泥門の2番手   作:実らない稲穂

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大会前日

 

 

 秋大会を明日に控えた夜。

 今日の練習を終えた俺は家に帰って来た。

 

 時間は夜の9時、晩飯は校長の奢りで食べ放題へ行ってきたから満腹だ。

 

「おかえり蓮次兄ちゃん。ご飯は?」

 

 玄関へ入ってリビングへ向かうとセイジが哺乳瓶片手に弟にミルクをあげていた。

 

「食ってきたから大丈夫だ、何か手伝おうか?」

「明日大会なんだからそっちに集中してよ。弟の面倒ぐらい見れるし心配しないで」

「そうか、助かる」

 

 セイジに後のことを任せて風呂へ入ることにした。

 

 

 

 

 

 明日の準備を整え終えたので布団の上に転がって明日に備えて寝ることにしたが………眠れねぇ。

 明日クソ兄貴を倒せると思ったら変に興奮して眠れず、部屋に飾ってある時計の音が気になってしまう。

 

 

 

 結局寝る事を諦め、携帯と財布を持って外へ出た。

 出る間際に小6の弟と小4の妹が俺を見て2人揃って不良兄ちゃんだと騒いだが気にせず玄関から出て行き、夜の散歩を始めることにした。

 

 

 

 

 

 

「お?」

「あ!」

「ん?」

「あ?」

 

 何も考えずに歩き続け、十字路に出ると栗田とムサシとヒル魔の3人とちょうど出会った。

 

「僕は散歩に来たけどみんなこんな時間なのにどうしたの?」

「俺は散歩に、ムサシは?」

「俺も散歩、ヒル魔は?」

「カメラの回収」

 

「みんな一緒だね!」

「どう聞いて一緒だと判断したんだよファッキンデブ」

「ねぇねぇ!どうせなら近くの神社で必勝祈願しに行こうよ!」

「聞けよ!」

 

 必勝祈願か、神頼みする必要はねぇと思うんだが…まぁ学校で跳び箱の中へ隠れるほど不安な気持ちがあるんだ、少しは付き合ってやるか。

 

 

 

 

 

 もう境内の灯りは消されているが街灯で何とか先が見えるほどの暗い神社で、4人並んで賽銭箱の前に立っていた。

 俺とムサシは五円玉を賽銭箱へ投げ入れ、栗田は財布をひっくり返して中にあるお金を入れ、ヒル魔はガムを噛んでアサルトライフルを肩に担いで見ているだけだった。

 

 パァン!パァン!

「みんなでクリスマスボウルへ行けますように!」

 

 力一杯手を合わせた栗田が願い事を言う。

 

「明日の試合勝てますように、その次の試合も勝てますように、その次の次の試合も勝てますように、その次の次の次の試合も「毎試合神頼みすんじゃねぇよファッキンデブ」」

 

 後ろからヒル魔が栗田を蹴って止め、ようやく願い事を言うのを辞めた。

 

 

 

「あっ!おみくじ引いていこう!」

 

 無人でやってるおみくじを指さした栗田が俺とムサシとヒル魔の服を引っ張って強引に連れて行かれた。

 財布を出した栗田だったが既に賽銭箱へ突っ込んでいるので空……仕方なしに栗田の分も出して3人で引いた。

 

「俺は中吉」

「大吉だ」

「だ、大凶…!?」

 

 栗田、運がねぇ奴…アサルトライフルが乱射されてヒル魔の手により速攻無かったことにされた。

 

「所詮運任せのおみくじだ、試合にはなんの影響もねぇよ」

「そ、そそそそそそうだよね!」

「大体俺達は運に左右される程弱くねぇ。神頼みする必要もねぇから安心しろ」

「だだだだだよね!!」

 

 栗田の巨体が細かく左右に揺れるほど動揺している。

 

「ほら、構えろ。ここでちょっとだけライン勝負しようぜ」

「え、でも蓮次はタイトエンドだし…」

「元ラインマンだぞ?久しぶりにラインやりたくなったんだ、付き合えよ」

「う、うん…」

 

 栗田と正面に向き合って構える。栗田の後ろにはヒル魔がニヤニヤして立っていて、掛け声を出す役を担ってくれた。

 

「Set!Hut!」

 

「ふんぬらばっ!」

「ぐうぅっ…!」

 

 栗田の巨体へ全速力でぶつかり、押し合いが始まる。

 

「どうした栗田!その程度の力だったら俺がお前を青天してやるぞ!」

「負けないよ!」

「ちょ!お、おわーっ!!」

 

 力一杯入れた筈なのに押し返されてしまい、2回程地面を転がってしまった。

 

「栗田の勝ちだな」

「ケケケッ純粋なパワー勝負に持ち込みゃそうなるわな」

 

「わーっ!蓮次ごめん!怪我はない?!」

「平気平気、受け身は慣れてる…にしても栗田のパワーには負けるなぁやっぱ」

 

「蓮次だって凄いよ!立ち会いで蓮次の方が先にぶつかって来たんだもん!スピードじゃ敵わないや」

「40ヤード走で1秒程差があればそうだけど、栗田はそのパワーと巨体があるんだ、誰にもやられねぇよ」

「そ、そうかな?」

「自信を持てよ、明日からの大会も自信を持ってライン勝負しろ」

「…!」

「あーあせっかく風呂入ったのにまた汚れちまった、帰ったら洗うか」

 

 服に着いた土を払いながら立ち上がって言うと、栗田も手伝ってくれた。

 

「ありがとう蓮次」

「何がだ?」

「不安になってた僕を勇気付けてくれたんだよね、もう大丈夫だから」

「さぁな、どっかの悪魔が俺のポジションをコロコロ変えて落ち着ける場所がねぇから栗田を倒して奪おうかと思ってただけだ」

 

「ラインをしてた時良かったもんね!柔道で鍛えた技で相手を転がしてサック決めてたし!」

「そのおかげで黄金世代の王城からタッチダウン取れたからな、俺が取った訳じゃねぇけど」

 

「またラインやろうよ!」

「これ以上ポジション増やして俺を過労死させるつもりか?やめろ、本気でやめてくれ」

 

 ただでさえ掛け持ちのポジションなのにラインもやるってなったら確実にぶっ倒れる自信がある。

 

「そろそろ帰るぞ。明日から大会なんだ、寝不足で体調不良ですってふざけた真似をするなら試合前に処刑してやる」

 

 ヒル魔が飽きた感じで先へ歩き出した。

 

「そうするか」

「そうだね!」

 

 ムサシと栗田もヒル魔の後を追って横へ並んだ。

 

「帰りコンビニ寄らねぇか?小腹減った」

 

 俺もヒル魔達と横並びになって聞くと、栗田が乗ってくれて4人でコンビニへ行くことになった。

 そこで無糖ガムやお菓子やパンにコーヒー、カゴが満杯になって購入。領収書をヒル魔へ渡してからまたさっき出会った十字路まで戻った。

 

「また明日な」

「みんな頑張ろうね!」

「おやすみ」

「ケッ!さっさと帰れってんだ」

 

 カメラの回収目的に来たはずのヒル魔だが回収する素振りもせずに来た道をそのまままっすぐ進んで行った。

 栗田も堂々とした感じで帰って行くのを見送り、俺とムサシは同時に目を合わせた。

 

「あの感じ、カメラの回収は嘘だな」

「だろうな、本人も不安な所があったかもしれねぇ」

「お前と栗田の様子を見て安心したんだろ、俺らも帰るぞ」

「おう、また明日な」

 

 

 

 

 

 

 ムサシと別れ、家へ向かって帰ってる途中に携帯が鳴った。

 相手は姉崎だ。

 

「もしもし」

「ごめんね夜遅くに、起こした?」

「いや、散歩に出てた。何かあったのか」

 

「ううん、栗田君が不安になってたから他の皆はどうかなって思って電話してたの。十文字君達は気合い入ってる雰囲気だったし、小結君の所は…お父さんが聞いてくれてやる気十分だって言ってた」

「ライン組は大丈夫そうだな、雪光と瀧とモン太とセナは?」

「大丈夫みたい。ムサシ君と栗田君とヒル魔君は連絡がつかなかったんだけど何か知らない?」

 

「大丈夫だ、3人とも気合い入ってる。不安にさせるようなことは起こらねぇよ」

「そっか、双葉君は?」

「明日クソ兄貴をぶっ殺せる機会だぞ?不安になるようなことはねぇよ。むしろ早くさせろって気持ちでいっぱいだ」

「なら安心かな、怪我しないようにね」

 

「当たり前だ、もう春みたいな事故も怪我もしねぇ。クリスマスボウルへ行って日本一になるまでは怪我してる暇なんかねぇよ」

「うんうん、ちゃんと見てるから無理だけはしないで」

「おう」

 

「それじゃ、また明日。おやすみ」

「おやすみ」

 

 電話が終わる頃には家が見えてきて、玄関を開けた。

 

 汚れたジャージを洗濯機に入れ、パンイチのまま部屋へ戻った俺はまた違うジャージに着替え、布団の中へ入った。

 

 

 家を出る前と比べ今は落ち着きを取り戻しているのか、時計の音も夜中に走ってるバイクの音も近所で飼われている犬の鳴き声も気にすること無く眠りについたのだった。

 






 いよいよ次回から秋大会が開幕!
 
 果たして泥門デビルバッツはどこまで行けるのか!

 
 次回は試合前、その次から網乃戦となります。
 それでは次回をお楽しみに!!
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