参加しよう」
「おう!」
僕は本当にヘトヘトになるまで走り続け、モン太は双葉さんと一緒にヒル魔さんからのパスを受け続け、まもり姉ちゃんが止めに来た夜の10時まで続いた。
部室棟のシャワー室で汗や土を流し、歩くのも億劫になる程疲れた僕とモン太は体育館に入った。
そこには布団が並べられ、栗田さんが小結君と一緒にお菓子を食べ、戸叶君がフネを漕ぎながら漫画を読んでいて、黒木君は大の字で寝ていた。
「雪光さんと十文字君は?」
「さぁ、シャワー室にいなかったよな。どこ行ったんだ?」
ヒル魔さん達も居ないし……もしかしてまだ練習してる?
「こいつらも寝かせてやれ」
双葉さんが体育館のドアを開けて雪光さんと十文字君を入れると、またどこかへ行った。
2人とも寝ているのか動く様子が無く、布団へ連れて行って寝かせてあげた。
それから程なく…双葉さんが入って来て、更に遅れてまもり姉ちゃんも入って来ると、双葉さんがまもり姉ちゃんを追い出そうとしていた。
どうやらまもり姉ちゃんもここで寝るみたいで、それを止めようとしてちょっと喧嘩している。
「も、もしかしてまもりさんと1つ屋根の下?合宿最高MAX…!」
鼻の下を伸ばしたモン太がワクワクした顔をしている…。
「ほーら発情した猿がいるからお前は帰れって言ってんだよ」
「大丈夫でしょ」
「何を根拠に言ってんだが知らねぇがあんま猿を侮るなよ」
「そもそも終電過ぎるから帰れないし」
「…………ちっ、明日は終電前に帰れよ」
懐からロープを取り出した双葉さんがモン太を簀巻きにして布団の上に寝かせ、猿轡を噛ませた。
「お前らさっさと寝ろ。寝かしつけて欲しい奴は名乗れ、あの発情した猿みてぇにしてやるよ」
双葉さんの言葉に僕は直ぐに布団に入って寝た。
というわけで初日の合宿でした!!
合宿編は2話だけを予定していまして次回で合宿は終わります!
この合宿の目的はちゃんとあります。(これでアメリカ戦に勝てるかは不明)
それでは次回をお楽しみに!