泥門の2番手   作:実らない稲穂

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夕陽ガッツ戦

 

 

 9月18日、秋大会2日目となる今日。

 逆シードでないほとんどのチームは今日が初戦となる。

 網乃戦をした先週では既に4チーム敗れ、残り32チームが今日ぶつかる。

 

 ヒル魔が客観的に見た夕日ガッツとの勝率は99%、ほぼ勝ちが確定しているが油断ならないのがスポーツの世界。

 どんな相手だろうが攻めて攻め続けてぶっ殺す、それが泥門デビルバッツ流だ。

 

 同じ会場では

 ・王城ホワイトナイツVS三閣パンクス

 ・泥門デビルバッツVS夕日ガッツ

 ・西部ワイルドガンマンズVS恋ケ浜キューピッド

 ・柱谷ディアーズVS巨深ポセイドン

 計4つの試合が組まれている。

 

「セイジ、王城の試合は絶対に撮り逃すなよ」

「はーい!撮影係頑張ります!」

「特に進と坊主になった桜庭は要チェックだ」

「りょりょ!」

 

 

 

 王城の試合は終始圧倒、82対0で勝利を収めていた。

 特筆すべき点は高見と桜庭のコンビプレイ、お互い長身を活かした高高度のパス「エベレストパス」。

 俺と桜庭の背丈は近いがあれだけの跳躍と長い手足を用いたパスはカット出来るか微妙なところだ。

 

 その対策は後回し、次は俺達の試合だ。

 

 

 

 

 

「アハーハーみんな!僕のデビュー戦にこんな大勢集まってくれてありがとう!!」

 

 

 

 瀧のデビュー戦である今日、テンションMAXのバカが白いタキシードを着てフィールドの真ん中でクルクル回ってアピールしていた。

 

「あいつアメフトしたいってより目立ちたいだけじゃね?」

 

 チア軍団に連行されている瀧を見て呟いてしまった。

 

 

 

 

 

 そして試合、ゾロゾロと出てきたのはアメフト部以外の助っ人達。

 部員よりも運動能力が高い他の部活の選手を使う方が勝てる可能性が出てくる、何も悪いことはねぇ。

 

「なんか汚ねぇな!」

「何が汚いんだモン太、うちだって助っ人を入れている。何も悪いことはねぇんだよ」

「そうッスけど…!」

 

「春の時お前も助っ人だっただろ?気にする事はねぇよ」

「…うッス」

 

「ま、ボコしてる間に相手が諦めて正規部員が出てくるかもな」

「…!!」

 

 さぁ試合だ。とことん攻めて勝ってやる。

 

 

 

 ■■■■■■■■■■

 

 

 〜姉崎まもり視点〜

 

 試合が始まった。

 夕陽のキックから始まり、高く上がったボールをモン太君が取るとディフェンスがもうすぐ近くにまで来ていた。

 倒されてしまったが何とかボールをキープして、残り70ヤードからのスタート。

 

 『Set!HutHut!』

 

 スプレッドフォーメーションでヒル魔君の後ろにはセナがいる。

 ライン組が少し後ろに下がってパス壁を作ると、助っ人で構成されたディフェンス陣がモン太君と双葉君に集中してマーク。

 何故か単位と叫びながら2人をマークし、パスを出すには困難な状況。

 

「空中戦の得意なモン太とガタイを活かしたショートパスを封じたつもりだがその中間のスペースが空いている!」

 

 どぶろく先生が言う通り、モン太君と双葉君の間にはスペースが空いていてそこへ瀧君が走る。

 

 ヒル魔君がボールを構え、瀧君へ鋭いパスを投げた。

 

「アハーハー!」

 

 誰も着いていなくてフリーボールをキャッチした瀧君がそのまま走った!

 

「モン太と山岡もディフェンスをブロック!瀧を走らせろ!」

「はいッス!」「は、はい!」

 

 

 蓮次君が指示を出すと、モン太君と山岡君がディフェンスをブロッキング、遅れて蓮次君も追いついて瀧君を追いかけていたディフェンスをブロックする。

 残ったのはボールを持った瀧君だけで悠々と走り抜けてゴールラインを超えた。

 

 

 

 『タッチダウン!』

 

 

 先制点はパスを受けた瀧君!

 夕陽陣地でY字バランスをする瀧君がクルクル回って喜んでいた。

 

 

 

 トライフォーポイントはムサシ君のキック。

 左端のゴールポストに当たりながらも入れるとヒル魔君がムサシ君へ怒っていた……。

 

 それでも7対0!この調子で行けば勝てる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 試合が進み第3クォーターが終わって、スコアは49対0。前半だけで42点を取っていた。

 前半は瀧君を上手く使ったパスワークで得点を重ね、セナのランを織り交ぜて攻め続け…第2クォーターから夕陽は正規部員の人達と入れ替わって出場した。

 

 後半からはセナと蓮次君の2人を後ろに置いたIフォーメーションに変更。

 この時瀧君をタイトエンドに置いて石丸君をベンチへ下がらせていた。

 瀧君がセナのランをフォローするリードブロックでランルートを作りつつ、ヒル魔君と蓮次君のダブルクォーターバックでパスかランか惑わせている。

 

 夕陽がブリッツでヒル魔君を止めようとすればバックパスで蓮次君へ繋いで空いたスペースへパス。

 ブリッツが無ければ蓮次君がボールを持って行き、最後はセナに繋げる。対応が後手になろうともヒル魔君の状況判断で躱し、蓮次君がフォローして攻撃を繋げる。

 

「瀧が加わった事でパスの選択肢が増えるだけじゃねぇ、双葉の負担も減らせるっつー事よ」

 

 色々なポジションを任される蓮次君に取って瀧君の加入は非常に大きなものになっているとどぶろく先生が話してくれる。

 

「タイトエンドの基本は双葉、フォーメーション次第で瀧を代役。双葉のポジションを変えれば抜けるメンバーが休める。スタミナ管理も出来て一石二鳥ってな!」

「そういうことですね!」

「要注意なのは双葉のスタミナ管理だな。出突っ張りだし人一倍スタミナ消費も激しい、体調管理は気を使わねぇとやべぇぞ」

「それは任せてください」

 

 私が蓮次君のサポートをしてあげれば大丈夫!

 

「そうかそうか!まも姐ちゃんが双葉のサポートをするってか!良い彼女じゃねぇか!がっはっはっ!」

「!?」

 

 どぶろく先生の言葉に心臓が跳ねる感覚があった。これで2度目、初めはお兄さんに言われた時だ。

 

 

 

 

 

「彼女じゃないです!マネージャーとしてサポートします!!」

「ん?何だ俺はてっきり…」

「なになに楽しそう何の話!?やーやー!!」

 

 鈴音ちゃんも混ざりに来て大騒ぎ……ベンチの隅では雪光君がフィールドをじっと見ていた。

 

「……僕ならあそこに走る、きっと2人なら僕を見て投げてくれるはず…!」

 

 雪光君が手をぐっと握り、考えながら試合を見ている。

 

「遊んではいたが真剣な話だ。ポジションを変えるってのは見える視点も動きも変わって想像以上にスタミナを消費するが…ヒル魔的には常に誰かと組ませてフォローさせる役目を作りたかったのかもな」

「それが蓮次君ですね。セナとモン太君のダブルエースを活かすジョーカーだってヒル魔君が言ってました」

「ダブルエースを活かすジョーカーか。リードブロックにショートパスが出来るポジションってなればそりゃタイトエンドしかねぇわな」

 

 どぶろく先生がお酒を飲みながら締めたのだった。

 

 

 

 

 『試合終了!』

 

 最終スコアは70対0。

 泥門よりも経験値が勝る夕陽の正規部員が奮闘するも1点も取られる事なく完封勝ち。

 前半と比べて後半はあまり点が取れなかったのはきっと熱海さんを始め、夕陽の経験値が泥門よりも上だからなのかもしれない。

 

 

 負けた夕陽ガッツの正規部員達は円陣を組んで泥門にエールを送ってくれると、キャプテンの熱海さんがこっちへ来た。

 

「全力で戦ってくれてありがとう」

 

 大粒の涙を流す熱海さんに蓮次君が対応した。

 

「こちらこそ全力で戦えて良かったです。熱海さん達夕陽ガッツのメンバーが常日頃から基礎を徹底しているのが凄く伝わりました」

「……ありがとう」

 

 そう言って熱海さんが去って行った。

 

 

 

「……熱い男だったなぁ」

「蓮次君…?」

「ああいう熱意がある人がキャプテンだとそりゃメンバーの士気も高いよな。うちのキャプテンもあんな感じでもっと表に……いやヒル魔があんな感じとか絶対裏があるって思うわ」

 

 大きな独り言を言った蓮次君が頭を横に振ると、片付けを始めた。

 

「あっ先にこれでアイシングして、片付けは私がやっておくからクールダウンを優先して」

「ありがと姉崎、あとは頼んだ。ムサシー!クールダウン手伝ってくれ!」

「わかった」

 

 アイシング道具を手渡すと、右肩に当ててムサシ君と一緒にクールダウンを始めたのだった。

 

 

 

「やー!まも姉もしかしてもしかする〜?」

「ううん、違うよ鈴音ちゃん」

 

 

 

「蓮次君が無理しないか見てるだけだから」

 

 だからさっき感じた胸の高鳴りにこの胸の熱さはきっと蓮次君の熱が私にも伝わってるだけ。

 






 という訳で夕陽ガッツ戦でした!

 完全にカットしようかと思いましたが流石にね……瀧のデビュー戦ですし瀧が入った事によるチームの影響もありますしね。

 次回から2話連続で日常パートを入れて次の試合へとなります。

 それでは次回をお楽しみに!!
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