9月11日。
全国高等学校、アメリカンフットボール選手権開幕。
ロッカールームに荷物を置いて開会式の準備を進めているとノックの音が聞こえ、返事をする前にドアが勢い良く開かれた。
「はははははっ!」
ロッカールームの入口からデカイ奴が笑いながら入ってきた。
「網乃サイボーグスの胸肩だ!今日の試合どうぞよろしく!」
試合前の挨拶か、随分と筋肉がついてんな。
「蓮次」
「ちっ…やっぱお前も来るよな。昨日はわざと避けたのにわざわざ来やがって」
「に、似てる!そっくり!!」
胸肩の後ろからクソ兄貴も現れて俺の前へ来ると、セナが驚いてクソ兄貴を見ていた。
「泥門デビルバッツの皆さん初めまして、蓮次とセイジの兄で双葉長嗣と言います。いつも弟の蓮次とセイジがお世話になっています」
「い、いえいえ!いつもお世話になっているのは僕の方で…」
「うちのメンバーに触んじゃねぇクソ兄貴」
クソ兄貴がセナに握手しようと手を伸ばしたがセナの肩を掴んで止めて後ろに下がらせた。
「そうやって卑怯な手で何かしようって魂胆だろ、随分効率的だな」
「酷いな、ただ挨拶するだけじゃないか」
「なら結構だ、さっさと出ていけ」
「今日の試合、正々堂々とやるつもりだよ」
「嘘つけクソ兄貴、お前の言うことなんか信じられるか」
「あ、あの…双葉さん?」
「あ?」「何かな?」
「あっ…れ、蓮次さんです」
「なんだ」
「仲…悪いんですか?」
「ぶっ殺してやりたいぐらいにな。何をやらせても1番でいつも俺の前に立ち塞がって来るクソ兄貴だ」
「…」
クソ兄貴は険しい顔をしてメガネのズレを直すだけだった。
「蓮次、僕は蓮次のやり方を否定する」
「あ?」
「幼い頃から毎日夜中から夜遅くまで練習し、体を酷使している蓮次を見るのが辛くて仕方ない。体を休めて心身共に健康状態で練習に臨む、それが1番効率的なんだ」
「また説教か?」
「旧時代のやり方は現代じゃ通じない、柔道に限らずアメフトでもそうだ。僕が蓮次を倒してそれを証明する」
「やってみろクソ兄貴。それでこそ殺す価値がある。俺達泥門デビルバッツがお前達をぶっ殺す」
挨拶が終わり、網乃のメンバーがロッカールームから出て行った。
「おーおー燃え滾ってるなぁファッキンセカンド」
「ここで燃えなきゃいつ燃えたらいいんだよ」
「ケケケッ化け物白銀様のお披露目、楽しみじゃねぇか!」
「あいつと対決するようにプランを変えてくれ、徹底的にマークして潰す」
「おっ!ちょうどそれを考えていた、気が合うな」
とか言いながら初めからそのつもりだったくせに。
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〜小早川瀬那視点〜
開会式が終わり、東京スタジアムから出ようとするがアイシールド21の姿になっている僕をテレビの人が捕まえ、インタビューを受けることになってしまった。
そこまで注目されるようなことは無いはずだけどNASA戦から注目されているようで、瀧君も混ざって来て何とかインタビューを乗り越えた。
「みんなとはぐれちゃった…えーっとバスどれだろう」
「アハーハー!これだよ!」
「早っ!」
「違うよ」
瀧君がバスに乗り込もうとする前に双葉さんが止めてくれた。
「それは第2会場行きじゃない、長野行きだ」
「アハ?そうかありがとう蓮次君!」
「やれやれ、勘違いされてるね。僕は長嗣だよ」
双葉さんのお兄さん!?メガネしてたのに今は外してて全然分からなかった!
「第2会場行きはこっち、さっきまでコンタクトを入れていたから遅れてきたんだ。良かったら一緒に行かないかな?」
「ありがとうございます!」
「サンキュ!」
「蓮次とセイジは迷惑かけてない?」
バスに乗って移動中話しかけてくれた。
「はい、いつも助けられています。特にふ…蓮次さんの方は色々と…アメフトをやる気にさせてくれたのも蓮次さんの言葉でした」
「そっか、真面目な蓮次だから見ていて触発されるかもね」
「はい」
「セイジは結構自由人だけど、ちゃんとする時はちゃんとするはず…その辺はどうかな?」
「蓮次さんを慕ってる感じが凄く伝わります。それに、鈴音…瀧君の妹さんとも仲良くしています」
「マイシスターはノリが良いからね!セイジボーイとすぐ打ち解けていたよ!」
「それは良かった」
なんだろう、この人酷い人じゃないみたい。
どうして双葉さんとお兄さんの仲が悪いのか分からないぐらいだ。
「蓮次はね、僕のことが本当に嫌いであんな態度は日常茶飯事さ」
「あっ…そうなんですか」
「もう何年もあんな感じ、びっくりしたんじゃない?」
「あーあはは…」
「気を使わなくてもいいよ」
「どうして2人は喧嘩したんだい?」
「瀧君!?」
そんなデリケートな話をしちゃダメだよ!
「それを語るのはいいけどもう時間だ。ほら、着いたよ」
長嗣さんの言葉と同時にバスが止まった。
「敵同士だけど今日はいい試合をしよう」
「はい」
「それじゃ、フィールドで」
「ありがとうございました!」
バスを降りて選手用の入口に入り、突き当たりまで一緒に進むとそこで別れた。
ロッカールームへ入ると、みんなは着替えていたのでまたユニフォームを着て準備を始めた。
「あ?なんで瀧まで用意してんだ?」
「そりゃ僕のデビュー戦だからじゃないか蓮次君!」
「お前まだ泥門生じゃねぇから出られねぇぞ」
「アハ、ハ?……え?」
「中途入学試験は来週、それまでお前は暫定の泥門デビルバッツのメンバーだが泥門生徒じゃない。ベンチ入りも出来ねぇから妹と一緒に上で見てろ」
「ア、アリエナイー!!」
叫んだ瀧君だったが双葉さんの手によってロッカールームから追い出されてしまった。
ワアアアァァ!
「!」
フィールドへ出ると会場全体からの声援にびっくりして立ち止まる。
後ろからは泥門を応援する声、向こう側からは網乃を応援する声。春大会では聞けなかった声援が僕の心臓を跳ね上がらせる。
速くここで戦いたいと手に汗が滲む程体が熱くなっていると同時に負けたら終わりだと不安がよぎってしまい足が震える。
ポンっと僕の背中を叩かれた。
「双葉さん?」
「不安か?」
「正直…負けたら終わりだと思うと不安になります」
「一緒だな」
「双葉さんもですか…?」
「ああ、そういう時…俺は周りを見るようにした」
「周り…?」
「俺は1人じゃねぇ、一緒に戦ってくれる仲間がいる」
「!」
「ここにいるのはあの辛くて苦しかったデスマーチを乗り越えた仲間がいる。1人じゃ無理でもみんなと一緒ならいける。そう思ったらどうだ?不安が無くなるだろ?」
僕も周りを見た。
モン太、小結君、十文字君、黒木君、戸叶君。
雪さん、ムサシさん、栗田さん、双葉さん、ヒル魔さん。
助っ人に来てくれた人達。
ベンチにはまもり姉ちゃんとどぶろく先生。
そして後ろでは鈴音と一緒のチアリーダーの服を着た外国人達と落ち込んでいる瀧君が一生懸命応援してくれている。
僕は1人じゃない!
いつの間にか僕の足の震えは消えていた。
「俺達は全員でクリスマスボウルに行く。全員で必ず行く!!」
円陣を組むと、ヒル魔さんが宣言した。
「それを邪魔しようってカス共が目の前にいる。大っ嫌いなお兄ちゃんが行く手を阻んで来たぞ、どうする双葉蓮次」
ニヤニヤと笑いながら双葉さんへ聞くと僕達の方へ向いて来る。
ヒル魔さんは双葉さんだけじゃなくて僕達にも聞いているんだ。
「決まってる」
ヒル魔さんの質問に双葉さんが笑って答えると大きく息を吸うと、僕も大きく息を吸った。
『さぁ始まりました!全国高校アメフト選手権1回戦!!泥門デビルバッツVS網乃サイボーグス!勝者はスポーツサイボーグの網乃か?はたまたアイシールド21の泥門か?』
『まもなくキックオフです!!』
秋大会開幕ゥ!!
開幕したその日に負けて終わるかもって精神的に結構来るものがあると思いますが…出場校が多い地区ならそんなものなのでしょうか?
次回は網乃サイボーグス戦を2話連続でお届けします。
それでは次回をお楽しみに!!