帰国後、二学期が始まる日から練習再開となるのでしばらく休み。疲れや筋肉痛、時差ボケもあって家に帰ってから直ぐに寝て次に起きたのは2日後…ずっと起きない俺を心配した弟達が泣きそうになりながら救急車を呼ぶ手前で止めることが出来た。
そして今日から二学期が始まる。
始業式では面倒な校長の話をスルーし、月刊アメフトを読んで時間を潰していた。
「お、結構いい評価じゃねぇか」
秋大会のトーナメント表があり、泥門デビルバッツの事についても書かれていた。
【走:A パス:A ライン:C 守備:C】
『アメリカの強豪NASA高を倒す程の攻撃力は今大会でトップクラス。ラインはそこそこのクラスだがそれを上回るほどの攻撃力で勝ち切れるか?問題点は人数の少なさでスタミナ不足?』
人数が少ないのは目を瞑ろう。デスマーチで全員がスタミナ強化をしたんだ、両面でも最後までバテることなくやれるだろう。
初戦の相手は網乃サイボーグスだ。
【走:B パス:C ライン:B 守備:B】
『毎年1種のスポーツを制する大会荒らしの網乃。医学の力を用いてアメフト界にも君臨するのか?』
アメフト界に君臨?そんなもんさせねぇよ。
「絶対ぶっ殺す」
クソ兄貴がどこで出てくるか分からねぇがオフェンスで来るなら止めてやる。ディフェンスで来るならぶっ潰す。
どっちでも対応できるんだ、憎らしい奴を堂々と潰せるなら楽しみだ。
放課後、部室へ向かう途中で瀧を見つけた。
「アハーハー!グッモーニング蓮次君!」
Y字バランスでクルクルと回る瀧が挨拶してくるが……今は放課後、昼だ。
「ハローなバカ」
「アハーハー!そりゃ失敬蓮次君!」
「それでよくアメリカに行けたよなお前」
ポジティブな所で上手くやれたのか?
部室へ到着し、中へ入ると……姉崎と鈴音がデビルバッツのイメージしたチアリーダーの服装を着ているのが見えた。
「ふ、双葉君!?」
「蓮兄どうこれ!まも姉かわいくない!?」
俺を見た姉崎が恥ずかしそうにポンポンであちこち隠そうとしていた。
正直言うと可愛い。
「チアリーダーのユニフォームってあったか?」
「はぇ…?」
1度頭をリセットさせてから2人が着ている服について考えることにした。
うちはチアリーダーとか応援団とか用意してねぇし、鈴音なりの応援の仕方ってやつか、ならそれはそれでいいよな!
「蓮兄!可愛いかどうかって聞いてんの!答えてよ!!」
「ヒル魔、秋大会へ向けた作戦は?」
「いつも通りだ」
「超攻撃型の戦略ね、了解」
「れ〜ん〜に〜い〜!!質問に答えて〜!!」
俺の制服を揺するな、頭がおかしくなる。
「それと提案だが。キャノンの使うタイミング、あれは後半、リードしてる場面で使うって感じにしねぇか?前半からするにはちょっとスタミナの問題が出てくるしリードしてるならそれで時間を消費しつつ攻められるから良いと思う」
「あ?…テメェが言うならそうするか」
「ちょっと無視しないでよ!」
「うるせぇ!姉崎が可愛いのは分かってんだよ!言わなくても分かれよ!」
「わぉ…!」
「ケケケッ!ケーケッケッケ!!」
ヒル魔の笑い声が部室に響き、ムサシが影でクスクス笑っているのが見えた。
「俺帰る、じゃあな」
「YA-HA-!!全員でファッキンセカンドを確保しろー!!」
「うぉおおお!!」
戦略的撤退ィ!!
「ファッキンセカンドを捕まえた奴には豪華焼肉食べ放題をプレゼントしてやるぜ!!」
「焼肉食べ放題!!」
ヒル魔のご褒美に栗田がやる気に満ち溢れ……部室のドアを立ち塞いで来た。
「ふんぬらばっ!!」
「甘い!劣化不良殺法!!」
「うわわっ!」
栗田が伸ばした腕の袖を掴んで引き倒す!
油断したな!3人がやってるのを見て覚えたぜ!!
「は?」
「はぁ?」
「はぁぁあああ!?」
『なんでお前出来んだよー!!』
栗田を倒すことに成功!これで道が開けた!!
「あばよ!!」
「捕まえ…ました!」
「あ?」
校内を走って移動中、何かが俺の背中へタックルしてきた。
「なんだセナか、悪いがその程度で止められる俺じゃねぇぞ!!」
「ヒィー!!」
ははは!軽い軽い!デスマーチで鍛えられた俺は軽いセナなんて余裕で引き摺れる!
「さぁチキンレースと行こうかセナ!」
「ぎゃぁあああ!!」
手を離すのが先か俺がバテるのが先か、勝負と行こうじゃねぇか!!
しばらくセナを引き摺り続け、ヒル魔が校内放送で練習するから来いと呼ばれるまで続いた。
グラウンドへ着くと、さっきの弄りは無しで普通に練習が始まる。ヒル魔がカードにした作戦帳を人数分用意していて全員へ渡し、アップをしてから実際にプレイして覚えることになった。
一通りやってからはバックスとラインと別れて計測をすることに。
デスマーチで全員がパワーアップしている。
特に分かりやすいのは雪光、前回40ヤード走の記録は6秒1……それが今は5秒5とコンマ6秒縮まっている。
記録更新した雪光にハイタッチをし、俺の番になったのでスタート位置についた。
「4秒7!」
姉崎(マネージャー姿)が計測していて、タイムを宣言。隣にいたどぶろく先生の顎が外れたのかと思うほど開いて驚いていた。
「マジ?」
「YA-HA-!遂に史上最強の2番手!白銀の爆誕だぁ!!」
俺よりもヒル魔の喜びがすげぇ…いや俺も嬉しいんだけどよ、隣でもっと喜んでる奴が居れば逆に冷静になるって感じ。
それにしてもここまで来るのに大変だった。
試合でひたすら走って、練習でも走って、デスマーチでも走って…………本当に走ってばっかりの半年だった。
「ほんと……長かった」
最初は5秒6から始まり、5秒に到達。それから今はさらにコンマ3秒縮まり……泥門デビルバッツで2番目の速さになれた。
「セナは更にコンマ5秒速いんだろ?化け物かよ」
「テメェが言うなっての、このクソ白銀」
夜の9時、練習が終わった。
前ならヘトヘトになっていたのが今は全然疲れた様子は無く、デスマーチの効果が顕著に現れている。
「よーし秋大会、レギュラーメンバーの発表をする!!」
どぶろく先生がつけていたノートを見たヒル魔が言うと、全員部室へ向かった。
「今から名前を呼ぶ奴はスタメン、守備に関しては発表後にファッキンアル中から聞け」
ヒル魔はアメフトのフィールドを描いたテーブルの上に模型を出していった。
「クォーターバック俺、双葉」
「キッカー、武蔵厳」
「ライン5人、栗田、小結、十文字、黒木、戸叶」
「ランニングバック2人、アイシールド21、石丸哲生。フォーメーション次第では石丸を下げて双葉を使う時もある」
しれっと石丸も部員としてカウントされているのは黙っていよう。あと俺呼ばれるの2回目、俺は何人も居ねぇんだよ。
「タイトエンド、双葉蓮次」
「次レシーバー2人、雷門太郎、瀧夏彦。フォーメーションによっては双葉をタイトエンドから変更し、佐竹か山岡を入れレシーバー4枚体勢を作るが基本は最初の2人だ」
瀧の名前が呼ばれると瀧が喜んでいて、それはもう大変なぐらい喜び、あまりにもうるさいのでゲンコツを落として黙らせた。
「以上だ」
同時に喜べないやつもいる。
この4ヶ月、朝から晩まで必死に練習に付き合って来た。何度も吐いては倒れて死んで…その度に復活してまた練習。短期間で集中してやったがそれでも瀧には及ばず、他のポジションにも引っかかる事なく落選してしまった。
これが才能なのか、17年間机の前で勉強漬けしていたツケなのか……雪光には期待させる様なことをして悪いとは思う。
「お前さんが鍛えたって雪光だが…」
解散し、部室から出ようとする前にどぶろく先生が話しかけてきた。
「随分とハードなトレーニングをしていたと聞いている。ランメニューからパスメニュー、基礎を徹底的に鍛えたそうだな。ちゃんと効果も出ている」
「それでもスタメン落ちです」
「あぁそうだ。それが現実だ」
「ワンポイントで使えるって判断ですか?」
「俺はトレーナーだ、監督でもコーチでもねぇ。試合で使うかどうかの判断はヒル魔とお前だ。精々ヒル魔に懇願するんだな」
「……俺は雪光をフルで使うにはまだ早いと判断しています」
「なら答えが出てるじゃねぇか」
「俺はあいつにかける言葉がありません」
「大丈夫だ、お前が鍛えた雪光なら折れずにやるさ」
「はい」
「泥門デビルバッツが全員揃うその日まで僕達は負けない!!」
グラウンドからセナの声が聞こえたので覗くとモン太と一緒にいるのが見えた。
その向こうにはコーンを並べて1人でボールを持ってる雪光が後ろを向いていた。
「双葉さん…」
「お疲れ様です!」
2人が俺の前へ来た。
「……ありがとな」
2人の頭に手を置いて褒めてやり、雪光の方へ歩き出した。
「双葉君、僕は折れずにやるよ」
涙を流していたのだろう、目の周りが赤くなっている雪光が俺へ宣言した。
「俺は何も言わねぇ。だから練習に付き合う、今ここで折れて辞めるって言っても俺は聞かねぇぞ」
「うん!」
言葉にしなくてもスタメン落ちだと決まった時、きっと俺なら落ち込んで折れていたかもしれねぇ。
だがこうして俺のパスを取るために走る雪光の根性は泥門デビルバッツの中で1番だと思う。
「まだ終わってねぇからな!」
「うん!!」
泥門デビルバッツが全員揃ってフィールドに出るその時まで、俺はこいつを鍛え続けようと決意したのだった。
秋大会のスタメン発表!
残念ながら雪光はスタメン落ち、仕方ないよね…まだスタミナに不安がある、両面で出せば1クォーター持つかどうかのレベルだし。
大丈夫!蓮次との特訓できっと原作よりも早くに出られるから!
次回は大会前日のお話です。お楽しみに!!