泥門の2番手   作:実らない稲穂

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死の行軍その3

 

 

 今日も今日とてデスマーチ。

 仮入部の瀧夏彦とその妹鈴音を加えてラスベガスへ向けてのランニングは続いている。

 

 セナの石蹴りはジグザグになり、瀧は鈴音を引っ張りながら走ると言った変化が現れると、モン太と瀧の珍行動を繰り返しながら進んで行く。

 2人を見ていればチンパンジーと珍獣のコラボ…見てて楽しいが2人とも姉崎を意識しているのか、瀧がナンパっぽいやり口で姉崎へアピールするとモン太も同じく姉崎へアピールしていた。

 

 

 

 

 

 そんな日々を過ごし、デスマーチを初めて33日。

 この日は大雨に打たれながら進むことになった。

 

 連日のデスマーチで疲労が蓄積し、24時間の休みを挟んではいるが段々と疲労が抜けなくなり、雨のせいで体が重く辛さが増している中のランニング。

 いつも以上に体力が奪われ、水を吸った服とリュックサックが余計に体への負担になってくると、気付けばメンバーの最後尾を走っていた。

 

「あっ…!」

 

 そして俺はひび割れたアスファルトに足を引っ掛けて倒れてしまった。

 

「ぐっ…!」

「ふ、双葉さん…!」

 

 ただ転けただけだ、すぐに立って……クソっ!足が動かねぇ…岩が重くて立てねぇ…!!

 

「放っとけ!!」

 

 セナが俺の元へ来ようとするところにヒル魔が止めた。

 

 

 

 

「一緒に…一緒に…1度くらいみんなと…一緒に……」

 

 そして雪光もダウンしてしまった。

 

「ま、まだ……やれ…………る…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひんぬらばーっ!!」

 

「……何してんだセナ」

「せ、せめて岩だけでも!双葉さんが潰れてしまいます!!」

 

 こいつは俺を助けようとしてんのか。

 

「双葉さん!頑張ってください!もう少しですから!」

「お前がいくら踏ん張ろうが無理なもんは無理だろ!……あークソっふん…ぬらばーっ!!」

 

 全身に力を入れて横向きに倒れ、背中にある岩を一旦下ろした。

 

「双葉さん…良かったです」

「はぁ…はぁ…ほんとお前は何なんだよ」

「双葉さんの後輩です!」

「そういう意味じゃねぇんだよなぁ…最初に言っただろうが、倒れた奴は放って行くってよ」

 

「双葉さんのおかげで僕はここにいるから!僕は双葉さんに熱を貰ったから恩返しをしたいんです!」

 

 ほんっと成長したな、初めて見た時はひ弱でいかにも小動物みたいで何をするにもビビってた奴がこんなにも立派になっている。

 

「もういいからいけ、お前にはお前のメニューがあるだろ。雪光も放って行け」

「ですが…」

「いいから行けって言ってんだよ!」

 

 キツくても立つんだ!ここで終わればクソ兄貴を超えることも1番になることも、全部が叶わねぇ!!

 

「舐めんじゃねぇよ…!俺は、俺達は…ここで終わる様な男じゃねぇんだ!」

 

 足に力を入れてフラフラになりながらも立ち上がった俺はリュックサックを背負った。

 

 

 俺はまだ終わらねぇ、だから……。

 

「雪光ー!!立て!!いつまでも寝てんじゃねぇぞクソハゲがぁ!!俺は立ち上がったぞ!お前はどうなんだ雪光ー!!」

 

 俺と一緒に倒れた雪光もまだ終わらせねぇ!!

 

「俺は言ったよな!?途中下車は許さんってよぉ!!ここで終わって良い訳ねぇだろうが!!立て!立って走れやゴラァ!!」

「雪さん…」

 

「お前の覚悟はその程度か!?ここでぶっ倒れて終わる程やわな鍛え方をした覚えはねぇぞ!!いつもみてぇにデコ叩いて欲しいのか!?」

 

「……本当に、双葉君ってスパルタ……だよね」

 

 モゾモゾと動き、膝をついて起き上がる雪光が涙目になりながら俺の方へ向いた。

 

「は、走るよ……僕だってここで終わりたくないんだもん」

「よく言った!3人で行くぞ!」

「うん!」「はい!」

 

 

 

 

 

 俺と雪光とセナの3人で続きを走り始め、暗くなり始めた頃には先に進んでいたメンバーと合流することが出来た。

 

「セナ!双葉先輩!雪光先輩!」

 

 モン太が俺達を見つけると両手を広げて呼び、3人同時に倒れた。

 もう限界、雨のせいで重量が増えたままで走るのキツイ……。

 

「メシ食うより今は休ませてくれ……」

 

 

 

 

 

 

 

 24時間後、また出発。

 目的地のラスベガスまであと100キロを切っていてラストスパートといったところだ。

 

 

「24時間前にはくたばってたブービー野郎は元気になったか?」

 

 ヒル魔が悪い笑みを浮かべて隣を走ってる俺に話しかけてきた。今はもう回復しているから大丈夫だ。

 

「あーあーそんな言い方してよぉ、転けて倒れた時はヒヤヒヤしただろ?本音はどうにか着いてきて欲しいって思ってたくせに」

「ケッ!くたばってりゃ泥門デビルバッツを独占して好き勝手出来たのによぉ。あのまま俺がヘッドショットでトドメさしてれば良かったぜ」

 

「今も好き勝手してるだろツンデレ」

「うるせぇ!グダグダ喋る暇があるならスピードアップしろファッキンセカンドォ!!」

 

「うおおぉぉぉ!俺に撃つなぁ!!ツンデレ悪魔ぁ!!」

「ちょうどいい!テメェもクソザルとファッキンハゲと一緒にポジション別特訓に参加しやがれ!!」

 

「ぉぉおお前マジかぁ!この状態でそれに参加は死ぬ!」

「あぁ死ね!俺様のことをツンデレだとか抜かすファッキンブービーはここで死ね!死んで鳥の餌にでもなってろ!」

 

「ツンデレは事実だろうがぁ!!」

「ざけんな!!」

 

 

 

 

 

「なんでこの終盤になってあいつらは元気なんだよ…」

「そんだけ信頼しあってるってやつですよどぶろく先生」

「妬けるかムサシ?」

「んなわけないでしょ。俺はアメフトから1度離れたんです、その間蓮次はずっと栗田と3人一緒に居た、その期間で信頼関係を深めたんでしょ」

「でも今はこうして一緒にアメフトをしてデスマーチをやってる!それでいいよねムサシ!」

「あぁそうだな」

 

「ま、良いコンビだってのは見てわかるわ。頼りにするのも分かる」

 

 

 

「死ねぇファッキンブービー!不器用で下手くその癖にバカみてぇに1人で特訓してるのにずっと足遅ぇままで!」

「やめろぉ!マジで死ぬ!岩ガード!」

 

「ようやく使えるようになったら今度は簡単に骨折れて離脱しやがって!」

「あれは事故だろうが!」

 

「復帰したらスタミナ不足で1試合も使えねぇ!そしたら今度はバケモンみてぇにパワープレイして予想外な事しやがるテメェみてぇなバカを見るのは生まれて初めてだクソ野郎が!」

「褒めてくれてありがとよ!」

 

「どこをどう聞いて褒め言葉だぁ!?とうとう頭イカれたな!!」

「はははっ!ツンデレ悪魔〜!!」

 

 

「……ほんとに良いコンビか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからも徹夜で走り続けて行く俺達の前に、1つの大きな光が見えた。

 

「あれは…」

 

 

 看板にはLas Vegasと書かれている。

 

「着いた……着いたぞぉー!!」

 

 2000kmを……40日以内でクリアした!!

 このクソ重い岩ともおさらばだ!!

 

「このクソ岩!いなくなって清々するぜ!」

 

 後ろで栗田がわんわん泣いているのをBGMにリュックサックを背中から落とすと中でパキッと割れる音が聞こえた。

 

「今になって割れたってか!?」

 

 ここまで一緒に来たんだ、中身ぐらい見てやるか。

 中を開けて見ると、本当に岩で綺麗に2つに割れている。

 

「2つに割れても1つ40キロ、取り出すのも苦労するなぁ……っと、うわっマジで岩じゃねぇか」

 

 卵形の岩が縦に2つに割れていて、1つを地面に置いてからもう1つを取り出した。

 

「もしかしたらこの中にダイヤモンドが〜って展開はねぇか、普通の岩じゃねぇか」

「さっきから何ハイテンションになってんだファッキンセカンド、その辺に落ちてた岩を使ったに決まってんだろバーカ」

 

「この1ヶ月共に居た岩に愛着が…」

「情が沸いたってか?」

「んなもんねーよ、憎たらしいったらありゃしねぇ」

「だろうな」

 

 周りを見れば俺とヒル魔以外のメンバーが眠りそうになっている。

 

「こんな道端で寝るなよ、全員ホテルへ行くぞ」

 

 隣にいるモン太とセナの頭を叩いて起こし、ケツを上げて倒れている雪光のデコを叩き起こしていると、ヒル魔がライン組のメンバーを蹴って起こしていた。

 

 

 

 

 

 

 全員ホテルへ移動し、部屋割りをするが……ヒル魔はもう限界っぽいな。

 代わりに指揮を取るとするか。

 

「先ず瀧についてだが最後まで着いて来られたから合格…ってすぐ決める訳には行かねぇ、もう少し様子見させてもらう。アメフトのルールを知らねぇポジションも知らねぇの熱意だけで空回りされちゃこっちも困るからな」

「アハ…アハハ……蓮次君ったら厳しいですね」

 

「そんだけうちも本気って事だ、これからの様子を見てヒル魔と一緒に決める。あとは言わなくてもいいな」

「オーケー!僕の活躍がもっと見たいってことだね!」

「そういうことにしておく」

 

 瀧についてはこれで終わり、次は泊まる部屋だな。

 

「んで泊まる部屋、女性陣は2人部屋あるからそっち。これ鍵な」

「はーい行こうまも姉!」「う、うん…」

 

「残りは3部屋だが…ヒル魔はケルベロスの世話をしてやれ、これな」

「ちっ!しょうがねぇな」

 

「後の2部屋で残りのメンバーを分ける、好きに使え。栗田とムサシ、後は頼んだ」

 

 2つの鍵を栗田とムサシに手渡し俺はロビーへと向かった。

 

 

 

 

 

「はぁー………疲れた」

 

 ソファーに深々と座り込み、天井を見上げた。

 今部屋へ行けば全員ヘトヘトで寝てるだろうし……もう少ししたら行こうか。

 

「つぅ……膝が限界だ」

 

 膝だけじゃねぇ、もう全身だな。全身痛くて堪らねぇ。

 

「アイシング忘れてるよ」

「あ?……姉崎か、部屋行ったんじゃねぇのか?」

「心配で見に来た、双葉君も無理しないで部屋で休んだらいいのに」

 

「それはそうだが、副キャプテンだって言われちゃ弱みを見せる訳には行かねぇだろ」

「分からないなぁ…そういう意地を張る意味が分からないよ」

 

「うっせぇ、黙って見てろ」

「はいはい黙って見ますよ。あれも黙ってろこれも黙ってろ、いつまで黙ってたら良いの?」

 

 

「泥門デビルバッツが日本一になるまでだ」

 

 

「……わかった。それまでじっくり見させてもらうから」

「好きなだけ見てろ、俺達は絶対になるからな」

「うん」

 

 

 

 気付けば俺も眠っていて、アイシングが終わったと姉崎に起こされた俺はフラフラになりながら部屋へ向かった。

 

 部屋へ入るとまだムサシが起きていて、無言で空いてる場所を教えてくれて、そこへ倒れ込んだ俺はすぐに意識を手放したのだった。

 

 






 デスマーチ完走!
 1度離脱しかけた蓮次でしたが何とか復帰!!
 雪光はセナに背負われる事なく3人一緒に追いつきました!!
 

 次回は……ラスベガスへ来たらもう、ね!やる事は1つでしょ!!

 それではお楽しみに!!
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