ベン牧場に到着した翌朝。
昨晩は遅くまで西部のメンバー達とBBQをして盛り上がり、馬小屋で就寝。
早くに目が覚めた俺は外へ出るともう西部のメンバーが朝練を始めようとしているのが見えた。
うちはまだ寝てるのに大したものだ……よくよく考えればアメリカ戦をしたその日のうちにこっちへ来て遊んだりしてたし、寝る時間なんて飛行機内だけでようやく寝る時間を確保出来たんだ。
眠い奴は寝かせてやろう。
「おはよう双葉君、早起きだね」
「おっす、姉崎も早いな」
「同じ部屋に泊めてくれた西部のマネージャーさんも早かったから色々手伝ってきた」
「何か良さげな情報は?」
「期待に応えられる様なものは全然」
「まぁあわよくばって感じだから気にすんな。起きてくる奴らの為に朝飯用意しねぇとな」
「それも用意してるから大丈夫」
「ほんと、良く気が利くマネージャーだ」
しばらくすると全員が起きて固まった体を解し、朝練を始める……が、どうやらどぶろく先生が練習メニューを考えてくれていた。
アル中で借金まみれのクソジジイだが元々トレーナーらしく、いつもヒル魔や俺が考えていたメニューを代わりに考えてくれてその内容はインディアンランニングだと言う。
ひたすらに走り最後尾は熱湯をかけられる、たったそれだけの持久走。
「なんだ簡単じゃねぇか」
「それを言えんのは普段から走り込みをしてるバカだけだ」
「あだっ」
最後尾にならないように走っているとヒル魔がアサルトライフルで頭を小突いてきた。
「体がなまってるファッキンジジイにはちとキツいか?」
「現場でずっとやってたんだ、お前らには負けねぇよ」
「ケケケッそれで最初にへばったら承知しねぇぞ」
嬉しそうに話すヒル魔と答えるムサシ、その2人と一緒にインディアンランニングを全員が倒れるまで走り続け、終わった頃にはもう日が沈んでいたのだった。
夜、今日も馬小屋で寝ようかと言う時にどぶろく先生がセナと一騎打ちを始めた。実力を見るって話しだが、勝負は一瞬……簡単にセナが捕まってしまう。
左へ抜けようと右手を伸ばして横っ飛びをするもどぶろく先生が飛びつくことでセナの腕を簡単に避けたのだ。
「このままじゃ進には勝てねえ」
捕まえたどぶろく先生がセナへ言い放つ。
「さっき試合の映像を見た。それとインディアンランニングを見てお前らの強さが大体わかった」
馬小屋にいる馬を指さし、出口から遠い順番で指を指して行く。
出口に1番近い馬は太陽スフィンクスだと評価し、泥門は馬小屋と柵の間だと評価してくれた。
ちょうどそこへヒル魔に似た馬が堂々とした態度でどこかへ通り過ぎた。
「太陽よりも上なんだ!」
それを聞いた栗田が喜んでいるが、どぶろく先生は厳しい表情をしている。
「王城や西部、エイリアンズは柵の向こう側だぞ」
やっぱそうだよな、本当に勝てるか分からない相手だったんだ。勝てたのは本当に運が良かった。
「普通ならエイリアンズ戦なんて勝てるわけがなかった。ムサシのキックのおかげで勝てたんだよ」
「だとよムサシ、流石だな」
「そう褒めるなよ蓮次」
「照れんなよ、実際来てくれなきゃ負けてたんだからな」
ムサシの肩に肘を当てて言うと嬉し恥ずかし的な顔で笑っていた。
「で、でもどぶろく先生。このままみんなで行けば神龍寺にも勝てるんですよね?」
「神龍寺は…西海岸、はるか先の位置だ」
「!!」
「だったら少しでも追いついて追い越すためにはデスマーチをやるっきゃねぇな」
「だからそれは辞めろって言ってんだよ!」
「じゃあ後1ヶ月ちょいでクリスマスボウルへ行く裏技があんのか?」
ヒル魔とどぶろく先生が言い争いを始めた。
「何とかしてやれ副キャプテン」
「俺が?ムサシか栗田だろ」
「俺はそんな器じゃねぇ、栗田はライン組を仕切るなら蓮次はバックス組でヒル魔の事をよく理解してるならもうそれは副キャプテンだ」
「おっと…はぁ、しょうがねぇ」
ムサシに背中を押された俺は小さく息を吐いてから2人の間に入ってどぶろく先生の目を見た。
「俺はずっと2番で居続けた人生、1番になるなんて無理だと心が折れて熱が冷めてやる気がなくなっていました。そこへ栗田に誘われヒル魔の熱に冒され……俺の心に火がつきました」
「だからなんだ」
「俺は日本一になりたい、俺1人じゃ無理でもここにいる全員でなら日本一になれると確信しています。だから強くなりたい。お願いします、俺達を日本一にさせてください」
深々とどぶろく先生に頭を下げた。
「1番になりたい、勝ちたい、超えたい奴がいる。ここにいる全員がそれぞれの気持ちで今ここに居るんです。お願いですからこの熱を奪わないでください、ヒル魔達がずっと望んでいる夢を奪わないでください」
「ぅ…」
「デスマーチをして強くなれるなら、やらせてください」
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〜蛭魔妖一視点〜
「まるで俺が悪者みてぇじゃねぇか」
他の奴らは寝て、俺は外でパソコンで作業していると酒を飲みながらファッキンアル中がボヤきながらこっちへ来た。
「まるでじゃねぇ、マジで悪者だ」
「あんな風に言われちゃデスマーチ辞めろなんて言えっこねぇ、他の奴らもあいつの言葉に動かされてやる気になってやがる。とんでもねぇな、そのうち政治家にでもなんじゃねぇのか?」
「さぁな、今はアメフトの熱に冒された熱血野郎だ」
「メンバー全員の熱意を代弁するなんて政治家向きだろ」
「あれ全部蓮次自身の気持ちだぞ」
「がっはっはっは!そうかそう……はぁ?!あんな風に言っといて自分の気持ちだと!?」
「ケケケッ口が上手いからな蓮次は、ああやってファッキンアル中を悪者に仕立て上げてうちの奴らのやる気を入れる。そういう奴なんだよ蓮次は」
「やられたぜ…なんて奴だ」
「あいつはジョーカーだからな、エースと比べて稀有なカードでいざって時の切り札だ」
「はぁ?…あーだから無茶な作戦で使うのか」
「あぁそうだ。一芸特化のエース達と万能なジョーカーが居れば最強のペアになる。無茶だとか言うがあいつは絶対に及第点以上の成果をだす……不器用だがな」
「へぇ、そりゃ頼りにするよな」
「俺らは壊れねぇよ」
「デスマーチを甘く見るな、死ぬ奴は死ぬぞ」
「死なねぇよ、クリスマスボウルへ行くまではな」
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飛行場。
ヒル魔、栗田、ムサシ、俺を除くメンバーの後ろには飛行機へ乗る階段があり、ヒル魔が銃で線を引いていた。
「昨日どっかのバカの熱に冒されてやる気になっただろうがな!デスマーチは甘くねぇ!」
線を引き終えたヒル魔が俺達の前へ来ると、セナ達へ言い放った。
「デスマーチで死ぬ覚悟がある奴は飛行機のチケットを破って跨げ!」
ヒル魔が宣言すると同時に全員がチケットを破り捨て線を跨いだ。
「テメェのせいだぞファッキンセカンド」
「全員熱があって何より、それでいいじゃねぇか。それに……」
「あ?」
「こう言う奴ら好きだろ、お前」
「……」
「いったぁ!」
ヒル魔が俺のケツを蹴った後飛行機に乗っていた姉崎を呼び出し、空港から出て行くのだった。
何はともあれ、地獄のデスマーチの始まりだ。
「お前さんはこのリュックサックを背負って走れ」
「これ、何が入ってるんです?」
「80キロの岩」
「は?」
「岩、80キロ」
「うわっ…破れないですか?」
「アメリカ仕様だから安心しろ!」
アメリカってすげー(白目)。
「ってそうじゃねぇ!」
「先輩だけ亀仙流の修行じゃね?」
「ここドラゴンボールの世界だっけ?」
「そのうち空飛ぶかもな、もしくはかめはめ波」
「そうなったら最強じゃねーか!」
「ライン諸共吹っ飛ばす最強の技だな」
「やべぇ!そんなだったら俺らまでやられるじゃねぇか!」
「確かに…」
戸叶、黒木うるさいぞ。
「俺の体重以上の重さかぁ…ベンチプレスでは上げられるけどこれを背負い続けるのってまた別だぞ」
うわっ背負ったの良いけどおっも……これで走れって?おいおい死ぬぞ俺。
「けど、これで強くなれるなら……やってやる…!」
セナは石蹴り、モン太と雪光はヒル魔からのパスルート通りに走り、ヒル魔は大量の銃を背負って走る。ライン組とムサシはデコトラを押して進む。
この特訓を40日以内でラスベガスに到着しなければならない。
「途中でぶっ壊れても捨てて行く!それが嫌なら死んでも着いてこい!!」
デコトラを運転しながらどぶろく先生が叫ぶ。
俺は最後尾で、隣でセナが石蹴りをしながら走り始めた。
デスマーチ開始ィ!
蓮次は80kgの岩を背負って2000kmのランニング!たったこれだけ(白目)
ムサシは栗田達ライン組と同じでデコトラを押して足腰のトレーニングをします。もしかしたらキックの距離が伸びるかも!
デスマーチの様子は3話連続で予定しています。
それでは次回をお楽しみに!!