泥門の2番手   作:実らない稲穂

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NASAエイリアンズ戦その4

 

 

 

『お願いします、アイシールド21を止めさせてください』

 

 エイリアンズベンチからパンサーという黒人の声が聞こえる。ハーフタイムの時からずっとアポロに土下座をしているのは知ってた。

 白人主義のアポロはパンサーをこき使っていて試合にも出さない程嫌っている。それでもパンサーはアポロの元で頑張っているのはヒル魔情報で聞いていた。

 

 そのパンサーがもしかしたら出てくるかもしれない。

 

 

 

「あいつが出てくれば厄介だな」

「間違いねぇ」

 

 無重力の脚と呼ばれる程の脚力、試合の映像はないから想像でしかないが間違いなくやばいのは分かる。

 

 ベンチの様子を見ているとチーム全員がアポロへ土下座し、パンサーを出すように頼んでいた。

 

 

 

 

 

 やがてアポロが折れたのか、パンサーがユニフォームを着て出場する準備を整えている。

 

「ちっ…これはやばいな」

「テメェが先陣切ってパンサーを止めろ、ファッキンチビは最終防衛ラインだ」

「了解」「はい!」

 

 

 

 

 『Set!Hut!』

 

 エイリアンズのゴールライン1ヤード前、そこでプレイが再開。

 ここで止めれば自殺点で2点ゲットして更には俺達の攻撃から始まる。

 

「パンサーだ!」

 

 後ろからヒル魔の指示が聞こえ、俺から見て左側からパンサーがボールを持って走って来た。

 

「止める!」

 

 ここで止めれば自殺点!一気に突き放す!

 

 

 

 

『できる!アメフトができる!』

 

 パンサーが英語で喜びの言葉を言ってるが、そんなの関係ねぇ!!

 

「させねぇ!!」

 

 パンサーを止める為に伸ばした腕がパンサーの腕に阻まれ……小さい曲がりで俺の隣に移動。

 

「くっそ…!」

 

 飛び付いてパンサーの服に手をかけるが、届かなかった。

 

 あっという間に抜かれ、遠のいて行く姿を見るしか出来ず……セナが追いかけるも届かなかった。

 

 

 

 『タッチダウン!!』

 

 99ヤードの独走、こんな……こんな馬鹿げたランをされた。

 

 

 

「うそ…だろ…?」

 

 

 

 勝つ為に考えた作戦と、長い時間離れてた仲間のおかげで勝機が見えたこの試合を、全部をパンサー1人にひっくり返されてしまう?

 

「セナでも追いつけない速さで最小限の曲がりで抜かれて…こんなのどうしろってんだよ」

 

 たった1回、それだけの対決なのにもう折れそうだ。

 みんなが必死にやって来て今日勝つために努力してきたのに、その努力を嘲笑うかのような才能が俺の前に立ち塞がって、あっという間に遠くまで行ってしまって…絶対に越えられない壁を見せつけられて心が…。

 

 

 

 

「トライフォーポイントだぞファッキンセカンド」

「…あ、あぁ」

 

 座り込んでいる俺の前にヒル魔がやって来て背中を蹴られた。

 

「何ボサっとしてやがる、たった1回抜かれたからってへこたれんじゃねぇぞ」

「……あぁ」

 

 

 

 

「ヒル魔」

「あ?」

 

 自陣へ向けて移動中ヒル魔に話しかけた。

 

「パンサーが出て来てから勝率はどれくらい変わる?」

「……出てくる前なら70%、出てきてからは10%だな」

 

 低い…このままじゃ負ける。

 パンサーを止める手立てを考えねぇと……俺がやらねぇと無理だ。

 

 

「ちっ…!テメェ負ける事考えてんじゃねぇぞ!」

「分かってる!俺が止めねぇと誰も手が付けられないじゃねぇか!」

「!…テメェ1人でやったところで限界があんだよ!ここは柔道じゃねぇんだ!テメェ1人がどれだけ凄かろうが意味ねぇんだよ!」

「だったらどう止めるってんだ!?ムサシが戻ってきてくれて勝てるビジョンが見えてきた所にこれだぞ!?」

「それを俺達が考えてんだよファッキンセカンド」

「……!」

 

 ヒル魔はまだ諦めてねぇ、それに……セナ達全員も諦めた顔をしてねぇ。

 

「パンサーを止めるのはテメェだけの役目じゃねぇ、ここにいる全員で止めんだ。何もかもを背負うんじゃねぇぞ蓮次」

「ヒル魔…」

 

 折れかけていた心が戻る感覚があった。

 昔と違って今は一緒に戦ってくれる仲間がいるんだって事を改めて認識させてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頑張って!!」

「…!」

 

 ベンチから姉崎の声が聞こえた。

 

「まだ時間はある!取り返そう!」

 

 姉崎の声で俺の胸が熱くなるのを感じた。

 

 

 

 

 

 全身全霊をかけてタッチダウンを取り返してやる!!

 

 

「ヒル魔、俺が特攻する」

「あ?」

「バリアだろうが無重力の脚だろうが俺が全部ねじ伏せてやる…!!」

「テメェ…!さっき言ったのをもう…!」

 

「だから頼む栗田、小結、十文字、黒木、戸叶……俺が突破するから頑張ってほしい。みんなで勝ちたいんだ」

 『!』

 

「俺がこの空気を変えて勝ちを呼び込んでみせる。一緒に戦ってくれ」

 

 

 トライフォーポイントはキックを選び、綺麗に入れられてしまい同点のまま第4クォーターが始まった。

 

 

 

 ■■■■■■■■■■

 

 

「ここでパンサー君の登場!そしてタッチダウンを取って点差は同点!第4クォーターで試合が振り出しに戻ったぞ!」

「アイシールド君よりも速く、柔軟な黒人ならではの身体能力……スタミナも有り余っていて両面で出場。これはデビルバッツピンチです」

 

 

 

 『Set!HutHut!!』

 

「さぁデビルバッツの攻撃!ここで点を取ってまた突き放したい所!」

「双葉君がボールを持って突進した!」

 

 

『おおおおぉ!!』

 

「双葉君が叫びながら中央を突破!まだ倒れない!まだ進む!」

「気合いが入ってますね」

 

 『くっ…!』

 

「そしてパンサー君と双葉君の対決!倒されながらもボールを進める気迫を見せた!」

 

 『5ヤードゲイン!』

 

「倒されながらも腕を伸ばして少しでも進めましたね、凄い気迫だ…」

 

 『次も負けないよ』

 『次こそ勝つ!』

 

 

 

 『Set!Hut!』

 

「さぁ2度目の攻撃!また双葉君がボールを持って中央突破!!」

「すごい!ぶつかっても倒れず進む!まるで戦車だ…!」

「パンサー君が腕を伸ばしてタックルに入る!」

 

 『おおおっ!』

 『うそ!?止まらない!』

 

「パンサー君に捕まりながらも走る走る!」

「ゴンザレス君にも捕まって止められた!」

 

 『7ヤードゲイン!ファーストダウン獲得!!』

 

「しかーしっ!これでファーストダウン獲得!デビルバッツは連続攻撃が出来るぞぉ!」

 

 

 

 『Set!Hut!』

 

 

「壁を破壊して進むキャノンにエイリアンズは止める方法はあるのだろうか!?」

「ずっと中央突破、アイシールド君のランかモン太君へのパスを選ぶかもしれませんから集まりたくても集まれないのがエイリアンズ側の辛い所です」

 

 

 『ぉぉぉぉおっ!!』

 

「叫びながら壁を破壊する双葉君!まだ倒れない!まだ進む!」

 

 

 『何度来ても止める!』

 『ねじ伏せてやらぁ!!』

 

「あーっと双葉君!パンサー君が伸ばした腕を絡め取った!」

「腕の使い方が上手い!」

 

 『なっ…!!』

 『寝てろぉ!!』

 

「そしてパンサー君の胸に手を置いて地面に叩きつけたぞ!!」

「腕を絡め取った勢いでバランスを崩し、そこから押さえ付ける……柔道的な技でしょうか?」

 

「そのまま突破!双葉君の独走体勢だ!!」

「いや!小便ゴンザレス君が間に合った!」

 

 『小さいからってなめんなよ!』

 『お前も寝てろ!!』

 

「あー!小便ゴンザレス君が止めに入るも上からねじ伏せる!」

「背丈の差が大きいですからね。上から抑え込まれるのは仕方ないでしょう」

「止められない止まらない!まるで戦車の如く突き進む!」

 

 

 

 

 『タッチダウン!!』

 

 

 

「タッチダウンだぁー!!パンサー君を倒し小便ゴンザレス君をも倒し次々となぎ倒しながら辿り着いた先はタッチダウン!これで34対28!」

「あっ…!」

「んんっ!?ゴールラインで双葉君が倒れたぞ!?」

 

 

 

 

 ■■■■■■■■■■

 

 

 

「はぁ、はぁ……」

 

 スタミナ切れ…か、そりゃあれだけぶつかって倒して走ればそうなるか。

 

「双葉さん!」

「セ、セナか……タッチダウン出来た…よな?」

「はい!これで勝ち越しですよ!」

 

「よかった…みんなのおかげだ」

「はい!」

 

「試合終了まで後8分だ、最後まで攻めるぞ」

 

 ヒル魔が俺を見下ろしている。

 

「テメェがそこまでやるとは思わなかった。俺の想像を超えることしやがって」

 

 歯を見せて笑うヒル魔が珍しく俺に手を貸してくれて、体を起こした。

 

「蓮次、あれをもう1回するのは?」

「悪いな、無理をした」

「そうか……頭を冷やせ、一旦下がってろ」

「すまん」

 

 

 

 

 ベンチに戻り、姉崎から給水ボトルを貰ってベンチに座り込んだ。

 

「大丈夫?」

「まだやれる」

「そっか」

 

「……ありがとう姉崎」

「?」

「姉崎の言葉が聞こえてから俺の心が更に燃え上がったんだ。ありがとう」

「どういたしまして、凄かったよ」

 

 

 ピィー!

 ムサシがキックを決めて35対28。

 

 残り8分、キャノンで時間をかけて進んだおかげで時計を進められた。

 

 

 

 

 だけどムサシのキックで敵陣ギリギリで落としたのにパンサーに取って走られ、全員を抜いてキックオフリターンタッチダウン……更にキックも決められて35対35の同点にされてしまった。

 

 

 

「これから泥門の攻撃ですので時間をかけて進めばいいんじゃ?」

「確かに雪光の言う通りだがメンバーのスタミナも限界。ここで何とか時間を進めつつタッチダウンを決めて試合終了に持って行きたい」

「パスをするのはどうですか?」

「インターセプトされるリスクが高い、時間をかけて進むならランの方がまだ取られる確率が低いんだ」

「あっ…そっか」

 

 

 じゃあキャノンでごり押すか?スタミナ切れの俺が?キツイが…先ず時間が足りねぇ。

 だったらセナのランか?俺が囮になって行けばまだチャンスはあるかもしれねぇが……問題は両面で出ているパンサーだ。

 あいつを抜かないとタッチダウンは厳しい。

 

 

 泥門の攻撃、今のスタート位置は残り60ヤード…時間は、後5分。

 

 

「そしたら、ギリギリまで進めてムサシ君のキックはどうですか?」

「…………っ!!」

 

 そうだ!キックの選択肢が抜けていた!ここにムサシがいるんだ!頼れるキッカーがいるんだ!

 

「流石雪光!いい判断するじゃねぇか!」

「え?あ、ありがとうございます」

「そうと決まれば…」

 

 

 

 

 『タイムアウト!!』

 

 ピィー!

 

 

 

「何か思いついたか」

「今の状況は残り60ヤードで時間は後5分。少しでも進めてゴールキック、それしかねぇ」

 

 ベンチに集まったメンバーに作戦を伝える。

 

「ファッキンジジイの脚に期待するってか?」

「あぁ」

 

「……だとよファッキンジジイ、散々サボったツケが来てんだ。ここで決めなきゃ死ね」

「任せろ」

 

「セナ、悪いがお前とパンサーの脚力じゃ勝ちは見えねぇ」

「…!」

「だからゴールキックは命をかけてでもパンサーの突破を許すな、ムサシが決める為に命をかけろ」

「……はい」

 

「で?進める手段は?」

「俺が行く」

「キャノンか、力技でアメリカをぶっ殺すってか」

「ハッキリ言えばもう限界だがここで逃げる訳には行かねぇ。まだ俺の心は燃えてるし折れてねぇ、やるぞ」

 

 

「あの……双葉さんじゃなくて僕が行っても良いですか?」

「「あ?」」

 

 

 セナがキャノンをやるだと…?

 






 というわけでNASAエイリアンズ戦その4でした!

 パンサーの出場で一気に勢いが変わり泥門デビルバッツ大ピンチ!
 更に蓮次がパンサーの実力差に心が折れかける大ピンチ!……ですがヒル魔の叱咤と仲間の想い、そしてまもりの言葉ですぐに奮起し特攻を仕掛けてタッチダウン!!

 でもその後取り返されましたが…( ˊᵕˋ ;)


 次回NASAエイリアンズ戦最終話!
 いよいよクライマックスです。結果はどうなるのでしょうか!

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