『タッチダウン!』
「はははは!何を遊んでいる!早く全国で網乃スポーツ医学を轟かせようじゃないか!」
『タッチダウン!!』
「……わざとだろ?」
『タッチダウン!!!』
「……おいおい冗談はよしてくれよ」
『タッチダウン!!!!』
「…………!!!」
『タッチダーウン!!』
『前半終了!』
「何故だぁ!何故こんなにもやられている!?」
「胸肩さん落ち着いてください、マシーンの様な貴方がそんな感情を剥き出しにしてどうするんですか」
「双葉君!何故君はそんなにも落ち着いていられる!?今の点差を言ってみなさい!」
「38対0、網乃サイボーグスは1点も取れていません」
「そうだ!網乃スポーツ医学は時代遅れのスポ根に負けるはずがない!それなのに何故こんなにも差が開いている!?」
「春のデータよりも急速に成長した。それだけですよ」
「そんなものは有り得ない!」
「ごちゃごちゃうるせぇなぁ胸肩ぁ!」
「!!?」
「目の前の事実を受けれねぇで時間を浪費するな!相手は蓮次を中心に攻めている!だったら蓮次を集中して倒せば泥門の攻撃は半減すんだよ!」
「ふ、双葉…くん…?」
「僕が蓮次を倒す!」
■■■■■■■■■■
「おーおー向こうはめちゃくちゃ荒れてんなぁ」
「ケケケッ!テメェがあれだけ暴れりゃお兄ちゃんはお怒りだろ」
前半5回のタッチダウン、トライフォーポイントでは4回キックで1回のタッチダウン、そして自殺点が1回。
タッチダウンの内4回は俺、1回はヒル魔が決めた。
トライフォーポイントのタッチダウンはキャノンでぶちかまして取ったものだ。
「暴れさせたのはお前だろ」
「先に提案してきたのはテメェだぞファッキンセカンド」
そういえばそうだった。
「後半からはセナとモン太で攻めよう、俺は囮になる」
「ったりめぇだ」
前半はかなりスッキリしたし、後半からは泥門デビルバッツ流で戦って俺達が強いって事を証明してやる。
後半が始まって網乃の攻撃。
『Set!HutHut!』
網乃の攻撃、選んだのはラン。
ラインバッカーのポジションについている俺は右サイドから上がって来る兄貴を迎え討つ。
お互い真っ直ぐ走り、ギリギリで避けようとする兄貴に腕を伸ばすと兄貴も腕を伸ばしてきて俺から離れようとするも、重心を捉えきれてない兄貴の手では俺のタックルを止められない。
「捕まえ…たぁ!!」
「なっ…にぃ!!?」
腰に抱き着くような形でタックルが入り、もう一歩踏み込んで後ろ向きに倒す!
『1ヤード後退!』
「何故…止められるんだ……」
セナと比べたら兄貴のランは可愛いものだ。
煙のように消える走りを相手にしていると他のランニングバックを止めるのなんて難しくない。
『Set!Hut!』
ランで来るかと思っていたが2度目の攻撃はパスのようで、兄貴は走るフリだけをしていた。
「はぁ!」
十文字が不良殺法でラインを引き倒してサックを決めるとボールがこぼれる。
「ファンブルだぁ!拾え!!」
後ろからヒル魔の声が聞こえ、転がるボールへ向かって全速力で向かう。
「よしっ!」
ちょうど俺の前で高く跳ねたおかげで簡単に確保出来た!このままタッチダウンを狙う!!
「蓮次ィ!!」
「!」
兄貴が俺を止めようと追いかけてくる。
「なっ…!」
兄貴が俺を捕まえようと腕を伸ばしたが、既に俺はその先へ…兄貴に触れられることなくゴールラインを超えた。
『タッチダウン!!』
「……」
周りを見れば兄貴だけは目が死んでないが、他の選手は死んだ目をしている。
この点差で更に攻撃が全然通らないって悟ったか?
「アメフトはビビらせたら勝ち、だったかヒル魔?」
「あぁその通りだ」
「それでもやる事は変わらねぇよな?」
「ケケケッ!」
「はははっ!泥門でアメフトを始めて良かった!」
こんなにも気持ちがいい試合は初めてだ。
「熱を持たせてくれてありがとよヒル魔」
「あ?なに気色悪いこと言ってんだファッキンセカンド」
「栗田、俺をアメフトに誘ってくれてありがとよ」
「僕も蓮次と一緒にやれて嬉しいよ!」
「ムサシ、俺に強くなれる方法を見つけてくれてありがとよ」
「ふっ、まだ終わってねぇんだから油断すんなよ」
「当たり前だ、こんなにも楽しいアメフトをやれるなら最後まで楽しんでやる」
相手がビビってしまったからなんて関係ねぇ、余すこと無く最後の最後まで攻めさせてもらう。
手を抜いてやるなんてスポーツマンらしくねぇし兄貴をボコボコにできる機会なんて今後ねぇからな。
『試合終了!!!』
最終スコアは80対0。
圧勝と呼べるほどの点差をつけて勝てたおかげで兄貴への怒りが全部吐き出せた。
後半の攻撃は俺を囮にセナとモン太のダブルエースを活かす作戦に切り替え、兄貴の熱を空回りさせたが俺への執着のような熱で勝てるほどアメフトは甘くない。
セナは胸肩を新技”デビルバットゴースト”で抜き去り、1度の対決で胸肩をビビらせた。
モン太は相手コーナーバックの方が早いがボールへの執念でヒル魔からのギリギリ取れるスパルタパス”デビルレーザーバレット”をキャッチしてコーナーバックをビビらせていた。
泥門デビルバッツの攻撃がラストワンプレーとなる時間。
ヒル魔が決着をつけてこいと指示を出され、スイープでランルートをデカく作ってくれると兄貴と対決。
腕を伸ばして止めようとすると、兄貴が技を仕掛けて来てバランスを崩したがデスマーチで鍛えた体幹能力で堪える事が出来てそのまま引き摺ってタッチダウン。
最後に見た兄貴の顔は俺にビビった顔ではなく、まるで自慢の弟だとでも言うような穏やかな顔をしていたのだった。
泥門デビルバッツを応援している客席からテープが投げ込まれ、ベンチではメンバー全員で勝利のお祝いをしている。
そんな中、俺は1人網乃ベンチにいる兄貴に近寄った。
「俺達はつえーだろ兄貴!どうだ参ったか!」
兄貴にこれでもかと笑顔で言うと、兄貴も口角を上げていた。
「あぁ、本当に参ったよ、蓮次は本当に強くて手も足も出なかった。どうやってそこまで強くなったんだ?」
「兄貴に柔道で負けて無気力だった俺をアメフトへ誘ってくれた奴がいた。不器用な俺に強くなる方法を教えてくれた奴がいた。俺に火をつけてずっと付き添って一緒に強くなってくれた奴がいた。1人でここまで来たんじゃねぇ、泥門デビルバッツ全員でここまで来たんだ」
「そうか…良い意味で変わったね」
「兄貴こそ変わったな。あの時みてぇに卑怯な手を使わなかったじゃねぇか」
「あの時か…あの時みゃーちゃんが入って来たのは偶然だ」
「み、みゃーちゃん…?」
誰だそれ?
「僕が父さんに黙って育てていた猫の名前さ。みゃーちゃんは今学校で育ててるからもう会えないよ?写真見る?あの時子猫だったのが可愛くて大きく成長したよ」
「猫かよ、一切見る気ねぇよ…で?」
「あの時の事を話すなら…後で話そうか。今は泥門デビルバッツの全員と勝利を祝っておいで」
「…………おう」
なんだか拍子抜けした。
ギラギラした目だったから何かしてくると思ってたのに宣言通り正々堂々やって来たし……変な感じだ。
「大っ嫌いなお兄ちゃんを打ち負かしたってのに浮かねぇ顔してんなファッキンセカンド。まさかテメェここで燃え尽きたとか言わねぇよな?」
泥門ベンチへ戻るとヒル魔がアサルトライフルを俺の頬に突きつけて聞いてきた。
「いやそれはねぇよ。ただ…俺が勘違いしてただけかもって思ってただけだ」
「あ?」
「勘違いかどうか確認してくる。他の試合を見るなら俺はパス、先に上がるぞ」
荷物をまとめた俺は一足先にフィールドを後にした。
「クソマネ、ファッキンセカンドを監視してこい」
「え?…あ、うん」
「さっさと行け。最初にぶちのめされてたライン共は荷物持ちだ!」
ロッカールームで泥門デビルバッツをイメージした服に着替え、自分の道具をカバンに詰め込んだ後カバンを肩にかけて選手用の出入口へと向かった。
「ちょうど同じタイミングだったか」
反対側の通路から白衣を着てメガネをかけた兄貴がやって来た。
「勝手に抜けていいのか?」
「キャプテンの胸肩さんを筆頭に重い空気で落ち込んでいたから放って置いた」
「ふーん」
「ここで話す?」
「いや、適当に歩きながらで良い。立ち止まってたらいつインタビューされるかわかんねぇからな」
「いいよ、それじゃあ久しぶりに兄弟並んで散歩しようか」
「嬉しそうな顔をしやがって…つーかその気色悪い話し方やめろ、昔みたいに話せよ」
「この方がインテリっぽくていいと思わない?白衣と併せたらいかにも研究員っぽくて気に入ってるんだ」
「きっしょ」
俺の言葉が刺さって落ち込んだ兄貴と一緒に歩き出したのだった。
というわけで網乃戦終了!
圧倒的な強さを見せた泥門デビルバッツの大勝利!!
これでもかとフルボッコにして溜飲が下がった蓮次と長嗣の仲は果たしてどうなるでしょうか。
次回は試合後のお話、そこから3話連続で日常パートを入れた後試合となります。
それでは次回をお楽しみに!!