泥門の2番手   作:実らない稲穂

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独播スコーピオンズ戦

 

 

 秋大会3回戦。

 泥門デビルバッツVS独播スコーピオンズの試合。

 

 

「ヒル魔君…何で腕に包帯巻いてるの?」

「くっ…!昨日夜遅くまで練習して筋肉を傷めてしまったんだ…今日大事な試合だってのに俺はなんて事を…!!」

 

 白々しい……セナ達が困ってるでしょ。特に蓮次君なんか胃が痛いのかお腹抑えてるし…胃薬渡しておかなきゃ。

 

 

 

 

 

 

 『ぶっころす!!』

 『YEAHー!!』

 

 

 胃薬を飲んだ後蓮次君が声掛けをしてフィールドへ歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 『Set!』

 

 試合が始まり、独播のキックオフでスタートして今は泥門の攻撃。

 

 『Hut!』

 

 スプレッドフォーメーションでボールを持った蓮次君が構えると、モン太君と瀧君と山岡君と石丸君が上がる。

 

「一体何が目的だヒル魔」

「あ?」

 

 ベンチではムサシ君がヒル魔君へ険しい顔をして聞いている。

 

 

 

「アイシールドを潰せぇ!」

 

 独播のキャプテンでラインバッカーの金串さんの指示で独播のディフェンスがセナへ向かって走る。

 

 ぽ〜い。

 『!!?』

 

 

 『17ヤードゲイン!ファーストダウン獲得!』

 

 多分…この会場にいる泥門以外の人達は固まったかもしれない。

 クォーターバック代役の蓮次君がモン太君へもっと鋭いパスを投げたのだから。

 

 これまでパスを投げる事もあったけど今回は正クォーターバックとして出場、ヒル魔君の代役としてやるのは初めて…蓮次君が1人で作戦を立ててパス相手を見つけて正確なパスをしなきゃ行けない。

 代役だからって思われていたからこそこのパスは全員驚いたと思う。

 

「キシェエエエエ!!?なんで!なんで猿にパス!!?」

 

 1番驚いているのは金串さんみたいで、変な声を上げていた。

 

 

 『Set!HutHut!』

 

 泥門の連続攻撃。

 

「ファッキンセカンドの仕込みはちょうど1年前、ラインをやらせてものにした時からだ」

「?」

 

 ヒル魔君がフィールドを見ながら話し始めた。

 

「部室でファッキンセカンドが作戦ってどう考えてんだ?って聞いてきた、そこからあいつに作戦を教えた。元々勉強も出来る奴だから直ぐにものにして今度は俺とは違う作戦を提案してきた」

「それで?」

「面白かったぜぇ?なんせ素人の癖に思考を合わせようとしてくるからな。不器用で見様見真似でしかものに出来ねぇブービー野郎なのによ」

「不器用なりに努力しようとしてんだろ」

「あーそうだ、だから俺は基本を全部教えた」

 

 …あっ独播のディフェンスが後ろに下がっててパスを警戒し始めてるって伝えなきゃ。

 

「まも姐ちゃん何してんだ?」

 

 蓮次君がこっち見て頷いた!よしっ!

 

「それでできたのが今の蓮次ってことか?」

「ケケケッ!地獄の白銀魔改造計画、その最後の仕上げがここだ!」

「かなりプレッシャーを与えたな?」

「こんぐらいでやられる程カスじゃねぇよ」

 

 

 

 『タッチダウン!』

 

 

 モン太君へマークしていた独播を嘲笑う様に瀧君へパス。そして今度はモン太君へパスしてタッチダウン。

 ランを一切せずにパスだけで得点を決め、トライフォーポイントの時にムサシ君がキックを決めて7対0!

 

 泥門のキックからプレイが始まる。

 

 高いキックが上がり、セナが一目散に走ってタックル!

 

 独播陣地まで後3ヤードの所で泥門のディフェンスが始まった。

 独播の攻撃はランを選んで中央突破、だけど栗田君達ライン組がラインを押し潰し、更に十文字君がタックルを決めて自殺点!

 

 これで2点追加から泥門ボール!

 

 

 

 

 

 独播のディフェンスは…前寄りのラン警戒、蓮次君も気付いた様子。

 

 『Set!HutHut!』

 

 スプレッドフォーメーションで蓮次君の掛け声でボールが動くが、蓮次君は微動だにせず横を通り過ぎ、セナへ直接ボールが渡る。

 

「ケケケッ!スルーさせたか!おもしれぇことするなぁファッキンセカンド!」

 

 ヒル魔君が笑っているのを見たムサシ君は苦笑いをしながらフィールドを見ていた。

 

 セナへ直接ボールが渡り、右サイドへ走ると蓮次君も遅れて走る。

 ランを止めに来た独播がセナを囲むと、バックパス。蓮次君がボールを受け取り、逆サイドへ向けてパスを投げた。

 

「よ、余裕…!!」

 

 瀧君がギリギリの体勢でボールを取って倒れる。

 

 『10ヤードゲイン!ファーストダウン獲得!!』

 

 

 

 次の攻撃、独播はまた前寄りのディフェンス。

 その事を蓮次君へサインを送って知らせると、また同じようにランを選んだ様に見せ、独播のディフェンスはセナを止めるために集まっている。

 だけどそれはフェイク、蓮次君ががら空きのフィールドを走っているモン太君へロングパスを投げた。

 

 『タッチダウン!!』

 

 

「さっきから何ハンドサイン送ってんだクソマネ」

「あ、これ?蓮次君がベンチから見た様子を暗号で教えてくれって頼まれて一緒に考えたサイン」

「ほほーう?表があるだろ、見せろ」

 

 ヒル魔君へ作ったノートを手渡すとバラバラと素早く捲り……ライターで炙って証拠隠滅された。

 

「他に教えた奴は?」

「私と蓮次君だけ」

「それでいい」

 

「勝手に消されて怒らねぇのか?」

「蓮次君がヒル魔君に教えたら消されるだろうなって、読んでたみたい」

「そういう事か」

 

 

 

 

 

「キシェエエエエ!なんでだ!?なんで指先が赤くなるまで充血してんのにパスばっかされんだよ!!」

 

 ハーフタイム、独播ベンチでは金串さんが叫び声を上げている。

 前半だけで16対0、モン太君が2回タッチダウンを決めて有利な状況で試合は進んでいた。

 

 

「ケーケッケッケ!毎回ランなのに直前で変えるなんざおもしれぇ事するなぁファッキンセカンド!」

 

 対してこっちはヒル魔君が楽しそうに作戦をバラし、蓮次君が水分補給をしながら休んでいた。

 

「言うなよ…相手に作戦バレるじゃねぇか」

「わざとやらせてる癖によく言うぜ、それにどうせバレたところで後出しで変えるから関係ねぇだろ」

「読まれてるって知ってるならブラフを用意する、お前に教わった事だ」

「基本を忠実にするテメェならそうするよな」

 

 水分補給を終えた蓮次君が円陣を組み、作戦を伝えて行く。

 

「ライン組は後半も同じように構えてくれ。ライン勝負ではこっちが有利だし抜かれても俺は躱しながらパスを出せる、思いっきりぶつかってくれ」

「任せて!」『おう!』「ふごっ!」

 

「オフェンスはスプレッドからIフォーメーションに変える、前半あれだけディフェンスを引き付けてくれたモン太は様子を見てアドリブでロングパスを出すから毎回パスを貰う気持ちでフィールドを走ってくれ」

「うっス!」

 

「瀧はパスをする時事前に伝えるからそれ以外はアイシールドのランをリードブロックをしてくれ」

「OK蓮次君!」

 

「山岡と佐竹は交代で使うからどっちも走れよ、ディフェンスの動き次第でパスを投げるからな」

「はい!」「は、はい!」

 

「アイシールドは右サイドを大回りに走ってディフェンスの誘導、ディフェンスが釣られないならそっちへパスするから抜いて行け」

「はい!」

 

「石丸、お前存在感無さすぎ。1人欠けてる状態だと勘違いするからもっとアピールしてくれ」

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 後半が始まり、独播の攻撃からスタート。

 セーフティの位置についた蓮次君へサインを送り、チーム全員へ指示を出しながら独播の攻撃を抑えている。

 何度も止めることに成功し、4回目の攻撃でパントキックを選んだ独播。

 

 残り40ヤード地点から泥門の攻撃になった。

 

「良いディフェンスだ、独播の攻撃をちゃんと抑えてやがる」

「読めてりゃ来る攻撃を止めるのは簡単だ」

「良い奴見つけたなヒル魔」

「ぶちのめすぞファッキンアル中……そうだ、せっかくハンドサインがあるんだし、ここらでちょっと遊んでやるか」

「え…」

 

 それ本当に大丈夫?

 

「…………げぇ…」

 

 ヒル魔君が出したサインは「キャノンで釣ってサイドからランで攻め殺せ」…蓮次君大丈夫かな。

 

 蓮次君がめちゃくちゃ嫌そうな顔をしながら頷くと、ハンドサインで返してきた。

 

 ―もうハンドサインは要らない、ありがとう―

 

 何だかこうしてハンドサインを送りあっていると秘密のやり取りをしてるみたいで少しだけ楽しい。

 

「なーにイチャついてんだクソマネ」

「してません!」

 

 隣でヒル魔君が居なかったらもう少し楽しかったかも。

 

 

 

 『Set!HutHutHutHut!』

 

 4度目の掛け声でプレイが始まり、サイン通りキャノンで中央突破、独播のディフェンスに捕まりながらも進んで5ヤード稼いでから倒れた。

 

 次の攻撃は中央突破を警戒する独播の裏をかいてセナへトスしてサイドから上がって行く。

 

 『タッチダウン!』

 

 セナがタッチダウンを決め、その後ムサシ君のキックも決まり、23対0。

 

 

 

 第4クォーターになると独播の攻撃がやけくそ気味になってきてゴリ押しで進んで来た。

 それでも大きく進まれることなく残り30ヤード地点、独播のフィールドゴールで3点返されてしまった。

 

 

「ちっ…!」

 

 ヒル魔君が舌打ちをしてちょっと不機嫌な様子。

 蓮次君は平気な顔をして次の作戦を伝えている。

 

「点を取られたってのに動揺してる様子はねぇな」

「当たり前だろファッキンアル中、あいつはこの程度で焦る程メンタルは弱くねぇよ」

「とか言いながら今日までプレッシャー与えてきた癖に、蓮次の奴ずっと胃を痛めてたぞ」

「黙れファッキンジジイ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 残り10秒、最後のプレイは泥門の攻撃。

 

 

 『Set!Hut!』

 

 Iフォーメーションで始まり、蓮次君からセナへボールを渡すと瀧君がリードブロックして道を作りラインバッカーの金串さんと対決。

 

「キシェエエエエ!?」

 

 デビルバットゴーストで抜き去り、タッチダウン。

 

 ちょうど時計も0秒になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結果。

 泥門と独播の試合は30対3で泥門の勝利。

 ヒル魔君は最後まで出ずに蓮次君がずっと司令塔をしていたのだった。

 

 試合後の挨拶が終わり、蓮次君の顔はホッとした顔をしているのを見て、私も同じようにホッとすることが出来た。

 

 

 

 

 

 

 





 というわけで独播スコーピオンズ戦でした!!

 カットしましたが、ここでまもりはハンドサインで状況を伝える方法が出来ました。
 隣でヒル魔がハンドサインの表を速攻で暗記し、覚えているのは3人だけです。

 

 次回から3話連続で日常パート、その後試合となります。

 それでは次回もお楽しみに!!
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